IDX《インフィニット・ダブルクロス》   作:茨木次郎

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本当ならもうちょっと続けるつもりでしたが、妙に纏まったように思えたので投稿します。

今回の皆さんの評価がちょっと怖い。
そして、チョロインさんを八雲のハーレムに入れるつもりは無かったのに、勢いに任せて書いたらフラグがたったっぽい。

どうしてこうなった?


暴露 から 叱責

 昼飯時の学生食堂。

 本来なら即座に《織斑先生との地獄の入学試験》のプロデューサーの元へ殴り込みをかけるところなのだが、簪との食事(先約)があるため、一先ずそちらを優先することにした。簪が拗ねると壮絶に面倒くさくなるからだ。

 二人きりというのも何だし──一夏を誘う気は一欠片も無かった──クラスメイトたちと仲良さげに会話していた本音を誘い、簪と合流。現在に至る。

 

「……何で学食にパフェなんかあるんだ? しかもヤケに高額だ(高い)し……」

 俺の対面の席にならんで座り、仲良く高額パフェに舌鼓を打つ簪と本音(二人)にボヤく。コイツらパフェを食うためにわざわざ昼食を軽いサンドイッチなどで済ませていた。メインとデザートが逆転してないか?

「学園と提携を結んでいる高級店の一品。「学食なら安かろう」とタカを括ったそっちが悪い」

「……俺は常識の範囲でって念を押さなかったか?」

「うん。だから『お金持ちの令嬢の金銭感覚(常識)』で考えてみた」

「何だよそれ!?」

「はい、やくもんの負け〜」

 久しぶりに会った幼馴染みがすっかり腹黒になっちまった……。すっかり軽くなった財布に物悲しさを覚えながら食後の茶を一口飲み、嘆息する。……正直に言えば俺にはそれなりの蓄えがあるので、このくらいで即座にヤバイ事態になる訳ではない。二人もそれがわかっているから軽口を叩きあえること(こんなこと)ができるのだし。

「本音、後でお姉ちゃんたちに自慢しよ」

「おお〜、そいつは良いですなぁ〜♪」

「マジで止めて! これ以上奢るのはもうムリ!!」

 ……だからと言って誰彼構わず高い品物を奢っていいわけではない。決して無い。

「──と、そろそろ八雲()遊ぶのは終わりにしよ、本音?」

「えぇ〜!? もうちょっと遊ぼうよ〜かんちゃん!」

「……すんませんお嬢様方、そろそろガチで泣いてよろしいでしょうか……?」

 ホントに逞しくなったなぁ、簪。周囲で食事をとりつつ聞き耳を立てていた女生徒たちが微笑ましそうに笑みを浮かべていた。

 

「そう言えば一組で何かあった? 四組(ウチのクラス)の娘たちが試合がどうとか言ってたけど」

「ん? ああ、織斑一夏(一人目)セシリア・オルコット(英国代表候補生)、そして俺で総当たりの試合をやることになった。来週の月曜の放課後、第三アリーナでな」

一人目(織斑一夏)と、試合?」

 俺の端的な説明を聴いた簪の眉間にわずかばかりのシワがよる。……何かあったのか?

「ちなみにやくもんは一夏(おりむー)セシリア(セッシー)のケンカの巻き添えなんだ〜。途中からやくもん無双になっちゃったけどー」

 隣に座るからか簪の微妙な変化に気付かなかった本音がいつもの調子で補足をいれてくれる。てか、やくもん無双ってなに!?

