あの日の夢を見た。
それは数年前の事。
『ゲッコウガ! フルパワーだ!』
今まで一緒に旅を共にしてきた、あの男の子の事。
『いあいぎりだ!』
頼りになって、そしてとてもバトルの強い彼。
『ショータ受け止めろ! これが俺とゲッコウガの全てだ! ゲッコウガ! みずしゅりけん!』
あの時、あのバトルを見てから、もう自分の夢、そして目標は決まっていた。
そして、昨日は私の、十歳の誕生日……………!
「デデネ! デーネネ!」
「う、うーん……」
耳に鳴れた声が傍で聞こえてくる。この声を聞かなかった日はない。
「おはよ~……デデンネ」
「デネイ!」
ずっと前から一緒に過ごしてきたかけがえのない自分の、大切なパートナーだ。
デデンネ。それがこのポケモンの名前だった。
「デーネ! デネネ!」
「んー……今何時ー?」
セットしておいた筈の目覚まし時計を見る。まだ鳴っていないと言う事は七時前なのか。
時計の針を見た。長い方は八を。短い方は九の中頃を示していた。
「…………ええ!? 八時四十七分!?」
「デーネネ!」
目覚ましはセットしておいた筈なのに。何故鳴らなかった。
「わあああ遅刻遅刻だよー! デデンネ急いで支度してー!」
「デネネー!」
今日と言う今日に寝坊するとは情けない。
今日だけは特別な日だったのだ。何故なら今日は……。
下に降りると、兄のシトロンが困った顔で待っていた。
「あー! ユリーカ遅いじゃないですかー!」
「ご、ごめんお兄ちゃん、寝坊しちゃったー!」
「デデネー!」
シトロンは台所に駆けて行き、そしてたっぷりとジャムの塗られた食パンとオボンの実を持ってきた。
「取り敢えずこれだけでも食べて! デデンネも!」
「あ、ありがと!」
「デンネ!」
「おーユリーカ起きたかー!」
「オハヨウゴザイマス」
「マロー!」
靴を履いていると、後ろから人間の声とポケモンの声、そしてやけに機械的な声がしてきた。
後ろを見ると自分と兄シトロンの父であるリモーネ、兄が作った機械シトロイド、そして兄の手持ちであるハリマロンが出迎えていた。
「パ、パパ! シトロイドにハリマロンも!」
「今日はユリーカにとって大事な日だからな! お見送りに来たんだ」
「ワタクシモデス」
「マロマロー!」
大事な日。に限って寝坊してしまった自分が妬ましい。
「ごめん皆! 私遅刻しそうだからもう行くね!」
「デネデネ! デーネネ!」
「え!? ち、ちょっとユリーカ!?」
「マロー!?」
朝から慌ただしいなシトロンの顔に書いてある。仕方ない。全てはあのセットした筈の目覚ましが悪いのだ。
あれが正常に起こしておいてくれれば、こんな事にはならなかった。
「そ、それじゃあ行ってきます!」
「おい待てユリーカ!」
家の玄関を開けようとしたら父に遮られた。
「何パパー!?」
「これを持って行け!」
そう言われてユリーカは渡された物を見る。
リモーネが渡して来たのはベストウィッシュと描かれたお守りだった。中に何か丸い物が入っているのか少し膨らんでいる。
リモーネが言った。
「お守りさ。それがあればお前を守ってくれる」
紐が付いていたので首から通す。
「ありがとうパパ! それじゃあ皆、行ってきます!」
「デデンネー!」
今度こそ別れを告げ、家の玄関を開け、外に出た。
「頑張ってくださいねー!」
「体に気を付けろよー!」
「ゴタッシャデー」
「マロマロー! マロー!」
家族の声援を受けながらユリーカとデデンネは家を後にする。
この世界は十歳からポケモンを所持して旅をしていい事になっている。
昨日はユリーカの誕生日、十歳になった日だった。
数年前のあの日から、ユリーカは決めていた事があった。
自分も十歳になったら、デデンネと共にカロス地方を旅して、ジムバッヂを八個集め、そして……。
「ポケモンリーグに挑戦する!」
目標の。憧れの人、サトシのように、自分もリーグに挑戦するのだと。
そう心に誓っていた。
「よーし! 行くよデデンネ!」
「デネデネ!」
こうして、ユリーカとデデンネの旅は始まった。
最初は、プラターヌ博士の研究所だ。
「……ってユリーカとデデンネパンとオボンの実忘れてるー!? ああハリマロン食べちゃ駄目ですよー!」