ソードアート・オンライン マザーズ・ロザリオ ボクの生きる意味 作:むこ(連載継続頑張ります)
本日の木曜日、仕事は休みなのですが、次の水曜まで休みがないのと、諸事情で来週の木曜まで執筆が出来ないので、今日中にもう1話を、48話を投稿いたします。
今からワンコの散歩と朝食を済ませましたら、すぐさま48話の執筆にとりかかります。
49話の投稿までは大変間が空いてしまいますが何卒ご理解をいただければと思います。
ああもうリアリゼーションもクリアしたいのにぃぃぃぃぃ。
ちなみにユウキは好感度MAXにしました。ベッドインも5回果たしてアイングラウンドでもキリユウにしてやりました。やったぜおい。
そしてユウキと楽しく手を繋いで歩いていたら、その現場をアスナさんに目撃されてしまいました。
「楽しそうね…」
という一言だけ残して。トッテモコワカッタデス。
だが後悔はしていません。このまま横浜港北総合病院に駆け落ちでも私は一向にかまわん!
前書きが随分長くなってしまいました。
今回は砂糖成分多めです。しかし、内容的には和人と木綿季ではありません。
その成分の元凶とは…?
それではご覧ください。
和人、木綿季、詩乃の三人は和人の思い出の場所でもある「トップキッズ川越鶴ヶ島店」を後にして川越駅方面へと足を運んでいた。
和人が幼少の頃から通い詰めていたこの思い出のお店が、明日の営業を最後に閉店を迎えることになった。
じっちゃんと呼び親しい仲となっていた店主の年齢的にも肉体的にも、また経営状況的にも続けるのは困難となり、閉店せざるを得なくなってしまっていた。
和人一行は何か買うものはないかと探したものの、特に目ぼしいものはなく。
目的のアミュスフィアも売り切れていたため、名残惜しいが詩乃の友達との約束もあるため、諦めて店を出ようとした。
そこで店主は何を思ったのか店の奥へと姿を消し、しばらくすると箱のようなものを持ち出してきた。
和人と木綿季は何が入ってるんだと思いながら中身を確かめるために箱を開けてみた。
驚いたことに箱の中身は店舗贈呈用に限定生産されたパープルカラーのアミュスフィアであった。
太っ腹にも店主のじっちゃんはこれを木綿季にくれるという。
木綿季は最初は驚き戸惑ったが、店主も頑なにあげると言って聞かないため、木綿季は受け取ることにした。
タダで受け取るのは申し訳ないと思いつつも、本当は心の底から嬉しく思っていた木綿季であった。
和人はいつかまたじっちゃんのとこに遊びにくるという約束をして、店を後にした。
家族のいないじっちゃんにとって、和人は孫のような存在だったに違いない。
今後は静かに…余生を過ごすことだろう、たまに遊びに来る孫を相手に、レトロゲームで大人げない勝ち方をして…。
西暦2026年10月31日土曜日 午前10:10 川越市内
木綿季は和人と詩乃と共に、川越駅方面へと歩いていた。
自分の鞄に入っている限定生産のアミュスフィアを、目をキラキラさせながら見つめている。
「嬉しそうだな? 木綿季」
「うん! だって…ボクゲーム機受け取るのなんて初めてだもん!」
「え…でもメディキュボイド使ってただろ?」
「んー、あれは貰ったわけじゃないもん。臨床試験で使ってただけだから…貰ったっていうのとは違うと思うよ?」
「そうか…。そういえば…最近全然ダイブしてないな…」
「あ…ボクもだ…。病気が治ってから一回もダイブしてない…、スリーピング・ナイツのみんなどうしてるかなー…」
「…そういえばアンタたち、ALOでとんでもないコトしてくれたわよね…」
