ゆかりさまとほのぼのしたいだけのじんせいでした   作:織葉 黎旺

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じゅうなんせいはたいせつですよ、ゆかりさま

 

 「んー……!」

 長いこと横になってたせいで体が大分なまっている。大きく伸びをして、軽くストレッチして、全身をほぐしていく。

 

 「むう、爪先まで届かなあだだだだだだ!!?」

 「ちゃんと届いたじゃない、よかったわね」

 背中を思いっきり紫さんに押された。唐突に大きく伸びた腕に、アキレス腱が悲鳴を上げている。これ下手すると腱が切れちゃうんじゃないだろうか。

 

 「はい、股を開いて」

 「えー……絶対また強く押すじゃないですか」

 「押さない押さない、今度は優しく押しましょう」

 「それなら良いんですがね……」

 股を開き、両手を左足の爪先へ伸ばす。これは押されるまでもなく楽々届いた。今度は右足。多少苦労したが、辛うじて届く。そして鬼門の真ん中……ッ!?

 

 「いだだだだだだだだ!」

 「北斗百裂拳みたい」

 「いや強く押しすぎですから!!」

 クスクス、と少し小馬鹿にするように笑われた。全くこの人は……

 

 「はい、もう大分ほぐれたでしょう」

 「…そうですね、ありがとうございます」

 何か仕返しをしたいな、と考えていたところ名案が浮かぶ。

 

 「紫さん、ちょっと股を開いてください」

 「……真っ昼間っから何をされるのかしら?」

 「や、変な意味じゃなくて普通に!!普通にストレッチを!!」

 「ふふふ、はーい」

 仕返しをするはずが墓穴を掘って遊ばれてしまった。くう、不覚……

 大人しく股を開く紫さん(というと語弊が生まれそうだが全くもって疚しいことは無い)は、まず左足に両手を伸ばす。軽々達成。右足に伸ばす。楽々完成。鬼門の真ん中。余裕で胸の辺りまで畳にぺたりとついた。

 

 「むう、やっぱり少し固くなってるかもしれないわね」

 「いや何処が!?」

 そういえばこの人はなかなかに体が柔らかいのだった。猫のようにしなやかに体勢を戻すと、のそのそとこちらに這いより正座する私の膝に頭を乗せた。

 

 「あー、軽く動いたら疲れたわ」

 「そういえば最近は全く動いてる様子を見ませんし、運動不足じゃないですか紫さん?」

 「そんなことはないわよ、そこそこ歩いてるし」

 「どのくらい?」

 「……鳥居から賽銭箱くらい?」

 「目と鼻の先じゃないですか」

 「いえ、博麗神社の鳥居から守矢神社の賽銭箱くらいよ」

 「なかなかの長距離!?」

 どう考えてもこの人はそんなに歩いていないと思うのだが。私も人に言えるほど、よく歩くわけじゃないが。インドア派だし。

 

 「そういえば、もう暖かくなってすっかり春ですねえ」

 「暖かくなったから私は起きてきたのよ」

 「そうでしたそうでした、おはようございます」

 「一冬会えてなかったのに軽いわね」

 「まあ、隣で抱き枕させられてましたし」

 強いて言うなら、そのせいで私の体はなまっているのだと思うのだが。寝てばかりいるのも体にはよくないと学べた。

 

 「そろそろ桜も満開の頃でしょうし、お花見でもしましょうか」

 「いいわね、ついでに博麗神社で宴会でも開いてもらいましょう」

 「お酒飲みたいだけですよねそれ?」

 でも確かにお花見というのは、世間体を気にせず合法的に昼間からお酒を窘めるという素敵なイベントである。無論桜も楽しむが、桜が霞む程の美人が隣にいるのも考えものだな、と苦笑した。

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