ソードアート・オンライン マザーズ・ロザリオ ボクの生きる意味   作:むこ(連載継続頑張ります)

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 こんばんは、休みなのをいいことにひったすら書きまくってます。ニコニコ動画でとあるマザーズ・ロザリオのMADを見たのですが、涙腺が崩壊してもうだめになりそうでした。なので……早くユウキが幸せになれるように筆を執り続けます。

 それでは15話、どうぞ!





第15話~仲間~

 

 西暦2026年2月1日 日曜日 午前9:00 東京都台東区御徒町 ダイシー・カフェ

 

 古ぼけた雰囲気を醸し出している雑居ビルが軒を連ねるこの街並みに、ダイシー・カフェは店を構えている。すっかり元SAOプレイヤーの溜まり場になってしまっているこの店は、本日は日曜で書き入れ時なのだが店のドアには臨時休業の札がかけられていた。

 

 和人はオートバイの後ろに明日奈を乗せながらダイシー・カフェの軒先に近づくと徐行をし、スピードを緩めてやがて停止した。店の邪魔にならないような場所にそのままオートバイを停車し、背後に乗っている明日奈をバイクから降ろした。

 

「わあ、ここに来るのも久しぶり……」

 

 明日奈は和人のバイクから降りると、ヘルメットを外しながら嬉しそうに、懐かしそうにダイシー・カフェの外観を眺めていた。煤けた木目調の壁などがいい味を出していて、全体的にモダンな雰囲気を醸し出している大人のカフェといった様子だ。

 和人も実際相当ダイシー・カフェとはご無沙汰である、明日奈と別れてから和人自身がもぬけの殻ということもあったが。

 

「確かにな、みんなとも大分ご無沙汰だったからな……」

 

 和人もオートバイから降りてサイドスタンドを立てると、ヘルメットを外してオートバイのシートにしまい込んだ。キーを抜きここまで運んでくれた愛車を休ませる。タンク部分はすっかり熱を帯びてしまっていた。

 

「とりあえず早く入っちまおうぜ、みんなはまだ来てないだろうが、ここでいつまでも突っ立ってても寒いだけだしな」

 

 そう言いながら和人はダイシー・カフェのドアに手をかけ、ゆっくり手前に開いた。そこで見た光景に和人と明日奈は激しくデジャヴを感じた。何ヶ月か前に観た光景とほぼ全く同じ光景が目の前に広がっていたからだ。

 

「おいおい、俺たち遅刻はしてないぞ……」

 

 和人は伝えていた時間よりも早く来たのにも関わらず声を掛けたメンバーが全員そろってたことに驚愕していた。ダイシー・カフェの内装は、全体的にわざと照明を暗くして、ジャズカフェのような雰囲気を出していた。

 

 ダンディな年頃のマスターがワインやウィスキー、バーボンといったアルコール類を片手に一人で心静かに嗜んでいるような空気を感じさせていた。そんな淡い見た目の内装の店内の奥にあるカウンター席で、かつてSAOの中で生死を共にした仲間達が既に中でよろしくやっていた。

 

「おう! おせーぞキリの字! おめーから声かけといて遅刻たぁいい度胸じゃねえか! なあ!」

 

 始めに和人に声を掛けた、赤髪にバンダナをつけ、ダボダボのワイシャツに片手にタバコを持っているサラリーマン風のこの男の名前はクライン。

 本名、壷井遼太郎。SAO正式サービス版で和人が初めて知り合ったプレイヤーだ。年は離れているが同い年の旧友みたいな感じで和人とは仲がいい。ちなみに絶賛彼女募集中である。

 

「こんな日曜の書き入れ時だってのにお前のために臨時休業にしたんだ……感謝しろよ?」

 

 大きいガタイにスキンヘッドとかなりのインパクトを持った黒人男性のエギル。

 本名、アンドリュー・ギルバート・ミルズ。SAO時代は商人として他の中層プレイヤーを陰で支えていた実力者であり、戦闘時もかなり硬いタンクとして戦場の壁となり、大活躍を見せていた。現実世界ではこのダイシー・カフェのマスターでもある。

