アンジュ・ヴィエルジュ ダメ人間によるメインストーリー   作:ヤドリ

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04ブルーミングバトル

 コロシアムの中央で、なにやら改まった様子で美海は背筋を伸ばしていた。

 

「私のエクシードは風を操る事! 風を起こしたり、空を飛んだりも出来るんだよ」

「それは知ってる」

 

 ばっさりと、僕は今更な自己紹介を切り捨てた。

 風を起こした結果、物理ダメージを受けたり、空を飛んだ結果、物理ダメージを受けたり。

 彼女の異能(エクシード)は体感している。

 

 やや硬直した後に、ようやく美海は首を傾げた。

 

「後は何を話し合えばいいのかな?」

「いや、あの。日向さん、もしかして予習とかはまったくしてなかったりする?」

「ぎくっ! そ、そんな事はないよ」

(正直な奴……)

 

 あからさまに目を逸らす美海だが、それこそ自白しているようなものだった。

 

 現状の整理をしよう。僕達は入学前のエクシード測定を受けていた。高水準の値が出たため、その延長線上として実践、つまりブルーミングバトルを行う事となった。

 そのパートナーとなるのが彼女、日向美海。

 やや子供っぽい容姿の少女で、中身も天真爛漫。エクシードの制御に難あり、というのが今の所、僕が知る彼女のプロフィールだ。

 

 そして、美海は休憩時間中に少々拗れたというべきか、ソフィーナと友達になるためには、彼女に認めてもらわなければならない、という話になった。

 認めさせるには、当面のバトルで勝利するのが一番だ。

 

 そのためか、美海のモチベーションは極めて高い。なんか目が燃えてる。

 しかし、知識が伴わない。どうにも、僕は常識レベルから美海を先導しなければいけないらしい。αドライバーの仕事といえば、その通りなのだろうけど。

 

「……まずは自分達の能力を把握する事。といっても、準備時間で出来る事といったら、リンク時にどの程度、能力が変わるか調べるぐらいだけど。本来、αドライバー用のコンソールで数値化されるものだけど」

 

 とりあえず基礎を並べる。この辺は、ネットで見た在学生からのコメントの受け売りなのだが、あらゆる勝負事で有用だろう。

 期待を込めて、ちらりと女性教師の方を見る。コンソールの使用は、彼女の許可が必要だ。

 そして、即座に首を横に振られた。

 

「今回は使用禁止だ。頭数で差を付けたのに、さらに道具で差を付けるのは筋じゃない」

「……という事らしいから、日向さんが体感で把握するしかない」

 

 切り替えて、美海に向き直る。正直、厳しいと言わざるを得ない。

 もちろん、能力を数値化しようがしまいが、体感での把握は必須であり、実戦ではこの感覚こそが最も信用できる。

 だが、僕達はまだ素人だ。機械による数値化、比較の方が確実性が高い。

 

 そういった不安を察した様子もなく、美海は単純に首を傾げた。

 

「えーと、結局どうすればいいのかな?」

「あー……ダイレクト・リンク。通常、リンクの成功率はまちまちだけど、触れる事で確実に発動させる事ができる。あー、でも触るのが嫌とかなら、無理に……」

 

 リンクとは、異能者(プログレス)とαドライバーだけに見られる特別な脳波を同調(シンクロ)させた状態の事。この際に、プログレスはエクシードの真価を発揮させる事ができる。

 これは平常時、αドライバーが(エナジー)を分け与える行為とは別。強化の先にある特別な強化こそがリンク、という理解でいいだろう。

 

 困った事にリンクには確実性がない。いや、これも今は些細な問題だ。

 当面の問題はダイレクト・リンク。これはリンクを成功率を上げるための手段だが、そのためには触らなければならない。

 もう一度、強調して述べるなら、異性の体に触れなければならない。

 

 日向美海は普通寄りにしても、十分に美少女といえる容姿だろう。

 飾り気のない自然体、栗色のツインテールにどこか丸みのある顔立ちは、実際よりも美海を幼く見せていた。華奢のようで案外、活動的な肢体に、黒地の制服越しに薄っすらと膨らんだ胸は女の子だな、と改めて思わされる。

 

(いや、妹みたいなものだろ……)

 

