ソードアート・オンライン マザーズ・ロザリオ ボクの生きる意味 作:むこ(連載継続頑張ります)
散々以前からすぐハロウィンやりますと言っておきながら全然まだイベントすら始まっていませんでした。本当にごめんなさい。次回では漸くイベントクエストが始まりますのでどうかお待ちいただければと思います。
それでは第51話、ご覧くださいませ。
西暦2026年10月31日土曜日午後19:30ALO新生アインクラッド22層 キリトのホーム
和人と木綿季はアミュスフィアを被り意識を仮想世界へと委ね、桐ヶ谷和人からキリトへ、紺野木綿季からユウキへと意識を引き継いでいった。ここは半年前に二人が最後にログアウトしたキリトのホームのリビングであった。内装は11ヶ月前に初めてユウキが足を運んだ時と変わらずそのままである。
独特のビンテージさを感じさせる全体的に古ぼけた木材で出来た壁や床と天井、モダンテイストな雰囲気が漂いジャズミュージックが似合いそうな家具が並べられた、まるで年配の夫婦が隠遁して余生を過ごしていそうな空間だった。以前と変わった所といえば暖炉の上に飾ってあったSAO時代のアスナ達との家族写真が、ユウキと一緒に新生アインクラッドの第29層を攻略したときに記念撮影した写真に差し替えられているぐらいだった。
そんな狭くも広くもないキリトのホームの何もない空間に青白く光るものが現れ、段々と人の形を形成していき、やがてそれは一人の女の子と男の子の形となり、光が徐々に弱くなっていった。
光が完全になくなると、そこには全身を黒ずくめの服装で固めた黒髪スプリガンの少年キリトと、紫のレオタードに黒紫の胸当て、腰に二本の赤色のベルトを巻き、太ももの位置から履いているスリットの入った紫の布地に赤の装飾の入ったセクシーなロングスカートに身を包んだインプの少女ユウキが姿を現した。
二人は隣り合う形で手を繋ぎながらALOに降り立っていた。半年前にログアウトしたそのままの体勢でログインしてきたのだ。同じタイミングでゆっくりと目を開けると、目の前には懐かしささえ感じる半年ぶりの仮想世界の我が家のリビングが視界に写っていた。最後に見た光景となんら変わりない住み慣れたマイホームだった。
「わあ…なんか懐かしい気がする…」
久しぶりにALOに降り立ったユウキは目の前に広がる馴染みのある空間に目を輝かせていた。天井の灯り、赤色のソファ、古ぼけた暖炉等、一つ一つが何もかも懐かしい。ここには色々な思い出があった。お互いを好きになったきっかけを作ってくれた場所、いざこざもあったけどライブの打ち合わせもやった。その後も数え切れないぐらいキリトとの思い出がある。また、この世界にやってこられて嬉しい。そう思いながらユウキは胸に手をあてて、その喜びを感じていた。
「本当だな…、懐かしいな…。あれからもう半年も経つんだな…」
キリトも同じように目の前の光景に懐かしさを感じていた。半年間手付かずであったが埃がたまらず、掃除の必要性がないのは仮想世界様様だなと、やや現実的な考えを頭に浮かべていた。
「……と、あんまりうかうかしていられないな。確かクエストが受注出来るのは21時までだったよな?」
「そうだった気がするよ? クエストの内容の詳細までは未公開なんだよね、クリアまでどれくらいかかるかわからないけどチャンスは一回だけと思ってもいいかもだね~」
二人が受けようとしている今年のハロウィンイベントはモンスター討伐タイプのクエストだった。世界樹がそびえ立つアルンの街の中央部でNPCから受注し、イベント専用エリアへと転送され、クエスト攻略開始となる。内容的に90分で回し切れそうなマラソン向けなクエストではなさそうだった。
「とりあえず時間もあんまり無いし早速アルンに向かうぞ、ユウキ」
「あ、うん。わかった! 和人!」
「……お……おいおい……」
ユウキはキリトに声を掛けられると、自分が今間違って口走ってしまった恋人の名前に気付いた。仮想世界のキリトのことをうっかり現実同様和人と呼んでしまったユウキは、それを誤魔化すかのようににっこり笑顔になり、首を斜めに傾かせ自分の頭を握り拳でコツンと叩き、舌をぺろんと出して「いっけな~い」とでも言いたそうなあざとい表情でその場を取り繕うとしていた。キリトはその様子を呆れ顔でじーっと見ていた。
「あはは…ごめんね…、現実世界での癖がつい出ちゃった…」
「頼むぞ本当に…」
「ぶー、逆にキリトは楽チンじゃんか! 木綿季がユウキに…漢字じゃなくなっただけなんだからさ!」