「そう……。()()()と戦うんだ……」

「……なあ、本音。簪ってもしかして一夏と何かあったのか?」

「う〜ん、ちょっとねー。でも学食(此処)じゃあ言えないな〜」

 簪を刺激しないように小声で本音に問えばそんな返答が返ってくる。(イージー)エフェクトを使えば公衆の面前だろうと問題ないんだが、コイツにはオーヴァード関連のことは教えていないため、さすがにそれは出来なかった。

「──八雲」

「な、何でしょう?」

「詳しく説明して、今すぐ」

 幼馴染みの目が怖い。『男は暴力でしか女を震え上がらせることができないが、女は暴力以外で男を震え上がらせることができる』、どこかで読んだ本の一文を思いだし、アレは事実なんだと頷くことしかできなかった。

 

 

 

☆★☆

 

 時は三時間目の授業開始直後まで遡る。

 

「お待ちください! 納得がいきませんわ!!」

 きっかけは織斑先生の一言だった。

 再来週に行われるクラス対抗戦の代表兼クラス長を決めなくてはならないらしく、その選抜を行うと。

 自薦他薦は問わずという条件から真っ先に候補者に上がったのは織斑先生の実弟でもある一夏だった。実力がどうこうではなく、男だから珍しいなんて頭が痛くなる推薦理由だ。ちなみに俺も似た理由で推薦された。本音もこっそり俺を推していたな。

 そんな理由で一度だけの対抗戦出場はともかく、面倒極まるクラス長(雑用係)なんぞ御免(こうむ)る。当然ながら俺たち二人はごねた。……まあ、思わず立ち上がり、ごねたと明言できる態度を見せたのは一夏のみだったが。

 

「どんな理由であろうと推薦された以上拒否権等無い。選ばれた以上は覚悟を示せ」

 

 そんな暴君、織斑先生の一言で反対意見は封殺され、俺と一夏の決戦投票となるかと思われた矢先に先の絶叫を以て否と吼えたのがセシリア・オルコットだった。

 机を叩き、立ち上がる姿に淑女としての振る舞いは無く、ヒステリーはいったおばちゃんと大差無かった。まあ、前の休み時間で意図せず俺たちが協力して《上げて落とす》をやってしまったせいでさらに意固地になってしまったんだろうが。

「大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! このセシリア・オルコットにそんな屈辱を一年間も味わえと仰るのですか!?」

 なら最初から立候補すれば良いのにと呆れる俺とこのまま行けば自分が選ばれることが無くなるのではと目を輝かせている一夏。

 しかし、怒りによってテンションが上がり過ぎたセシリアの暴走によって話は徐々におかしくなっていく。

「実力から言えば私がクラス代表になるのは必然! それを物珍しいからと極東の猿たちにされては困ります!! 私はこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスに入団する気など毛頭ございません!!」

 いきなり猿扱いされてしまった。……彼女は気付いているのだろうか、自らが熱弁を振るう相手を──間接的にとは言え世界最強(ブリュンヒルデ)を猿扱いしていることに。イギリス上層部の耳に入ったら代表候補生の座を追われかねないと思うのだが。しかしオルコットは止まれない。徐々に周りの視線が白けたものから嫌悪染みたものに変わっていったとしても。

 

「よろしいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはこの私ですわ!」

 己の胸に手を当て堂々とNo.1宣言し、このまま治まるかと思われたオルコットの暴走は、しかし止まらなかった。むしろ悪い方面へと進み始めた。

「大体、文化としても後進的な国で暮らさねばならないこと自体私にとっては耐えがたい苦痛で──」

 もしこのまま暴走を続ければ彼女のIS操縦者としての人生は終わっていただろう。しかし幸運にもそうはならなかった。オルコット自身は気づいていないだろうが。

「イギリスだってたいしたお国自慢無いだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ」

 こんな物言いで口を挟んできた一夏(バカ)がいたからだ。

 無論、一夏も口を挟む気などなかったのだろう。しかしどんどんエスカレートしていく国辱モノの罵詈雑言に我慢が限界に達してしまったのだろう。……女のヒステリーに付き合うとは物好きなことだ。

 オルコットは何かを言おうとして口を二三開くがまともな言葉は紡がれない。そして一夏は一瞬己の失言に表情を歪めたがすぐにそれを隠す。

「あ、あ、貴方! 私の祖国を侮辱しますの!?」

「侮辱はそっちが先だろ」

 一夏は正論を返すが、哀しいかな頭に血の昇ったバカに正論は通じない。ただ怒りの炎にくべる燃料となるだけだ。

 

「「……」」

 