詩乃が突如として口を割って入った。和人と木綿季は心当たりがないのかキョトンとした表情を浮かべていた。
「え…? とんでもないことって…?」
「ボクたち…何かやらかしたかな…」
和人と木綿季は自分たちが罪深いことをしてしまったのではないか?と慌てふためいていた。
これがリズやクラインの口から聞かされたのなら、ハイハイと流すところだったが、詩乃の口から聞かされた為、深刻な話が始まるのだろうと勝手に想像してしまっていた。
「えっと…シノンさん…。俺たち…何かやらかしましたでしょうか…?」
和人は両手を前で組み、もじもじとした動作で詩乃に事のあらましを尋ねた。
男のくせにあざとい、実にあざとい仕草であった。後ろでその様子を見ていた木綿季は和人に萌えていた。
「え…本当に覚えがないの…?」
「ああ…、やらかしたっていえば…ライブぐらいしか思いつかないけど…」
「…ねえ和人、もしかして…アレのことじゃ…ないかな…ホラ…」
木綿季のアレという言葉で、和人はここ最近でALOでやったことを振り返っていた。
周りにとんでもないことと騒がれるぐらいのことと言ったら…、やはりライブの事しか思い浮かばない。
そうだとすると…それより前の出来事か…。明日奈と別れてからは特に何もしてなかったから…、木綿季と付き合い始めてからのことになるな。
木綿季と行動し始めてからやったこと…、二刀流でユウキと
あれ?確かになんかとんでもないことしてないか? 俺たち。
「…もしかしなくても…アレだよな…、29層の…」
「…だよね…ボクたちが成し遂げたすごいことって言ったら、ライブ以外だとそれしか思い浮かばないよ…」
「漸く思い出した? アンタたちが、たった二人でフロアボスを倒しちゃったもんだから…あれから大変だったのよ?」
「え…?」
「…まず当然のようにMMOトゥモローに記事が掲載されたわ。ALOの新生アインクラッド第29層のボスが、たった二人のプレイヤーによって討伐された!ってね…」
「…そうだったのか…」
「あの後それどころじゃなかったから…その時は気にもとめてなかったよ…あはは…」
詩乃は引き続き、呆れた表情で話を続けた。
「んで…その事実は運営の耳にもしっかりと届いたの。そしてその後…、ALOは大規模な臨時メンテナンスに入ったのよ。そしたらもう…呆れたことに迷宮区とフロアボスが理不尽なぐらいに強化されちゃったのよ」
「え…」
「え…」
「運営からしたら攻略を早く、それも簡単に進められちゃったらコンテンツの寿命が縮むから必死だったみたいよ。まあ…あれからユーザーから無数のクレームが来て、今はある程度バランスが調整されたけど」
そう、木綿季の病気が治る前のこと。
キリトとユウキはたった二人で新生アインクラッドの第29層のフロアボスを倒してしまっていた。
倒してしまったといえば簡単に聞こえるが、二人とも死に物狂いで戦った結果であった。
あの時の判断が一つでも間違っていたならば、二人ともやられてリメインライト化してたであろう。
「そんなことがあったんだ…」
「そういえば俺たち…一緒に狩りしたりすることはあっても、迷宮区には足を運んでなかったな…」
「いつ移植手術が始まるかわからなかったからね…、フィールドモンスターを狩ったり、ご飯食べたり釣りしたりしてたよね」
現実の和人と木綿季のやりとりを見ると、とても29層のフロアボスを倒した猛者には見えないほど、のほほんとしていた。こんなふわふわした二人が本当に"黒の剣士"と"絶剣"なのか…?と。