ユウキはまたもやキャラネームに対してクレームを付けていた。本名をそのまま使った当人に責任はあるのだが、やはりちょっとだけ納得がいかない様子だった。まあキャラネームに関してはアスナやシノン、セブンも安直なネームだが。無論キリトもであった。
「まあ…、キャラネームに関しては俺も割りかし安直だけどな。苗字と名前から取っただけだし」
「だよね~! キ・リ・トく~ん?」
キリトがほんのちょっと弱みを見せると、すかさずユウキが重箱の隅を突くように、意味ありげにキリトの名前を強調するかのように、嫌味ったらしい表情を見せながらキリトに顔を近づけて口ずさんだ。キリトはそんな顔を見せたユウキにほんのちょっとだけ腹が立ち、目の前にユウキの顔が迫ってたこともあり、思わず両手でユウキの両頬を親指と人差し指で掴み、両サイドに向かって引っ張った。
「ニギャッ!?」
「人のネームにケチをつけるのは…この口か~?」
キリトは掴んだユウキの頬っぺたを、上に引っ張ったり下に引っ張ったり、円を描くようにぐりぐりしたりして制裁を加えていた。頬を引っ張られているユウキは大袈裟なリアクションをしながら抵抗していた。別に痛感を発生させるペインアブソーバーの設定はしっかり作動しているし、ここはPK圏外でHPが減る心配もないのだが、ユウキは痛がりキリトの手を引っぺがそうとしていた。
「
「はっはっはっ! どうだ思い知ったか!」
ユウキのリアクションをたっぷりと楽しんだキリトは流石に可哀想になってきたのか、パッと両手をユウキの頬から離し、ユウキを解放した。ユウキのつねられてた両頬にあたる部分は真っ赤になっており、痛そうに頬を手で押さえていた。それと同時にキリトに向かって恨めしそうな視線を送っていた。
「大袈裟だなあ…痛いわけじゃないだろうに」
「痛くなくても気持ちの問題なの! 女の子の頬っぺをつねるなんて~、うう~!」
ユウキはまた機嫌を損ねたのか、まるで獣のように両手両指をワキワキとうねらせ、キリトに飛びかかろうとしていた。そしてキリトに迎え撃つ体勢を整わせるよりも早く、AGIを活かして床を蹴り、キリトに頭から突撃していった。ユウキの頭がキリトのみぞおちにクリーンヒットし「ぬごっ!?」と言う面白い悲鳴と共にキリトはソファに仰向けの体勢で押し倒され、ユウキがその上から覆いかぶさる形で有利な体位を得ていた。
自分に有利な体勢を獲得したユウキは今目の前にいる無防備なスプリガンの少年を一体どうしてくれようかと悪魔の笑みを見せながら、両手をワキワキとさせていた。キリトはそんなユウキを若干怯え気味の苦笑いを浮かばせながら冷や汗をかいていた。
「えと…ユウキ先生…一体何をするおつもりで…?」
「えっへっへ~! ボクに辱めを受けさせた報いは…こうだ!」
ユウキは威勢良くそう言い放つと仰向けのまま無抵抗なキリトの胸板に顔を埋めていた。予想外の行動に出たユウキの様子にキリトは頭に?マークを浮かべながら、事の成り行きを見守っていた。ユウキはというとそのままの体勢のまま動かなくなっていた。
「ユウキ…?」
「…キリト…、頭…撫でて…?」
「え…?」
意外だった。悪戯好きなユウキのことだからてっきり服の間に手を突っ込んで擽ぐったり、髪の毛をしっちゃかめっちゃかに掻き回したり、同じように頬を抓って仕返しでもしてくるものだと思っていた。なので急に甘えてきたユウキの態度をキリトは不思議に思っていた。
「なんだ急に? 撫でたり抱きしめたりは現実でいつもやってるだろ?」
「…いーから…撫でてッ」
「…全く…」
キリトは文句を言いつつもユウキの要求を飲み、現実世界でいつもやってるように右手で優しくユウキの頭を撫で回した。ユウキはその掌の感触を幸せそうにキリトの胸板に頭を埋めながら感じ取っていた。ユウキの表情は満面の笑顔になり、その笑顔を見たキリトも自然と笑顔になり、留守になってた左手でユウキを更に自分の方へと抱き寄せ、ユウキの温かさを感じ取っていた。
「えへへ…、嬉しいな…」
「相変わらず甘えん坊だな…ユウキは…」
「キリトにだけだもんッ」
「はいはい…」
二人が仮想世界でもお互いの温かさを感じていると、突如キリトの視界の右下にあたる位置に、手紙の形をしたメールアイコンが表示された。キリトのフレンドの誰かがキリトに向かってメッセージをとばしてきたのだ。半年ぶりのキリトのログインに気付いた友人が早速メッセージを飛ばしてきてくれたのだろう。
「すまんユウキ、ちょっとメッセージが入った…」
「ん…あれ、ボクにも来てる。誰からだろう?」