 

「まーったくもう、キリトってば自分が一番最後に遅れるってのは昔っから変わらないんだからっ!」

 

 茶髪に首元まで伸びた髪にヘアピンを点け、学生服の上からピンク色のセーターを着こんだ女の子、リズベット。

 本名、篠崎里香。SAO時代は自身が経営している鍛冶屋のマスタースミスとしてSAO攻略組含む、多くのプレイヤーの武器防具の生産、メンテナンスを担当していた。戦闘に関してもメイス等の鈍器の扱いに長けており、攻略組とまではいかないが一戦で活躍するほどの実力を持っていた。

 

「で、でもでもっ遅刻はしてないわけですからいいじゃないですかっ」

 

 このメンバーの中でひときわ低い身長に左右に伸びた可愛らしいツインテールが特徴の少女、シリカ。

 本名、綾野珪子。SAO時代は珍しいビーストテイマーとして、フェザーリドラのピナとともにダガーを片手にアインクラッドを駆け回っていた。キリトに想いを寄せているが、中々その夢は叶うことはなさそうだった。

 

「いいえ、重罪よ重罪。これはもう全員に何か奢ってもらわないとだめなんじゃあないかしら?」

 

 茶髪に左右のお下げと度の入っていない眼鏡が特徴の少女、シノン。

 本名、朝田詩乃。SAO時代は回線トラブルによって事件に巻き込まれた。精神に深い傷を負ったままSAOに迷い込んだので当初はかなり塞ぎこんでいたが、キリトの助けによって少しずつ立ち直っていき、無事にSAOを脱出し、今は一人暮らしをしている。SAO、ALOでも珍しい長距離武器使いである。

 

「え~、ちょっとみんなキリトに厳しすぎ~。確かにちょっと遅かったかもしれないけど……」

 

 ひときわ目立つ首元まで伸びた金髪とボーウィッシュな白と水色の服装が特徴の元気な女の子、フィリア。

 本名、竹宮琴音。SAO時代はホロウエリアと呼ばれる未知の非公開エリアに迷い込み、データの存在となったPoHに死の一歩手前まで追いつめられたが、キリトの活躍によって無事現実世界に帰還できた。

 

「あ、頭が痛いぞ……」

 

 目の前の光景に激しくデジャヴを感じた和人は、入った瞬間みんなに言いくるめられたのもあってか、頭を押さえて頭痛を覚えていた。

 決して遅れていないのに何故自分が追いやられてしまっているんだと。恨めしそうな視線を送りながら自分の身の潔白を訴えていた。

 

「まあまあ、みんないつも通りってことでよかったじゃない、キリト君」

 

 そんな言いくるめられている和人の後ろから明日奈がひょこっと姿を現した。その姿を視界に映したその場にいた全員が目を丸くして驚いていた。

 何故ここに明日奈がいるんだ、和人とは別れていたんじゃなかったのかと。そんな驚いている面子を尻目に和人は何食わぬ顔でしれっと頭をかきながらすっとぼけていた。

 

「あれ、言ってなかったっけ……明日奈が来ること」

 

 和人が困ったような表情を浮かべながらみんなに聞くと店内のありとあらゆる方向からサラウンドで「言ってない!!」というツッコミが返ってきた。

 和人はやっちまったという表情を浮かべながらも笑顔で自分の頬を人差し指でポリポリとかいて、その場を誤魔化そうとしていた。

 

「えっえっ……でもでも、キリトさんとアスナさんはその……わ、別れたと聞きましたけど……!」

 

 シリカこと珪子が慌てて食い気味に今の和人の現状を聞いてきた。縁結びのチャンスとでも思ってたつもりだろうか。心なしか少しだけ期待を胸に膨らませている様子を見せながら、二人の関係について問いただしていた。

 

「うん、確かに一ヶ月前に私とキリト君は今までの関係をお終いにしたの。私の家の事情でまともに時間が取れなくなってね……、それをキリト君にまで負担を掛けるわけにはいかなかったから……」