 妙な雰囲気を醸し出し睨み合う一夏(バカ)オルコット(バカ)。いい加減馬鹿馬鹿しくなってきたので止めてほしいと教師たちに目をやれば──

 

「……」

「えっと、あの……」

 

 傍観者に徹する教師(織斑先生)とどうすればいいのか分からずに右往左往する教師(山田先生)の姿が。前者に至っては映画を見る観客のように()()()()()()()()

「決闘ですわ!!」

「おう、いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい!」

 

 事態を収拾できない、そもそもする気が無い教師たちに落胆している間にバカたちの争いは何故かそういうことになっていた。

「言っておきますけど、わざと負けたりしたら私の小間使い──いえ、奴隷にしますわよ」

「侮るなよ? 真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」

 いや、格好つけてるとこ悪いがISを使った勝負で手なんぞ抜いたら正しく秒殺されるぞ? 代表候補生ナメんのも大概にしとけよ?

「そう? 何にせよ丁度良いですわ。イギリス代表候補生のこの私、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね?」

 ……代表候補生がわずか一日分もISに乗っていない素人苛めて、そこから何を評価されるんだ? 大人気なさか? 失笑を買うのがオチだと思うがね。

 

「──なんですって?」

 気が付けばクラスの視線が俺に集中していた。……どうやら口に出していたらしい。一夏の困惑の視線とオルコットの困惑の視線が此方に向けられる。……こんなんじゃ一夏を笑えん。

 ……もう、考え方を変えるべきか。俺は現在たった二人しかいない男性操縦者の一人だ。しかも一人目はブリュンヒルデの実弟。俺は表向きには何の後ろ楯も無い一般人。どちらかをモルモットとしようなんて案が出た場合、その対象となるのは間違い無く俺だ。素直にそうなる気は無いが、実力や存在感を見せ付け、そもそもそういう話が出てこないようにすべきではないか。

 ノイマンの思考能力が複数の可能性をシュミレートしていく。数秒も掛からず出た結論はごくありふれたモノ、《どんな選択をしても何かしらの問題は起こる》。どっちにしても後悔はするなら、好みで選ぼう。それが()()()()()()正解だ。

 

「聞こえなかったか? 素人苛めを評価するバカは居ないと言った」

「なっ!?」

 立ち上がり、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしているオルコットを見やり、続ける。

「セシリア・オルコット。お前は常々言っていたな。『自分は代表候補生だ、エリートだ』と。だが済まない、俺にはどうしてもそうは思えない。

 代表候補生とは公の立場だ。その言葉はソイツの帰属する国家の言葉と捉えられることもある。にもかかわらず、何だ先程のお前は? 著名な世界最強(ブリュンヒルデ)を間接的に貶したあげく、国辱モノの暴言連発。あの発言が日本かイギリス政府、もしくは両国の関係悪化で利益を得られる第三者の耳に入ったらどうなるか、わかりません、なんて言わないよな?」

 俺の言葉に漸く自身の暴言を、それが拡散してしまった場合に引き起こされる《if (もしも)》を想像し、オルコットの顔色が自身の瞳と同じ色に染まる。

「お前が代表候補生の座に就くまでどれ程の苦労を重ねたかは知らない。だがな、それを理由に傲慢に振る舞っていい権利なんて無いぞ。 代表候補生の肩書きはお前の自尊心を満たすための玩具じゃない」

 俺の言葉にオルコットは力無く椅子に座り込み、俯くとその肩をわずかに震わせる。嘆きか怒りに震えているのかはわからない。

「──なあ、八雲? 可哀想だからその──」

「黙れよ、すべての元凶」

 見ていられないとばかりに口を挟んできた一夏を、怒りとわずかばかりの殺意を籠めて睨み黙らせる。自分の味方だとでも誤解してるのか? 俺が最も怒りを向けているのはお前なんだがな。

「そもそも一夏。お前何でオルコットがあそこまで激昂したかわかっているのか?」

「へ?」

 ……やはり、そもそもの原因に気付いていない。俺は沸々と怒りが沸き上がってくるのを抑えられなかった。

「……お前がオルコットの大切にしているモノを踏みにじり唾を吐きかけたからだ」

「なっ!? ちょっと待った! 俺はそんなことして──」

「喩えだ、馬夏(バカ)

