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ある日、俺は異世界へと転生した。
順をおって説明しよう。まず、俺は日本の東北の田舎でのほほんと暮らす、腐る程いる普通の高校生の一人だった。
長所といえばIQが少し高いことと、ドラえもんについてちょっと詳しいことくらい。オタクではないのでそこまで詳しいわけでもないのだが、スネ夫の住所を言えるくらいには詳しいと自負している。
そんな俺は朝、登校時に電車に引かれてあっけなく死んだ。歩きスマホで前方不注意の女子高生を助けようとしてみたが、彼女がホームに上がったところで電車が来てそのままお陀仏だ。
ははは、慣れないことはするもんじゃないね。いや、こんなことに慣れてる人間なんてレスキュー隊かコナン君くらいしかいないけどさ。
そしてそこからがまったくわけがわからない。
気づくと知らない天井が目の前にあり、「あ、気がつきましたか?」とスープを持った黒髪ストレートの美人さんに話しかけられていた。
美人さん、もといメーネさんの話によると俺は雨の日に彼女の孤児院の前にずぶ濡れで倒れていたらしい。もしかしてここがあの世かなと思ったのだが、頭の上に輪っかもないし、足だってちゃんとある。
軽くパニックになっている間に、あれよあれよと俺はこの孤児院でお世話になることになった。とりあえずメーネさんにお礼を言おうと今まで寝ていた布団から立ち上がったがそこで違和感に気づいた。
………まぁ、前世でもあまり背は高いほうではなかったが明らかに目線が低い。
「あの……すみません。鏡…とかありますか?」
メーネさんにそう聞くと彼女は笑顔で洗面所まで案内してくれた。そこで俺は目を見開いた。
肌は病気を疑うレベルで白く、髪はまるで空のように青い。それでいて目は黒色のままで、首には黄色い鈴が首の右側についた赤いチョーカーをしている。
…………なんというか、まんまドラえもんを擬人化したような存在がそこには映し出されていた。そしてお尻に違和感を感じて確認すればそこにあったのは赤くて丸いしっぽ。もう確定的である。
思った通り背丈もだいぶ縮んでいて、中学生二年生くらいになっていた。そこは不幸中の幸いというやつだ。これで身長が129.3センチだったら笑えない。
まあ、そんなこんなで俺はこの孤児院で生活することになった。この孤児院も決して立派なものではなく、小さな村にあるちっぽけなものだ。建てつけも悪いし、雨漏りもする。
職員はメーネさんだけだった。彼女はボランティアで身寄りのない子ども達を世話しているらしい。絵に描いたようなお人好しである。いつか彼女にシンデレラ的な展開が訪れることを願う。
孤児院の子どもは俺を除いても十数名。よくこれだけのガキんちょを世話しようと思ったなと感心してしまう。
いや、お世話になってる身で何上から言ってんだ。
朝食の後はみんなで魔法のお勉強だ。いい忘れたがこの世界はファンタジーだ。魔法、怪物、獣人、エルフ。そんな存在が当たり前であり、時に勇者すら現れるらしい。会ってみたいとは思わんが。
ちなみにこの孤児院にも一人、獣人がいる。白狼族のリルだ。白く、長い髪と頭部に狼らしい獣耳を持つ可愛らしい女の子だ。だいたい七歳、八歳くらい。
獣人は身体能力が自慢の一族で、魔法は不得手らしい。リルも例外ではなく、みんながサクサク進む中彼女だけが遅れていた。
最もそれは俺も同じことだ。つい最近まで科学の世界で生きてた人間が魔法なんぞそう簡単に使えるわけがない。前に友達から借りた転生系の小説では、大抵主人公はチートだったが現実は厳しかった。
そして数日間生活してみて気づいたことがある。一回もトイレへ行っていない。
そこである仮説がたった。もしかして俺はロボットなのではないか?体がドラえもんに近くなったのだからその仮説も充分あり得る。ドラえもんの体なら胃袋は「なんでも分解胃袋」というエネルギー吸収率100%の胃袋であり、トイレに行く必要がない。しっぽを引っ張ってみようと思ったがすぐにやめた。もし本当にスイッチが切れたらメーネさん達に心配をかけるし、そのまま埋葬とかされたらたまったものではない。
そこで俺はメーネさんの包丁を借りて手首を少し切ってみた。
血は………出なかった。
包丁をかけつけたメーネさんに取り上げられる中、俺は衝撃の事実の呆然とした。
俺………子守り用ロボットになってる。