ソードアート・オンライン マザーズ・ロザリオ ボクの生きる意味   作:むこ(連載継続頑張ります)

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 お待たせしました、迷宮区攻略編です。SAOとは関係ありませんが大相撲秋場所で、大阪出身の力士、大関豪栄道が幕の内最高優勝を決めました。
 まさか豪栄道が優勝すると思わなかったので驚きました。おめでとう豪栄道!

 話がそれまくったので本編をどうぞ!


第7話〜二人きりの大冒険〜

 

 西暦2026年1月31日土曜日 午後13:10 新生アインクラッド第29層 迷宮区エリア

 

 

 ここは新生アインクラッドの第29層のダンジョンの迷宮区。各層には必ず一つダンジョンが存在し、その中に迷宮区と呼ばれているエリアがある。

 迷宮区の一番奥にはボスルームがあり、そこのボスを倒せばその層はクリアとなり次の層に進めるというものだ。フィールドと違うのは強力なモンスターがPOPする事と、プレイヤーにやや不利な地形をしてることが特徴だ。

 通路が狭く動きづらいエリアでブレスを吐くモンスターが湧くなんてのはしょっちゅうである。

 

 運営側としても簡単にクリアされてはつまらないしコンテンツの終焉が早くなるので出来るだけ難易度を高くしているのだ。やや、やりすぎてる場合もあるが。キリトとユウキのコンビは既に迷宮区の半分ほどを踏破していた。

 

 進むにつれてモンスターも強くなるが二人は大した被害もなく、順調に進んでいった。キリトとユウキが足を踏み入れた迷宮区は、どことなく旧アインクラッドの74層の雰囲気に似ていた。

 

「ユウキ! スイッチだ!」

 

「ラジャ!」

 

 キリトとユウキは素早く攻防役を切り替え、絶妙なコンビネーションで敵を圧倒していく。彼らに壁役のタンクなどいらないぐらいのゴールデンコンビだった。

 敵の攻撃はほぼ全てかわし、限界を感じたらすぐスイッチ。敵も中型~大型のモンスターが一匹、若しくは二匹湧いたり、比較的少ない事も幸いしていた。それ以前にこの二人の立ち回り精度が異常なだけではあるが。

 

「せいやああぁぁ――ッ!」

 

 ユウキは片手剣ソードスキル "ヴォーパル・ストライク" を放った。単発技だが威力が桁外れに高く、長距離を突進するため技の伸びもいい。外すと隙だらけだが、決めると気持ちの良いソードスキルである。

 

 ユウキの愛剣マクアフィテルの剣先は敵のミノタウロス風のモンスターの腹部に吸い込まれていった。モンスターのHPはイエローゾーンから一気にゼロになり、青白い光を放ちながら爆散した。

 

 この辺りのモンスターはあらかた片付けたようでようやく一息つけるといったところだ。何しろ迷宮区の半分ほどをたった2人で1時間で攻略してきたのである。

 安全エリアは勿論あったが……ユウキの時間がもったいないよ!の一言でほとんど休憩なしでここまで来ていた。

 

「ユウキ、流石にそろそろ休まないか? HPもMPもアイテムに余力はあるが……ちょっと疲れてきたぞ」

 

 大して疲れてるようには見えないが精神的に疲れてるのだろう。キリトはユウキに休憩を提案してきた。ユウキの顔にはまだまだ余裕の表情が現れていた。

 

「ん? ボクはまだまだ行けるけど、キリトが疲れてるなら少し休もうか!」

 

 相方の許可が無事得られたところで、すぐ近くにある安全エリアにて二人は腰を落ち着けた。青紫色の結晶のような壁が並んだ中に、窪みのような場所がある、そこが安全エリアであった。

 

「結構進んできたな……もう半分くらい来てるんじゃないか?」

 

 キリトが軽く伸びをしながら話を振る。肩をぐりんぐりん回したり上半身を左右に回してほぐしたり、実にオヤジ臭い。

 

「そうだね。マッピングしてないからわからないけど…多分それぐらい来てると思うよ?」

 

 ユウキが何か口でもごもごしながら喋っている。お行儀が悪い事この上ない。キリトはユウキが何を食べているのか気になり、上半身を前のめりにして、ユウキの口元を見ていた。

 

「何だ、いつの間にそんなもの買ってたんだ? 初めて見るな……それ」

 

 ユウキが手に持ってるのはインプ領名産月見団子。普通の団子よりも一回り大きいサイズの黄色い団子が、串に三つついている。

 インプ領は常に夜ということもあり、こういったお月見アイテムが売っている。気軽にいつでもお月見が楽しめるというわけだ。

 

