戦闘描写、機体の設定などで大いに手間取ってしまいました。
次からは更新速度が上がるようにしたいとおもいます。
「待たせたな、オルコット」
「──斑鳩さん、そのISは一体……?」
機体確認を済ませ、ライフルを油断なく構えたものの、驚愕を隠せないオルコットに声をかける。それはそうだろう、
──ハッキングし、起動させてしまったのはコア内部に秘匿されていた《
こんな開発者要らずな代物が存在しておきながら何故秘匿されていたのか、それはあまりにもギャンブル性が高すぎるからだ。コアが操縦者を解析し機体を構築するため、どんな機体が生まれるかわからない。相性は良いけど欠陥機、相性は良いけど従来機よりも遥かに劣る劣等機なんて結果になりやすいらしい。むしろ部の悪い──悪すぎる賭けとなる。そのためにこのシステムを土台とし、
さて、こんな丁半博打よりも遥かに質の悪いシステムを勢いまかせに起動し、機体を構築させてしまった俺の博打は──結果から言えば勝ってしまった。いや、俺としては外見変わらず中身を
──まあ、それはあの主義者教師のお陰でもあったんだが。
コアがあの女の小細工で俺の頭に過干渉してきたハイパーセンサーを利用し俺の脳内ネットワークに干渉、そこに溜め込んでいた情報、ノイマンの思考構築能力すらも利用し機体を組み上げたのだ。
ラファール本来の装甲を徹底的に削ぎ落とし、四肢のユニットも一部の例外を除いて、小型スリム化したために他のISよりも人のシルエットに近づき、左肘と両膝と踵に格闘戦用に小型ブレードが増設されている。
装甲の縮小化や四肢の小型化によって余剰となったパーツをも流用して大型化したウイングスラスターはワーディングで生み出すレネゲイド物質を取り込み推進材として利用する機構を新設、高性能化に成功した。
そして一番目につくのが右腕部ユニット、他の四肢ユニットとは逆に大型化し、あらゆるものを引き裂かんとする異形の大爪を備えていた。掌中央には水晶体が埋め込まれている。コイツは俺のエフェクトを増幅する機構が組み込まれており、第三世代兵装を模した攻撃も可能とする多目的武装ユニットとして進化を果たした。
ラファールの面影がほとんど無くなったその姿は正に異形。機体色まで黒に染まり、異形の鉤爪を備えた悪魔のようになってしまった。
「──すまないが、答えられない。それに今は質疑応答の時間じゃないぞ?」
オルコットの疑問には答えず、多目的武装ユニットをクローモードで起動。五本の鉤爪が電光を纏い、超振動を起こす。多目的武装ユニットのエフェクト増幅機構は正常に働いているらしい。
「──さて、オルコット。試合を続けないか? 俺のシールドエネルギーはあとわずか。コイツでどこまで食い下がれるか、試させてもらう」
「……良いでしょう。貴方の最後の足掻き、存分に楽しませていただきますわ!!」
充填を完了したオルコットは再びビットを展開した。ライフルは勿論のこと、ビットの一発でも被弾すれば即終了。しかしやるしかない。ここまでやってあっさり負けましたじゃ、やらかした分マズイ気がするし。それに
俺はウイングスラスターを全開にし、オルコット目掛けて突貫した。
☆★☆
四方八方から絶え間無く降りそそぐ光弾の雨をことごとく回避し続ける。
──軽い。非常に軽い。先程までISという名の重りを身に纏っていた分、余計に軽く感じる。
この圧倒的な爽快感と万能感、これこそがISを操縦する者に与えられる感覚か。ISを絶対視する奴が出てくるのも仕方がないわ、これ。
「な、何で当たりませんの!?」
先程までとは打って変わり一切の被弾を許さない俺の機動にオルコットは驚愕の声をあげる。その動揺はビットの制御にも乱れとして表れ、結果として回避の容易さへと繋がった。
というか、先程までの被フルボッコタイムの時も感じたことだがオルコットの射撃は『ヌルイ』。全てのビット、ライフルを命中させようとするから射線を読みやすい。はじめはあえてそうしてこちらの油断を誘っているのかと思ったが、違うらしい。
ビットの数機、もしくは自身のライフルを命中に拘らずにこちらの機動を制限するように使用すればとうの昔に決着が着いていた。こちらは一発でも喰らったら負けなんだし。
あ、ルートが開いた。チャンス!
