インフィニット・ストラトス - 二人の男性操縦者   作:白崎くろね

9 / 52
9.深見静馬VSセシリア・オルコット

 ――さあ、勝負を始めようぜ

 

 初撃の閃光を本能で躱し、事なきを得る。

 仮に今の一撃が当たってたら、軽く右肩装甲が吹き飛んだことだろう。

 基本的なことだが、IS戦では相手のシールドエネルギーを0にすれば勝ちとなる。もちろん、攻撃を受けることでシールドエネルギーは減少する。ただ、IS全体のバリアーを貫通した場合は操縦者本人がダメージを受けてしまう。当然痛い。とはいってもISには『絶対防御』と呼ばれる能力が兼ね備わっているのでダメージがいくら貫通したところで操縦者が死ぬことはない。そして、絶対防御が発動した場合は通常よりも大きくシールドエネルギーが減少することとなる。絶対防御の発動は操縦者の生死に関わるダメージを受けたかどうかで決まる。たぶん、肩に被弾した程度では絶対防御は発動しないはずだ。

 

「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲で!」

 

 射撃射撃射撃――間髪入れない弾雨が降り注ぐ。乗り始めで覚束ない俺には、雨を避けるにも等しい苦行にも思えた。

 

 ――バリアー貫通、ダメージ26、ダメージ42。シールドエネルギー残量、532。実体ダメージ、レベル低。

 

「うっ……ッ」

 

 直撃だけは避けているものの、各部位に一撃が掠っていく。その衝撃に引っ張られて機体の制御が難しくなる。そこへ更にダメージが重なっていく。まだシールドエネルギー残量に余裕はある。が、このままでは普通に削りきられてしまうだろう。そんなことはさせないし、俺だって負けるのは嫌なんだよ。

 

「装備展開――ッ!」

 

 音声コマンドで適当な武器を呼び出す。

 すると、ハイパーセンサー上に『単分子ブレード』なるものが表示され、俺の右手に単分子ブレードが展開された。見た目は両手剣の単分子ブレードは青白い光を放っている。

 

「まずは攻める……!」

 

 迫りくる閃光の弾丸を単分子ブレードで斬り伏せ、セシリアへと向かって加速させる。

 どうやって加速させればいいのか。そこら辺がよくわからなかったので、ジェットエンジンを吹かすようなイメージを思い浮かべたら加速できた。

 

 被弾、被弾被弾被弾――10に満たないダメージが機体のシールドエネルギーを削っていく。

 

 ――シールドエネルギー残量、500。

 

 それでも俺は既にシールドエネルギーを100も削られていた。このまま行けば、数分としない間に俺のシールドエネルギーは0となり、負けてしまう。

 何か手はないのか……?

 

「その程度ですの? 正直期待はずれもいいとこですわ」

「うるせェ……稼働時間一〇分未満を舐めるな」

 

 他に武装は積んでないのか? 射撃が行えるマシンガンとかだ。

 そう思った瞬間、俺の手にはマシンガンが握られていた。

 理解できる。これをどのように使うのかを。

 あの時と同じように、俺の中のスイッチが切り替わった。

 

「――ふう」

 

 軽い深呼吸。

 吸って、

 吐いて、

 いける。

 

 ――ターゲットサイトを不可視モードへと変更

 

 マシンガンでセシリアの機体《ブルー・ティアーズ》に当てる必要はない。

 当てるのは、迫りくるレーザーである閃光。

 撃鉄を振り絞り、銃弾を放つ。レーザーの側面にぶち当てて消滅させる。

 それを迫り来る全てのレーザーに撃ち放つ。外すことなく、綺麗に命中した弾丸は尚も空中を進み続ける。そこへ、更に工夫を重ねる。弾丸と弾丸を当てることによって、弾丸が弾ける。弾けた方向にはセシリアが。もちろん、普通に躱されてしまった。

 

「むちゃくちゃなことやりますわねッ!?」

「……そうでもないだろ。ISの演算と技術の応用でどうとでもなる」

 

