オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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クリスマスだオラァ! シャーリー急に出したから変な感じになったけど、その辺はすいませんでしたぁ!!




13話 高く飛びたいのなら、一歩下がってみてもいいだろう

 13話

 

 

 

 

 ティアナが目を覚ましたのは夜の事だった。 おおよそ半日ほど気を失っていたティアナが真っ先に目にする人物は相棒のスバルではなく医務官のシャマルと精神科医の心悟だった。

 

「おはよう、といっても今は夜だけどね」

「シャマル先生……心悟さん……」

 

 シャマルはティアナの側に立っている、心悟は椅子に座ったままティアナの事を見ていた。 シャマルから自分がなのはに撃墜されたこと、その際身体には一切のダメージは残らなかったこと、ここ最近の疲れが溜まっていたのでその事についての指摘などを受けた。 ティアナは自分がされた事を思い出すが、その事で自分に全く傷や怪我がないことを確認すると、改めてなのはの実力を思い知った。

 

「……それでだ、ティアナ」

 

 シャマルの話が終わると今度は心悟が、自分の領分の話を始める。

 

「どうだ? 高町にボコボコにされた感想は?」

「…………感想……ですか?」

「そうだ」

 

 一体何だって自分が叱られ撃墜された時の感想をわざわざ言わないといけないのかティアナには甚だ疑問だったが、心悟が人の心理に精通していることはティアナも当然知っている。 ならばこの問いも何らかの意味があると察し、ティアナは重い口を開く。

 

「……あの時は……最初はちょっと決まったと思いました。 実際……あとは当たるだけの段階までいってました。 でもなのはさんに防がれた時、凄い寒気がしました。 反射的に……マズイって」

 

 ティアナは自分が話せる内容を心悟に話す。 心悟は黙ってそれを聞いている、シャマルは気にすることないような感じで事務作業をしている。 ティアナの気が散らないように。

 

「それで……なのはさんに言われました。 『どうして訓練通りにやらないのか?』って。 私はただ……もう……っ、大切なモノを失いたくないだけで……それで……」

「反撃したけど逆に撃墜されたわけだね?」

「はい……ただただ悔しかったです……」

「……それだけかい?」

「え……??」

 

 ティアナは自分の心情を全て吐露したと思った。 だがこの男の前では自らの思い込みすら意味はない。

 

「キミ自身の本音はそれだけではない、そしてそれはキミ自身気付いていない。 人間は時に自らの感情を知らず知らずのうちに奥の方へ追いやっている。 そしてそれにフタを閉めカギをかけて……どこかに捨ててしまう」

 

 心悟は手元にあるカップのコーヒーを飲み干し立ち上がる。

 

「キミのカギはもうすでに誰かが拾っている。 自分の奥の奥の感情を知りたければ……まずはかつての彼女を知ることだ」

「それってどういう……」

「僕はコーヒーを淹れてくる、シャマルが大丈夫といっているから自由にしたまえ」

 

 心悟はカップを片手に医務室から出る。 その後ろ姿を見ていたシャマルは可笑しそうに笑う。

 

「ふふ、あのコーヒー、もう何時間も前のだから冷めているのに。 恥ずかしくなったのかしら?」

「そう……だったんですか……」

 

 シャマルの嬉しそうな笑顔を見てティアナは思う。 一体今の心悟は何が恥ずかしかったのだろうか? 確かに少しキザな台詞だったような気がしたが、それでも付き合いがまだ短いティアナにしてみれば不思議だった。

 

(知る……彼女? それってなのはさんのこと?)