「──よっ!!」
スラスターを全開にし、オルコットの懐に飛び込む。訓練機ver.ラファールのそれとは雲泥の差ともいえる加速。わずかばかりだが急激なGに身体の中が軽く悲鳴をあげるが構わず突貫。
ブラックドッグのエフェクト、《バリアクラッカー》を発動させると異形の鉤爪が紫電に包まれた。
「よいしょっ!!」
「きゃあぁっ!?」
紫電を纏った鉤爪をそのまま振るい、引き裂く。手応えあり。本来ならそのまま追撃、一気にケリを着けるんだが、
「そんなたった一撃で!?」
オルコットの悲鳴に想定通りにいったことを確信する。エフェクトにより、シールドバリアーを破壊し、絶対防御を引き出せたのだ。
絶対防御は大抵の攻撃から操縦者を護るが、その発動には大量の
「──こ、このおっ!!」
お返しと言わんばかりにオルコットのライフルが火を噴くが、スナイパーライフルという特性上連射速度は低く、回避は容易だった。というかオルコットはライフルとビットの同時運用ができないらしい。第三世代兵装であるビット制御に意識をとられるのだろう。
「──行きなさい!」
オルコットがまたビットを切り離し、多角攻撃を繰り出そうとするが甘い。鉤爪を備えた掌をオルコットに向けてエフェクトを発動。掌中央部にある結晶体が微細な振動を発生、腕部ユニット全体を利用して増幅、衝撃波として放出する。目には見えない広域衝撃波がオルコットと切り離されたビットを襲う。
「……バリア破壊攻撃に広域衝撃波? どこまで無茶苦茶なんですの、貴方は!?」
出力を抑えていたためか、破壊を免れたビットを操り多角攻撃を繰り返すオルコットが金切り声をあげるがそれを無視し、ビットの攻撃を回避しつつ、考える。どうしよう、このままじゃ多分
ビットの光弾を回避しつつ、先日正当な方法で調べたオルコットのISの装備を確認。まず、ブルーティアーズの代名詞であり、そのものである
──よし、作戦は決まった。どうかバレませんように。
指揮者が指揮棒を振るうようにオルコットが腕を振るえば中空を漂うビットがこちらの死角に入り込もうと機敏に動く。しかしそれはもう通じない。きっちりと回避し、そのままエフェクトを発動しつつ、一気に懐に踏み込む!
「貰ったッ!!」
──と同時にeエフェクトを重複発動。オルコットの声と口調を真似て彼女の耳にだけに指示を飛ばす、まるでオルコット自身の心の声のように。
『今ですわ! 早くインターセプターを!!』
オルコットの声に偽装した俺の指示に従うようにライフルから手を離し──
「インターセプター!」
初心者用コールを用いてショートブレードを展開し身構えた。よし! そのまま爪撃を
「──何!? ヤベ──」
「貰いましたわ!!」
端から見ればショートブレードを展開したオルコットに必殺の一撃を見事に受け止められた形となった俺は驚愕の表情を浮かべ、一瞬だけ機体を止め、隙を作る。当然そんな隙を代表候補生が見逃すはずもなく、背後からのビットの一斉射が俺の機体を貫いた。って一斉射じゃなくても良いだろ別に!?
そんな俺の内心のツッコミとともに試合終了を報せるブザーが鳴り響いた。
「……負けちまったか」
「斑鳩さん……」
フィールドから絶対防御用のエネルギーが供給されているため、意識を失うこともなかった俺は悔しげにため息を吐き、すぐにそれを顔から消した。
「流石代表候補生だな。完敗だ」
「……そちらこそ、
試合終了直後の興奮収まらぬ状況だからか、最後の小細工にはまだ気がいっていないらしいオルコットが微笑む。しかし、それは固い。どうやら前半の体たらくはこちらが意図的に手を抜いていたと思われているらしい。……むしろ手を抜いていたのは後半の方なんだけどな。さて、それについてはどう説明するか……。
『──オルコット、斑鳩。試合はまだ残っているんだ、さっさとピットに戻れ。それとオルコットは機体のチェックと小休止をとるように。五分後には織斑との試合だぞ』
「は、はい!」
オルコットにバレないよう悩む俺と彼女の機体にモニタールームにいる織斑先生の声で通信が送られてくる。その声は妙に冷静だったが、助かったことに変わりはない。
「──じゃあ、次の試合も頑張って。まあ、油断さえしなけりゃオルコットの勝ちは揺るがないだろうけどな」
「……ええ、後で詳しく聞かせてもらいますから。その機体のことも含めて」
ニッコリと(目を除いて)微笑み、オルコットはピットへと戻っていった。さて、俺も戻るとするかね。
『──斑鳩、お前には訊かなくてはならないことが山ほどある。逃がすつもりはないから覚悟しておくように』
俺への直通回線で送られてきた織斑先生の絶対零度の声に胆が冷える。ピットに戻る最中、カッとなって行動するのは今後はなるべく控えようと誓った俺なのだった。
ダブルクロス設定
☆ブラックドッグ
13のカテゴリーで構成されるシンドロームの内の一つ。
全ての生物が持つとされる生体電流を意思の力によって増幅、打ち出せることができるようになるシンドローム。
また、電流を調節することによって機械を外部からコントロールすることもできる。これによって自身の肉体を機械化することも可能。
名称の由来はイギリスの伝説にある、雷とともに現れる犬、