 

 ここにいるメンバーを含めて、元SAOプレイヤーは、今の明日奈と和人の関係を知っている。しかし明日奈は念には念を込めて、一ヶ月前のことと、現在の今の自分の状況をこの場にいる全員に口で丁寧に説明していた。

 

「それで、それからのことは……その、ユウキにお願いをしていたんだけど……」

 

 ユウキの名前を口にした瞬間に明日奈の表情が暗くなっていった。そのただならぬ様子から、皆は何かあったんだということを察した。

 これから明日奈の口からとんでもない爆弾が投下されるのではないか、そんな緊張感が漂い始めていた。中々言い出せない明日奈の前に和人が割って入り、集まってくれたみんなに話の本題を切り出した。

 

「それは俺の口から説明させてくれ。みんな……とくにエギルとクラインは忙しい中、俺の急な呼び出しに応じてありがとう。今日みんなをここに集めたのは、ユウキの為なんだ……」

 

 ユウキの名前を口にした瞬間に、和人の表情は真剣な眼差しになり、その顔を見た全員の顔にも緊張が走っていた。

 一体和人は今から何を言い出そうというのか、その真剣な表情と、わざわざ皆にここに集まってくれたことを考えると、決していいニュースがその口から出てこなさそうなことは、ある程度ここにいる全員も察していたようだ。

 和人は一回深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出すと、みんなに集まってもらった目的を、ユウキの現状を語り出した。

 

「単刀直入に言う。ユウキは……いや、木綿季は、病気で……崖っぷちに追いやられている」

 

 木綿季の体のことを知らない面子の表情が全員一変した。木綿季がHIVに侵されていることは、明日奈と和人、そしてスリーピング・ナイツのメンバーしか知らない、よってここにいる仲間たちの反応は当然の反応だった。

 この中で数少ない成人のクラインこと遼太郎が、恐る恐るどういうことかと和人に詰め寄って言葉の意味を確かめようとしていた。

 

「お、おい……どういうことだ、キリの字。ユウキちゃんっていえば……あの 絶剣(・・)のユウキちゃんだろ? 病気って……一体どういうことなんだ?」

 

 遼太郎からの疑問に対し、和人は淡々と一から説明を始めた。今、和人は木綿季と交際をしていること、その木綿季がHIVで崖っぷちに追い詰められていること、そして木綿季の命を助けるためにみんなに集まってもらったことを。

 その現状を聞き届けた珪子は信じられないような表情を浮かべて口に手を当てながら、和人と木綿季の関係を聞いた。

 

「キ、キリトさんは……ユウキさんとお付き合いを……?」

 

 珪子は心なしか少しだけ残念そうな表情を浮かべながら和人を見つめていた。その隣にいる里香は小さい声で「やっぱりか~……」と呟いていた。

 あの時の光景の一部始終を見ていた里香と珪子は、ある程度二人の関係を察していたのだが、実際本人から直接伝えられ、やはり残念そうな態度を見せていた。

 

「ねえキリト、ちょっといいかしら?」

 

 そんな中、シノンこと詩乃が右手を上げて何か聞きたそうに口を挟んできた。このメンバーの中で一番冷静に行動出来るのはゲームの中でも一番戦場を冷静な視点で見ることが出来る判断力を持った詩乃だ。

 彼女が質問役を買って出てくれれば、自然とみんなにこちらの意図が伝わりやすくなる。和人にとっては彼女からの質問は非常にありがたかった。

 

「その、ユウキの病気を治すことと、今日みんなでここに集まったことに関係することってなんなの?」

 

「ああ、それについてなんだが……。度々で悪いがみんな……この後少し俺に付き合ってほしい場所があるんだ。都合のつくやつだけでいい、ついてきてほしい……」

 

 話の筋がわからないままどんどん先へと進む和人に対し、メンバー全員が解せない表情を浮かべていた。

 しかし、今まで和人に散々助けてもらっていたこともあり、元々和人に手を貸すつもりで集まったメンバーは、嫌な顔せずに和人からの提案に対して肯定の姿勢を見せてくれていた。