詩乃はその姿に「ダメだこりゃ」と大きくため息を吐いた。
「はぁ…なんかもうどうでもよくなってきちゃったわ…、アンタらみてると…」
詩乃が頭を抱えてると、詩乃のスマホに着信が入った。
ポケットからスマホを取り出してディスプレイを確認してみると、そこには詩乃のよく知っている名前が表示されていた。
「あ…朝話した友達からだわ…」
詩乃はスマホの通話アイコンをタップした。するとスピーカーから男と思える声が聞こえてきた。
『もしもし? 朝田さん?』
「新川君! 電話くれたってことは…もうついたの?」
詩乃の表情が明るくなった。
その嬉しそうな表情をみて、和人と木綿季は目を丸くしていた。
何せ詩乃がすごく自然な笑顔を見せていたからだ。こんな柔らかい笑顔も出来るんだなと感じていた。
和人と木綿季は互いに視線を合わせると揃ってにやけ顔をして、その視線を再び詩乃へと向けていた。
ああ…これは間違いない…、二人とも…悪魔の笑みをしていらっしゃる…。
『うん…さっきついたとこ。朝田さんは今どこらへんにいるの? 僕…川越は初めてだから…どこいったらいいか…』
「あ…うん、今駅に向かってるとこ。多分あと5分ぐらいで着くと思うから…改札の所で待っててくれる?」
『わかった! 待ってるね。…それで…朝田さん…、最近体調の方は…どう?』
「うん…、最近は平気。ちょっとね…いいことがあって…」
『…そうか、それならよかった。でもあまり無理はしないでね? 僕もなるべく力になるから…』
「うん…うん…、ありがとう…新川君…」
『それじゃ…待ってるね、また…後で』
「うん! また…後で…!」
通話を終えた詩乃は通話終了のアイコンをタップすると、「ふぅ~…」と大きく息を吐いた。
そして、心から安心したようなほっこりとした表情を見せていた。
しばらくして詩乃は、そんな自分をニヤニヤと見つめる二つの視線に気付いた。
「ほう…なるほどなるほど…」
「へぇ~、シノンも隅に置けないねぇ~…」
視線の正体は言わずもがな、和人と木綿季であった。
和人は自分への好意には疎いくせに、周りのコレに対するアレには大変に敏感なのであった。
その顔には、普段いじくられてるお返しに今日はどんなことをしてやろうか、と書かれていた。
「や…ちがっ…違うの! 新川君とは…そういうのじゃ…。そ…そりゃ…何かあるとすぐ力になってくれて…、いつも私を…支えてくれて…頼りにしてるけど…」
「ほうほうほうほう」
「いや~…、青春してますなあ…」
「んもう! 変なこと言ってからかわないで!!」
詩乃は顔を真っ赤にしながら持ってる鞄をブンブンと振りまわした。
和人と木綿季はそれを楽しそうに避けていた。その表情はいい玩具をみつけてしまった。そんな表情をしていた。
「まあまあ…幸せになりなよ? シノン?」
「だから…違うってのにっ!!」
三人は同じようなやりとりを飽きもせずに繰り返しながら、川越駅へと向かっていった。
目的地に近付くにつれて、詩乃は体力を使い過ぎたのか息が上がってしまっていた。
和人達の住んでいる川越にある川越駅は日本の鉄道史上では比較的歴史が浅い。
大正4年に川越町に川越西町駅として開業、当時は川越の市街地からはずれた位置にあった。
そして後々の川越線の開業に伴う駅名改称と、市街地の南下により市を代表する駅となった。
現在は全国的に有名な観光名所の横丁もあることから、大勢の人達が利用している駅となっている。
そんな地元の川越駅に、和人たちは漸く到着していた。