キリトが左手を縦にスライドさせ、フレンドリストからメール欄を表示させ内容を一つ一つ確認していくと、SAO時代からの付き合いのフレンド何人からか久しぶり!といったメッセージが何通か届いていた。ユウキの方も同じでスリーピング・ナイツの何人からかメッセージが飛ばされてきていた。懐かしさを感じると同時に、その中には嬉しい知らせの内容のメッセージも含まれていた。そのメッセージに目を通した瞬間にユウキの表情が明るくなった。
「キリト!」
「ん?なんだ? 誰からかメッセージ来てたか?」
「うん、その事なんだけど…、ちょっと一緒に来て!」
ユウキはそう言うとピョンと立ち上がり、キリトを両手で引っ張り上げて自分のストレージから転移結晶を取り出し、オブジェクト化した。それを右手に握りしめると左手でキリトの右手を掴み、含みのある笑みを見せて転移結晶を高々と上に掲げた。キリトはユウキその行動に対して?マークを浮かべながらも、黙ってユウキの言うことに従っていった。
「転移! アルン!」
ユウキが転移先を口ずさむと、ユウキとキリトのアバターが青白い光に包まれ、キリトのホームから光り輝きながら姿を消した。
――――――
同日19:33 ALO アルンの街 転移門広場前
様々な種族のプレイヤーで賑わう世界樹がそびえ立つこのアルンの街の転移門前に、先ほど転移結晶を使用したユウキとキリトが青白い光と共に姿を現した。別にキリトのホームから出て5分ばかり歩けば22層の転移門からすぐここまで来られるのだが、その数分の待ち時間すらも惜しいユウキは値段の張る転移結晶を使ってまでここに来たかった。それぐらい急ぎたかった理由が、ここアルンの街にあるというのだ。
「久しぶりだな…この街も、…ん? ユウキどうした?」
ユウキはアルンの地に足を着くなり、おでこに手を当てて周りをキョロキョロと見渡し始めた。何か探してるものでもあるのだろうか? それとも誰かを探しているのだろうか? 東西南北様々な角度で首や上半身を回して、落ち着きのない様子を見せていた。
「何か探してるのか?」
「あ…うん…、ちょっと…人がここに来てるはずなんだ。それを探してるんだけど…」
「そうなのか、んじゃあ空を飛んで探したほうが早いんじゃないのか?」
「あ…そうだね!」
ALOが空を飛べるゲームだということをすっかり忘れていたユウキは意識を背中に集中し、インプ族特有の小悪魔風な見た目の翅を背中から出現させた。 飛べることは忘れても翅の羽ばたかせ方などは感覚がしっかりと記憶していたようである。ユウキは地面を蹴って勢いよく空高く飛び上がると、遥か上空から目的の人物を探し始めた。
キリトがその様子を遥か下の地上から見守っているとユウキは目的の人物を発見したようでその人物がいるであろう方角に向かって「お~~い!」と声を上げながら両手を元気に左右にぶんぶんと振っていた。その目立つ行動に周辺にいたプレイヤーの視線が一斉にユウキに集まった。
「な…おい…あれ…、もしかして絶剣のユウキちゃん…じゃないか?」
「ホントだぜ…ALOに復帰したんだな…」
「てことは病気が治ったってことだよな? そりゃめでたい!」
ユウキの存在に気付いた転移門広場の周辺にいるALOプレイヤーが、ユウキの元気な姿を見て安堵の表情を浮かべていた。ユウキはすっかりセブン同様、剣の腕以外でも有名人になっていたのだ。あれからなんの報道もなかったのでALO内では死亡説などというとんでもない噂も流れていたが、こうして実際に姿を見せてくれたことにより、病気が治ったんだと認識してくれたようだ。そんなプレイヤー達の反応を見て、キリトも思わず笑顔を見せていた。
ユウキは一旦キリトのいる地上に降りてきてキリトと合流した。このままキリトと一緒に見つけた知り合いのもとへと行くつもりのようだった。ユウキがキリトの腕を掴み「キリトあっちだよ!行こう!」と言い放ち、右手で半ば強引にキリトの腕を引っ張って誘導していった。そんな走り去っていくユウキを見送るかのように、周りのプレイヤーが病気完治と退院のお祝いの言葉をユウキに送っていた。
「おーいユウキちゃーん! 退院おめでとうー!」
「病気治ってよかったよ! 本当におめでとうなー!」
「また俺と
「歌も聞きたいぞー! また歌ってくれよなー!」
数々のプレイヤーからの声援に気付いたユウキはキリトを引っ張りながらも後方を振り向いて空いている左手を大きく降ってみんなからの声援に笑顔で応えた。
「みんなありがとー! お陰でボクはすっかり元気になったよー! ちゃんとお礼言いたいけど…急いでるからまたねー!」