 

 ティアナは心悟から言われた言葉を思い返しながらベッドから降りようとした時だった。

 

『ッ!?』

 

 突如六課内に響き渡るアラート、これは緊急時になるはずのもの。 一気に緊張感が六課を襲う。

 

「こんな時に……!」

「あ、ティアナちゃん、起きたてだから気を付けて……」

「私は大丈夫です! シャマル先生、ありがとうございました!」

 

 ティアナは駆け出す、その姿を見てシャマルは少しため息を吐く。

 

「んもぅ、そういうことじゃないのに……」

 

 そう言いながらもシャマルは慌ただしそうに準備をして皆の元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 廊下を走るのはティアナ一人ではない、他の隊員も慌ただしくしている中、キリンは一人呑気にコーヒー片手に歩く心悟を見つける。

 

「あれ、心悟君? ティアナちゃんが目覚めるまで部屋にいるんじゃなかったの?」

「僕が外にでているということは彼女が目を覚ましたということだ」

「あ、なるー」

 

 足を止めて話す心悟とは対照的にその場で足踏みをしているキリンは忙しそうにしている。

 

「オレは招集かかったから行くわ!」

「うん、頑張って仕事してくるんだよ」

「イエッサー!」

 

 キリンは敬礼して走り出す。 心悟はそれを見届けるとコーヒーを一口付けて部屋に戻る。

 

「やっぱりコーヒーは熱い方がいい」

 

 キリンはそのまま集合場所まで走る。 到着すると同時に……

 

「フンッ!」

「ファッ!?」

 

 シグナムがティアナを殴り飛ばしている所に合流してしまった。

 

「ファー!? What happend!? What can i do it!? 」

 

 その衝撃的なシーンを見てなんJのように奇声を上げるが、冷静なヴィータや翔次にツッコミを入れられる。

 

「落ち着けキリン、英語出てるぞ」

「つーかおせぇぞキリン! 何で暇人のてめぇが一番遅いんだよ?」

「遅れたのはその……踊って見たの撮影してたから……」(照れ)

「お前はユーチューバーか」

 

 そんな死ぬほどどうでもいい会話を挟みつつ、キリンはこの場にいる者の顔色を見て状況を把握する。 だからなのか通常の2割増しくらいのテンションで話す。

 

「キリン、お前も出動だ。 空にガジェットが出現したそうだ」

「翔次君は?」

「ボクは留守番だ」

「あ、そうなの。 自宅警備お疲れ様!」

「ここは自宅じゃないだろ……」

 

 キリンはシグナムに殴られたティアナを見る。 少なくとも自分が今話しかけても答えられるとは思えない。 が、キリンは一人で話し出す。

 

「ティアナちゃん大丈夫? おっぱいさんの手加減は他人の手加減とは違うから奥歯の1本くらい抜けてもおかしくないけど」

「おい、人を獣か何かみたいに言うな」

「翔次くーん! ザフィーラを抜いたら男の子はキミと心悟君しかいないから、ちゃんと優しくしてあげるのよー! ザフィーラ? 彼はオスだから」

「……分かったからさっさと行け」

 

 すでにヘリにはなのはとフェイトとヴィータが乗り込んでいる。 キリンは運転席にいるヴァイスに声をかけ自分も乗り込む。

 

「んじゃヴァイス君よろしくぅ」

「了解大将、出発します!」

 

 キリン達を乗せたヘリは空に出現したガジェットを討伐するために出動していった。

 

 

 

 

 

 

 移動中に詳しい話を聞くキリン。 ガジェットが出現したが、恐らくはこちらの戦力を図るために出てきたものと推測。 ならばこちらは今まで通りの戦法で対処することに決行。 そしてティアナには残ってもらおうと思ったところ口論が発生し、シグナムがティアナを殴り飛ばした所にキリンがちょうど到着したようだ。

 

「ふーん、まだまだティアナちゃんはご機嫌ナナメなのね」

「うん……」

「ま、気にすんれよ。 いつしか雨は止み、そこには虹がかかるんだよなぁ。 雨降ったら勝手に地が固まるから、そんなに深く考えなくていいから」

 

 キリンはいつものように笑いながらなのはを諭す。 この男のみがこの状況で笑顔を浮かべていることに誰もが気付いている。

 

「それにみんな暗いくらいクライ! Don't cry! もっとさ、激寒になるくらいなテンションで行こうぜ?」

「逆になんでお前はそんなにテンション高いんだよ……」(呆れ)

「だってオレがふざけないと誰もしないでしょ?」

「(みんな真面目だから)ふざけないだけなんだけどなぁ……」(困惑)

 

 ヴィータとフェイトが「えぇ……」といった感じでキリンを見ている。 ちょっと引き気味だがキリンは気にすることなく言う。

 

