前世持ちマスターが好き勝手生きるお話   作:ひょっとこ_

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二度寝したくなる爽やかな朝の中、衝動的に。


05/いつもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マシュ、ナイチンゲールと共にカルデアに帰還すると、そこは修羅場であった。

 

「あの二人も、ほとほと仲がいいものですね」

 

 言い残し、医務室のほうへ去っていくナイチンゲール。

 彼女はしばしばあの二人をそう形容することが多いのだが、さて、彼女の目にはあの二人の言い争いがどのように見えているのやら。非常に気になるところである。

 

「せ、先輩。その、私もドクターから呼び出されているので……が、頑張ってください!」

 

 それでは、と別れの挨拶を置いて、こちらもまた去っていってしまうマシュ。

 マシュの場合は、あの二人の仲裁に入ることの面倒くささがわかっているのか、ありがたい応援の言葉をかけてくれる。

 一人残された俺は、一つ息を吐いて、遠目に言い争いを続けているオルタコンビを見やるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツヅリは私がいいのよ。あなたはお呼びじゃないの、ドス黒騎士王さん」

 

「抜かせ。憎悪の化身が大層なものになったようだな。今度はその愛憎の炎でマスターを焼くのか、竜の魔女よ」

 

「ふんっ、その名で呼ばないで。今の私はサーヴァント、アヴェンジャー。ツヅリの使い魔(サーヴァント)よ」

 

「ほう。先の特異点で過去の己を焼いたことが、なにか心境の変化にでもつながったか?」

 

「ええ、そうね。今の私じゃあ、復讐者(アヴェンジャー)と名乗るのもおこがましいものに成り果てたわ」

 

「ならば、なおさらだ。今は私に譲っておけ、黒いの」

 

「嫌よ、黒いの。それに、ならば、じゃない。だからこそなの。私が、ツヅリと一緒にいるの」

 

「知らん。退け」

 

「やーよ」

 

「埒が明かんな。おい、マスター。選べ」

 

 げぇ、ばれてたか。

 オルタコンビ――ジャンヌとアルトリアが言い争っている通路から死角になっている場所で仲裁に入っていくタイミングを見計らっていたところ、どうも、二人には最初から気づかれていたらしい。

 

「当然、私だな。マスター」

 

「どっから来るのよ、その自信は……。ツヅリ、早く選んで」

 

 あ、やばい。

 は、挟まれた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直なところ、俺はジャンヌ・オルタに惚れていた。

 出会った当初から、一目惚れに程近い感情を抱きはしていたが、本格的にその気持ちに抑えが効かなくなったのは、ついこの間解消した第一特異点オルレアンでの出来事がきっかけである。

 簡単に言ってしまえば、オルレアンでジャンヌが過去の己に決着をつけただけ。

 たったそれだけのことで、俺は彼女に完全に心を持っていかれたのだ。

 

 俺は、元来、なんの変哲もない人間である。

 なんの因果か、この世界に、しかもそれなりの家柄の魔術師の家系に生まれ、こうしてカルデア四十八人目のマスターとして踏ん張っているものの、それだって、ただ死にたくないという執念と死んでほしくないっていう気持ちだけでなんとかつなぎ止めていただけのものだ。

 

 しかし、そんな俺を、彼女――ジャンヌ・オルタが引っ張ってくれた。

 あたかも、こうやるんだ、とでもいうふうに過去の己に引導を渡した。

 苦悩もあったろう。なにせ、過去の自分(・・)を否定するのだ。

 だからこそ、その姿がとても美しく見えた。

 

 だから、決めたのだ。

 俺はただ、彼女のためだけに冠位指定(グランドオーダー)を生き抜くことを。

 ……まぁ、そっから先は、ジャンヌ次第だけど。

 

「…………」

 

 さて、そろそろはっきりさせねばならない。

 ジャンヌか、アルトリアか。

 

「………………」

 

 ジャンヌ、可愛い。

 アルトリア、可愛い。

 よって、判決。

 

「……んー、どっちも。ってのはダメ……?」

 

 本音を隠さず言えば、今すぐにでもジャンヌの手を取ってどこか人目のない場所に駆け込みたいくらいだが、けれど、アルトリアが大事なこともまた事実なので、そうはできない。

 二人は、そんな俺の魂胆を見透かしたのか、二人してため息を吐くと、おもむろに俺の両隣をがっちりと固めた。

 

「ならば、両方、手放さぬように尽力することだな」

 

「そうね。下手すると、兎は一匹も残らなくなっちゃうもの」

 

「なんだ、それは。よもや、侘しいと死してしまうなどと言い出さぬだろうな、黒いの」

 

「ばっ、ばっかじゃないの!? そ、そんなことあるわけないし!」

 

「ほう、図星か」

 

「そんなわけないし! それに、寂しくて死んじゃうとかただの都市伝説だし!」

 

 また言い争いを始めた二人を横目に、ふと考える。

 なんだかんだで、結構相性はいいのかもなぁ、なんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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