真っすぐ進んでいればこんなに時間はかからなかったろうに、途中途中で余計なことをしていたばっかりに、少しだけ遅れての到着となった。
駅構内に入るなり、詩乃は恭二の姿を探していた。改札で待っててと伝えたので、大人しく改札で待っているはずだ。少しずつ歩いていくと切符売り場が目に入り、近くに改札口も見受けられた。
その近くに詩乃のよく知る人物がスマホを片手に佇んでいた。
「新川君!」
「あ…、朝田さん!」
恭二の姿を視認するなり、詩乃は駆け足で恭二のもとへと足を急がせた。
その嬉しそうな姿を見ると、和人たちは「やっぱりそういう関係なんじゃん」と思っていた。
「ごめんね…待たせちゃって…」
「ううん、僕は平気だよ。…それで…あの人たちが…朝田さんのお友達?」
恭二の視線の先には和人と木綿季の姿があった。
二人とも何をやっているのかたった二人でエグザ〇ルをやっていた。付近を通る通行人や電車の利用客の視線が非常に痛かった。詩乃は今この瞬間だけは赤の他人でいたい、そう思っていた。
「…うん…認めたくないけど…」
「あはは…か、かわった人たちだね…」
詩乃は恥ずかしさを振り切って和人たちに歩み寄っていった。恭二もそれに続くように詩乃のあとを追って歩く。
「アンタたち、さっさとそれやめないと、鼻の穴にアルコールつけた綿棒突っ込むわよ?」
そのセリフを聞いた瞬間、和人と木綿季は動作をやめた。
そんなものをぶち込まれたら鼻がスース―しすぎて頭が痛くなってしまう。そうなるのはゴメンとばかりに二人はピタッと姿勢を正して立った。
「えっと…紹介するね、私のお友達の…新川恭二君…。お医者様を目指して勉強してるの」
「初めまして、新川恭二です。朝田さんとは昔同じクラスで…。よろしくお願いします」
恭二は丁寧に話すとペコリと礼儀正しく頭を下げた。
医者を目指しているだけあって、仕草と所作は大変に丁寧なものであった。
「桐ヶ谷和人…、和人でいいよ。よろしくな」
「ボクは…紺野木綿季だよ! よろしくね!」
挨拶を済ませると木綿季と和人は恭二と握手を交わした。
「なあ…多分俺たち年近いよな? だったら敬語はやめにしようぜ? 俺も君の事名前で呼びたいし」
「ボクも! 木綿季って呼んでいいからボクも恭二の事名前で呼ばせてもらうね!」
「あ…うん…。君たちがいいなら…僕も構わないけど…」
「よし、じゃあ決まりだ。よろしくな、恭二」
「よろしくね! 恭二!」
恭二は照れくさそうに笑みを見せながら頭をぽりぽりかいていた。
今まで付き合ったことのないタイプの人達だったからだ。詩乃はその様子をちょっとだけ不機嫌そうに見ていた。私達でさえ苗字で呼び合っているのに…何で木綿季たちが…と。
「ねねね、そういえばずっと気になってたんだけど…」
木綿季は身を乗り出して恭二と詩乃に質問を投げかけた。
「恭二とシノンって付き合ってるの?」
木綿季が爆弾を投下した。
おそらく純粋な興味本位で聞いてみたのだろうが、常人にはなかなか聞けないようなことをホイホイと聞いてきた質問に、恭二と詩乃は固まってしまっていた。和人は腹を押さえて笑いをこらえていた。
自分がいじくられるのは心底嫌だが、他人がいじくられるのには大変に上機嫌な様子だった。それが普段からかってくる詩乃となれば尚更だった。後からの報復が怖いが笑わずにはいられない。
「え…や…だから…その…!」
「あはは…いきなりすごいことを聞くね…木綿季ちゃんは…」
詩乃は顔を真っ赤にしていた。詩乃自体も決して恭二との関係がこれ以上進展することにやぶさかではない。