「オレがさ、いつもみてぇにふざけてればさ、真面目に考えているのがバカらしくなるでしょ? みんなにはもっとガス抜いてもらって、詰め込み過ぎないようにして欲しいわけよ」

「キリン……お前そこまで考えて……」(感心)

『嘘つけ絶対今思い付いただけですゾ』

「あ、ふーん……」(手の平クルー)

「あ、おいこらミョルニル! 何いい話を台無しにしてんだよ!」

「今の発言が1番台無しだよ……」

 

 三人と一機が話しているのを見てなのはは思わず笑いが漏れる。 そしてふと、昔のことを思い出す。

 

(昔も……こうやってつい笑っちゃったっけか)

 

 それはまだなのはがキリンに恐怖を抱いていた時のことであった。 キリンが宿る前のキリトと呼ばれる転生者によって若干のトラウマを植え付けられ、キリンになってからも姿形は同じなので当初は怯えていた。 だが……

 

『菅野美穂!?』(意味不明)

 

 キリンがつまづいて転んだ姿がやけに面白くておかしくて、なのはは笑った。 純粋な笑みを浮かべていた。 その当時の事を思い出しなのはは心中でキリンに礼を言う。

 

(ありがとうね、キリン君)

 

 キリンに感謝しながら、キチンとティアナと話をしよう、なのはは前向きにそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャリオ・フィニーノ。 通称シャーリーはフェイトの執務官補佐かつ機動六課の通信とデバイスの制作・整備の主任を勤めている。 彼女の主な仕事はサポート、前線に出ることなく仲間の援護及び支援を行う。 それは周りをよく見、広い視野と状況判断能力に長けているからこそできる仕事だ。 そんな彼女だからこそ……

 

「あたしが説明してあげるから。 ……なのはさんのことと、なのはさんの教導の、意味を」

 

 この噛み合わない空間を正すことが出来るのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 ロビーに集められたフォワードの4人、シグナム、シャマル、シャーリー、そして少し離れた所にコーヒー片手に立っている心悟と腕を組んでいる翔次。 シャーリーはなのはの、『魔導師のなのは』のルーツから話し出す。

 

「昔ね、一人の女の子がいたの。その子は本当に普通の女の子で、魔法なんて知りもしなかったし、戦いなんてするような子じゃなかった……」

 

 スクリーンに映し出されるなのはの姿はまだ子どもも子ども。 年端もいかない9歳の女の子。 そこから新人達が知るはずもない話がシャーリーの口から語られる。 9歳の女の子の真っ直ぐとした感情、それを貫くための無茶、そしてそれらがもたらした当然の帰結……

 

 

「なのはさんが入局して2年経った冬……事件は起きた……起きてしまったの」

 

 それはなのはにとって何の問題もない相手、だが積み重なった負荷がここでなのはを襲ってしまった。 雪原を血で濡らし、力もなくまるで魂が抜けたようにグッタリと倒れているなのは。 その惨状に新人達は思わず悲痛な声を漏らす。

 

「幸いにも大事にはならずに済んだものの……なのはさんはもう空を飛ぶことが不可能かもしれなかった……」

「…………なのはさん」

「……お前らの『言葉』はちゃんと理解している、だからと言ってあのミスショットを行うまでのお前の『言葉』は本当に正しかったか?」

「ッ!!」

「お前がいつも受けている高町の『声』は、一体誰の、何のためにある?」

 

 シグナムの鋭い言葉はティアナの胸に突き刺さる。 ティアナはここでようやく自分の今までの行動の間違いに気付いた、いや元々気付いてはいたのかもしれない。 なのはの訓練を裏切った自分への怒りと情け無さ、その他諸々の感情が今になってやって来た。 心悟が言っていた自分の心の蓋、そのカギとなっていたのは自分が知るべきなのはの事だった。 なのはの過去を知り、自分の内側に押し込めていた感情を受け止めなければならないと、ティアナの心が悟ったのだ。

 

「なのはさんはみんなに同じ思いをして欲しくないから……無茶なんてしなくてもいいように、絶対に元気で帰ってこれるように……一生懸命何度も丁寧に教えてくれているんだよ……」

 

