ゆかりさまとほのぼのしたいだけのじんせいでした   作:織葉 黎旺

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ゆかりさまとこたつでぬくぬくするだけ

 

 今年の夏は例年よりも長く、その帳尻合わせか秋は例年よりも短かった。ということで冬である。寒がりな私としては、とても嫌な季節だ。今日も今日とて仕事を終わらせ、炬燵で暖をとろうと急いで帰ってきた。

 

 「ふう……」

 

 炬燵に両手両足を突っ込み、体ごと潜り込んで大きく伸びをした。なんと心地よいのだろう、冷えた体を優しく暖めてくれる炬燵。疲れも相まって、徐々に眠くなってきてしまうほどだ。ところで、炬燵で寝ると風邪をひくとよく言われているのは何故だろう。体をあっためて寝る、という意味合いで言えば布団を被って寝るのと変わらないと思うのだが。不思議である。

 

 「ふわああ……」

 

 小さく欠伸をする。そろそろ起き上がらないと危ない、多分このまま寝てしまう。そうわかってはいても、なかなか布団から這い出せない。うつらうつらとそのまま過ごし、寝落ちしかけたその時。足首を、冷たい何かが覆った。

 

 「ひゃうぅっ!?」

 「あら失礼」

 

 慌てて起き上がると、悪戯な微笑みを浮かべる彼女の姿があった。首元のモコモコとした赤いマフラーのおかげか、いつもと違う印象を受ける。

「ちなみに炬燵で寝ると風邪をひく、といわれているのは炬燵で寝た時に体の体温調節機能が狂って、免疫機能が下がるからだそうよ」

「博学ですねえ」

 

おばあちゃんの知恵袋みたい――と考えた瞬間、彼女の視線がとても刺さったので思考を止めた。

 

 「暖かくていいわ」

 「くすぐったいんで撫で回さないでください」

 

 彼女の冷たい手が私の足をスリスリと撫で回す。恐らく博麗神社に巫女でもからかいにいっていたのだろう、そこでも似たようなことをやっていたのだろうなと想像し、霊夢に少し同情した。

 

 「じゃあこうすればもっと早く暖まりますよ?」

 「え?」

 

 炬燵の奥に両手を突っ込み、足首に触れていた彼女の両手を素早く掴む。指を絡め、してやったり、とドヤ顔で彼女を見る。

 

 「……ふふ、そうね」

 

 徐々に手も、心も温かくなってきた。カチ、カチ、と古時計の針の音だけが響く部屋の中で、二人顔を見合わせて過ごす優しい時間。こんなときがいつまでも続けばいいのに、そう思う。

 ――柄にもなく、少ししんみりした気持ちになってしまった。そんな私の様子に気づいたのか、彼女は胡散臭い笑みを浮かべた。

 

 「そろそろ蓬莱の薬でも二人で飲む?」

 

 その問いに、笑顔で答える。

 

 「お断りです」

 「知ってたわ。じゃあ妖怪にでもなる?」

 「幻想郷のルールを幻想郷の管理者が破っちゃダメでしょう」

 「万物は流転する(パンタ・レイ)。そのままの形で永遠に残り続けるものなんてないのよ」

 「そう、妖怪だって人間だって永遠に残り続けるものではないんですよ」

 「幻想郷が駄目なら外でのんびり二人で暮らす?」

 「笑止」

 

 冗談なのか本気なのか、まあ恐らくというか確実に冗談だろうが、彼女のそんなお誘いは何度目だろうか。でも残念ながら、私は自分の生き様と死に場所と死に時は決めてしまっているのだ。流転する現世の中でも、これだけは不動である。

 

 「あ、蜜柑あるけどいる?」

 「いただきます」

 「あーん」

 「ん……美味しいですね、あー炬燵にはやっぱり蜜柑ですねえ。紫さんもどうぞ」

 「頂きます」

 「痛っ!?ちょ、指ごと食べてますからそれ!噛まないでくださいよっ!いや、舐めろって意味じゃなくて!!」

 

 夜に近づき、寒さはどんどん増してくる。そろそろ彼女の冬眠の時期も近づいてきているな、なんて思って、少し寂しい気持ちを誤魔化すように、私は笑った。

 

 





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