しかし若さというものか、なかなかその先の一歩を踏み込めないでいたのだ。
恭二はと言うと照れくさそうな表情を浮かべつつも、参ったなあといった顔になりながらも顔をぽりぽりとかいていた。
「だって…二人ともすっごい仲良さそうだし。シノンなんか恭二からの電話に出たときなんかすっごい嬉しそうな顔してたよ?」
「え…あ…うぅ…。木綿季…もうお願いだからそれ以上何もしゃべらないで…!」
「あははは! シノン顔真っ赤ー! 可愛いー!」
詩乃は真っ赤になった顔を隠すかのように両手で覆ってしまった。本人もこんな形でいじくられるのは初めてなので、どうやって対応したらいいかわからないようで困り果てていた。
恭二は見てていたたまれなくなったのか、これ以上からかうと可哀そうだよと木綿季を制止させた。
「あははは…、それじゃあそろそろ移動しようか? どこを見て回るんだい?」
「その辺はこの地元民の俺に任せてくれ」
和人が胸に手を当てて、自信満々に答えた。
川越の観光名所と言えばあそこしかないのだが、この人数でゆっくり食べ歩きながら楽しむには十分なスポットだ。
「んじゃあお願いしようかな、和人」
「ボクもいったことないから楽しみだなー!」
「…………」
詩乃は変わらず下を向いて顔を両手で押さえていた。
「朝田さん大丈夫?」
「あ…うん…だい…じょぶ…」
恭二は動けそうにない詩乃に対して優しくエスコートするかのように、右手を差し伸べた。
「行こ、朝田さん」
「え…、あ…う…うん…」
詩乃は導かれるまま恭二の手を握った。
少しだけ平静を取り戻したかのように見えたが、心臓はバックバクであった。
木綿季にあのようなことを言われて、自分は恭二に対してこんな感情を持っていたの?といった気持ちになっていた。
勿論、詩乃にとって恭二は初めて心から信頼できる友人であった。
自分の壮絶な過去を最初に受け入れ、軽蔑することなく理解してくれていた。
恭二は詩乃にとって初めての心の寄りどころでもあったのだ。
私生活に少しだけだらしない所があるが、性格は優しいし爽やか。頭もいいし気が利く、顔は童顔で可愛い系の男子に分類されるだろう。
そんなことを考えてしまったら詩乃はまた恥ずかしくなってきてしまい、恭二にエスコートされながらも俯いて顔を真っ赤にしていた。完全に今、恭二のことを親友ではなく、異性として意識してしまっていたのだ。
「ねね! クレープ食べようよ! クレープ!」
目的地にいく途中のクレープ屋が目に入ってしまった木綿季が、クレープが食べたいと言い始めた。
つい2時間前にトーストを4枚も完食しておいて、まだ食べるというのだ。
病気だったことを考えると喜ばしいことなのだが、回復しすぎて逆に心配になってくる。
オーバーライフ気味にならなければいいのだが。
「ねーかずとー、いいでしょー…?」
「う…わかったよ…仕方ないな…」
「わーいやったー!」
和人は抵抗しても無駄だとわかっていたのか、今回もあっさりと折れた。和人が木綿季のお願いを断れる日は来るのだろうか? 否、未来永劫来ないであろう。
「朝田さんも食べたい?」
恭二が詩乃に尋ねてみる。しかし詩乃は俯いて顔を赤くしたままで恭二の声は聞こえていないようだった。恭二は顔を覗き込んで詩乃に意識があるかどうか確認する。
「朝田さん?」
急に恭二が視界に入ってきたので詩乃は驚き、後方に大きくのけぞった。
「ひゃあっ!?」
「うわっ、びっくりした…」
「あ…ご…ごめん…新川くん…。えっと…なんだろ…」
再び心臓の鼓動が早くなる。今日の私はどうしたのだろう?
