オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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心悟の話をするけど……ギンガファンに怒られたらどうしようね……


23話 SIX PETARーCouple Doppio

 23話

 

 

 

 

 木村 心悟とナカジマ姉妹の出会いは四年前へと遡る。

 

 スバルとギンガは空港で発生した火災に巻き込まれ、ギンガはフェイトに、スバルはなのはに救助された。 この日を境にスバルはなのはを目標に立てて魔導師の道を進むのだった。 だが姉のギンガは妹を自分の手で助けられなかった事を悔いており、深く悩んでいた時期があった。

 

 そんなギンガの元に、父からの紹介で出会ったのが心悟であった。 この時はもう自身の能力を使いこなせており、眼帯をしなくても能力が表面上に出ることはなかった。

 

『初めまして、僕は木村 心悟。 君のことは……まぁ色々と知っているよ』

『は、初めまして、ギンガ・ナカジマです』

 

 最初のコンタクトはこんな簡素なものだった。

 

『さて……一応相談を受けることになっているが……』

『は、はい……』

『僕は将来美人になる相手とそう好き好んで対面したくない』

『は、はい……? ていうか美人って……!』

 

 この時はからかわれていると思っていたが、この後に心悟の好みを聞いて合点がいくのはお約束な話。

 

『だからサクッと解決しちゃうよ』

『……え?』

『ーーーー『紫の境界眼(パープル・ボーダー)』……君の心の境界を覗かせてもらうよ』

『ーーーーッ!!』

 

 ギンガの心の悩み、それは心の境界を操り内側を覗く事が出来る心悟にとって朝飯前の仕事である。 心悟はギンガの心に入り、ギンガを自分自身の心の内側まで案内し、その悩みを発見し解決させた。 この間ギンガにはとても長い時間が経っていると感じていたが、実際には物の数分しか経っていなかった。

 

 心悟曰く。

 

『心の時間は無限なんだ、だから現実では一瞬なんだねぇ』

 

 この時のギンガはまだ15にも満たなかった。 故に心悟の言葉が小難しく感じた。 だが……

 

『さて、君の父上には少し時間がかかる可能性があると言ってしまったからねぇ。 ここで終わると雑に仕事をしたと思われるのも嫌な話だし……』

 

 この時からギンガは……

 

『ちょっとコーヒーでも飲もうか』

 

 この不思議な男に惹かれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……」

 

 心悟はメガネを少し上げ、新聞の記事を読んでいる。 そこには機動六課の世間での評価や管理局の重鎮達の不祥事の記事などが載っている。 世間での六課の評価などは参考にはしたいところだが、それ以 上に気になる記事があった。

 

「『最近女装をする男性が急増中!?』……か。 ……多分キリンのせいだろうねぇ……」

 

 苦笑いを浮かべながらコーヒーを一口。 心悟は常に真っ黒なブラックコーヒーを愛飲している。 それを飲みながら穏やかな朝を過ごしていると一人の来訪者が現れる。

 

「……ふむ、『都心外れで謎のクレーター発見!』か……」

「シンゴさーん」

「……うん?」

 

 医務室の入り口の扉に目を向けるとそこにはギンガが立っていた。 先程までフォワード陣の早朝の訓練に参加していたはずだが、シャワーを浴びたのか汚れ一つない姿で登場した。

 

「ナカジマ姉……そうか、合同で捜査しているからいるんだったね」

「はい! さっきまでは訓練に参加してて……中々ハードでした」

「ここの隊長達は容赦ないからねぇ」

 

 ギンガは疲れた顔をして医務室に入り、心悟が座っている近くの椅子に座る。 何も言わずに座って来たが、心悟が六課に勤務する前の職場でも何度かあったので心悟も何も言わなかった。

 

「それでですね、最初はなのは隊長やヴィータ隊長だけかと思ったら……キリンさん? でしたっけ?」

「あぁ……大方キリンが、『面白そうだから混ぜてくれ』とでも言ったんだろうねぇ」

「そうなんですよ! 聞けば隊長クラスの実力の持ち主って聞いて……それはもう疲れましたよ」

 

 ギンガは基本しっかり者の姉である。 妹のスバルの良い手本となるように普段からしっかりと自らを律している。 だがこの男の前では違う。 自分の心を覗かれた相手に畏る必要はない、変に取り繕うこともない。 ギンガは未だ17歳、花の女子としての自分を心悟にのみ見せていた。

 

「大体六課ってやっぱりおかしいですよ。 Sランク相当の魔導師が何人もいて、スバル達新人も人並外れた能力を持ってますし……それにキリンさんみたいな客員の魔導師もいますし……」