「おうよー! 元気でなー!」
「ブラッキー先生! 幸せにしてやれよー!」
ユウキがお礼の言葉を送ると、プレイヤー達からは祝福の大声援が巻き起こった。ユウキのALOでのイメージは絶剣であると同時に華麗に元気に歌う絶歌としての二つ名もすっかりと定着しているようだった。そしてやはり野次の矛先はキリトへも向かっていたのであった。キリトは苦笑いを浮かべていたが悪い気はしなかった。もうALO全体がキリト達を認めてしまっているようなものだったからだ。一方ユウキは笑顔で照れくさそうに頭をぽりぽりとかいていた。
「…みんな…いい人たちだね…」
「…ああ…本当にな…、だからALOが続いているのかもな…」
「…そうかもね…」
ALOプレイヤーの温かい声援を受け取った二人が現実世界で200メートルほどの距離を駆け抜けると、その向かっている前方に数人のプレイヤーがいることに気が付いた。そこにいるプレイヤーは、全員キリト達の知っている顔だった。キリト達が駆け寄ってくると、その姿を視認したプレイヤーが全員視線をこちら側に向け、先ほどの大勢のプレイヤー達と同様に温かい声援をユウキ達に向けて送った。
「ユウキ!」
「ユウキ…」
「ユウキッ!」
「よっ! リーダー!」
ユウキ達を温かく出迎えてくれたのはウンディーネの少女が二人、スプリガンの少女が一人と、サラマンダーの少年が一人の構成のプレイヤー達だった。その姿を見れたユウキに次第に笑顔が零れ、地面を蹴ってそのプレイヤーの集団に元気いっぱいに突っ込んでいった。キリトはその光景を後ろで微笑ましくほっこりとした表情で見守っていた。
「みんなー! 久しぶりだよー! 元気だったー?」
「元気も何も…ご覧の通りだよ! ユウキ!」
まず最初にユウキに駆け寄ってきたのはキリトの元恋人で、ユウキの一番の親友でもあるアスナだった。ウンディーネの特徴である青くてさらっとしたロングヘア、白くて清楚なイメージを感じさせるクロークに身を包んで、ユウキを出迎えていた。
ユウキとは現実世界でもちょくちょく会っていたのだが、同じゲームを遊んでいた身としては、こちらの世界に戻ってきてくれたことがやっぱり嬉しかったのだ。キリトから今日ALOに復帰するということをメールで知らされ、今日集められるだけのスリーピング・ナイツのメンバーに声を掛けて、ここに集まってくれたというわけだ。
「ユウキ…元気になったみたいで…よかったわ…」
「シウネー…!」
次に駆け寄ってきたのは、ユウキがリーダーを務めていたギルド「スリーピング・ナイツ」のメンバーで一番仲が良かったウンディーネのシウネーだった。アスナより長い腰まで伸びた青いロングヘアー、昔ながらのRPGによくいる賢者を彷彿とさせるような水色と白を基調とした清楚なイメージのウィッチクロークに身を包んでいた。おっとりとした喋り方がその清楚さにより拍車をかけていた。実際は清楚というよりもどこか抜けているところがある彼女であったが、今はその話は置いておくとしよう。
「ユウキ…この前は言えなかったけど…退院おめでとう…。本当に治ってよかったわ…」
シウネーはそう言うとその瞳に涙を浮かべ、ユウキを抱き締めていた。ユウキもその抱擁に応えるようにシウネーの胸に顔を埋めて、彼女の背中に両手を回してシウネーを抱き締めていた。アスナとは違った暖かい匂いがした、シウネーの優しい匂いだ、懐かしいなあ…。
しばらくの間二人が抱擁を交わしていると、シウネーの方から距離を置き、ニッコリとユウキに笑顔を見せた。その笑顔を見て心から嬉しくなったユウキであったが、一つだけ気になることがあった。いや一つどころか…気になることがたくさんあった。どうしてもシウネー達に聞いておかなければいけないことがある、それを聞かなくては…。
「そういえばシウネー…、シウネー達と…他のスリーピング・ナイツの皆は…大丈夫なの…?」
ユウキは中々聞きにくい質問をシウネー達に投げかけた。元々ギルド「スリーピング・ナイツ」は病気を抱えたメンバーだけで構成されたギルドだった。ALO以前からも様々なVRMMOの世界を一緒に旅し、苦楽を共にしてきた掛け替えのない絆で結ばれた仲間たちなのだ。既に今いるメンバーを除くと初代リーダー、ユウキの実の姉の紺野藍子ことランはHIVで他界。同じギルドのメンバーであるクロービス、メリダも続いてこの世を去った。ボクはキリトのお陰で病気が無事治ったからまだいい、でも…他のギルドの皆の体は…一体どうなってるの…?
