インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者   作:白崎くろね

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6.セシリアとのお昼休み

「安心しましたわ。あなたにも訓練機ではなく、専用機が用意されるみたいで」

 

 授業が終わり、真っ先に話しかけてきたのはセシリア・オルコットだった。

 お気に入りらしいポーズを決めている(腰に手を当てる格好のこと)。

 席が近いこともあって、一夏より俺の方が話しかけ易いのだろうか。

 まあ、約束を破ってしまったことに怒っていないのであればいいや。

 

「ああ、流石にフェアじゃなさすぎるよな……」

 

 訓練機と専用機。当たり前だが、スペックが大きく異なる。

 量産型である訓練機に対し、専用機は文字通りの専用機体だ。搭乗者専用にフィッティングをすること可能で、その人に合った性能を発揮する――それが専用機。

 だから、フィッティングのできない訓練機と専用機ではスペックに差があるのだ。条件は対等とまでは言わないが、これで大きな差が少し埋まったのではないだろうか?

 

「まあ? 勝負の結果は見えてますわね」

「そりゃあそうだ。万が一にも君が負けた場合、色々と問題大アリなんだけどな……」

「ふんっ、わたくしが万が一にも負ける可能性はございませんわ」

「……はあ」

「どうかしたのかしら?」

「いや……俺は負けると決まっている勝負は嫌いなんだ」

 

 だから、俺は決闘なんてしたくなかった。

 

「それは誰も一緒でしょう?」

「いや、一夏のやつは全然考えてないと思うぞ」

「まあ……そ、そうですわね」

 

 セシリア・オルコットにも思うところがあったのか、苦笑いだ。

 

「で、俺は飯を食べに行くけど……お前も一緒に食べないか?」

 

 約束を反故にした埋め合わせ的なやつだ。

 

「――いえ、遠慮しておきますわ」

「いいや、俺が困る」

「なんであなたが困るんですのっ!」

「……まあ、奢ってやるからついてこいよ」

 

 俺は返事も聞かずに、学食へと向かう。

 その道中、後ろからブツブツと文句を言いながらもついてくるのが気配でわかる。

 

「……えぇ、仕方がないから行って差し上げてもよくってよ。仕方なく、仕方なくですわ」

 

 うーん、勢いで連れてったけどラーメンとかは食べれなさそうだな。

 

 学食の券売機にはラーメンの項目が三つ。醤油、味噌、塩の三種類だ。しかし、今はセシリア・オルコットと一緒なのだ。ラーメンを食べようものなら、『日本の猿は女性と食事をする際のデリカシーもないのかしら!?』とかなんとか言われてしまいかねない。むう、悩む。

 

「何を悩んでいるのです?」

「悪い。今決める」

 

 まあ、適当でいいや。

 そう思い、俺は券売機にある日替わり定食を頼んだ。

 今日の日替わり定食ってなんだ? 俺に苦手なものはないから問題ないが……。

  

「何がいい?」

「いえ、男から施しを受ける気はありませんのよ」

 

 そう言って、俺からの厚意を受け取ろうとはしないセシリア・オルコット。

 俺としては受け取ってもらえないのは論外だ。だから、勝手に券を発行した。

 

「ほら、洋食ランチでいいだろ」

「何を勝手にしてらっしゃるんですの!」

「そう怒るな。こういう時は男女関係なく、厚意を受け取るのが英国の紳士淑女だ」

「……し、仕方ないですわね」

 

 さっきのやり取りで察してはいたが、こいつチョロいわ。

 ものすごくチョロい。

 そんなこと本人には口が裂けても言えないが。

 

「あのさ、セシリア・オルコット」

「なんですの?」

「名前で呼んでもいいか? ファーストネーム」

「…………まあ、いいですわよ。特別に名前を呼ぶことを許して差し上げますわ」

「おう、セシリア」

 

