ゆかりさまとほのぼのしたいだけのじんせいでした 作:織葉 黎旺
天窓から差し込む光で目を覚ました。丁度窓の中心から見える太陽が眩しくて、それを掴むように両手を伸ばし、大きく伸びをした。関節がポキポキと子気味良い音を立てた。疲れが溜まっているのだろうか。
やっぱり天窓をつけたのは正解だったなあ、としみじみ思う。お天道様が目覚まし時計の役割を果たしてくれる。惰眠を貪りやすい、春という季節には丁度いい。この季節であの位置ってことは今は十二時過ぎくらいだろうか。夜明け前くらいに寝たはずだから、八時間くらいは寝たのだろうか。
「……んー」
起きるか、もうちょっと眠るか。このままだらだらと過ごすか。まだ腹は空かないし、今日も今日とて特に予定はない。
確か藍さんは今日も色々忙しかったはずだから、暇な私が手伝ってやるか――と立ち上がろうとしたのだが、腕をがっしりとホールドされた。
暖かく、柔らかい気持ちいい感触が腕全体を包み込んでいる。端的に言って幸せである。首を右に傾けると、幸せそうな寝顔をした彼女の顔があった。
「……起きてたんですか?」
「…………」
返答はない。狸寝入りだろうか。それとも無意識なのか。無意識だったらそれはそれで嬉しいが。見極めようとじっと彼女を凝視する。
「…………」
「…………」
「……可愛い」
「……っ」
自然と言葉が溢れていた。可愛い。美しい。見てるだけで幸せな気持ちになってくる。しかし、効果はあったようで微妙に呼吸が変わったのを私は聞き逃さなかった。
「起きてるなら答えてください」
「…………」
未だ返答はない。狸寝入りを貫くつもりか。寝惚けたフリ(?)をした彼女は、蛇のように滑らかに私に接近し、体を絡め巻き付いてくる。自然と心臓の鼓動が速くなるのを感じた。私だって男だ、流石にここまでくっつかれるとその……色々と、うん。この人のことだ、どうせ私をからかって反応を楽しんでるんだろう。しかし、長い付き合いである。対処法もしっかり知ってる。
「……紫さん」
「…………」
耳元で静かに、甘く囁く。ピクっ、と小さく体を震わせたのが分かった。
「起きてるなら答えてください。さもないと……」
「…………」
「はむっ」
「ひゃんっ!?」
可愛らしい声を上げて、紫さんは目を丸くして離れた。耳が弱いことは知ってるのだ。私で遊んだ罰である。下着姿で若干頬を赤らめてる姿が美しくて眼福眼福。
「やっぱり起きてたんですね、おはようございます」
「ええ、おはよう……」
大きく欠伸をしながら答える紫さん。
「珍しく早起きですね」
「たまたまね……そのせいで、まだ眠いのよ」
「ゆっくり寝ててくださいよ」
「貴方が起きようとするから、そのせいで目覚めたのよ」
再び体を近づけ、くっついてくる。布団の中がぬくぬくとあったかい。
「寝る時は、貴方と一緒がいいわ」
「あら、意外と寂しがり屋さんですね」
「そうかしらね?」
「でも、私も一緒の方が好きですね」
紫の腰に手を回し、優しく抱き締めた。三寒四温。暦の上では春だが、今日はなかなかに寒い。二人でいれば、きっと丁度いい。瞼が重くなってきた。徐々に意識もぼーっとしてくる。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
もうすこしだけ、ゆめをみていたいんだ。さめないゆめを。