かつてボクに声を掛けてくれたアスナやキリトも、こんな心境だったのかな。目の前の大切な人が消えてしまうんじゃないかっていうこの感覚を、病気が治る以前のボクに向かって感じてくれてたのかな。だとしたら…ボクはやっぱりものすっごく皆に心配かけさせてしまっていたんだね…。
ユウキはそう思いながら心配そうな視線をスリーピング・ナイツの皆に送っていたが、そんな心配そうなユウキを尻目にシウネーを始め、ここにいるギルドのメンバーは笑顔でユウキに返事を返した。
「ユウキ…大丈夫よ、ここにいないメンバーも含めて…みんな身体が良い傾向に向かっているの…」
「…え…?」
ユウキは目を丸くして驚いた。シウネーの口から放たれた言葉が信じられなかった。少なくともユウキがHIVウィルスの活動が控えめになる以前倉橋から自身の余命を宣告されたとき、自分の他にも余命僅かと宣告されているメンバーがいたのだ。そもそも連絡を長い期間取れていなかったとはいえ、二度と会えなくなるメンバーが出てしまうと覚悟していたこともあった。しかし現実は違っていた。実際目の前にいるシウネーを始めとするスリーピング・ナイツのメンバーはアバターだけでなく、その現実の世界でも元気にやっているよとでも言いたげな立ち居振る舞いだった。
「リーダー…アタシたちもね…、回復傾向にあるんだってさ…」
「オレもだ、新薬の投与がかなり効果的みたいでさ、このままいけば完治も夢じゃないって言われたんだ」
そう言いながらユウキの前に歩を進めてきたのは、同じくスリーピング・ナイツのメンバーであるスプリガンの女性のノリ、サラマンダーの少年ジュンであった。ノリは患者であるにもかかわらず、仮想世界とは言えお酒を飲んだくっており、打ち上げの度にユウキたちに絡むほど酒癖が悪いのんべえプレイヤーだ。だが素面になると面倒見がよく、ユウキにとっても頼りになるご近所のお姉さんといった認識だった。
ジュンは一時期アスナからいい感じじゃないと言われたこともあったが、ユウキにジュンへの恋愛感情は当初から毛頭なく、むしろ煩くて世話するのが大変な弟分といった感じだった。だが実際、アスナ経由でユウキの病気が完治し、無事に退院したと聞かされた時に、一番涙を流したのは何を隠そうこのジュンだったという。なんだかんだ普段から文句を垂れながらも一番ユウキのことを心配していたのである。
「そう…なんだ…。よかった…みんな大丈夫そうなんだ…」
三人の口から自分たちは大丈夫と聞かされてユウキはほっと胸を撫でおろした。しかしそれでもユウキにはまだ気になることがあった。そう、目の前のシウネーのことである。自分と同様、不治の病と聞かされていたからである。ユウキの場合は骨髄移植によって奇跡の完治を果たしたが、そんな都合のいいことがそうそう起こるはずがない。ユウキの場合は何万何十万と届けられた白人ドナーの中から倉橋が一ヶ月を費やし必死に探した結果、なんとか見つけ出し、手術までこぎつけ、無事に拒絶反応も起こることなく完治にまで至ったのだ。
それが奇跡中の奇跡だということは重々承知していた。身をもってわかっていた。だから「急性白血病」を患っているこの目の前のシウネーだって、今もこうしてALOをやっていられるのが不思議なくらいなのだ。ユウキが心配するのは当然のことであった。だからこそ気になったのである。どうして今、シウネーはここにいられるんだろうと?
「シウネー、こんなことを聞くのは…すっごい不躾過ぎるかもしれないんだけど…聞くね。シウネーは…どうしてまだ生きてられてるの…?」
ユウキは意を決してシウネーに今の身体について問うてみた。その聞き方は普通なら君は死んでしまっていてもうこの世にいないはずだと言っているようにも聞こえた。普通なら失礼極まりない発言だが、同じ生と死の境目を経験したユウキだからこそ聞ける質問であった。シウネーはユウキからの質問に、怒るどころか優しくニッコリと微笑んで答えを返した。
「ユウキ、私の命はね……貴方が救ってくれたのよ…?」
「え、ボ…ボクが…?」
ユウキは目を丸くして驚いていた。ボクがいつシウネーの病気を治したというのだ? 医者でも…そもそも学生ですらないボクが。それどころかボクだってついこの前までHIVと…AIDSと必死に闘っていた。そのボクがいつ…シウネーを助けたっていうんだろう…?