 常々思っていたが、日本人の名前ではないセシリアの名前をフルネームで呼ぶのは少し長い。

 それって結構面倒だし、どうせなら名前で呼んだ方が楽だから。

 食券と引き換えに学食のおばちゃんから料理を受け取る。

 今日の日替わりランチはヒレカツ定食。

 ヒレカツか、普通にうまいんだよな。

 ちなみに洋食ランチはハンバーグ。

 てかハンバーグって洋食だったんだな……。

 

「丁度よく空いてるな」

 

 二人掛けの席を見つけ、俺の分とセシリアの料理をテーブルへと運ぶ。

 

「まあ、悪かったな……強引に誘って」

「気にしてませんわ。それよりわたくしを誘うだなんてどういうつもりなんですの?」

「あー、アレだ。約束を忘れ――反故にしたからな」

「いま、忘れたと言い掛けませんでしたか」

「言ってないよ」

 

 失言を誤魔化すようにして、目の前のヒレカツをナイフでカット。

 一応、セシリアの手前テーブルマナーには気を使うことにする。

 ……待て。ヒレカツは和食か? 洋食か? どっちのテーブルマナーを使えばいいんだ?

 考えろ、考えるんだ。

 ハンバーグはどうやら洋食として判定されるようだし、ヒレカツも洋食としてカウントしてもいいんじゃないか? ナイフとか使うしな。つまりヒレカツは洋風の洋食ということでいいんじゃないか、もう。

 

「そんなにヒレカツを見てどうしたんですの……苦手なのかしら?」

「いいや、問題ない」

 

 意を決して、洋食のテーブルマナーでヒレカツに挑む。

 朝のラーメンといい、この学食の料理はうまい。流石はIS学園だな……。

 気になって隣をチラっと見てみると、セシリアは上品にハンバーグをカットし、口に運んでいた。

 しかも、いつの間にかナプキンが膝に広げられているのがわかる。

 ……あまりじっと見るのもマナー違反なので、俺もヒレカツを食べるのに集中する。

 だって、食事中に話すのってマナー違反だよな? てか食事中にアレコレ考えるのってかなりの心労だ……やっぱ誘わないで一人で食事するべきだったか……。

 

 

「あなた、マナーがわかるんですの?」

「ま、まあ……お姉ちゃんが教えてくれたからな」

「あら。あなたのお姉さんは素敵な方ですわね」

 

 ……なんだろう、身内が褒められるというのは少し嬉しいな。 

 

 お姉ちゃんはマナーを気にして料理を食べる人間ではないが、いざという時のためにと教えてくれていたのだ。それがまさかIS学園でそれが役に立つとは……お姉ちゃんさまさまである。

 ちなみに俺は和食、洋食、フレンチ、イタリアンのテーブルマナーを一応だが習得している。

 

 織斑姉が言っていたように、効率的かつ迅速に食事を済ませてしまう。

 

「勝手に押しておいてなんだが、洋食ランチで大丈夫だったか?」

「ええ、美味しかったですわよ? 日本の料理は結構美味しいからついつい手が進みますわね」

「そうか。それなら良かった」

 

 本当によかった。キレられたらたまったもんじゃないからな。

 でも、食事はゆっくりと何も気にせずに食べたものだ……。

 

 セシリアも食べ終えたようだ。

 

「今日はありがとうございますわ。ですが、今度は男からの施しなんて受けませんですわ!」

「そうか。まあ、今度な」

「ええ。ではまた」

 

 ……ふーん、今度か。でも俺から誘うことなんてないと思うけどな。だって、面倒だし。

 

 俺は食べ終わった食器を片付け、学食を後にした。

 




今回は少し短めです。

セシリアとお昼を食べるお話はオリジナルなのですが、ややセシリアの言動に違和感があるように思えます……私の力不足ですね。

*描写はしてないものの、きちんと定食メニューです。白米、味噌汁、漬物、添え物。そしてヒレカツの5品

*本日の日替わり定食はヒレカツ定食(原作とは違います)

*フレンチはフランス料理のことです
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