女三人寄らば姦しい、とはよく言ったものだと思う。
なにせ、ほれ、ご覧の有様である。
「ちょっと! なんであんたいっつも私にババを回してくるのよ!」
「ふは、稚拙な仕掛けにほいほいと引っかかる自身を呪うことだな」
「むっかつくぅ……! いいわ、さぁ、フローレンス、早くあいつにこのババを回しなさい!」
「これは、そういうゲームでしたか……?」
断じて、違う。
と言いつつも、フローレンスと俺とで結託してジャンヌとアルトリアにババを回していくだけの作業と成り果てたこのババ抜きを見れば、もはや違うとも言い切れない。
「にしても、なんでこうなったのやら……」
時刻は真夜中を少し過ぎた辺り。
俺の自室にて、このエンドレスカードゲーム大会は催されていた。
*
「ツヅリ、これ、知ってるわよね」
不敵な笑みを浮かべ、彼女が取り出したるは、俺にとっては馴染み深い代物であった。
「ん、トランプか。それ、どうしたんだよ、ジャンヌ」
トランプ。
四種類のマーク各十三枚ずつの五十二枚とプラスアルファでジョーカーが一枚、場合によっては二枚加えられた、室内遊戯用のカード玩具である。
西洋カルタとか、英語圏じゃあプレイングカードなんてふうにも呼ばれてるらしいけど。
さて、急にそんなものを持ち出してきて、いったいなにをやるつもりなのか。
「これ、ロマンに貰ったものなんだけどね」
ほーん。ロマンが。
「それで、せっかくだしなにか遊ぼうと思ったんだけど、よく考えたら私、これでどんなゲームができるか知らないのよね。それで、」
「俺だったらなにかしら知ってるだろうから、と」
「さすが、話が早いわね」
期待の眼差しでこちらを見やるジャンヌに、俺は一も二もなく頷いた。
「いいぞ。いろいろ教えてやる。ま、とりあえず俺の部屋に移動するか」
「ま、卑猥」
「ひっ……!? お、お前なぁ……」
「ねっ、ツヅリ! 早くぅ」
たじろぐ俺に先駆けて行こうとするジャンヌを追いかける。
やれやれだ。
けれど、まぁ、
*
「で、それはそれとして」
「なんだ、マスター。早く手札を配るといい。なんなら私がやってやってもよいが」
「あ、いや、今やるけど」
「トランプ。懐かしい……。……いえ、私はこれで遊んだことがないのでした」
「ふぅん。ま、生前も今も、こういうので遊ぶようなタマじゃないのは見てればわかるけどね」
「それもそうですね。が、遊んだことはなくとも、ルールくらいは知っていますが」
「うっ……」
「フローレンス、大人気ない。……って、いや、そうではなく。なんで、フローレンスにアルトリアまでここにいるんだよ」
ジャンヌと戻った自室には、然も当然のように二人が寛いでいて、俺たちがトランプで遊ぶのだと知れるやいなや、すぐさま参加の意を示してきて、結果、このとおりである。
「よいではないか。許せ。私もトランプやりたい」
「説き伏せるのでなく、まさかの直球おねだり」
「その、私も……ルールは知っていますし……その、やってみたい、です……」
「なにそれかわいい」
俺、陥落。
いや、まぁ、もともと二人が加わるのも吝かじゃなかったんだけど。
横目に、ジャンヌを見やる。
目が合って、お互いなにを言うでもなく、笑い合った。
なんとなく、今日は彼女と二人きりがよかったかなぁなんて、下世話なことを考えていたものだから。
「ちょっと、ツヅリ。早く、配ってよね。いつまでカード切ってるのよ」
「あー、おう。……そうだな。シャッフル一つにも、いろいろ種類があるの、知ってるか?」
純粋にカードゲームを楽しみにしている様子のジャンヌ。
そんな彼女に、なんだか微妙な後ろめたさのようなものを覚えた俺は、咄嗟のパフォーマンスで、その場を取り繕うことにした。
リフルシャッフル、ファローシャッフル、最後にマシンガンシャッフル。
「ふむ、たかがカードとはいえ、奥が深いな」
「ええ、興味深いです」
「そうね。……けど。ねぇ、ツヅリぃ、はぁやぁくぅ」
「わかった、わかった」
と、シャッフルもいいが、それ以上に焦れすぎたらしい。
ジャンヌが腕を取って、急かしてくる。
さて、まずはなにをやるのがいいだろうか。
ババ抜き、大富豪、神経衰弱、七並べ。ネタはいっぱいあるのだ。
「今夜は、オールナイトだな」
何気ない俺の一言に、
「あら、元より寝かせるつもりもなかったけどね」
ジャンヌが、嬉々として舌なめずりをし、
「いいだろう。せいぜい、己の言葉には責任を持つことだな。マスターよ」
アルトリアは、不敵に笑い、
「お手柔らかにどうぞ」
最後にフローレンスが目礼を寄越した。
「はっはっは……。……はぁ」
どうも今のは、失言だったらしい。
書いたら、出る。
三人中誰が来ても喜ばしいし、もちろん三人以外でも嬉しいけど。
願わくば。願わくば、邪ンヌさんマジお願いします。