「これね、ボクのお気に入りなんだー! ほんのり甘くて素朴な味なんだけどそれがまたいいんだよー!」

 

 何とも年寄りみたいなことを言う十五歳である。素材の味がうんたらかんたらとかいうやつだ。次は緑茶や焙じ茶がほしいとでも言うつもりだろうか。

 

「ズズズッ、プハーッ」

 

 既に用意されていた。準備が良すぎにもほどがある。その姿はまるでお昼の午後に炬燵でくつろぎながらお茶を一杯いただいているお婆ちゃんのようだ。そんなユウキをキリトは呆れた表情で見ていた。

 

「準備がいいな……」

 

 ユウキは大きな口で再び団子を頬張り、もぐもぐしながら満面の笑みでキリトの方を見た。何とも幸せそうな顔をしながら食べている。頬を膨らませながら食べている姿を見て、可愛いなと感じていた。

 

「キリトも食べる?」

 

 そう言いながらユウキはキリトに手持ちの月見団子を差し出してきた。新しい方ではなく、つい今しがたまで食べていた方を。ちなみに三つあるうちの一つを食べ、二つ目の団子は途中までかじられていた。

 ユウキをこれをどうぞとばかりにキリトに差し出していた。キリトは苦笑いを浮かべながら対応に困っていた。素直にありがとうと受け取って、そのまま食べてしまえばいいのか。それとも正直に別の団子をくれと言った方がいいのか。

 

「えっとあの……ユウキさん?」

 

「ん? なあに?」

 

 キリトは苦笑いをしながら話を続ける。ユウキはどうやら気付いていない様子だった。キリトに負けず劣らずの天然ぷりに、キリトは頭を抱えていた。言わないと気付かないようなので、渋々キリトはその問題点を指摘した。

 

「ソレを食べるのかな……? あの、新しいやつとかは……」

 

 そう言うとようやくユウキは事の重大さに気が付いたのか顔を真っ赤にして慌てふためいた。さりげなく自分はとんでもなく恥ずかしいことをしてしまっていた。ああもう穴があったら入りたい、そんな心境だった。

 

「えっあっ、あの……! これは、あの、別にそういうわけじゃ……! はわわわ……」

 

 ユウキは恥ずかしすぎて言葉にならない言葉を並べる。顔を真っ赤にして視線が泳いで非常に落ち着きがない。

 キリトはアスナとのやり取りでこういったことは何回もあったので、比較的落ち着いた対応が出来ていたが、ユウキにはその手に全く免疫がなかったために、恥ずかしすぎて混乱状態になってしまっていた。

 

(何なんだ、この可愛い生き物は……)

 

 このままでは埒があかなかったので、キリトはユウキの手から団子を半ば強引に受け取ると、一気にパクッと食いついた。

 月見団子は普通の三色団子と比べて、一つ当たりが大きいので一口でいくには大変なのだが、キリトは気にする事なく食らいついた。口の中で大きい団子を頬張ると、むしゃむしゃと味を噛みしめていた。

 何かの卵の風味が口の中一杯に広がって、薄めの甘い味がほのかにいい味を出していた。

 

「んお、中々行けるなこれは。でも俺はタレがかかってる方が好みかな……」

 

 一つの串に三個ついてる二つ目の食べかけを飲み込むと、キリトは左手でユウキに串を返した。その様子をユウキは顔を真っ赤にして見つめていた。

 ボクの食べかけをキリトが食べたってことは、ボクは……キリトと……。

 そう考えてしまったユウキは、更に頭の中が真っ白になっていった。

 

「ありがとう、美味かったよ」

 

「あ、うん……。どう、いたし……まして」

 

 ユウキはキリトから団子を返してもらうと、キリトから見えない角度でだんごを頬張り続けた。恥ずかしくて頭が真っ白になっても食欲は昨日のままのようだ。

 

(ボボボ……ボク、キリトと……かかかか、間接……)

 

 自分が何故あんな行動に出たのか理解出来なかった。ユウキに至っては悪気も裏もなく、ただ単に美味しいから君もどうぞという、あくまでもちょっとした気遣いだった。

 気が付かなければよかったかもしれないが、気付いてしまった。一旦気付いてしまうと、これまでのやり取りもとんでもなく恥ずかしいことをし続けてきたと思い返してしまった。

 

 昨晩キリトを慰めるためとは言え、自分の胸を貸し抱擁までした。さりげなく物凄い行動だ。あの時はキリトを助けたい一心で無我夢中で行なったが、側から見たらとんでもなく勇気がいる行動である。