ユウキは深刻な表情を浮かべながらシウネーとのここ最近の接点を探していた、しかしやはりALOで一緒に遊んだこと以外思い浮かばなかった。ユウキが頭を抱えて悩んでいると、そんなユウキに助け舟を出すようにキリトが前へ出てきて、ユウキの肩をポンと掴みシウネーに向かって声を掛けた。その顔は何か心当たりがあるようにも見えた。
「シウネーさん、ユウキがシウネーさんのことを助けたっていうのは…もしかして骨髄移植のことじゃないか?」
「え…骨髄移植って…ボクと同じ…?」
キリトからの回答に信じられないような表情を見せたユウキが慌ててシウネーに視線を合わせると、またシウネーがニコっと笑顔を見せた。おそらく肯定の意味を込めた笑顔なのだろう。シウネーは笑顔を見せると表情を変え、ここ最近自分に起きたことをゆっくりと語り出した。
「実はねユウキ…、貴方たちがライブを行ったあの日から…日本中の骨髄バンクに世界中から骨髄ドナーの提供が集まったの。HIVだけじゃなくて、骨髄移植によって治る可能性がある病気を患っているすべての人達のために…」
「HIVだけじゃなく…?」
「ええ…、その集まった骨髄ドナーの中にね…、私の体の細胞に合う骨髄が見つかったの。でも私の場合…抗がん剤の量が多くて…途中副作用に耐えきれなくて何度も死にたいって思ったことがあったの。でもHIVで苦しんでいるユウキの事を考えたら…私も負けられないぞって思って…、いろいろな副作用が襲ってきたけど…なんとか…頑張れたの…」
「シウネー…」
「その骨髄ドナーが提供されたきっかけを作ってくれたのが…ユウキ、アナタのライブだったのよ…」
「え…ボクの…?」
自分の病気が治った経緯を全て話したシウネーは再びユウキを抱き締めた。命の恩人でもあるユウキを温かく精一杯自分の胸の中に抱き寄せた。瞳に涙を浮かべ、ユウキに心からの感謝の気持ちを込めて…。ユウキも信じられないような表情を浮かべたままにしていたが、以前キリトと一緒に読んだことのある記事の事を思い出していた。あの時読んだ記事にはこう書かれていた「国内で骨髄移植によって白血病が完治の傾向にある患者が続出」とこう書かれていた。そう、シウネーはこの記事に書かれていた患者の一人だったのだ。
「…あの時の白血病患者って…シウネーの…こと…だったんだね…」
「ええ…、ユウキが…私を救ってくれたの…。本当に…ありがとう…ユウキ…。私を…救ってくれて…ありが…とう…」
シウネーは大粒の涙を流していた、自分の命が助かったことの喜びの涙と、その道筋を照らしてくれた我らがギルドリーダー、ユウキに対して感謝の気持ちの涙を流し続けた。ユウキも自分のやったことが、自分の大切な人の命を救えたことを実感すると、途端に涙が溢れ出てきた。
「シウネー…シウネー…! よかった…よかったよぅ…」
「ええ…ユウキも…治って本当に…よかった…ユウキ…」
何という奇妙な縁だろうか、キリトの行ったユウキを助けるための計画は、あろうことか日本中、世界中を巻き込んで、重病患者を救っていたのだ。この目の前のウンディーネの少女も、その中の一人だった。キリトのユウキへの熱い想いが、その大切な友人の命をも救ったのだ。かつてSAOで人の命を奪ったキリトであったが、その穴埋めをするかのように、現実の世界で人の命を救った。そのことを意識したキリトにも、少しだけ涙が浮かんでいた。その様子に気付いたアスナが心配そうにキリトに声を掛けた。
「キリト君…大丈夫…?」
「アスナ…、大丈夫だ。ちょっと…よかったなって思っただけだから……」
「…そう…」
共にSAOでデスゲームを生き延びたアスナには、キリトの涙の理由が何となくわかっていた。キリトがプレイヤーを殺した理由に、まさに自分が直接関わったことがあったからだ。確かにあの時、キリトが居なかったらアスナは殺されていただろう。そのことには非常に感謝していた。しかし同時にキリトに背負わなくてもよい業を背負わせてしまったことに、後悔の念を抱いていたのも確かだった。だから、今キリトが間接的にではあるが人の命を救ったことに安堵していた。
ユウキとシウネーは互いを精一杯抱き締めた後、お互いに生きている喜びを分かち合っていた。そしてテッチとタルケンも今は社会復帰に向かってリハビリを行っていることを聞かされると、更に笑顔になり、ユウキのテンションは最高潮になっていた。そして、ユウキはまたとあることに気付いてしまった。
「ってことはさ、もう…スリーピング・ナイツの本来の目的って…なくなったってこと…なのかな…?」
ユウキの発言に、アスナ、ノリ、ジュン、シウネーの四人が目を丸くしていた。確かにそうだ、そもそもスリーピング・ナイツは病人だけで結成されたギルドだ。お互いの運命に共感が持てたからこそ、死ぬ前に思い出を残す目的で集まったんだ。しかし、現存するメンバー全員の病気が治るということは、スリーピング・ナイツの本来の目的を見失ってしまうことになる。
「えっと…そう…なるわね…」
「確かに…そしたらどうすればいいんだ? オレたち?」
ノリとジュンが困ったような表情を浮かべながら顎に手を当てて考えていた。この先スリーピング・ナイツはどうなるのだろう? 解散? 継続? それとも再結成? 様々な選択肢が頭に浮かんできた中、ユウキがとある提案をこの場にいる全員に向かって切り出した。
「ねねね、そしたらさ…アスナとキリトを迎えて、新生スリーピング・ナイツ再結成!っていうのはどうかな?」
「え…?」
「お…俺たちも…?」