 ティアナは頭を下げて俯く。 ようやく理解したなのはの思い、それに対しての今までの自分。 一体何を持って償えばいい? ティアナは俯き考える。

 

「…………」

「朱澤弟、何か言わなくていいのかい?」

「……あ? 何でだ?」

 

 遠くで話を聞いていた心悟が翔次に何かを促す。 意図が全く掴めない翔次が首を傾げる。 その姿をやれやれといった様子で心悟が言う。

 

「だって『君達は似た者同士』じゃあないか」

「…………ふん」

 

 心悟に言われた言葉を不機嫌そうに聞くと翔次はその場から去ってしまった。 その姿を見て心悟は仕方なさそうに、自分で話すのは本当に面倒くさそうに、ティアナに向かって言う。

 

「これは僕の……あぁー僕らの経験から言えるものだ」

 

 ティアナは返事もしないで俯いたままだ。 だが心悟は気にせず続ける。

 

「『意味の無い死』ほどくだらないものはない。 果たして今のキミが死んだ時、その死に意味はあると言えるかねぇ……」

「……………………」

「少なくとも……そんな事が起こらないために高町はああして教えているんだと、僕は思うよ。 ……ま、今のキミならそんなこと言われなくても分かっているだろうけどね。 言わないといけないのが人の心理の良くない所さ」

 

 心悟の言葉を、ティアナは嫌と言うほど理解し、嫌と嫌と言うほど思い知っていた。 そしてこの時ちょうどキリン達が帰還していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なのはは改めてティアナと話をした。 海が見える景色の所で一人海を眺めていたティアナの隣に座りながら。 なのはの過去を知ったティアナは暗い表情でいたが、なのははしなくてはならない『叱り』をした。

 

 それはティアナは決して凡人ではないこと。 射撃と幻術しか出来ないのではなく、誰にも劣ることのない射撃と幻術が出来るのだと。 それらがティアナにとっての1番の魅力であり、それ以外の事を慌ててやるのは危険な事だと。 そして……

 

「『モードツー』、って命令してみて」

「『モード……ツー……』」

『Set up. Dagger Mode』

「っ!? これって……!」

 

 それはティアナの将来を見越したなのはが用意した近接用のモード。 執務官志望のティアナを思っての、予めの用意。 ティアナはなのはの優しい思いやりに、気遣いに、もう涙を流すほかなかった。

 

「うわぁぁぁぁん!! ごめんなさい、ごめんなさい……」

「ティアナ……」

 

 泣きじゃくるティアナをなのはは優しく抱きしめる。 その表情は優しく穏やかで、まるで子どもをあやす母のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな体勢になって3分弱、一人の男が歩いてやって来た。

 

「……何故ここで反省会をしている?」

「翔次君、どうしてここに?」

「……あんた」

「おい、ボクの方が年上なんだからそれは止めろ……。 ったく、ここはボクがいつも鍛錬している場所だ」

 

 

 やってきたのは翔次だった。 どうやら二人がいた所はちょうど翔次の練習場所だったようだ。 その事を聞くとなのはは……

 

「そうだ、私、翔次君の練習見てみたい」

「何?」

「せっかくだしティアナも見ておこうよ」

「あ、は、はい……」

「勝手に決めるな……はぁ……」

 

 不意に先ほどの心悟の言葉を思い出す。 「何か言ってやってはどうだ? 『似た者同士なのだから』」、まさかこうなる事を予測していたのかと疑いたくなるが、翔次は結局色々諦めて獄砕鳥を振りだす。

 

「ふっ……はっ……!」

 

 翔次が剣を振りだす。 そしてその状態でティアナに話しかける。

 

「ティアナ……」

「……?」

「この剣はな……エリオ達には言ったが、兄貴の能力を少し真似ているんだ」

「……あんた兄がいたの……」

「そうだ、ボクとは大きく違う……あんまりに似てなくてボクだけどこかの畑から拾われたんじゃないかと思うくらいにな」

 

 なのはは知っている、翔次の兄である『朱澤 一喜』の存在を。 魔力は持たずとも魔法を打ち消す事が出来る力を持っていた少年のことを。

 

