ラブライブ!サンシャイン!!~shiny tales~ 作:ゐろり
今まで待機していたみなさん、お待たせしました!
それではどうぞ。
パキン、という何かが弾ける音で目が覚めた。天井は低く、ここがテントの中だと想像がつく。どうしてわたし、ここで寝てるんだろう?
考えているとくうぅ、とお腹が音をたてた。
「お腹空いたなぁ……」
何か食べ物はないか、と起き上がりテントから這い出た。外は真っ暗。ただかまどの火がパチパチと音を立てて燃えている。
「お、気がついた?」
そのかまどの前にある小さな椅子に腰掛けた男の子が一人。紫堂くんがわたしに気づいたのか声をかけてきた。
「あの、わたしどうして寝てたんだっけ?」
自分でも意味不明な質問をしていると思った。けど紫堂くんは笑顔で答えてくれた。
「覚えてない? おれと彼方達で魚の串焼きの準備してたら陽香達がシカを獲ってきてな。それを見た桜内さんは気を失っちゃったってわけ」
「あー、なんとなく思い出してきた……」
頭を抑え、彼の隣の椅子に座った。紫堂くんは焼かれてない魚の串を4本程取り出すと、かまどの近くの地面に突き刺した。
「まだ何も食べてないだろ? おれもまだだからさ、一緒に食べようぜ」
「もしかして、起きるまで待っててくれたの?」
「せっかくのキャンプなんだ、一人で食べるのは寂しいだろ?」
もう、ズルいよ紫堂くん。どこまでこの人はわたしをドキドキさせるんだろう。
「あ、さっきのシカをバラして焼いたローストがあるけど食べる?」
「それはいいです……」
ちょっと抜けてる所も、魅力だったりするんだけどね。
◇◇
魚が焼きあがるまでの間、おれと桜内さんは他愛無い話に花を咲かせていた。
「それでね、千歌ちゃんったら必死になってわたしのこと誘ってきてね――」
「まぁ、アイツらしいけどな。そういや陽香もけっこう強引なヤツでさ、流石は兄妹ってとこだな」
桜内さんは浦の星での千歌達の話、おれは彼方や陽香達とのやらかし話をしていた。
それにしても最近の桜内さん、よく笑うようになったな。最初は物静かな娘だなって思っていたけど千歌達と過ごす内に、何かが変わったのかもしれないな。それが何なのかは、おれにはわからないけど。
「――って紫堂くん! 聞いてるの?」
「あ、ごめん、ちょっと考え事してて……」
おっといけない。つい考え事をして彼女の話を聞いてなかったみたいだ。
「それにしてもおれ達、周囲の奴らに引っ張られてばっかだな」
「ふふ、そうかもね。わたしたち、似た者同士かもね」
そう言って微笑む桜内さん。その瞳には炎がゆらゆらと写っていて、目が離せなかった。当の本人も何故か黙っておれを見つめている。おれ達は沈黙を保ったまま、互いに惹かれ合い――
パキン、かまどの薪が大きく弾けた。その音にびっくりして身を離した。おれ、彼女になにしようとしたんだろう? ドキドキして、彼女の方を向けなかった。
「そ、そろそろ魚も食べごろだろうし、食べようか!」
「う、うん! そうだね! うわぁ、美味しそう……」
かまどから引き抜き、焼き魚を桜内さんに差し出した。それを彼女はありがと、と受け取った。
「よし、それじゃあ……」
『いただきまーす』
おれ達の声が夜空に重なった。味はさっきのことがあってか、よくわからなかった。
味がわからないなりにも、満腹中枢は満たされる訳で。あっという間におれ達は魚を食べきっていた。
見つめ合っていた時間を思い出してか、互いに沈黙を続けてしまう。
「お、美味しかったよ。ごちそうさまでした」
「そ、それは良かった。お粗末さまでした……」
そして再び訪れる沈黙。おれの阿呆、せっかく彼女から話題を切り出してくれたのに、なにそっけなく返して終わりにしてるんだ!
