IDX《インフィニット・ダブルクロス》   作:茨木次郎

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 ろくにストックも貯まっていないのに我慢できずに出しちゃいました。

 あらすじで感想を募集しましたがメンタルが豆腐なので批判はできればマイルドな表現でお願いします。



開始 から 一人目

 勘弁してくれ。

 

 教室中の視線が鋭い槍となり、十重二十重(とえはたえ)と背中に突き刺さる。

 まあ、視線の主たちの気持ちも分からんでもない。女子校の教室に異物が()()()紛れ混んでいるのだから。中学時代の友人その1によるとこの学園に入学するのは大抵が名門女子中学出身の純粋培養のお嬢様ばかり。慣れない同世代の男に警戒するのもわかる。するなと言う方がおかしい。

 ……だからと言ってこの集中砲火は酷くないだろうか? 隣の席に座る()()()()は身動き一つ出来ず、真っ青な顔には脂汗がいくつも浮かんでいるのに。

 前述の友人その1は血涙流しながら羨ましがっていたが、代われるモンなら今すぐ代わってやりたい。ごく普通の高校生活をたとえ()()()()()()()送れるはずだったのにどうしてこうなった?

 授業開始までに頭に叩き込んでおくようにと僅か三日前に渡された電話帳並みに分厚い参考書に目を通しつつ、ちらりと横目で異物1号を盗み見る。軟派なイケメン(外見のみ)な中学時代の友人その2とは違う正統派イケメンがガマの油のごとき汗を流している。そう、全ての元凶はコイツだった。

 そもそも此処は世界中から生徒を迎え入れる国立の教育機関、IS学園。マルチフォームスーツ『インフィニットストラトス(通称IS)』の操縦者育成を目的に設立された全寮制の学校で、ISは『女性でなければ起動すら出来ない』という特性を持つ以上、男子禁制の秘密の花園(友人その1談)なのだ。

 そんなIS学園に男である俺と異物1号が紛れ混んでいる理由は非常に単純。

 起動させちまったからだ。女にしか起動出来ないはずのISを、異物1号が。

 現行兵器を嘲笑うような性能を誇り、前述の特性を持つISは世界をあっという間に女尊男卑社会へと変貌をさせた。そんなISを男が起動した。そのニュースは光の如き速さで世界中を駆け巡った。

 そして、そんな『前例』が出来てしまった以上、他にもいるんじゃね? 的なノリで1号と同世代男子を対象に一部の国で適合試験が行われ、その結果、俺も起動させてしまった。因みに俺の登場で男性IS適合者発掘に乗り気でなかった国も一斉に試験を開始したが、今のところ3号が見付かったという話は聞いていない。

 そして、そんな俺たち二人は安全の確保と貴重なデータ収集を目的としてIS学園に強制入学となり今に至る訳だ。

 

 あぁ……面倒くせぇ……。

 

 ()()()()のお陰で知識の詰め込みに関しては全く問題無いし、幸か不幸かIS学園には()()()()もいる。……正直あんま関わりたくない知り合いなんだが……。

 問題は()()()()()()()()()()()()()なんて立場だ。絶対厄介事しか引き寄せないだろ、これ?

 

「──皆さん入学おめでとうございます」

 

 参考書のページを捲りつつ、これから先に光を見出だせそうにない現状にこっそり嘆息すると同時に教師が入室してきた。

 参考書を閉じ、問題にならない程度に観察するが教師、なんだろうか? 妙に雰囲気が若い。というより()()。教師のコスプレした生徒だと言われてしまえばあっさり納得してしまいそうだ。……まあそれ以上にたわわに実った胸部装甲に目が行きがちだが。……友人その1なら奇声を上げて喜びそうだ。