 せいぜい中学生程度、と自分に言い聞かせて色々と自制する。実際、自分も日向美海も半年前は本土で中学生をやっていたので、そんなものなのだろうが。

 要は異性として見ようと思わなければ、問題はないのだ。

 

 拒否される覚悟を三度ぐらい固めてから、ゆっくりと手を差し出す。

 

「じゃ、友達の握手!」

 

 美海はあっさりと、明るく応じてきた。

 さて、妹とサービス業の店員を除いて、異性に触れたのは何年ぶりか。

 感覚が麻痺して、ほとんど手触りは認識できなかったのだが。

 

 だが、そうも言っていられない。手先から伝わる温もりを起点に、なんと例えるべきか……αドライバーが持つ力の波長を美海に合わせようとする。

 才能があれば一瞬なのだろうが、少なくとも僕は繊細な過程を必要とした。

 手探りに力の質を変調させ、やがて鍵穴を合致させたような手応えを捉える。

 

 その一瞬を逃すことなく、僕はαドライバーの力を注ぎ込んだ。

 直後には、美海の体から不可視の力が溢れ出ていた。

 衝撃を伴う独特の感覚が駆け抜ける。それは、どこか吹き抜ける風に似ていた。

 

「……この程度なら、問題ないか」

 

 感覚を確認しながらも呟く。

 リンク中、強い絆を有するαドライバーとプログレスの間では、精神の繋がりが生じると言われている。実際にそれがどのようなものかと言えば、個人差があるとしか言えないが。

 

 ひとまず、僕と美海には大した繋がりがない。

 精神の一部が重なっている、という感覚こそあるが、それ以上のものは何もないのだ。

 逆に、心が筒抜けになったり、感情の共有などが発生すれば……僕は拒絶していた可能性が高い。そういう意味では、ベターな結果といえる。

 

「……あー、えーと。どんな感じか、聞いていいか?」

「う、うん……普段よりも弱くなった、かも」

 

 繋がりの薄さに安心した、という後ろめたさを誤魔化すように、僕は尋ねたが美海の方もどこか挙動不審な様子で答えた。

 慣れないリンクの感覚に途惑っているのかも知れない。

 

 そして、内容は聞き流せないものだった。

 まさかの弱体化。もちろん、常に良い結果が出るとか思っていなかったが。

 

「まあ、初対面で相性も良くないなら、こんなものかも知れないけど……制御はどんな感じ?」

「あっ! うん、いつもより上手く扱えるよ!」

 

 美海が嬉しげに風を巻き起こした。互いの髪や制服が揺らされる。

 その風はごく局所的なもので、測定時とは比べ物にならない程、安定していた。

 

 なるほど、と頷く。最善の結果には程遠いが、この状況では最適かも知れない。

 

「……プラスに考えよう。制御能力の許容を超えた出力が抑制されたから、実質は弱体化じゃなくて最適化なんだと」

「うん……!?」

「いや、無理に理解しないていいから」

 

 表情が固まったまま、こくりと頷く美海に色々と察して、軽く声をかける。

 まだ入学式すらしていない現状で、全てを把握する必要はないと思う。

 現時点では体感の範疇で、最善を尽くしてくれればそれでいい。

 

(実際、暴発気味のエクシードが安定して、まともに戦えるようになる、というのは無視できないメリット……中途半端に勝ちの目が出てきたな)

 

 美海には悪いが、頑張ろうと、結局は当たって砕ける形になるとは思っていた。

 しかし、意外にも偶然が重なり、戦えるだけのカードが揃ってしまった。

 

 となると、一応はカードゲームを趣味としている僕は引けなくなる。

 まだ手札が残り、負けが確定していないなら、不利であっても勝負を投げる気にはなれなかった。

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 その後も簡単な作戦会議は続き、やがて休憩時間の終わりが訪れた。

 コロシアムの中央付近で、女性教師が音を鳴らし生徒達を集める。普通は呼子笛(ホイッスル)でも使う所だが、ここでは携帯端末からの音声だった。

 さすが青蘭学園、無駄に機械化が進んでいる。

 

「いいか、そろそろ第一試合の組み合わせを発表するぞ!」

 

 四人のプログレス達を顔を順番に見て、女性教師は告げる。

 ちなみに僕はスルーされた。

 

