少女と廻る非日常   作:鈴本暁生

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閑話 僅かな可能性

アスカが直接的接触を回避した事に安堵している一方、その様子を見ていた人物が体育館のテラスにいた。

 

その人物......『最強の赤ん坊(アルコバレーノ)』リボーンは、死ぬ気弾に頼らなかったツナをサイレンサー付き狙撃銃で撃ち抜いた後、経過を観察する為気配を消していたのだ。

 

リボーンはツナをボンゴレ10代目に育て上げるために日本へ来日していた。

 

当然周囲の人間も将来役立てるか調査していた。

 

その中には並盛中学校全員.....つまりアスカの事も含まれていたのは勿論のこと。

 

そして今日、アスカに対して違和感を僅かに抱いた。

 

 

(あの日はツナと持田の決闘で大騒ぎだった。こいつのクラスも見に行ったが、こいつだけこなかったな....それに、ツナが勝ってもそんな驚かなかった。もう少し驚くか喜んでも良い筈だぞ)

 

 

あの時アスカが感じ取った視線の正体はリボーンだった。

 

体育館を去った後、一人で教室に残っていたアスカに、そして勝敗を聞いた後の鈍い反応に少し違和感を感じた。

 

数日ほど観察してたが、只単に感情が表に出にくいようにしか見えなかった。

 

事実、アスカの表情筋はストライキ然り仕事放棄をしている。

 

本人も承知済で、直すつもりは今後無いだろう。

 

話は逸れたが、リボーンは「問題無し」と判断した。

 

資料から見ても一般家庭に生まれた只の子供としか記載されていない。

 

そう判断し、見に来ていた獄寺の感想を聞いてから切り上げようと考えていた。

 

先程まで(・・・・)は。

 

 

『知り過ぎていると言うのも、難儀だ』

 

 

獄寺の後ろを通り過ぎて、階段を下りていたアスカが小さく呟いた台詞を、偶然にもリボーンは得意の読唇術で目撃した。

 

いや、この場合「目撃してしまった」と言った方が正しい。

 

ふと、無意識にアスカに視線を送った事で気付いたことだ。

 

知り過ぎている.........それはつまり、アスカが『こちら側』の人間であると取れる様な発言だった。

 

しかし、上記にも記載している通り一般家庭で育った只の一般人。

 

並盛で生まれ、育ち、日本から一度も出た経験が無い、只の子供。

 

イタリアでも別格の部類であるボンゴレの情報網を疑っている訳では無い。

 

リボーンでもこの情報は確かだと分かっている。

 

だが、あくまでも"情報"。

 

殺し屋(ヒットマン)のリボーンは、調べきれなかったことやわざと記載されていない時も想定出来ていた。

 

そして遂に今日、ある予想---------アスカがマフィア関係者だと言う可能性が浮かび上がった。

 

あくまで可能性に落ち着いて居るのは、アスカがマフィア関係者で且つツナを殺そうとするならば殺すつもりだが、動きどころかツナと接触すらしてこなかったと言う現状にある。

 

そして今日も接触は無かった。

 

アスカは必要以上自分のクラスから出ることも無く、淡々と日々を過ごしていた。

 

親しい関係の友人を自分のクラスにも他クラスにもいないと言うのもあるが、プロの目からすれば「ツナのクラス」を避けている様に見えなくもなかった。

 

となれば、アスカにツナを殺す意志はない。

 

つまりアスカはマフィア関係者では無い可能性が出てくる。

 

しかしそうなると、先程の台詞を納得させる要素が無くなってしまう。

 

此処まで考えたリボーンは「ある可能性」に行き着いた。

 

 

「.............まだ様子見ってとこだな」

 

 

確証はなかった。

 

それを裏付ける証拠を、事実となるものを、リボーンは手札に持っていない。

 

あの台詞はどこか勘に引っかかりを覚えさせたのだ。

 

故に、アスカを保留にすることを選んだ。

 

何が起こっても一般人並みの運動能力しか無いアスカは簡単に対処出来る相手だと言うのもあった。

 

しかし油断は出来ないのもまた事実。

 

何時かは本格的に探りを入れなければならない日もやってくるだろう。

 

 

「"あいつ"を呼ぶしかねーな..............分かったら分かったで、ツナを使えば良いしな。ツナも鍛えられるし、オレも探りも入れられる。一石二鳥だゾ♪」

 

 

 

..........とんでもなく物騒な台詞を残して、リボーンはツナの自宅へと帰還した。

 

 

 

 

 

  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

一度は疑いを掛けられたアスカだが、リボーンの優先順位が低かった為に危機をギリギリ回避した。

 

しかし彼女は知らなかった。

 

名前を覚えられた挙げ句、知らぬ所でフラグを建てられていたことに......。

 

彼女の平穏は着々と脅かされつつあったのだ......。

 

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