「何をしても1番、何をしても褒められ、何をなしても絶賛される。 絵に描いたような才の塊。 それがボクの兄の『朱澤 一喜』……だがボクは違う」

「?」

「ボクはどうしようもないクズだった。 フェイト・テスタロッサを傷付け、彼女の母親までも傷付け、挙げ句の果てにはキリンと殴り合う。 ……っと言ってもボロ負けだったがな」

「っ!?」

 

 初めて知る事ばかりのティアナ。 思えば翔次の力の事ばかりの考え、翔次自身の事を知ろうとは思っていなかった。 だがまさかそれがこんな過去だとは思いもよらなかった。

 

「なのにだ、それなのにだ。 こうして生きているのはボクだ、そして死んでいったのは兄貴だ」

「……あんた……お兄さんを……」

「何故死んだと思う? 兄貴はな、こんなどうしようもないボクの為に『二度』死んだ。 二度もボクの為に命を使った」

 

『二度』、その言葉の意味するところを今のティアナには計り知れない。 だがその言葉が使われる程の事が翔次に起きたのだと推測できた。

 

「こんな愚弟が何故ここにいれると思う? 何故ここに存在出来ることを『肯定』されていると思う?」

 

 翔次は獄砕鳥を横に薙ぐ。

 

「それはな、兄貴が言ってくれたからだ。 『この世界に生まれてくれてありがとう』と」

 

『転生してくれて、本当にありがとう』、そう言って一喜は翔次の目の前に消えた。 その言葉が今もまだ翔次の中に在り続けている。

 

「いいかティアナ。 ボク達次男坊はな、受け継いでいく人間だ。 言葉を、思いを、覚悟を、願いを。 だが間違えてはいけない」

 

 翔次は斜めに獄砕鳥を振り下ろす。

 

「ボク達は『受け継いでいる』が、決して一人ではない。 今もなおボク達を見守っている。 許す訳でもなく叱る訳でもなく、ただただ優しく微笑んで見守ってくれている。 そこの所を履き違えなければ……」

 

 翔次は獄砕鳥を下から上へと、空に向かって切り上げる。

 

 

 

「ボク達はどこまでも自由自在でーーーー無限だ」

 

 

 

「……!」

 

 ーーほんの一瞬、ティアナの目に空に向かって飛んでいく一羽の鳥が見えた。 全身が何かに縛られていたのか全身鎖が何かの跡があり、長い間縛られていたのだとすぐに気付いた。 そしてその鳥が空に向かうのが本当に嬉しくてたまらなかった。 何故? ティアナはすぐにそれに気付いた。

 

(ーーあれは昔の私が夢見た『私』なんだ)

 

 まだティアナの兄のティーダが生きていた時の話である。 ティアナは空を飛ぶ鳥を見てこういった。

 

『いいなぁ〜私にも羽があったら空を飛べるのに』

 

 そう呟くティアナはとても羨ましそうな顔で鳥を見ていた。 それを見ていたティーダはティアナにこう言った。

 

『そんなことはないさ。 羽が無かったって、俺たちは自由に空を翔けれる』

『そうなの?』

『あぁ、空を飛ぶってことはーーこの世界で誰よりも『自由』だからさ』

『自由?』

『そうだ、ティアだってきっとどこまでも『自由』に行けるさ』

『ホント!?』

『もちろん! 俺がキチンと見守ってやるから大丈夫だ!』

 

 この時のティアナは後に兄が死ぬことになるとは思ってもなかった。 だからこの時の会話も忘れてしまっていた。

 

(兄さん……)

 

 翔次の言葉がやっと心で理解できた。 自分達は受け継いだ人間だからこそ、その偉大な背を追ってきたからこそ、どんなことをしても見守ってもらっている。 だからこそどこまでも行ける、何でも挑戦できる。 例え失敗しても成功しても、()()から優しく微笑んでいるだけだから。

 

「……ありがとう兄さん」

 

 ティアナは小さく兄への感謝を口にした。 小さいその声はすぐに消え天に向かって飛んで言った。

 

 次の瞬間ーー

 

「わっ!?」

「っ!?」

「……ッ!」

 