「私はこのクラスの副担任を務める山田真耶です。皆さんこれから一年間よろしくお願いしますね」

 にっこりと微笑む山田先生的には此処で声を揃えた返事が返ってくるものと期待したのだろうが、返ってくるのは沈黙のみ。

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと出席番号順で」

 山田先生がありえないまでの沈黙に押されたのか若干噛みながらお約束の指示を出すと漸く妙な緊張感は和らいだ。尤もすぐまた緊張感に包まれることになるのだが。

 

「では次、斑鳩くん。お願いします」

 そう、すぐに俺の番が回ってくるから。返事をして立ち上がり、クラスメイトに尻見せて自己紹介するのも如何なものかと考え、振り返る。

 当然ながら、其処にいるのは女子ばかり。割合的には他国からの入学生も積極的に受け入れているIS学園なのに半数以上が日本人なのはどうしてなんだろうか。……どうでも良いか別に。

 さて挨拶はどうするか。……適当で良いや、面倒くせぇし。

斑鳩(いかるが)八雲(やくも)です。男性IS適合試験で陽性判定を受けたため本校に入学の運びとなりました。事前準備を終えているであろう皆さんとは違い、見切り発車も(はなは)だしいですが、やるからには全力を尽すつもりですのでよろしくお願いします」

 若干気だるげな雰囲気をこぼしながら軽く頭を下げ、これで終わりと言わんばかりに着席。下手なことは言ってないし、こんなモンで良いだろ。ぶっちゃけ何喋れば良いか判らんし。

「あ。えと、じゃあ次は──」

 すぐに我にかえった山田先生は次の生徒に指示を飛ばした。

 

 そして──

 

「では次は織斑くん」

 数人跨いでいよいよ1号の順番が回ってきたのだが──。

 

「……」

 

 当の本人は顔を青ざめたまま山田先生の呼び掛けを無視した。気付いていないのか? 山田先生も首を傾げつつ何度か1号に声を掛けるが、奴は何かを考え込んでいるのか全く反応を示さない。

「織斑くん!」

「はいっ!?」

 

 漸く呼ばれていることに気付いたのか慌てて返事をし、自分の順番が回って来たことを知り、立ち上がる1号。そんな奴さんに周囲から僅かに失笑がこぼれた。

 

 

「織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

 これが山田先生との変なやり取りの後に放たれた1号──織斑一夏の挨拶だった。シンプル、ただそれだけ。男同士の自己紹介としては悪くない。そう()()()()()()()()

「え? ええっ!?」

 『もっと情報寄越さんかい!』と期待の視線の集中砲火が己を貫き、狼狽える織斑一夏。さっさと切り上げて席に着いてしまえば良いのに。

 ん? 深呼吸? 何か続ける気か? 周りもそれに気付き、息をのんで何を言い出すのかと緊張して──

 

 

「以上です!!」

 

 

 盛大にズッコケた。

 吉本新喜劇並のキレのあるズッコケ。中々ノリの良いクラスである。とは言っても自分の予想とは違う反応にダメだったのかと辺りをうかがう織斑一夏の頭に、手加減抜きの黒い出席簿の一撃が振り下ろされた。……どうでも良い補足だが、日本では当然の如く体罰は禁止されている。なのだが『女教師が男子生徒に対しての場合』ならばある程度は黙認される。逆は当然厳禁。流石女尊男卑社会、死んじまえ。

 

 話を戻そう(閑話休題)

 

 渾身のギャグがスベリ狼狽える織斑一夏の頭に出席簿を振り下ろしたのは見知った顔だった。実際に顔を会わせるのは二度目だが、今現在この世界で彼女を知らない人間の方が少ないだろう。

 

 織斑(おりむら)千冬(ちふゆ)

 

 第一回IS競技世界大会(モンドグロッソ)を圧倒的な力で勝ち進み、見事総合優勝を勝ち取った世界最強(ブリュンヒルデ)。第二回大会ではアクシデントに見舞われ二連覇を果たすことが叶わず、そのまま現役を引退。しかしその実力、人気から本来なら同大会総合優勝者に与えられる称号《ブリュンヒルデ》は未だに彼女の二つ名として広く定着している。

 

「げぇっ、関羽!?」

「誰が三國志の英雄だ、馬鹿者」

 

 そんな世界最強は意味のわからんボケをかました織斑一夏の頭にもう一度出席簿を振り下ろした。……何で関羽?