 もう、名前で呼ぶのも嫌になってきた。馬夏に反論の隙を与えずに攻めかかる。

「お前はオルコットがどれ程の苦労を重ねて代表候補生になったか知っているか? 偉そうに言ってるが俺だって正確にはわからない。だが苦労を重ねてきたんだろうということくらいはわかる。苦労を重ね、代表候補生という栄誉を勝ち取った。IS学園の入試だって努力を惜しまず首席合格を果たした。

 そうして意気揚々とIS学園(此処)に入学してみれば、ろくに事前準備をしないどころか、準備そのものを放棄するようなバカがただ《珍しい》という理由で入学していた。そして、あろうことかただそれだけの理由でクラス代表に選出される。どうだ? 真面目にやってきた奴ほど頭に来る状況だと思わないか?」

 俺の発言にわずかに残っていたオルコットへの蔑視の感情が薄れ、同時に珍しさから俺たちを推したことへの反省の空気が生まれる。

「大体お前。つい先程俺がした忠告完全に忘れてたな? 思考放棄の末の反射行動は止めた方が良いと言ったよな? なのになんですぐまた思考放棄(ソレ)をやらかす!? もしあの時俺が口を挟まなかったらまた深く考えずに「自分が男だし、どれくらいハンデを負うか」なんて口にしたんじゃないだろうな!?」

「さ、さすがにそんなことしないって……」

 噛んだ上に目が泳いでやがる。そんな馬夏の態度にどんどん怒りゲージが上昇していく。ウイルスが暴走したわけでもないのにジャーム化しそうだ。

「オルコットはお前のことを猿呼ばわりしたがな、俺にして見ればお前は猿以下だ。猿呼ばわりされて怒りたいならまずは己の行動を鑑みて猿以上になってからにしろ!!」

「……すいませんでした」

 オルコットに続き馬夏が崩れ落ちる。馬夏とオルコット、二人を倒した俺に周囲の視線に畏怖の感情がこもっていくようにも感じられたが今は気にしない。あと一人言ってやりたい奴がいるのだから。

「──それで? 何を呆けていらっしゃるのですか()()()?」

「何?」

「えぇっ!?」

 まさか自分に矛先が向けられるとは思わなかったらしい目を丸くする織斑先生と、自分に叱責が来ることに怯え、涙目になりながら顔を青ざめる山田先生。……すいません山田先生、貴女をどうこう言うつもりは無いんです。

「二人のいさかいを止めようとした山田先生はともかく、問題は貴女だ、織斑先生」

 俺の発言に周囲が絶句する。当然だ。IS登場によって生まれた女尊男卑社会、その象徴ともいえる織斑千冬(ブリュンヒルデ)に真っ向から噛み付く存在などいるわけがないとでも思っていたのだろう。俺だって彼女にまで噛み付く気など更々無かった。

 しかし、馬夏とオルコットのいさかいを見て()()()()している織斑先生の顔を見た瞬間その気は霧散した。こうなったら毒食わば皿まで、だ。

「何故オルコットが国辱モノの暴言を口にした時、すぐに止めなかったんですか。彼女の怒りは当然だと思います。しかし彼女の立場を鑑みればアレがマズイとすぐに解るはずだ。なのに貴女はソレを止めなかった。いや、ソレを楽しんですらいた。まさか、「IS学園(此処)のセキュリティは万全。だからオルコットが暴走しても、自分たちが黙っていればバレることはない」とでも思いましたか? ならまずその下らない幻想(思い込み)をブチ殺しましょう」

 俺は懐から俺自身が改造を施した超性能、小型ボイスレコーダーを取り出し再生。先程のオルコットの国辱モノの暴言が再び教室中を流れる。織斑先生の表情が固まった。

 オルコットが暴走を始めてすぐ、俺はeエフェクトを使い、教室内部に遮音結界とでも言うモノを張り、さらに別のエフェクトで盗聴、盗撮を無力化した。幸い盗聴、盗撮の類いは杞憂だったが。その上でオルコットの暴言をレコーダーに録音したのだ。