 

「んじゃあ俺が車を出そう、ワゴン車だからキリトとアスナがバイクで行けば、あとは全員乗れる。みんな……それで構わないな?」

 

 ここにきてエギルことギルバートが助け船を出してくれた。さすがこの中で一番の年長者だ、頼りになる。返事は勿論満場一致で和人についていくこととなった。和人はみんなに感謝の気持ちを示しながら、今後の予定について引き続き話を進めていった。

 

「まず横浜の、港北総合病院で全員で木綿季の面会に行く。その際、俺と明日奈は先に主治医の倉橋先生に、今からみんなに話す作戦を説明するつもりだ」

 

「…………」

 

「目的は木綿季を心から支えてやって元気づけてやること、そして倉橋先生の協力を得ること、この二つだ」

 

 身振り手振りで和人は木綿季を助けるための話を皆に聞かせた。大体の概要の説明が終わり「質問はあるか?」と全員に声を掛けると、すかさず里香が手を上げて、気になっていることを和人に問いただした。

 

「キリト、もうずっと気になってるんだけど……その、ユウキを治すための作戦って何? AIDSって不治の病って聞いてるけど……」

 

「いや違う、AIDSは治る。元凶のHIVウィルスごと……駆逐できるんだ。骨髄移植(・・・・)によって……!」

 

 和人からの回答に全員がまたもやサラウンドで「骨髄移植!?」と声をそろえた反応を見せた。意外にAIDSが治るということは世間に知られていないらしい……。

 道理で調べ上げるのに時間がかかったわけだ。そりゃそうだ、全世界で完治者がたった二名しかいない上に、その事例が今から13年も前の話だったからな、情報が埋もれてしまうのも無理はない。

 

「続けるぞ、んでそのHIV耐性をもつ骨髄ドナーなんだが、ドナー登録者の白人の……全体の約1%しか見つかっていない」

 

「…………」

 

「そしてさらにそれはHLAと呼ばれる患者とドナー提供者の細胞の型が合わないと移植ができない、この二つの問題が非常に難儀なんだ」

 

 淡々と説明を続ける和人の話を皆真顔で聞き続けた、今の和人の表情はSAO時代の仲間の命を守るときの顔になっていた。即ち、自分の命を惜しまず誰かの命を守るための……あの頃の表情をしていた。

 木綿季のためなら自分がどうなっても構わないという覚悟の姿勢を見せていた。

 

「とんでもなく低い割合だが、これさえクリアすれば木綿季は助かる。HIVを駆逐して健康な体になれる……! 一緒に……外を歩けるんだ……!!」

 

 説明をする和人に力が入っていた。木綿季のことを考えるといろいろなものがこみ上げてくる。ぐっと拳を握って我慢している和人の手を明日奈が優しく握りしめた。

 

「明日奈……」

 

「キリト君、頑張ろ……?」

 

「……ああ……、ありがとう……」

 

 里香はそんな二人のやり取りを見て「何だ、全然仲いいじゃない……」とでも言いたげな顔で二人のやり取りを見つめていた。

 珪子は自分の手元に置かれたドリンクの入ったコップのストローに口を当て「ズズズ」というお行儀の悪い音を立てながら不機嫌そうに二人を見つめていた。

 

「んで、簡単に段階に分けてこの作戦を説明するぞ。まずは木綿季を精神面から励まして安心させてやることだ。精神的に楽な気持ちになれば体への負担が自然と減る」

 

「…………」

 

「生きようと思う気持ちが体にエネルギーを与えるんだ……。結果、木綿季の余命はわずかでも延びる……」

 

「…………」

 

「そして、俺と明日奈で倉橋先生にこの作戦の概要と最終目的を伝える。この時点で先生が賛同してくれなかったら、アウトかもしれない。あくまで素人目線で立てた作戦だから、医学的に否定されるかもしれない」

 