 

「織斑先生、会議は終わられたんですか?」

「ああ山田君、クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

 先程、織斑一夏に向けられたものとは打って変わって険の取れた穏やかな口調に山田先生は頬を染めながら謙遜する。

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことは良く聴き、良く理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。逆らうのは自由だが私の言うことは聞け。わかったな?」

 

 自身の容姿、雰囲気にピタリと噛み合う暴力宣言。織斑一夏は若干顔を青ざめたが、他のクラスメイトたちは違った。

 

「きゃあああああっ!! 千冬様!! 本物の千冬様よ!!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!!」

「あの千冬様に御指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様のためなら死ねます!!」

 

 耳を塞いでいてもうるせえ……。女子校ってのは皆こうなのか? 行ったことなんて無いから知らんけど。

「毎年よくもまあこれだけ馬鹿者が集まるものだ。私のクラスに集中させてるのか?」

 黄色い叫びの先にいる織斑先生は本気で鬱陶しそうな顔をしている。だがそんな織斑先生を見てもクラスメイト(猛者)たちは揺るがない。

「きゃあああああっ! お姉様! もっと叱って!! 罵って!!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらない様に躾をして〜!!」

 ……どうやらこのクラスには変態がいるらしい。

 マジで帰りたい。友人その1にこれを見せたらどんな反応するだろう。

「──それで? 挨拶も碌に出来んのか、お前は?」

 猛者たちを一睨みで黙らせると織斑先生は未だポカンとしている織斑一夏を睨む。

「いや、千冬姉、俺は──」

 出席簿は三度振るわれる。さっきから思ってたんだが良い音させるなホント……。

「学園では織斑先生と呼べ」

「はい織斑先生……」

 あ、やっぱりこの二人姉弟(きょうだい)か。どおりで先程から織斑一夏に対する先生の態度に容赦が見られない訳だ。まあ、そんなやり取りをしてればバレるのは自明の理という奴で──

 

「え? 織斑くんってあの千冬様の弟……?」

「それじゃあ男なのにISを使えるっていうのも、それが関係して……?」

「えぇ? でも……」

 

 そんな呟きと共に視線が俺に集中する。ま、確かに俺と織斑姉弟の間に血縁なんて無い。織斑先生とは今日で二度目、織斑一夏に至っては今日初めて顔をあわせた。そんな俺がISを起動出来た理由? そんなもん開発者にでも聞いてくれ。

 そんなクラスのざわめきを静めたのは織斑先生が教卓を出席簿で叩く音だった。

「諸君、静かに。SHRも残り少ない、自己紹介を続けるように。時間も少ないので簡潔にな。織斑、お前はさっさと席に着け邪魔だ」

 織斑先生の指示に織斑一夏はあわてて席に戻り、出席番号順で奴の次の女子が立ち上がった。

 

 

 ……全員の自己紹介が終わるまでまだ少し時間が掛かるだろうし、今のうちに『きちんと』自己紹介しておこうか。

 

 俺の名は斑鳩八雲。この世界でバタフライエフェクトを起こす為に、よく分からない存在から『TRPGダブルクロスの能力を所持』という特典を貰って転生した転生者、それが俺だ。

 無事に転生出来た時点で依頼主との契約は完了したため、折角得られた第二の人生、あまり目立たず楽しく過ごそうと思っていたのに、どうしてこうなったのか。

 クラスメイトの自己紹介を聞き流しながらこっそりとため息を吐いた。

 

 

 

 




 ダブルクロスの設定については簡単にですが以降の前書き、または後書きで説明させていただきます。

 ちなみにウチのオリ主は以後出番の無い依頼主によって記憶が削除されているため、原作知識はありません。
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