「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――、」
慎重に、幾分大胆に、導を置く。
俺を見つけてもらえるように。
来る者が迷うことのないように。
だから。
「――――だから、来いっ……!!」
サーヴァントの召喚をするとなると、無駄に力んでしまって仕方がない。
初めてのことだっていうのもあるが、これは、まぁ、前世からの癖みたいなものだ。
携帯端末を睨めつけながら、手に汗握っていた頃が懐かしい。
あ、いや、今は召喚のほうに集中しよう。
そして、
「――――ああ、もう。そんな強く喚ばなくても、ちゃんと聞こえてるってば」
「あんたは……」
額に垂れてきた汗を無意識に拭いながら、俺は彼女を出迎えたのだった。
*
「さて、では改めて。……んんっ。サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上しました。さ、まずは契約書でも書きましょうか、マスター」
アヴェンジャー。エクストラクラスだ。
しかも、俺は彼女のことを知っている。
真名、ジャンヌ・ダルク。が、おかしな話だとは思うが、彼の聖女とはまた別人だ。
オルタナティブ。ジャンヌ・ダルク・オルタと言われる彼女は、彼の聖女が生前心の根底に持っていた迷いや葛藤、怒り、嘆きを表面化させ、聖女そのものの
まぁ、詳しく、さらに厳密に言えば少し違うのだが、本質的には同じものだ。
けれど、いや、しかし、まさか彼女が来てくれるなんて……。
「思ってもみなかったなぁ……」
「なに? もう、早くしてよ。ここね。はい、ペン」
「え、ああ、おう」
久樂綴、っと。
「はい、アヴェンジャー」
「ん。……ねぇ、マスター」
「ん?」
「あなたの名前、これ、どうやって読むのよ……」
ややそっぽを向いて、それでも紅潮した表情は隠せないままに、ジャンヌ・オルタが尋ねてくる。
え、なにそれかわいい。
「そりゃ、くたらつづりって読むんだ。くたらが性で、つづりが名だな」
「クタラ、ツヅリ……。……そういえば、そんな言いにくい名前だったっけ。でも、いいわ、ツヅリ。この竜の魔女が、矛となり、剣となり、あなたに力を貸しましょう」
殊勝なことを言いながら、邪悪な笑みを浮かべるジャンヌ・オルタ。
「それは心強い。よろしくな、アヴェンジャー」
実際、助かる。
うちにはまだデミ・サーヴァントであるマシュしか戦力がいないのだ。
「っ、ふ、ふん、せいぜい期待しときなさいっ」
言い残し、召喚サークルの設置してある部屋から出ていくジャンヌ・オルタ。
カルデアは初めてだろうが、まぁ、部屋の外にはマシュが待機していただろうし、俺はこのまま残った聖晶石をぜんぶ使い果たすことにする。
せっかくロマンが用意してくれたものだし、それに俺はこういうのはさっさと使ってしまいたい派なのだ。
「よし――――、」
ジャンヌ・オルタが来てくれたおかげでかなり自信がついた。
コツも掴んだ。二回目からは、緊張も、ない。
「――――素に銀と鉄」
うん、頑張ろうっと。