 俺がやったのは銃弾と銃弾の方向矯正だ。弾丸に弾丸を当てることによって、弾丸を違う方向へと向けさせる。生身でやるのは不可能に思える技術だが、ISの演算をしようすればできないことのない技である。まあ、やってる本人が一番驚いてるけどな。

 

「まあ、いいですわ! そろそろ本気で行かせてもらいますわよ」

 

 その宣言と共に、セシリアの機体からフィン状の浮遊体が飛び出してくる。

 ISの判定から見るに、ブルー・ティアーズと呼ばれる射撃型特殊レーザービット。

 ……まだ射撃の密度を上げることができるのか。

 

「さ、行きなさい!」

 

 二機のビットがこちらへ向かって直進してくる。マシンガンで撃ち落とそうとするが、普通に避けられてしまう。しかもレーザー砲付きで。

 だがまあ、問題ないッ!

 

 背部スラスターを吹かし、セシリアへと向かって突っ込む。

 その際にレーザーが飛んでくるが、身体を逸らすことで躱す。その隙をセシリアのレーザーライフルが狙いを付けてくる。それをブレードで叩き斬る。今の俺はハイパーセンサーの補助がなくとも、勘で背後の攻撃さえも察することができる。なぜ、どうしてこんなことができるのか。その理由はわからないが……緊張した状態や俺が負けたくないと強く思った時に発動するであろうことをたっちゃんとの訓練で把握していた。まあ、その度に意識を落とされてたんだが。おかげで頭とか首とか痛かった……ってそんなことはいいんだ。

 

(しかし、セシリアはビットと同時に動くことはできないのか?)

 

 俺がそう思ったのは、ビットからレーザーが飛んでくるタイミングと本体からレーザーが飛んでくるタイミングが重なったことがないことに気付く。そうすれば俺だって防ぐことができなくなるのにも関わらず。だとすれば――。

 

 俺は狙う対象を変えることにした。狙うはビット。

 ビットにマシンガンを向け、射撃。もちろん、弾丸と弾丸を当てた攻撃を忘れない。そうすることによって、弾丸の予想線が立てづらいからだ。普通は弾丸の軌道を変えようなんて思わないだろうし。……さて、どう出る?

 

 その俺の行動にセシリアがレーザーライフルを放ってくる。

 ――ビンゴ! その瞬間、俺は当たる覚悟でビットを斬り伏せた。

 

(ぐううぅッ……)

 

 蹴り飛ばされるような衝撃を受け、身体は吹き飛ばされる。

 ……それも計画のうちだった。ビットは死角からの攻撃を常に心掛けていた。つまり、片方のビットを見ている時は背後にもう一機のビットがいる状態になっている。それを利用し、セシリアのレーザーライフルを敢えて受けた。そして、その衝撃に合わせて加速させる――ッ!

 そうして二機のビットを破壊することに成功する。そしたら残りのビットが――。

 

 そこで俺は自分のシールドエネルギー残量を見た。

 

 ――シールドエネルギー残量、380。

 

 どうやらもう少しで半分に達してしまうようだ。

 

「俺も本気を出してやるよッ!」

 

 声を張り上げることによって闘気を漲らせる。

 加速に加速を重ね、レーザーの雨を掻い潜る。なかなか近づかせてはくれないが、その距離は徐々に縮まっているのがわかる。――いける。

 

 そう思ったのがマズかったのか、俺は死角外から一斉にレーザーを受ける。

 

(な、何ッ? どこからだ!)

 

 そしてすぐに気付いた。今まで二機しか反応していなかったビットが四機も稼働している。

 間違いなく絶対防御が発動していた。

 

 ――シールドエネルギー残量、98。

 

 もう既に瀕死の状態。まさか、負けるのか? まだセシリアに一撃も入れれてない状態で……? 冗談ではない。こんな面倒ごとに参加させられた挙句の果てが完全敗北? ……ふざけるな。

 ふざけるな。ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな――ッ!

 

 ――力を欲するか?