「……どうせ、ソフィーナさんとセニアさんだろうけど」

「え、なんでなんで」

 

 低く呟けば、それを耳ざとく聞いていた美海が小声で尋ね返してくる。

 

「……消去法だよ。僕達は素人で、アウロラさんは記憶喪失。実践的な試合が可能なのは、この組み合わせしかない。第二試合は不安な組み合わせになるけど、第一試合を参考にできるから、それも解消できる」

「へー……」

 

 などと若干、美海は感心していたが、これは普通に考えれば分かると思う。

 私語を咎めるように、女性教師が軽く睨んでくるが、僕は気付かないふりをした。

 

「まあいい……ソフィーナ!」

「はい!」

 

「それとセニア!」

「はい」

 

 指名された二人の少女が、それぞれプログレスの列から前に出る。

 ソフィーナは淡い赤紫の髪、フリルが多様されたゴシックドレスが目を惹く。角と尾を持つ、黒の世界出身の魔女。

 セニアは白髪で、肌も白磁のようだ。体の線がくっきり見える薄手の衣装に加え、所々に機械的なパーツが据えられている。白の世界出身のアンドロイドだ。

 

 いずれも小柄な少女ながら、強力なプログレスに違いないと思う。

 

「両者とも第一ステージ……ああ、あっちにあるステージだ。あそこに立った後、両者の準備が整った段階で、第一試合を開始する」

 

 特に気負った様子もなく、二人の少女は配置についていく。

 ソフィーナは己の実力に自負を抱いているため、セニアは表情が乏しいため、単に外見に表れていないだけかも知れない。

 

「あなたを造ったDr.ミハイルの名前はたびたび耳にした事があるわ。常々、実力を見てみたいとは思っていたけど……今日はお手柔らかに頼むわね」

「はい、ソフィーナさんも黒の世界では高名な人物であると学習した知識の中にありました。どうかよろしくお願いします」

 

 いかにも試合前といった様子で両者が対峙する。

 後は試合開始を待つだけだ。

 

「両者とも準備はいいな? じゃ、定番の掛け声で試合を開始するぞ」

 

 楽しげに笑いつつも、女性教師が確認する。特に中断の申し入れもない事を確認すると、改まった様子で片腕を掲げた。

 そして、掛け声と共に振り下ろす。

 

「ブルーミングバトル――スタート!」

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 コロシアムに備えられた、αフィールドが形成されると同時に、セニアが動いた。

 

次元連結機構(ブルム・エクス・マキナ)――起動」

 

 セニアが無表情のまま呟くと同時に、周辺の空間の何箇所かが歪み、球形の機器が何もない空間から這い出てくる。それらは全て浮かび、単眼にも似た発射口を備えていた。

 

 気付けば、セニア自身も先程までは携えていなかった白い拳銃を握り、構えている。

 

「目標補足……!」

 

 セニアの拳銃と小型の機器から、何条もの白閃が生じ空間を突き抜ける。

 対して、ソフィーナは手先で曲線を描き、エクシードで炎を生じさせた。

 

 純白のエネルギーと紅蓮の炎が激突し、爆散する。

 衝撃とエクシード衝突の際、特有の力(エクストラ)が吹き抜け、周辺を乱れさせた。

 

 さらに両者が動く、いや遠隔攻撃と同時にすでに動いていた。

 すなわち牽制からの確実な攻撃を繋げるという、という教本通りの戦術だ。

 

 セニアは拳銃に代わりプラズマを纏う刃を取り出し、ソフィーナも魔力を集束、炎でありながら実体を持つ剣を形成した。

 片や一片の無駄もなく、片や力と速度を伴い、一合切り結ぶ。

 

 結果は互角。刃と剣が打ち合い、雷光が奔り火花が散るが、双方が弾かれる。

 互いに一撃で容易な相手ではない事を悟り、反動を利用して距離を取った。

 

「やるじゃない」

 

 炎の剣を消失させると、ソフィーナは不敵に微笑んだ。

 セニアの兵器の射線から逃れるように、一度二度と床を蹴るが、三度目で宙を舞う。

 多くのプログレスに共通する飛行能力。ブルーミングバトルの本領でもある空中戦。

 

