「おい、マスター。ジャンクが足りんぞ、ジャンクが」
「おい騎士王、おい」
もっきゅもっきゅと両手のハンバーガーを口に運ぶ、黒き騎士王の姿が、そこにあった。
「ふっ、もはや王も騎士もない。であろう、我がマスターよ」
その台詞、今言うなよ……。
*
「で、だ。マスター」
「なんだよ」
「ロマンが言うのだ。カルデアの食糧事情は、私が思っているほど余裕があるわけではないと」
「…………」
持参したジャンクフードがすべて収まった腹を撫でつつ、黒き騎士王はさらにそこにコーラを流し込んでいく。
「けふっ」
これがまた、やめられんな。
そう呟いた彼女を尻目に、さてどうしたものかと考え込む。
ジャンクフード好きなのは知っていた。が、黒き騎士王――アルトリア・オルタは、予想を遥かに超える健啖家でもあった。
カルデアも自給自足ができないわけではない。外との交流が断絶している以上、リソースはその機能に頼るしかないわけだが。うん、正直、消費に対して供給が追いついていないらしい。
「ふむ。なぁ、アルトリア」
「なんだ、マスターよ」
「俺の魔力じゃ、不満か?」
問うと、アルトリアは若干眉を顰めた。
「不満なわけではないが……」
じゃあ、なんだろうか。
彼女の真意とは。
「その、だな……あなたの魔力は、その……ジャンクっぽさに、欠けるのだ……」
きゃっ、言っちゃった、みたいな感じではにかむアルトリア。
え、なに、今そういうシーンだったっけ……。
呆気に取られている俺を捨て置き、アルトリアは次なるジャンクを求めて歩き出すのだった。
*
「ジャンクっぽさって、なんだと思う……?」
とはいえ、このまま放置もできない。
すると、俺の魔力にアルトリアの言うジャンクっぽさを見出すことが一番の解決法なのだろうが……。
「君、わざわざそんなことを訊くために私のところに来たわけ?」
馬鹿ね、馬鹿なのね、と視線で穿ってくる白髪の少女――オルガマリー・アニムスフィア。
一応彼女がカルデアの所長で、俺の上司である。
「まぁ、そうだが」
だって、わからんし。
俺もそれなりには魔術に造詣を持つが、オルガはそれ以上だ。
なにせ、魔術師の集う時計塔を統べる十二人のロードのうちの一角である。
「……はぁ。いいわ。私も暇なわけじゃないけど、付き合ってあげる」
顎をしゃくって、本題を話せと促すオルガ。
といっても、本当にさっきの一言がこの話の一番大事なところなのだが……。
「要するに、アルトリア・オルタの悪食をどうにかしたいってことね」
「そうだな。それで、彼女に俺の魔力じゃ代わりにならないか、と打診したところ、」
「君の魔力にはジャンクっぽさが足りないから、嫌だ、と」
「ああ」
「そうね……」
流麗なラインの顎に指を添えて、なにやら思案顔のオルガ。
しばらくすると、彼女はこう言った。
「他を当たりなさい。たぶん魔力の質に関することを言っているんでしょうけど、悪いわね、私は門外漢よ」
もちろん、思わず見惚れてしまうような笑顔で。
*
あの後、ロマンにもマシュにも尋ねてみたが、成果など期待できようはずもなく、結局俺はアルトリアに割り振られた個室の前に来ていた。
埒が明かないと思ったので、俺が適当に考えた結果、雑に練った魔力を食わせてみようというなんとも安直な案に辿り着いたのだ。
「悪い、アルトリア、いるか?」
「……ん、マスターか。何用だ」
「ああ、ちょっと……なっ!」
さっそく実行。
魔力回路の回転をいつもより速くしたり、遅くしたり、雑に練り上げた魔力をアルトリアにぶち込む。
「ふ、んっ……これはっ……んっ、あっ、はぁぁんっ……ジャ、ジャンクっ……!」
瞳を潤ませ、頬を紅潮させながら崩れ落ちるオルトリア。
えぇ……なんか、ごめんやん……。
いや、なんかごめんやん。。
ちなみにオルガマリーさんは"なんやかんや"で生きています。
ここ大事です。テストに出ますよ。