ユウキの突拍子もない提案にキリトとアスナは驚愕の表情を浮かべていた。元々スリーピング・ナイツに入りたがってたアスナはともかく、何でソロプレイヤーの俺にまでギルドのお誘いの声が上がるんだろうと。個人的にキリトにはギルドに対してあまりいい思い出はなかった。SAO時代、初めに入れてもらったギルド「月夜の黒猫団」は自分を残して全滅。二つ目に半ば無理やり入団させられた「血盟騎士団」は団長が事件の黒幕茅場昌彦だったということと、ギルドメンバーを装った
以上のトラウマにもなりかねないギルドに関わった事件のことを考えると、やはり違うゲームとはいえ、ギルドに入るのには少しばかりの抵抗があるキリトであった。正直、誘いは嬉しい。スリーピング・ナイツのメンバーなら全員顔見知りだし、ゲームを遊ぶための本来の目的も全員理解している。SAOの時みたいな殺伐とした空気には決してならないはずだ。全員元病人ともあって命の大切さだって理解している。そう考えるとキリトはスリーピング・ナイツなら入ってもいいかなという結論に辿り着こうとしていた。
「ボクは二人が入ってくれたら嬉しいなー! みんなはどう思う?」
ユウキが胸の内に思った正直な想いを表に出しながら、メンバーのいる三人の方へと視線をやった。新たにメンバーを迎え入れるといったとんでもない思い付きともいえる考えに、ノリたちも最初は度肝を抜かれたが、自分たちのために協力を惜しまずに手を貸してくれたキリトたちのことを考えるとなれば、自然とYESとしか答えが出てこなかった。それにあの時と今とでは事情も違う。今後は普通にゲームを誰一人欠けることなく楽しめるはずだ。となるともう答えは一つしかなかった。
「えっと…どうする…アスナ、ああ言ってくれてるみたいだけど…」
「えっとそうだね…正直言うと前に断られたことがあったから……、事情が違うってなってもその……本当に入っていいのかなってのがあって……」
「うーん、俺も…違うゲームとはいえ、ちょっとだけギルドには抵抗があったからな…」
違う悩みで入団することに頭を抱えている二人に、ユウキは二人の顔を下から覗き込み、必殺の「潤目+上目遣い」のガード不能回避不能のスキルを使ってきた。これが出たら最後、もうキリトとアスナは白旗を揚げるしかなくなっていた。二人は大きく溜息を吐き出すと、お互いに目線を合わせ、観念したかのように口を揃え入団の意思をユウキに伝えた。
「……入らせていただきます……」
「私も……ユウキのその顔は……反則だよ……」
二人の口から肯定的な返事をもらえたユウキは飛び跳ねて喜んだ。別にスリーピング・ナイツに入らなくてもキリトは毎日現実で会えるし、アスナも会おうと思えばいつでも会えるのだ。しかしギルドとなればまた別格のようで、同じ志をもった者同士で集まって目的を達成するという一体感が生まれてくる。喜びも悲しみも、その時その時分かち合えるのだ。それはその中の仲間同士でしか味わえないことだろう。だからユウキは二人をスリーピング・ナイツに誘ったに違いない。
「やったー! ギルドの仲間が増えたー! わーい!」
「おいおいユウキ、アタシらの意見は無視なのかよ!」
「そうだぜ、何もオレたちはまだ何も返事を返してないぜ?」
「え…?」
喜んでいるユウキの間に割って入るように、ノリとジュンが口を挟んだ。二人が否定的な態度をとったと思ってしまったユウキは、また自分の思い込みや暴走で周りを巻き込んで迷惑をかけてしまったのかと感じていた。一体どうしたらいいんだろうと困った表情を浮かべておろおろしていたユウキを見て、一見厳しい表情を浮かべていたノリたちであったが、すぐに柔らかい表情へと変わっていった。そしてユウキに歩みより、ユウキの肩をポンと掴むと安心させるように胸のうちの言葉を口にした。
「そう心配そうな顔をするなよリーダー! 大丈夫だよ! アタシもジュンもシウネーも二人の入団には大歓迎だって! あの時と事情が違うしさ! テッチとタルケンだってきっと同じ思いさ!」
「そうだよ! むしろあいつらが納得しなくたって無理にでも納得させるさ! なんせアスナさんとキリトさんなんだからな!」
ユウキの心配をよそに、ノリとジュンはキリトとアスナの入団に歓迎の態度を示していた。一瞬断られると思ったユウキの表情もその答えを聞いた瞬間に次第に明るくなっていき、改めて二人の入団を喜んだ。喜んでいるユウキにシウネーが近寄り「よかったわね、ユウキ」と声を掛けると「うん! ありがとうみんな!」と満面の笑みで返事を返した。
かつて重い病気を抱えていたスリーピング・ナイツだったが、今ここにアスナとキリトを新メンバーとして迎え入れたことで、文字通り新たな門出を迎えることが出来た。今日は都合でテッチとタルケンがいないのが残念だが、それでも喜ばしいことに違いはなかった。二人の正式な歓迎会はスリーピング・ナイツ全員が、キリト、アスナ、シウネー、ノリ、ジュン、テッチ、タルケン、そしてユウキを含む八人がそろった時に盛大にやろうと、約束を交わした。
そして新生スリーピング・ナイツの最初の仕事も決まっていた。今日一日限定で行われるハロウィンイベントを達成すること。スリーピング・ナイツの新たな門出に相応しい最高の思い出を早速ここに残そうということで、満場一致で意見がまとまった。そしてアスナとキリトの正式な入団と、今後の最初の目的が固まったところで、ユウキは二人にギルド入団申請をするよう促した。
キリトとアスナは左手でメニューを操作し、ギルド入団申請のコマンドを開くと、スリーピング・ナイツのギルドリーダーでもあるユウキに向かってギルド入団の申請を送り付けた。ユウキの方もすぐに申請の受信を確認した。二人から送られてきた入団申請はユウキの視界にそれぞれ上下二つずつ表示されていた。
KiritoがSleepingKnightsへの入団を希望しています。許可しますか?