 ダイシー・カフェにはかつてない緊張感が漂っていた。本来ならば、仕事で疲れたサラリーマンや、ここの酒や料理を楽しむために足を運んで、いい雰囲気で飲み食いをする場のはずが、人の生死を占う話をしていることで、張りつめた空気が流れていた。

 

「そして、ここからが一番重要なポイントだ。下準備が出来ていてもこれが失敗したら、木綿季は死ぬ(・・)。助からない」

 

 和人の口から"死ぬ"というワードが放たれた瞬間に全員の顔が強張る。心なしか和人の体も震えている。自分が何を言っているのか分かってるから……。明日奈はそんな和人の心境を見抜き、すかさず和人の手をもっと強い力で握りしめた。

 

 「大丈夫だよキリト君、私が付いてるから」そう言いたげに暖かく握りしめていた。握られた明日奈の手から温かさを感じ取った和人は少しだけ我を取り戻し、作戦の最終段階の説明を始めた。

 

「最後はどうやって木綿季のHLAに合致したドナーを用意できるかということなんだ。ここで、話の頭から言っていた作戦の正体を説明しようと思うんだが、ちょいとこいつを見てほしい」

 

 和人は自分の鞄からクリアファイルを取り出し、中から何枚か資料らしき紙を取り出してダイシー・カフェのテーブルの全員の見える位置に広げた。

 

 それをみたメンバーの反応は様々なものだった。全員「え……えええええ~~~っ!?」と口を揃えて驚いているかと思えば「……いいじゃん! やろうぜこれ! 絶対成功させようぜ!」と、正反対の意見が聞こえた気がした。

 

「キリの字~! 水くせぇぞコン畜生が! この計画を立てた時点で何でこの俺様に声をかけねーんだてめえはっ!!」

 

 遼太郎は上機嫌になると和人に絡みネックロックをかけ、中指の第二関節で和人のこめかみの部分をぐりぐりと食い込ませていた。

 一方の和人は至極面倒くさそうな表情を浮かべて周りのメンバーに助けを求めていたが、意味ありげな笑みを浮かべながら誰も和人を助け出そうとはしなかった。

 

「あ、アンタ本気でこれを決行するつもりなの…!?」

 

 一方で一番冷静な詩乃が度の入ってない眼鏡越しに驚愕の表情を見せながら固まっていた。何故みんな口を揃えて同じような反応をしてみせるんだろう。そんなにこの作戦におかしなところでもあるのだろうか? と疑問の念を抱いていた。

 しかし和人の意思は固かった、思い当たる節はもうこれしかない、これ以外にドナーを集める方法に心当たりはない。故に覚悟も決まっていた。

 

「ああ、本気だ。もうこれしかない」

 

 和人は真面目な顔つきでみんなを見渡した。その固い意思と真剣な眼差しから、それがこの計画を立てた時点で勝算があってのことなのだろうと悟っていた。

 最初こそ驚きのあまり言葉も出なかったが、一回時間をおいて冷静に考えてみるとあながちいけなくもないと思い始めているメンバーもちらほら現れ始めていた。

 

「でもでも、これすっごいイケる気がするよ! これならきっとユウキちゃん助かるよ!」

 

 作戦がいけるかもしれないと思ったフィリアこと琴音がフォローを入れた。和人にとって珪子の次に純粋無垢な明るいこの性格は本当にありがたかった。

 

「そ、そうねえ、一見無茶苦茶に思えるけど、結構合理的な部分もあることだし、頭ごなしに否定は出来ないっつーか……」

 

 里香は苦笑いを作り、困ったように周りに賛同を求めていた。珪子も同様苦笑いで見つめていた。理解はしていてもどこか納得は出来ていないといった様子だった。

 先ほどまで緊迫した空気に包まれていたダイシー・カフェだったが、和人から伝えられたぶっ飛んだ作戦を聞かされたことで、少しだけ緊張感が緩んでいた。

 

「うん、私も最初聞いた時驚いたよ……。でも馬鹿っぽいけどすごいキリト君らしいというかなんというか、あはは……」

 

「アスナ、それ……フォローになってないわよ……」

 