「ま、そこがウチの特色みたいなものだからねぇ」

「あとシンゴさんもいますしね!」

「……そうだねぇ」

 

 ギンガの言葉に少し困る心悟。 実は心悟はギンガの事が苦手である。 前世ではよく女性に言い寄られて来た上に女性に殺されている。 だから心悟にとって対等な女性の友達は小学生から共にいるなのは達だけである。 だからギンガから向けられる『純粋な好意』にいつも戸惑っているのだ。

 

「……そういえば朝食はもう済ませたのかい?」

「はい! マッハで食べてきました」

「そうかい……急いで食べると喉詰まらせるよ」

「大丈夫です! 少しでもシンゴさんとお話したいですから」

「……そうかい」

 

 当然心悟の好みのタイプは『醜女』であり、それを当然ギンガには伝えてある。 そしてギンガの事は好みではないとキッパリ言ってある。 のにも関わらずだ、ギンガは今でも心悟に惹かれており、こうして少しでも心悟との時間を作ろうとする。 そんなギンガは常に笑顔である。 だからそれを見てしまう心悟はどうすればいいか少し困ってしまう。

 

「……疲れているなら、君もコーヒーを飲むかい?」

「あ、はい。 ……いつものブラックですか?」

「いや……疲れている時の奴だよ」

 

 心悟は基本ブラック派だが、たまにエスプレッソを飲む時がある。 コールタールのように真っ黒でドロドロで、同じ量の砂糖を入れてダブルで飲む。 これを飲むと不思議と今までの疲れが吹っ飛び、驚くほどの元気が身体の芯から湧いてくる。 登山家もよく疲れを吹き飛ばすために飲んでいるとか。

 

「ほら、熱いから気を付けて」

「ありがとうございます!」

 

 もらったマグカップを両手で持ち、息を吹きかけて冷ましながらチビチビ飲み始める。 その姿は小さな子どもが慣れないコーヒーを大人ぶって飲んでいるようで、少し小動物のような可愛らしさがあった。 こんな姿を見せるのも心悟の前だけである。 まるで外弁慶な妹だ。

 

「はー……やっぱりこれ元気でますね」

「君もウチのボスみたいに働きすぎるのはよくないからねぇ、気を付けるんだよ?」

「大丈夫です! シンゴさんに会えば1週間は行けます!」

「……肉体も大事にね」

 

 精神が肉体を凌駕していることに一抹の不安を覚えながらも、ギンガの頑張っている姿は知っている。 常に努力を惜しまない彼女を思い出し……それならこうやって困るのも仕方のないことだと心悟は結論付ける。

 

「ご馳走様でした! 元気一杯です!」

「そうかい、それなら良かったよ」

「それじゃあ午前の合同訓練に行ってきます!」

「張り切りすぎないようにねぇ」

「はい!」

 

 ギンガは笑顔で医務室を出る。 すると入れ違いでシャマルが戻ってきた。 シャマルは部屋から出てきたギンガと部屋に残っている心悟を見て柔らかい笑みを浮かべる。

 

「ギンガちゃんが来てたのね」

「あぁ、わざわざ朝食も早食いしてやってきたよ」

「ふふ、相変わらずなのね」

「相変わらず過ぎて僕は困るけどねぇ」

 

 心悟はギンガが使ったマグカップを流しで洗う。 シャマルはクスクス笑いながら心悟に、心悟の表情を教える。

 

「うふふ、困ってる割には嬉しそうな」

「……はいぃ?」

 

 シャマルの言葉に心悟は真顔で聞き返す。

 

「おいおい、僕が美人と話して嬉しそうだなんて……砂漠に雨が降るくらいあり得ないぞ」

「あら、少しはあり得るってことよね?」

「……シャマル、君はあれだ。 たまに年長者っぽくなるねぇ」

「ふふん、どーも」

 

 心悟は自分の顔に手を当てる。 確かに気持ち表情が柔らかいかもしれないと気付く。 それに気付いてさらに笑う。

 

「やれやれ……」

 

 心悟は嬉しそうに困る。 徐々にではあるが自分の心の動きを理解はしていた。 だがまさかギンガが自分にとって『親しい仲』の一人になるとは思ってなかった。 そんな自分の心の変化を祝福するように心悟は新しいコーヒーを淹れる。

 

「……そうだシャマル、君も一杯飲むかい?」

 

 朝と同じブラックだったが、ほんのり甘さを感じた不思議な一杯であった。




今回のコーヒーネタはジョジョのSBRのジャイロのコーヒーです。 美味しそう……美味しそうじゃない?

次回フェイトの話をして話を進めます。

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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