 そして今日は思いっきりキリトに抱き着き、精一杯甘えた。何故ボクはあんな恥ずかしいことをしてしまったんだろう。

 

「は…う………あ…う…」

 

 ユウキは既に食べ尽くしてしまって何もついていない団子の串をかじり続けていた。やがて串は耐久度をなくし青白い光を放ち砕け散った。そのエフェクトで少しだけ我に返ったユウキはスッと立ち上がり、しばらく黙り込むとキリトの方に首を廻し、すぐ先に行こうと促した。

 

「き、休憩はおしまいっ! 早く進もっ、キリト!」

 

 半ばヤケクソ気味に言葉を放つユウキを尻目にキリトはアッケラカンと見上げる。その顔は向こうを向いていてよく見えなかったが真っ赤になっているに違いない。キリトは「よいしょ」と声を出しながら立ち上がり、足元をぱぱっと手で払い、様子が気になるユウキに声を掛けた。

 

(な、なんでボク……こんなにドキドキしてるの……?)

 

「ユウキ大丈夫か? 体調が悪いならまだ少しここで休んだ方が……」

 

「ボクなら大丈夫!! さあキリト! 早く行こう! すぐ行こう! とっとと行こう!」

 

 そう言うとユウキはイギリス軍隊の集団行進ばりに手足を伸ばしながら姿勢良く奥へと突き進んでいった。その様子をキリトは心配そうに頭をかきながら後ろで見守っていた。

 

(本当に大丈夫か、ユウキのヤツ……)

 

 それからのユウキとは言うと、鬼に金棒、コブラにサイコガン、五右衛門に斬鉄剣と言っていい程の無双状態であった。スイッチの必要性を感じさせない立ち回りっぷりで、中型モンスターから大型のザコモンスターまでノーダメージで斬り倒していった。

 

(すごすぎだろ、ソロでも突破出来たんじゃないかな……コイツは)

 

 キリトは呆れ顔と苦笑いが混ざったような微妙な表情をしながら頭をポリポリかき、ユウキの後ろに続き、後を追っていた。こうなった原因の一つに、自分も関係してることを気にせず歩いて進んでいく。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 ユウキは珍しく息が上がっていた。決して敵との戦いに疲労を見せているわけではない。先日からの出来事を意識しすぎて心臓がバクバクしてしまっていた。

 心臓の鼓動が激しくなりすぎて、現実の肉体にも影響が出てしまわないかどうか心配だ。しかし無我夢中で体を動かしてる間に次第に落ち着きを取り戻していた。

 

 そして30分ほど奥へ進み、気が付くと二人はとうとう一番奥の、ボス部屋の手前まで辿り着いていた。本当にたった二人で迷宮区の全てを踏破してしまった。新生アインクラッドでは前人未到の偉業である。

 

 ユウキとキリトはボス部屋の巨大な扉を見上げていた。全体的にさび付いており、長年ここから先の空間を守ってきたというような重苦しさを感じさせている。キリトにとってはSAO時代に何度も見た光景だ。

 ゲームの中から抜け出すためにこの中にいるボスを倒し、かつての仲間が現実からも仮想空間からも死んでいった。そんな過去を少しだけ思い出していた。

 

「本当に、辿りついちゃったね……」

 

「ほぼユウキだけの活躍でな。見てる分にはすごく楽しかったぞ?」

 

「むう、その言い方ちょっとムカつく……」

 

 機嫌を損ねながらも、ユウキはひたすらにボス部屋の扉をまじまじと見上げていた。既に目標は達成している、二人だけで迷宮区を踏破し、ボス部屋の手前まで辿り着く。普通に考えたらとんでもない快挙だ。

 たった二人で突き進むこと自体が異常すぎるのだ。しかしユウキはさらに驚愕の一言を言い放った。流石にキリトも開いた口が塞がらないほどの衝撃だった。

 

「ねえキリト、ボクたちだけで……二人だけでボスって倒せるかな」

 

 まさかとは思っていたがそのまさかである。キリトも言い出すかもしれないと薄々感じ取ってはいたが、いざ耳にするとやはりびっくりする。

 旧アインクラッド74層でも、アスナと二人でボス部屋に入ったことはあったが、あの時は偵察と様子見だけだったので、そのまま戦ったりはしていなかった。

 

「……おいおい、本気なのか?」

 