「はい。この通り、ちょっとしたことで()()()セキュリティが無意味化されてしまいました。

 さて、織斑先生。俺が此処でレコーダー(コイツ)を開示せず、先程言ったような存在に売り渡していたらどうします? 最悪二カ国間に無意味に緊張が走り、オルコットのIS操縦者生命の終了の危機だったんですが?」

 俺は真っ青を通り越して蒼白となったオルコットにレコーダーを投げ渡しながら続ける。人のやることに完璧なんてモノは存在しない。仮にあったとしても人が介在する以上、容易く穴を開けることができることをあっさり証明すると先生方の表情が歪む。

「あの時貴女が教師としてすべき最善はオルコットを止め、彼女に己の──代表候補生の立場を説明し、感情に振り回されぬようにと諭すことではなかったのかと自分は愚考します」

 キッと織斑先生が俺を睨む。当然だ。俺は言外に「今のアンタは教師失格だ」と断言したのに等しいのだから。……まあ、馬夏辺りは気付いていないだろうが。

「貴女は言った「逆らうのは自由だが私のいうことは聞け」と。ならば自分は逆らいます。貴女が教師あらざる行動をとる限り。そして、言うことを聞くかどうかは貴女次第とさせていただく」

 拳を強く握りしめた織斑先生の、日本刀のように研ぎ澄まされた殺気の籠められた視線と俺の視線がぶつかり合う。正直おっかないが此処で目をそらす訳にはいかない。

 

「……そうだな」

 

 どれほどの時間が流れたか。声をあげたのは織斑先生だった。

「オルコット」

「は、はい!?」

「お前に対する注意は斑鳩にとられてしまい特に無い。だからこれだけは言わせてくれ。万が一今回の件が余所に漏れ、問題となった場合、私が全力でお前を弁護させてもらう。済まなかった」

 織斑先生はなんの躊躇も無くオルコットに謝罪した。……正直驚いた。織斑先生(彼女)も主義者のような傲慢な考えの持ち主だと思っていたので。

「い、いえ!? 元は私の浅はかさが原因です! 織斑先生に非はございません!! 顔をあげてくださいまし!」

「そうか、感謝しよう。だが、今回のような暴走はこれっきりにしろよ、いいな?」

 おそらく肉親であろう馬夏以外は見たことがないであろう優しげな微笑みにオルコットは顔を赤く染め、返事をすると周囲に──特に日本人生徒に深く謝罪した。なんだきちんと謝れるじゃないか。馬夏は別らしいけど。なら──

「一つ良いだろうか、オルコットさん」

「……何か?」

「俺は先程言ったことに対して謝罪する気は一切無い。だが言い方自体が悪かったことは認める。だから──」

 俺は彼女に歩み寄り、すっと頭を下げた。

「すいませんでした」

 

 数秒の沈黙の後、頭を下げたままの俺にオルコットの声が掛かった。

「──お顔をあげてくださいな、斑鳩()()。貴方の謝罪、確かにお受けしました。そして私からも謝罪させてください、貴方を極東の猿などと呼んでしまったことを。貴方は猿などではなく、立派な紳士ですわ」

「……紳士は止めてくれ、さすがに柄じゃない」

 俺はをあげ、口調を和らげ苦笑いを浮かべた。そんな俺を見詰め、クスクスと微笑む彼女の顔は、正しくに淑女に相応しいものだった。

 

 

 




ダブルクロス設定
☆侵蝕率
 オーヴァードの肉体がどれ程ウイルスに侵蝕されているかを表す数字。
 シンドロームの持つ能力──エフェクトを使用する度にウイルスに侵蝕され侵蝕率も上がっていく。
 この数値が100%以上で安定してしまうと人間性を失った怪物、ジャームとなる。

☆イージーエフェクト
 オーヴァードとしての力をわずかに使いちょっとしたことを行うエフェクト。
 戦闘には不向きで侵蝕率もほとんど上がらないが逆に戦闘以外では絶大な効果を持つものも存在する。
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