 セニアも足先、靴に該当する機器のスラスターから力を放出し、ソフィーナの後を追う。

 開幕から高レベルの攻防だったが、未だブルーミングバトルは序盤だ。

 

 もちろん、僕や美海、アウロラに女性教師は傍から、この対決を見守っている。

 

「……なんというか、持ち込みの武器ってありなんだよな」

「青の世界のプログレスも、刀や弓を使うからな?」

「αドライバーって、それを耐えなきゃいけないのか……」

 

 真顔で他の例を挙げてくる女性教師に、僕は身震いした。

 なんだかんだで保護されてる少女たちだが、男どもへの扱いは酷すぎないだろうか。

 目突きや金的のダメージも引き受けるような事が起きたら、目も当てられない。

 

「ねえねえ、どっちが勝つかな?」

「そうね。私も気になるわ」

 

 美海は目を輝かせていた。洗練された試合を見て興奮したらしく、じっとしているのも、もどかしい様子だ。

 傍らのアウロラは相槌を打ちながら、こちらに目配せしている。

 

 もちろん、僕は二人をスルーしたのだが、女性教師に肘で突かれた。

 

「ほら、αドライバーの見識が求められているぞ。実戦では司令塔を努めるからな」

「……僕が解説する流れか」

 

 僕、素人ですよ。先生の出番では、と言いたかったが、もちろん女性教師の意図は分かる。今の内にプログレス達から点数を稼いどけ、という意味だろう。

 実際、クラス単位になれば、僕はあっけなく埋もれてしまう程度の人間だ。

 もっとも、的外れな解説をすれば恥をかく、という重圧に違いはないが。

 

 いざ、口を開かねばならない、となると心臓がバクバクした。

 なにやら過呼吸気味になるが、深呼吸してどうにか緊張を押さえつける。

 実際に声が出せたのは、しばらく試合の展開が進んでからだ。

 

「まったく五分に見えるけど、注意してみれば二人のスタイルの違いが分かると思う」

「わかんない」

 

 どうにか、掠れ声よりはマシな声量を出したのだが、あっさり美海は首を傾げた。

 説明の量が増える、と思うとうんざりするが、途中で放り出すのも拙い。

 

「……ソフィーナさんは攻撃型だけど、火力で早々に相手を倒すタイプじゃない。むしろ、手数と高い火力を誇示して相手の選択肢を削り、追い込む戦術だ。セニアさんの方は、様々な機器を取り出す万能型に見えて、実際は相手に対応していくタイプ。負けない戦いをする、と言えば分かりやすいかな」

 

 と強引に声を出してみれば、意外とすらすらと言葉が出てきた。

 的外れではないだろう、と上空で攻防を繰り広げる二名を見て、自分に言い聞かせる。

 

 一見すれば互角の争いだ。ソフィーナが火炎を器用に操り、多彩な攻撃を披露すれば、セニアはそれ以上に多様な機械を取り出して応戦する。

 実際、勝敗に直結するリソース、αフィールドの負荷(ダメージ)許容値も同等。

 

 しかし、それだけで試合中の優位性(アドバンテージ)は測れない。

 

「結局、それってどうなるの?」

「つまり、同じリソースの削り合いでも能動的か受動的かの違いある。今は展開が動的だから、ソフィーナさんの戦術が上手く機能していると見ていい」

 

 逆に戦闘が落ち着けば、セニアがソフィーナの攻め手を潰したという事。

 ソフィーナの魔法により、頭上で巨大な爆炎が炸裂した。着実に追い込まれるセニアだが、彼女も負けじと粒子砲らしき兵器を取り出して応戦する。

 

「……ねえねえ、アウロラさんは今の分かった?」

「ええ、大体の所はね」

「凄いなぁ」

 

 などと、こっそり密談する美海とアウロラだが、まったく隠せていない。

 どうにも、僕の努力はあまり実らなかったようだ。

 

(主に、日向さんのために説明したんだけど……)

 

 敵方のアウロラだけに知識を吸収されてしまったような感覚がある。

 直接的ではないにせよ、多少は不利になったかも知れない。

 切磋琢磨する仲間、といえば聞こえはいいが、所詮は競争相手。他人が努力し、向上すればするほど、僕の順位や偏差値は落ちるのだ。

 