 明日奈がフォローになってないフォローを入れると、すかさず冷静に詩乃からツッコミが入った。フォローというより馬鹿っぽいだのなんだのと。

 むしろ和人のメンタルにトドメを刺そうとしているようにも見えてしまう。周りからあまりいい反応を得られなかった和人は解せない表情を浮かべながら肩を落として落ち込んでしまっていた。

 

「……どうせ俺は異端児ですよ……」

 

 和人はそう言いながら、一番近くにあった椅子に腰を落として、テーブルに手を当て顔を突っ伏していじけてしまった。そんな子供じみた和人に、先ほどトドメを刺した明日奈が駆け寄って気休めとも取れる励ましの言葉を掛けていた。

 

 和人が少しだけ不機嫌になり、話が中々前進しなさそうな空気になってしまったが、その空気をぶち壊すべく、社会人の遼太郎が声を張り上げ意気込んで、早速行動に移そうと全員に活を入れだした。

 

「ようし! そうと決まれば善は急げだ! 早速その横浜の病院に木綿季ちゃん励ましに行ったろうぜぇ!!」

 

 遼太郎が全員にそう言い放つと店内のあちらこちらから「オーッ!!」と気合のこもった返事が返ってきた。SAOをプレイしている当時を思わせるような全員の一致団結。きっとこの力は限りないエネルギーとなって、木綿季を支えるであろう。

 

 それは和人にとっても心の底からありがたいものであった。久しぶりに感じた"仲間"の暖かさだった。和人はありがたいと思ったと同時に、もっと早く頼ればよかったと少し後悔の気持ちも胸に抱いていた。

 

「みんな? アミュスフィアは持ったわね?」

 

 出掛ける準備をしていた詩乃が全員に確認を取った。すると全員自分の荷物からアミュスフィアを取り出し上に高く掲げ、準備オッケーといった合図を送った。

 ギルバートに至ってはLANケーブルのHUBまで持ち込んでおり、相当準備がいいことこの上ない。元々持ってきてくれと頼んだのは和人だったのだが。

 

「よし、じゃあ車を出すからみんな店の前に集まっててくれ。俺は嫁さんに断ってからすぐ行くからよ」

 

 ギルバートは店の奥に消えると奥さんに声を掛け、少し離れた駐車場に車を取りに行った。他のメンバーは続々と入口のドアから外に出ていった。

 ぞろぞろとメンバーが外に出ていく中、遼太郎だけが一人店の中に残り、店内が遼太郎と和人だけという状況になっていた。和人は何で遼太郎は外にいかないんだ? と思いながらこのよくわからない状況を見守っていた。

 

「キリの字、さっきの計画だが……あんときはただバカみたいに喜んだだけだったがよ。……俺は悪くねえと思うぜ?」

 

「ク、クライン……」

 

「むしろ現実的で合理的だ。演出面でちと劣るとこもあっからよ、そこはこの俺様が修正してやる。これでも社会に勤めてんだ、企画の修正とマスターアップはまかせとけよ?」

 

 そう言うと遼太郎は煙草を片手に持ちながら、力強く和人の背中をバシンと叩いた。だぼだぼのワイシャツに曲がったネクタイ。微妙にヤニ臭いその背中は、過去になくとてつもなく頼もしく見えた。

 

「ああ、ありがとな……クライン……」

 

 和人はうっかりまた涙が出そうになったがこらえていた。遼太郎から気付かれないように瞼をこすると自分も荷物をまとめて外に出た。こんなに頼もしい仲間に囲まれて心底俺は幸せものだな、そう思った。

 

 そして和人と明日奈は和人のバイクで、それ以外のメンバーはギルバートの用意したワゴン車に乗り込んで、木綿季の入院している横浜港北総合病院へと走り出していった。たった一人の少女の命を救うために、SAO時代の仲間たちが一致団結して助けようと動き始めていた。

 

 




 
 はい、比較的今回は明るい話で締めくくれたかなと思います。そしてもう勘のいい読者さんは……計画の最終段階がなんなのかがわかってきたかもしれないですね……。

 それでは、また以下次回!!
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