AsunaがSleepingKnightsへの入団を希望しています。許可しますか?
結成以来の入団希望者の表示に思わず笑みをこぼしたユウキは嬉しそうに二人から送られてきた申請に対し、YESのアイコンを左手の指でタップし、入団の申請を許可した。この瞬間、晴れてキリトとアスナは正式にスリーピング・ナイツの新メンバーとして迎え入れられたのである。
ユウキが許可をすると、キリトとアスナのHPバーの横に、スリーピング・ナイツのメンバーの証でもある、ギルドアイコンが表示されていた。キリトとアスナは、久しぶりに自分のステータスにギルト所属を証明するアイコンの表示を見ると、嬉しいような背中がむずかゆいような感覚に陥っていた。本当は心から嬉しいはずなのにである。
「これで…二人は晴れて正式なメンバーだよ! これからよろしくね!」
「ああ…よろしくな…!」
「よろしくね…みんな!」
キリトとアスナが入団の挨拶を済ませると、メンバーと順番に固い握手を交わした。キリトはシウネー、ノリ、ジュンの順番で握手を交わし、アスナはユウキ、シウネー、ジュン、ノリと握手を交わしていった。キリトが握手を交わしていないのはユウキだけとなっていたのだが、ユウキは腕を後ろに組み、にっこりと笑顔でキリトを待ち構えていた。キリトが?マークを頭に浮かべていると、ユウキは地面を思いっきり蹴ってキリトに向かって飛びついていった。
若干ログインしたばかりの頃のデジャブを感じたキリトであったが、何となくユウキが飛びついてきそうな予感がして咄嗟に身構えたので、今度は倒されずにユウキを受け止めることに成功していた。今まで何度も同じことを繰り返していたこともあり、自然と体が動いていたようだ。キリトに抱き着いたユウキは嬉しそうに明るい笑顔を見せ「こっちでもよろしくね! キリト!」と密着したまま入団の抱擁を交わしていた。他のメンバーはその仲睦まじい間柄に苦笑いを浮かべつつも、ほっこりとした笑顔を見せていた。
そして今いるメンバーの挨拶が済むと、ユウキはキリっとした顔つきになり雰囲気が変わった。先ほどまではキリトにデレデレな恋人の顔だったが、今度はギルド、スリーピング・ナイツを束ねるギルドリーダーの顔らしく勇ましい表情を見せていた。これからおっぱじめる最初のギルドとしての仕事、それを達成せしめんがために、今いるここのメンバーに向かって、真剣なまなざしで激を入れた。
「みんな、ボクたちは今日、キリトとアスナを迎えたことによって、新しいスタートを切ることが出来た。今までとやり方は違ってくるかもしれないけど、それでも楽しい思い出を残すっていう目的は曲げないようにやっていこうと思うの」
「…………」
ギルドリーダーであるユウキの演説にも近い言葉に、メンバーは心静かに耳を澄ませていた。その姿はかつてスリーピング・ナイツをまとめ上げていたユウキの実の姉、紺野藍子ことランの精神が宿っているかのように見えた。種族も見た目も違うユウキであったが、この時の表情は非常にランによく似ているようだった。
「残念ながら今日はテッチとタルケンはいないけど…、まずは今日一日限定のイベントクエスト、ハロウィンクエストを絶対に成功させよう! みんな! 準備はいいかな?」
ユウキからの問いかけに、メンバーは次々と視線を合わせると、全員意見が一致したのか、次々と首を縦に振っていった。その様子を見届けたユウキもメンバーと同じく、首を縦に振る形でみんなをまとめ上げた。そしてリーダーらしく、出撃前に〆のセリフを言い、ギルドの新たなスタートを切った。
「新生スリーピング・ナイツ! 出撃だよ!」
「おう!」
「ええ!」
「はい!」
「おーう!」
「よっしゃあッ!」
ご観覧ありがとうございます。スリーピング・ナイツのメンバーが亡くなった三人と欠席の二人を残して新たなメンバーを迎える形で集結しました。そして最初の大仕事もすぐに始まろうとしています。この今年のハロウィンイベントはどのような形でスリーピング・ナイツのメンバーに波乱を巻き起こすのか?次回をお楽しみに!