 キリトは静かに聞き返す、当然だ。通常フロアボスは七人のパーティを七つのグループにわけた四十九人のレイドを組んで挑むのが鉄則だ。壁役、攻撃、支援に分かれて立ち回るのが基本となっている。

 

 しかしユウキとキリト、そしてアスナ達はほぼワンパーティでイベントボスを撃破した実績があった。スリーピング・ナイツのメンバーとキリトとアスナで。

 パーティの上限は七人までなのでキリトだけパーティメンバーじゃなかったのだが、キリトも最前線で一緒に戦ってくれたのだ。あの時キリトがいなかったら倒せてなかったかもしれない。

 

 ユウキはそんな過去の実績を思い出しながら、今回のことをキリトに提案していた。ボクとキリトのペアなら、もしかしてもしかするとボスを倒せるかもしれない。

 これまでだって大型のモンスターを相手に絶妙なコンビネーションで撃破出来ていた。今回だって行ける可能性だってある。

 

「ボクさ、キリトと一緒にボスを倒したいな……」

 

 胸に手を当てながらユウキはキリトを見つめていた。ダンジョンの煌びやかな光に照らされているユウキの姿は、なんだか少し神秘的な雰囲気を醸し出していた。キリトはその姿に少しだけ見惚れていた。

 

「ホラ、ボスを倒したらさ黒鉄宮の碑に名前が載るじゃない? この前のイベントの時のも載ってるはずなんだ。でもキリトはトドメの瞬間に転移結晶で離脱したでしょ? ボクたちとアスナの名前は刻まれたけど、キリトだけ溢れちゃったから……」

 

 基本的にイベントも含み、ボスを倒したら記念に黒鉄宮の戦士の碑と呼ばれる、大型の石碑にプレイヤーネームが刻まれる。

 レイドを組むとそれぞれのパーティリーダーの名前が刻まれるのだが、ワンパーティ以下でボス討伐をすると、そのパーティ全員の名前が刻まれる。ユウキはキリトの協力のおかげで、過去にそれを成し遂げれたのだ。

 

「もしさ、二人だけでボスを倒したらさ、きっと凄いことになるよ! 忘れたくても絶対に忘れられない思い出になるよ!」

 

 ユウキは目をキラキラ輝かせながら楽しそうにキリトに訴えた。確かにワンパーティでボスを討伐すること自体も十分異常である。それを今度はペアで討伐をしようと言い出しているのだから、端から見たら狂気の沙汰としか言いようがない。

 

 しかしキリトはこうなったユウキは止められないことを十分承知していた。断ったら断ったで涙目になるだろうし、気まずい空気になるのもいやだし、何よりユウキは楽しそうだ。確かに成し遂げれば最高の思い出にもなる。

 二人だけで討伐出来るのかもというチャレンジ精神もあって、キリトはこれを承諾した。

 

「よし、いいぜ。いっちょやってみるか、ユウキ!」

 

 それを返事を聞けたユウキは顔がほころび、ぱあっと笑顔になった。先頭に関しては経験豊富で冷静な考えを持っているキリトの事だから、てっきり断られるかとも思ったが、快く承諾してくれたことに気持ちを高ぶらせていた。

 

「ホント!? やったーっ!」

 

「ただし、挑むからには……絶対に倒すからな!」

 

「うん! 勿論だよ! 絶対に勝とうね!」

 

 二人は互いに視線を交わし、拳をぶつけ合うと一緒に扉に手を触れた。その扉が鉄の重みを感じさせる独特の音を立てながら、ゆっくりと開いていった。

 開いた先から真っ暗な空間が視界に入ってきて、二人の緊張感をあおっていた。いよいよだ、いよいよ29層のボスとの戦闘が始まろうとしている。

 

「忘れられない思い出になりそうだね、キリト!」

 

「ああ、忘れようがない事になると思うぞ……俺は」

 

 二人はワクワクしていた。倒せないかもしれない確率の方が高い。でも倒せば全VRMMOで伝説級の逸話を残す偉業となることは間違いない。二人の心の中に一生忘れることのない思い出になることも間違いないだろう。

 

 しかしキリトとユウキは、これが違った意味で二人の間に忘れられない事件を巻き起こす事になる事を、知る由もなかった。そして今回のことが、二人の運命を分けることになる一戦になることも、微塵も思っていなかった。

 

「ようし、いっちょ……勝負だよッ!!」

 

 

 




 
 やはりこの二人のプレイヤー性能はチート地味てますね。VRMMO界トッププレイヤーと言っても過言ではないと思います。
 次回はボス戦編です。本日中に投稿できると思いますのでお待ちください。
 
 
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