「それにしても、ここのお魚、本当に美味しいね。東京じゃあんまり川魚食べることないから……」
「あー、買うとなると高いもんな、川魚。川魚だけじゃなく、新鮮な魚が食べれるよな、ここって」
「うん。ここ最近じゃ毎日魚料理が出てるもん。魚以外のものも食べたいって思うくらいに――」
パキンと、薪が崩れたのでおれは鉄鋏でそれをいじりながら彼女との会話を楽しんだ。
「わたし、内浦に来てよかったなって思うんだ。千歌ちゃん達や学校の皆は東京からのわたしを受け入れてくれたし」
「うん、そう思ってくれて内浦の人間としては嬉しいかな」
「それに、紫堂くんとも出会えたし……」
「え……」
ドキンとして桜内さんを見つめた。炎の光源に照らされた彼女はどこか魅惑的で。言葉を失った。
「紫堂くんは?」
「お、おれ? おれは――」
彼女の質問にしどろもどろになりながらも言葉を出していった。
「お、おれも嬉しいさ。桜内さんと、会えて……」
あまりの恥ずかしさに視線を逸らしてしまった。おれ、恰好ワリィな。
桜内さんはにこりと微笑むと、自分の椅子をおれのに近づけて肩に自分の頭を乗っけた。とす、と肩に寄り添われる時にふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐった。
「っ!? 桜内さん?」
困惑するおれを余所に、彼女は上目遣いで微笑んだ。
「お腹いっぱいになったらちょっと眠くなっちゃった……。紫堂くん、ちょっと肩借りてもいいかな?」
それならテントに戻ればいいだろ、とおれは言えなかった。流石にそこまでおれは馬鹿じゃない。寄り添った彼女の身体から、女の子特有の柔らかさが伝わってくる。おれはそれを感じながら今出来る限りの精一杯の微笑みを向けた。
「あ、ああ。起きるまで、ここにいるよ……」
「うん、ありがと……」
桜内さんはそう言うと、寝息を立て始めた。規則正しい呼吸が隣から聞こえてくる。本当に寝ちゃったんだな。肘掛けの置いた腕に、彼女の手が添えられる。おれはドキドキしながらもその手の上にもう片方の手を重ねた。小さくてスベスベした、男のとは違う女の子の手。その感触を確かめながら、おれはかまどの火を見つめ続けた。
それから三本ほど薪を継ぎ足した頃だろうか。砂利を踏む音がおれたちに近づいてきた。
「おっす櫂。青春してんな?」
現れたのは、柊陽香だった。その傍らには千歌もいた。
「うっせぇよ。これのどこが青春だ」
「でも櫂ちゃん、満更でもない顔してるよ?」
「否定は、しないな」
やっぱり~、と笑う千歌。陽香の方はお赤飯炊かなきゃと言ってやがる。
「それじゃあ……、千歌も櫂ちゃんのもう片方の肩を借りちゃおうかな~?」
と、おれに近づこうとする千歌を陽香が制した。
「お兄ちゃんが許しません。千歌はオレの肩で眠りなさい」
「やーだー! 櫂ちゃんがいいのぉ~!」
千歌が頬を膨らませて陽香に抗議する。そんなにおれの隣がいいのか。ハッハッハ、憂い奴め。
「う、うん……?」
そんなおれ達の騒ぎが聞こえたのか、おれの肩で眠っていた桜内さんが眼を覚ました。
「あ、千歌ちゃん、柊くん。おかえり……」
まだ眠気が残っているのか、瞼が半分閉じられていて、とろんとした表情を見せる桜内さん。いつもの彼女とは違う表情が可愛らしかった。
「おっし、じゃあ役者も揃ったことだし、やりますか」
「やるって何を?」
おれの疑問に、陽香はニヤリと笑った。
「肝試しさ」
続いてはなこHIM。
怪談…?うっ頭が…