 

 ああ、この場を打開できる力を……。

 

 ――いいぜ、オレが力を貸してやるよ。

 

 その声が誰だったのか。そんなことはいい。

 いま、この瞬間、オレは力を手にした。それだけの事実があれば、

 この思考はいらない。

 

「――この試合オレが勝つ」

 

 

 ◇

 

 

「すごいですねぇ、深見君」

 

 リアルタイムモニターで深見静馬とセシリア・オルコットの試合を見ていた山田真耶が感心したようにつぶやく。が、それとは反対に織斑千冬の表情は険しかった。

 

「……そうだな」

 

(どういうことだ? 深見に戦闘経験はないはずだ。しかし、あの落ち着きようと曲芸染みた射撃はなんだ……?)

 

 先程、深見が披露した弾丸と弾丸の軌道操作を思い出しながら考える。最初にアリーナ・ステージへと向かった静馬の生体反応は興奮からか体温上昇や発汗の減少が見られた。しかし、あの曲芸を披露した時から一気に冷静な状況へと変化している。そして極めつけがレーザーに被弾した際の生体反応だった。本来であれば、被弾した際に脈拍や呼吸が乱れるのが普通である。が、静馬の反対は日常生活と何ら変わらない数値を表示させていた。

 

「――この試合オレが勝つ」

 

 その声が聞こえてきた瞬間、静馬の様子が変わった。

 従来では考えられない加速を行う。それは瞬時加速(イグニッション・ブースト)と思われる技だった。後部スラスター翼からエネルギーを放出し、そのエネルギーを再度取り込んで圧縮させることで爆発的に加速させる技術のこと。しかし、これには軌道を変えることができないという性質を持っていた。が、静馬は波打つようなカーブを重ねて接近を図っていた。

 

 そして、静馬は更に技を重ねた。

 

 ――個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)高速切替(ラピット・スイッチ)――極めつけは空中での方向転換。

 

 静馬は空中を蹴ったのだ。文字通り。

 

(これではまるでモンド・グロッソ……いや、それ以上かもしれんな)

 

 攻撃は入れてないものの、静馬の動きは状況を逸していた。

 

『試合終了。――勝者――セシリア・オルコット』

 

 結果は超至近距離まで近づいた静馬にセシリアが弾道ミサイルを打ち込んで勝敗は決定した。

 

「山田君」

「なんですか? 織斑先生」

「……更識に連絡を入れろ」

 

 今一番静馬に近いであろう人物に話を聞いてみることにした千冬だった。

 

 

 ◇ 

 

 

 ――負けた、のか?

 

 途中から半分意識が抜け落ちていた。

 ……あ?

 試合の内容をほとんど覚えていなかった。

 覚えているのは、俺が俺でなくなろうとした瞬時までのこと。

 どうやって負けたのか、全然覚えていない。

 

 ただ、負けたにも関わらず清々しい気分であることは間違いようがなかった。

 

 でも、やっぱり――勝ちたかったなあ……。

 

 ――深見静馬、IS戦闘 VSセシリア戦 敗北――




もっと格好良く描写したかった……。
しようと思ったんだけど、ただわかりにくい描写になってしまった。
もう少し格好良くならんかったのかね……こればっかりは経験かな。

ちなみに静馬が空中を蹴って方向転換した技はオリジナルです。
今後、この技を使える人が出て来るかもしれません。
そして、高速切替はマシンガンの弾倉交換に使われていました。


……鈴登場まで戦闘描写はおやすみの予定です。

*静馬の被弾データ

 -26 =574 スターライトmkⅢによるダメージ
 -42 =532 スターライトmkⅢによるダメージ
 -6  =526 スターライトmkⅢによるダメージ
 -7  =519 スターライトmkⅢによるダメージ
 -9  =510 スターライトmkⅢによるダメージ
 -10 =500 スターライトmkⅢによるダメージ
 -120=380 スターライトmkⅢによるダメージ
 -40 =340 ブルー・ティアーズによるダメージ
 -11 =329 ブルー・ティアーズによるダメージ
 -201=128 ブルー・ティアーズによるダメージ
 -30 =98  ブルー・ティアーズによるダメージ
 -328=0   ブルー・ティアーズ(弾道型ミサイル)によるダメージ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。