7年前…、強盗を銃で撃ち殺した時よりも心臓がバクバクいっている…。今日の私は変だ…。
帰ってすぐベッドで寝たい…休みたい…、そう思っていた。
「クレープだって、木綿季ちゃんが食べたいから和人が買いに行くみたい。朝田さんも食べる?」
「あ…うん。じゃあ…いただこうかな…」
「了解、んじゃあ僕も買ってくるよ」
そう言いながら恭二は握っていた詩乃の手を離し、和人と共にクレープ屋へと足を運んでいった。
離された手を見て、詩乃は男の子の友達と手を繋いていたことを初めて認識していた。
「………」
「シノン? 大丈夫?」
「あ…木綿季…、うん…」
「今…、一瞬ボクのこと見失ってたでしょ?」
木綿季はにやつきながら詩乃に歩み寄っていった。普段は笑顔が眩しい天使のような木綿季だが、今日だけは小悪魔に見えていた。背中から羽が、お尻から尻尾が生えているように見えてしまう。
「え…そ…そうだったかしら…」
「…恭二の事しか見てなかったでしょ?」
「え…いや…その…」
「まあまあ、わかってるって。ボクも和人のこと好きになったときは、中々素直になれなかったから…」
木綿季の場合、好きになったことに気付いた時は素直になれないどころか、和人を拒絶していた。
当時AIDS末期だった木綿季は付き合って早々に自分が死んでしまったら、相手を悲しませてしまうだけだと思っていた。そのため和人を拒絶したのだ。
「好き…なんだよね? 恭二のコト」
「…………」
詩乃は顔を赤くしたまま、ゆっくりと頷いた。
「やっぱり!」
木綿季はその答えを聞けると、詩乃の両手を握り、元気づけるように声を掛けた。
「大丈夫だよシノン! 多分…恭二もシノンのコト好きだから!」
「え…」
「だって恭二がシノンに向けている視線、普通じゃないよ? 普通の友達を見る視線とは違うと思うの。だ・か・ら…」
木綿季は両手を握る手により強く力を込めて、更に元気づけるように詩乃を激励した。
「恭二なら大丈夫! 多分シノンにゾッコンだよ!」
「あ…うう…」
「がんばろ?シノン。ボク応援するからさ!」
「うぅ…、…が…頑張る…」
「よし決まり! ようし、ボクも頑張るぞー!」
正直木綿季に頑張られると余計なことになりかねないので、このことに関しては勘弁願いたい詩乃であった。
一方クレープ購入組は…。
「ねえ和人、その…木綿季ちゃんって…和人の…彼女なの?」
「ん? ああ…そうだよ」
「速攻肯定するんだね…、朝田さんとは正反対の反応だ」
「そっちこそどうなんだ? シノンのこと」
初対面にも関わらずズイズイいく和人であった。
木綿季のお陰でコミュ力が以前よりもついてきた様子だった。単に恭二が話しかけやすそうな感じだったのもあったが。
「え…えっと…まあ、僕としては…そういう関係になれたらいいかなあとは…思ってるけど…」
恭二は後頭部をかきながら照れくさそうに笑顔をこぼしていた。しかし、その表情は少しだけ寂しそうで切なそうな顔でもあった。
「でも…多分僕は…彼女と親しくする資格はないと思うんだ…」
「え…?」
恭二の突如とした切り返しに、和人は表情を曇らせた。
「和人…僕さ、朝田さんの元同級生って言ったけど…、初めてあったのはその時じゃなかったんだよ」
「どういうことだ…?」
「…僕さ、自分から朝田さんに接触したんだ。朝田さんの過去に興味があって…それがきっかけで朝田さんに近付いた。当時の朝田さん…いや今もそうかもしれない。朝田さんは心に深い傷を負っていたんだ。そのことを考えずに僕は自分の興味本位だけで…朝田さんに近付いたんだ」
「………」
「僕は…外見だけ見れば勉強熱心に見えるかもしれないけど、中身は自分勝手でドス黒いやつなんだよ…。こんなだから過去にいじめにあったこともあった。高校も中退しちゃって、今でこそ予備校に通って勉強してるけど…うしろめたさとかがあったからなんだ…。自分から進んでこの道を歩いてるわけじゃない…」
和人は神妙そうな顔で恭二の話を聞いていた。
「あ…ごめん…、初対面の人に対してこんなことぺらぺらと…。何で…君にこのことを話したんだろうな…、自分でもよくわからないや…あはは…」