 一方で、ソフィーナとセニアの対決は終盤に入っていた。

 いや、すでに決着しているといって良いかも知れない。僕なら投了している。

 

 ソフィーナが操る炎は、セニアの対応力を完全に上回っていた。

 単なる能力の優劣ではない。経験によってもたらされた追い込みの技術だろう。

 一撃を凌げば、二撃目や三撃目は受けざるを得ない。詰み将棋のような手際の連続に、セニアはじわじわと追い詰められていた。

 

 激しい攻防の中での、ごく短い間隙。ソフィーナはセニアに囁いた。

 

「勝負は見えたと思うけど……まだ続ける?」

「はい。Dr.ミハイルに世界を見てこい、と言われましたから。きっと、この試合の先もまだ私が見ていない世界です」

 

 無垢で無表情、しかしそれだけに留まらない何かを秘めて、セニアは継戦を決めた。

 

 セニアの周囲の空間が波のように揺れ、大量のレーザー射出機器を吐き出した。

 例えるなら、背後に控える機械の軍団か。

 この戦闘中では、今まで見せなかった規模の大量展開だ。

 

「リンクもないのに無茶をするのね。でも……」

 

 ソフィーナが呟き返した所で、膨大な数の光芒がコロシアム上空に直線を描いた。

 シンプルながらも壮麗な紋様が青空に浮かび上がり、見上げる者達の目を眩ませる。

 

 光学兵器の大規模斉射。圧倒的な物量による制圧攻撃に、ソフィーナの姿はあっけなくかき消されたかのように見えた。

 

「決まった……!?」

「いや」

 

 美海が洩らした声に、僕はとりあえず否定から入る。

 セニアが勝敗を決めにかかったのではない。わずかな勝利の可能性に賭けたという意味では正しいが、むしろ切り札を使う以外にない状況まで追い込まれた、というのが面が大きい。

 すなわち、主導権を握る、追い込んだ側には対処の準備があるのだ。

 

 レーザー兵器の照射に限界が訪れ、上空を覆う眩い光が薄れていく。

 その直後に一同の眼に入ったのは、深紅の光で描かれた紋様、どこか盾を連想させる魔法陣だ。そこから放たれる炎が、レーザーを悉く防ぎ、ソフィーナの身を守っていた。

 

「障壁と熱レンズの合わせ技か。ここまで上手く防がれたのは相性負けだろうけど」

「え、えーと……!?」

 

 声を漏らしながら、美海は全力の手振りで状況の不理解を表明している。

 これはなぜかコミュ障の僕にも理解できた。

 

 ごく単純に言ってしまえば、エクシードを用いた防御技だ。通常の物理法則とは異なる挙動をするため、炎のような実体のない現象でも障壁として利用できる。

 それに加えて、熱レンズ効果。これは陽炎のような現象といえば分かりやすい。

 炎熱により気体の密度を変化させ光、つまりレーザーを屈折させたのだ。

 

 威力が拡散した上で、受け止めたのだからソフィーナが無傷なのも道理。もっとも、直撃した所で障壁の上からでは、勝敗を決する程のダメージは与えられなかっただろうが。

 

 もちろん、あれほどの大攻勢の後に隙ができない訳がない。

 消耗したセニアに、ソフィーナは素早く接近すると高密度の炎を叩き付けた。

 

 無論、セニアは傷付かないが、フィールドの方に負担は蓄積される。

 限界に到達したのだろう。試合場を覆っていたαフィールドが一瞬の輝きを残して解除された。それに呼応して、セニアがよろめき高度を落とす。

 

「試合終了ね。こういう時はグッドゲーム、とでも言えばいいのかしら」

 

 勝者に相応しい、清々しい微笑みでソフィーナは告げる。

 試合を終えた後も、炎の塵と光の欠片は青蘭島の上空を舞い続けていた。

 