 切り上げた斬撃と同じ方向に青白い光が奔流のように流れ出す。 それは斬撃と言うには疎らで、正しく表現するならば光を浴びた流水のよう。 突然出現したその現象に真っ先に声を上げたのは翔次だった。

 

「やったぁぁぁぁ!! ようやく出来たぞぉぉぉ!!」

「へ?」

「よっしゃぉ!! うおおぉぉぉ!!」

「……翔次君?」

「……はっ!」

 

 柄にもなくはしゃぐ翔次の姿に呆気にとられる二人、その様子にすぐに気付いた翔次は一つ咳払いをして今の現象について説明する。

 

「い、今のは獄砕鳥の技でな? 名前は『滑砕流(かっさいりゅう)』と言ってな?」

「いや聞いてないわよまだ」

「そ、それでな! これは自分の霊圧を周囲の霊子に滑らすように放つ技なんだ! この間ようやく獄砕鳥から聞いて、今日ようやく出来たんだ!」

「ふーん……だからそんなにはしゃいだってわけね……?」

「い! な、違う! 別にボクははしゃいでなどいない!」

「そんなに必死になって……案外可愛い所があるのね」

「グヌヌヌ……」

「ふふっ」

「そこ、笑うな! ったく……」

 

 先ほどまでとは打って変わってティアナはいたずらな顔で翔次を見ている。 もう完全に復活したティアナを見て翔次は早く寝ることを促す。

 

「……ほら、もうさっさと寝ろ。 ……あと……そこにいる盗み聞き共もな!」

『(ドキッ!?)』

 

 翔次は頭をかきながら、先ほどから後ろの茂みで盗み聞きしているもの達に言葉を投げかける。 そう言われて初めて気付いたのかティアナは後ろを振り向きざわつく茂みを見る。 するとそこから何かの鳴き声が聞こえてきた。

 

「にゃ、にゃ〜ん!」

「ほう? こんなゴタゴタの施設にネコが迷い込むのか? それもこんな時間に?」

「……ほ、ほーっ、ホアアーッ!!ホアーッ!!」(課長こわれる)

「滑砕流!」

『ギャアァァァ!?』

 

 くっそ汚い猫の悲鳴が聞こえたのでさっそく覚えたての技を打ち込んでいく。 仕方ないね。(レ) 茂みから出てきたのはスバル、エリオ、キャロ、シャーリー、そしてキリンだ。 そして間違いなく猫のモノマネをしていたのはキリンだろう。

 

「何すんじゃ翔次君!! いきなり新技ぶっぱって酷くない!?」

「なぁに、ちょうど実験体が欲しかったところだ。 全員そこに並べ」

「うおおぉぉぉ! 逃げろみんなぁ!」

『キャァァァァ!!』

 

 まるで蜘蛛の子を散らすように隠れていた5人を追い返す。 5人が見えなくなるのにそう時間はかからない。

 

「ふぅ……ボクはもう寝る。 お前らも早く寝るんだな」

「あ、ちょっと待ちなさいよ」

 

 刀を鞘に収め部屋に戻ろうとする翔次を引き止めるティアナ。 そしてティアナは少し恥ずかしそうに翔次にこう言う。

 

「あの……私が撃墜された時運んでくれたの……あんたなんでしょ?」

「ああ」

「だから……その…………ぅ」

「?」

「あ、ありがとうって言ってんのよ! それだけだからね!」

 

 それを聞いた翔次はティアナにティアナに背を向けながら言った。

 

「気にするな……仲間、だからな……」

「…………」

「…………」

『(恥ずかしい……!!)』

 

 二人共慣れないことを言って気恥ずかしいのか、顔が真っ赤であった。 だがただ一人、なのはだけはその二人の表情に気付き、胸が嬉しさと優しさで一杯になり一人だけ微笑んでいた。




魔の8.9話を乗り切ったぞぉぉぉ! ここら辺は2次界隈じゃあ改変され尽くしてるけど、んなの私にゃ無理なんだよぉ!

そんなことより次回から出番があるであろうナンバーズ達どうしよう……キャラの性格とかなのセントの方が新しいからどうしよう……

あ、来週と再来週は冬休みなんでサボりますね!(畜生)

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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