恭二はバツが悪そうに笑ってごまかし、その場をうやむやにしようとした。
この話はなかったことにしよう、恭二の顔がそう言っていたように見えた。
「本当に自分勝手だったら、恭二の方からそんなこと切り出さないし、シノンのこともそんな風に思ってないだろ?」
「え…?」
「恭二の言う通り、シノンとの出会いが下心だったとしてもだ。彼女のことを大切に想ってるってことは変わらないんじゃないか?」
「…和人…」
「初対面で俺もこんな偉そうなこと言ってるけどさ…、多分恋って…そんなんだと思うぜ?」
「………」
恭二は考え込むようにして俯いてしまっていた。和人の言うことはごもっともだ。
確かにきっかけは詩乃に対する下心からであることは事実だった。しかし…、その下心こそが恭二にとっては問題だった。
「ありがとう…和人、でも…和人の言ったことは半分あってるけど…半分外れてるな…」
「え…どういうことだ…?」
「…ごめんね、今は話すべきじゃないと思う。このことに関しては…朝田さん本人から言い出さないと…意味がないから…」
「…そうか…。んじゃ…これ以上聞かないことにするよ…」
「…なんか…ごめんね…」
「気にするな、好きなんだろ? シノンのこと」
「…うん…まあ…ね…」
恭二はクレープ屋の行列に並びながら、遠くにいる詩乃の姿を見ていた。
想い人を見る視線を送りながら、そして…保護者のような視線でも詩乃を見つめていた。
「頑張ろうぜ?」
「うん…ありがと…」
二人が話していると、やがて列の先頭まで順番が回ってきた。
和人はメイプルバターシナモン、木綿季にはチョコバナナホイップクリーム。
恭二は塩キャラメルバター、詩乃にはガトーショコラ生クリームを購入した。
「よっ、お待たせ」
「おそーいー!」
「仕方ないだろ、行列が出来てたんだから」
「お待たせ、朝田さん。はいこれ朝田さんの分」
「あ…ありがと…新川君…」
詩乃は恭二からクレープを受け取ると、恥ずかしさを誤魔化すようにクレープにかぶりついた。
恭二はその様子を微笑ましく見つめていた。
「な…何…? 新川君…」
「あ…いや…何でもないよ…美味しいね…これ」
「あ…うん…そ、そうだね…」
二人はお互いに照れくさそうにしながらクレープにかぶりついていた。
少しだけだが以前の親友の関係から進展はあったみたいだ。その様子を少し離れたところから木綿季と和人が見守っていた。
「ね…和人…、恭二と何話してたの…?」
「ああ…ちょっとな…。シノンのこととか…」
「そうなんだ。ねね、やっぱり恭二って…」
「ああ、シノンのコトが好きなんだと」
「やっぱり…! シノンもね、恭二のコト好きなんだって!」
和人は知ってる風な表情を見せながらも「そうなんだ」と返事を返した。
そう、詩乃は恭二に好意を抱き、同じように恭二も詩乃に対して好意を持っていた。
しかし、恭二の詩乃に会おうと思ったきっかけが問題であった。
恭二は元々ミリタリーに興味があり、銃、兵器などといった油と埃に塗れた武器が大好きであった。
そこで耳にしたのが詩乃の、過去に現実で銃を使って人を殺したという事件のことだ。
自分と同い年の女の子が銃で直接人を殺した。
そのことに恭二は大変に興味を持ち、自ら詩乃のことを調べて、直接接触した。
はたから見たら偶然の出会いのようにも見えるが、実は恭二自ら計画したことであった。
最初は詩乃に出会えたことが大変うれしい恭二であったが、例の事件について詩乃が激しく心に傷を負っていることを知ると、途端に罪悪感と後ろめたさに襲われていた。
自分はなんて自己中心的なんだ。いたいけな少女の心の隙に付け込んで、自分の願望を満たすためだけに近付いた。
恭二はそんな自分の罪悪感を消し去るために、詩乃を心の底から支えることを決心した。
心にトラウマを抱えてしまったこの少女を助け出そうという使命感の導くまま、詩乃を支え続けた。
しかしその感情は使命感から、時間が経つにつれ次第に恋心へと変化していった。
詩乃もこんなに優しく接してくれる恭二に対し、最初はいい人だなぐらいにしか思ってなかった。