 ソフィーナVSセニア、決着。

――セニアのαフィールドへの負荷が規定値を突破した事により、ソフィーナの勝利。




初戦闘。主人公は初解説。
αフィールドのおかげでダメージ描写のバリエーションが凄く制限されたりするので、アニメでの実質カットも妥当というか……

・登場人物&用語解説
SW=コードΩ46セニア
 アンジュ・ヴィエルジュにおける白の世界のメインキャラクター。
 無垢で一見して感情が分かりにくい少女だが、実は好奇心旺盛であるらしい。
 唯一、ブルーミングバトル用に開発されたアンドロイド、だったのだが、作中で一年経過した現在、後続機が存在している可能性も。というか、アリアがそうなのか。
 エクシードは亜空間転移型次元連結機構。ブルム・エクス・マキナ。
 詳しくは公式ブログのコードΣ46アリアの紹介で解説されている。
 要するに、ドラ○もんのポケットみたいな能力で様々な機器を展開する。
 空間の性質は白の世界と等しく、本来は青の世界で使えない機械も使用できるらしい。
 名称のコード前のSWは命名法則から外れた特別な表記。
 何か特殊な設定があるのかも知れないが不明。System;White?

リンク
 公式用語では、プログレスがαドライバーの支援を受けて発動する必殺技とされる。
 が、関連作品でこの用法が使われているのを一度も見た事がない。
 だいたい「私とリンクして!」みたいな台詞があるので、必殺技が使用可能になった同調状態の事を指していると思われる。
 本作も公式用語を無視し、関連作品の用法に準じている。

ダイレクト・リンク
 ライトノベル、蒼き箱庭のプログレスに登場する設定。
 通常はリンク成立にはむらがあるが、αドライバーがプログレスの体に触れる事で確実に成立させる事ができる、という手法。効率的に力を与えられるらしい。実にMF文庫な設定。
 案の定、リンクしたプログレスの台詞には卑猥とも取れるようなものがあったりする。
 これを用いた事前リンクはブルーミングバトルでは反則扱い。
 蒼き箱庭独自の設定かも知れないが、アニメでは触れる事でリンクが発生する場面があり、リンケージにおけるマユカの初リンクでも手を繋いでいる。
 一応、接触とリンクの関係は一貫したものがあるのかも知れない。

ソフィーナの魔法
 基本的に彼女は戦闘では炎を用いる。秘めたる魔力ソフィーナのイラストでは氷らしきものを出してはいるが、蒼い炎の可能性もあるのでやはり曖昧。
 設定的に他の魔法を使わないのは不自然だが、戦闘においては炎が得手なのだろう。
 炎の剣はアニメのアルマリア戦、障壁はリンケージのバトル中に使用した炎獄の盾。セニアの攻撃を防いだ点も作中と同じ。

・以下、前回に乗せる予定だったもの
PAO
 αドライバーのサポート用アンドロイド。人型じゃないのにアンドロイド?
 いわゆるソシャゲのマスコット枠で、わりと可愛らしいデザインをしている。
 PAOが何の略称かは誰か教えてください。
 青蘭学園に入学したαドライバーには一人につき、一体が支給され、その責任者は藤平正義教頭。主人公に支給されるのは、PAO-0098ジョージ。やたら声が渋い。
 その役割は様々で、特訓したり覚醒したり手紙を届けたりカジノを運営したり。
 ソシャゲ、ガールズバトルの独自設定らしく、他の媒体では影も形もなかったりする。
 美海のキャラストーリーによれば、覚醒PAOは風の操作→気象操作レベルでの変動を実現するらしい。凄い。

美海とソフィーナ
 一応、コンビ名義のカードはあるがレベル0、つまり固有の効果は持たない。
 公式でもそこそこ見かけるコンビなのだが、やはり青と黒で色が違う問題があるのかも知れない。
 拗れそうにないのに本作でわりと拗れているのは、台詞回収の都合。
 ソフィーナは今の内にツンツンしとかないと、チョロい方面ばっかり行きそうで……

"主人公"と美海
 一応、"主人公"の設定はプレイヤーの数だけあるのだが、ここでは初期に美海など主要人物と親しくなったαドライバーの事を指す。
 "僕"もこの系譜だが、だいぶ性格は捻れている。
 公式作品ではプルミエのリンやリンケージの竜斗などが該当。ラノベは別人扱い。
 美海自体、顔を出す程度であれば、あらゆる関連作品で見かけるので、やはり縁が深い。
 ソシャゲ、ガールズバトルのイベント、風まとう少女の非日常で主人公と最初に出会った時の服装が言及されているが、元ネタはプルミエから。
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