少女と廻る非日常   作:鈴本暁生

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球技大会

あの衝撃的な事件後、周囲の人間の「沢田綱吉」に対してのイメージが変わった。

 

禿げにした事に恐れる者もいれば、逆にその姿にやや尊敬する者もいた。

 

不気味がる人間はほんの一部に過ぎないので、大半の生徒は彼を「ダメツナ」と言わなくなった。

 

彼自身何が起こったのかイマイチ理解していないだろうが、これはこれで結果オーライだったのは間違いない。

 

今回は調子に乗って死ぬ気弾に頼ろうとする沢田綱吉にリボーンが死ぬ気弾について言わなかったことから始まるイベント。

 

表向きには球技大会になっている。

 

このイベントは沢田綱吉の精神的成長も含まれている。

 

だからこそ余計に神経を鋭くさせなければならなかった。

 

 

そう、より警戒心を抱くしかなかったのだが......その必要性が無くなった。

 

アスカは、現在進行形で球技大会に参加していないのだ。

 

 

「はい、今週分の分の薬です」

「ありがとうございます」

 

 

かかりつけの病院で、担当医の近衛(このえ)から処方された薬を受け取る。

 

名前からして察するだろうが若い女性である。

 

艶のある黒髪、黒い瞳は純日本人の特徴を表している。

 

彼女は優しいが、アスカはあまり分かっていない。

 

「かかりつけ」と言っても別に親しいと言う訳でもないからだ。

 

 

「最近はどう?話を聞く限り、発作の方はやや治まっているようだけど」

「はい。最近はそこまで......」

「そう。でも、時期関係無しに気を付けてね。君の"それ"は時々厄介だからねぇ」

 

 

発作と言ってもそこまで大袈裟な病気では無い.....のだが所謂「隠語」と言うヤツで、病弱体質を指している。

 

病気にかかりやすい体質のアスカは幾つかの薬で体調を在る程度まで整えていた。

 

アスカはこの後、遅れながら球技大会に参加する。

 

その為病院には制服姿で来ていた。

 

荷物を持って診察室から出ようとドアノブに手をかけた時だった。

 

 

「今日球技大会って言っていたね。絶対参加せずに、見学していなさいな」

 

 

酷い発作が起きても医者は速攻で駆けつけないよ?、と遠回しに忠告してきた。

 

こう見えて近衛は結構忙しい人物だと思い出す。

 

うっすら目の下に隈のようなものが見えなくもない。

 

「善処しておく」意味を込めて、もう一度頭を下げてから診療室を後にした。

 

 

 

 

 

長い道のり、と言う程でも無い距離を歩いて、学校に到着したアスカはまず見回りをしていた風紀委員に捕まった。

 

強面の容貌の風紀委員に若干怖じ気づきながら、事情を説明するとその風紀委員は職員室まで送った。

 

尚、途中で風紀副委員長の草壁哲也と出逢い、送っていた風紀委員が「風紀を乱した」と罰則を与えられそうに慌てて弁解したのは割愛させて頂く。

 

職員室に向かい、教師の監視の下出席したことを記入して自身の教室へ向かった。

 

担任と保険医には事前に見学する許可を得ているため球技大会の不参加は知っている。

 

だが、念の為体操服に着替えて体育館に来いと言われたのだ。

 

正直面倒だが、一人だけ制服と言うのも周囲から浮いてしまう。

 

目立つことを避けるアスカは従うしかなかった。

 

着替えも終わり、いざ体育館へ向かおうとした途中に、それは起こってしまった。

 

並中の体育館は少し特殊だ。

 

二階の廊下側窓から体育館が見える様になっている。

 

その為体育の授業研修に来る実習生達はここから見ているのだ。

 

ここは体育館の数ある入り口の一つの通り道としても利用されている。

 

アスカのクラスは丁度この入り口を入って直ぐ左の所に固まっていた。

 

担任から事前に聞かされた位置の元へ、アスカは最短距離で向かおうとした。

 

そこまでは良い。

 

 

問題なのは、廊下側窓から体育館を見ている人物が『獄寺隼人(・・・・)』である、と言うことだ。

 

 

何故このタイミング!?と内心パニックに陥るが、それを表情に出さないのは流石と言うべきか。

 

はたまた単に表情筋が働かないだけなのかは不明。

 

兎に角、現在のアスカにとって鬼門がやって来てしまったのは先ず間違い無いだろう。

 

普通に通り過ぎれば良いだけの話なのだが、アスカは面倒事や厄介事には過剰と言うほど敏感------悪く言えば「自意識過剰者(じいしきかじょうしゃ)」------で慎重過ぎた。

 

本人に至っては、生命が関わっているので真面目な案件である。

 

このまま廊下で立ち止まっても埒が明かない。

 

しかし相手は仮にも「スモーキンボム」(アニメでは煙草は取り上げられ「ハリケーンボム」に変更)と言う異名がつけられる殺し屋(ヒットマン)

 

一般人(パンピー)のアスカと総合能力を考えれば向こうに軍配が上がる。

 

下手に刺激すれば何をされるか分からない。

 

アスカは内心おどろおどろになりながらも獄寺隼人の後ろを通って反対側へと向かった。

 

正直ビビッっていたのだが、生憎表情筋は責務放棄していたため、態度や雰囲気に現れることなく、第三者の視点からすれば普通に歩いて通過したようにしか見えないのだ。

 

通過した廊下を振り返らず階段を下りる。その途中で溜息を吐いた。

 

 

「知り過ぎていると言うのも、難儀だ」

 

 

知識があって正直助かっている部分は幾つか存在する。

 

そのお蔭か、今日まで原作イベントフラグが発生することも、遭遇することも無かった。

 

しかし、先程の分かっていて偶然的な遭遇は怖かった。

 

心の準備も無しで遭遇してしまったのだ。瞬時の判断力と遭遇への対応の素早さに磨きをかけなければならないようだ。

 

真面目に反省しているが、その詳細はとても残念でならない。

 

そのスキルを無駄な所で使う事自体残念なのか、そこまで思考回路を回せていなかった。

 

丁度良くC組は対戦相手であるA組の試合を、人混みに紛れながら観ることにした。

 

勿論クラス全員でやるには多いので男女各二チームずつ別れている。

 

対戦相手のA組Ⅱチームに沢田綱吉の姿は無かったので恐らく前の試合の時だろうとアスカは内心安堵した。

 

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