しかし詩乃自体も男の子とここまで近い関係を持つのは初めてで、それも次第に恭二への恋心へと変わっていったのだ。
端的に言ってしまえば二人は両想いであった。
しかし、恭二の詩乃への出会いのきっかけがつっかえ棒になり、二人の恋路の邪魔をしていた。
真実を話してしまえば詩乃に拒まれるかもしれない、そう考えてしまった。
気持ちを伝えて拒まれるぐらいなら、今のこの微妙な距離感を維持したまま、彼女の傍にい続けられる方がいいやと、そう考えていた。
「和人…、ボクね…知ってるんだ…。シノンの…秘密」
「え…?」
「でもね…これはボクが話していいことじゃないんだ。こればかりは…シノンが…詩乃が直接話さないといけないことだと思うから…」
「…恭二も同じこと言ってたな…」
「へ…そうなんだ…」
「…でも…それなら仕方ないことだ。シノンが俺に…俺たちにすべてを伝える勇気と決心がついたのなら、その時に話してもらえればいいさ。どんなに時間がかかっても…な」
「うん…そうだね…」
「…食べないのか? クレープ」
「あ…うん! 食べるよ! いただきまあーす!」
そう言うと木綿季は、今朝トーストを食べたときのように大きな口を開き、一口でクレープの四分の一を頬張っていた。美味しいものを食べたときの木綿季は、非常に幸せそうな表情を浮かべていた。
「美味いか?」
「うん! とっても美味しいよ!」
「そうか」
幸せそうな木綿季を傍で見守っている和人も、自分の分のクレープに口をつけた。
そして遠目に無言でひたすらクレープをかじり続ける二人に対して声を掛けた。
「おーいシノンに恭二! そろそろ行くぞー! 食べながらでいいから歩こう!」
「…だってさ、朝田さん。行こう」
恭二はそう言うと、再び詩乃に対して手を差し伸べた。
詩乃はそれを拒否することなく恭二の手を握り返した。恥ずかしそうにしていたが、同時に嬉しそうな表情をしていた。
その笑顔を見た恭二の表情は複雑だった。
詩乃が自分を好きでいてくれることは大変に嬉しい。しかし…それは詩乃を騙してしまっているからだった。
彼女の心を利用して彼女に近付いた。多分今のこの関係は…それがばれたときには…終わってしまうだろう。
そう考えてしまったがために、恭二の顔は複雑な表情を浮かべていたのだ。
その表情の変化に、詩乃も気付いていた。
「新川君…?」
「…あ…、ああ…ごめん。ちょっとぼーっとしてた…」
「…くすっ、変な新川君…」
「あはは…ごめんね…。行こうか、朝田さん」
「うん…」
二人は手を繋ぎながら和人達の後を追いかけた。歩を進めながらも恭二は思っていた。
今はこの関係でいい、この…微妙な距離感があるけど、お互いに意識しているという感覚がある距離で…。
僕と朝田さんは…この距離感でいいんだ…。これ以上、僕に朝田さんとの距離を詰める資格はないのだから…。
いや、そもそもにして僕が朝田さんの近くにいることすらおこがましい…。
でも…彼女が望むなら、傷つけない範囲で…出来るだけ傍にいよう…。
関係が崩れてしまったら…その時はその時だ。
その時が来たら…大人しく距離を置いて…、元の他人同士の関係になればいい。
本来なら…会うべきではなかったのだから…僕たちは…。
これで…いいんだ…。
47話ご観覧ありがとうございます。
ハイ、感想文やらツイートやらで詩乃の友達の正体について色々言及されてましたが…。
まあ皆さんお察しでしたよね(笑)
そうです、我らがアサダサンの新川恭二君でした。
このボク意味での新川君は原作と違って狂ってません。まともな精神を持っています。
詩乃に対して特別な感情を持っている点では変わりませんが、出会った切欠は原作と同じなので罪悪感を持っています。
そのことも含めて、二人の関係が次回進展があるかもしれません。
そして砂糖成分とは和人木綿季ではなく、恭二詩乃でした。
なんかまともな好青年な恭二を書いているうちに楽しくなってきました。
それでは、お昼頃投稿できるように頑張ります。
引き続き応援よろしくお願いいたします。
それでは以下次回!