24話
「いよいよ明日……か」
フェイト・T・ハラオウンは出来上がった資料を見つめながらそう呟く。 公開意見陳述会はいよいよ明日となっていた。 すでに六課が用意すべき資料等は準備出来ている。 あと懸念すべきなのは当日の事のみ。
「……何もない……ことはないよね」
六課だけでなく管理局の重鎮達も何人か参加する会合、間違いなくあの男、『ジェイル・スカリエッティ』が何らかのことをしでかして来ると予想していた。 ジェイル・スカリエッティがどのような目的を持って管理局に対し攻撃を加えているかは明白ではないが、あの男はかつて管理局の手によって造られた存在。 恨みを持っていてもおかしくはない。
「……だとしたらヴィヴィオは……」
だからこそヴィヴィオの存在が不可解であった。 復讐を果たしたいのならレリックやロストロギア、それこそジェイル・スカリエッティ自ら作り上げたガジェットや戦闘機人を用いればいい話である。 なのにレリックのそばにヴィヴィオはいた。 すなわちヴィヴィオもジェイル・スカリエッティが復讐の為に用意した『道具』であることが推測される。
「…………」
そこまで考えてフェイトは自分の拳を強く握り締める。 ジェイル・スカリエッティは間違いなく『悪』であり、それは『管理局自ら』作り上げた『巨悪』である。 だからと言って戦闘機人やヴィヴィオが『悪』になると聞かれればそれは違うと答えられる。 ジェイル・スカリエッティは与えられたその無限に等しい知識を復讐に使うと自ら選択している。 だが生み出された戦闘機人達は違う。 そういう命令で行動してるに過ぎず、その行動に悪意がある訳ではない。 ただ善意を知らないだけである。
ヴィヴィオもまた『悪』とは呼べない。 ヴィヴィオは『ママ』を求めていた。 それは人間の純粋な本能の表れであり、それはヴィヴィオの心は無垢なままである証拠だ。 だからなのはがママの代わりになった、フェイトはそれを助けようとした。 当然奪い返そうとしてくるジェイル・スカリエッティの魔の手から。
「……頑張らなきゃ」
フェイトは月を眺めながら一人決意を固めいた。 そこに来訪者が一人。
「お疲れ様だ、テスタロッサ」
「シグナム……」
烈火の将、シグナムだ。 シグナムは珍しく一人黄昏ているフェイトを見かけ、声をかけにきたのだ。
「どうしたテスタロッサ、お前にしては珍しくナーバスな表情をしているぞ」
「そうかな? ……っていうか珍しくってどういう意味ですか」
「そのままの意味だ」
シグナムは腕を組みながらフェイトの隣に立つ。 今宵の月は雲もなくいつもより美しく見える。 心が穏やかになる静寂の空間を照らす月の光、そんな少し幻想的な空間でシグナムは口を開く。
「ところでテスタロッサ……いつになったらやつに告白をするんだ?」
「ブッ!?」
……この静寂を破る言葉を。
「あな、あなな、あああああ!!」
「アナと雪の女王?」
「言ってません! シグナム! 貴女ってそんなこと言うキャラでしたっけ!?」
「お前こそこの程度の事で動揺してどうした? キャラ崩壊が著しいぞ?」
「貴女には一番言われたくないです!」
フェイトは顔を赤くしながらシグナムに抗議するも、当の本人はめちゃくちゃ涼しそうな顔をしてフェイトを煽っている。
「早い所、『好きです、付き合ってください』と言えばいいものを……いつまでうだうだしているんだお前は。 ニセコイか」
「申し訳ないがキムチはNG!! やっぱりシグナムのキャラおかしいよ!? 烈火の将はどうしたの!? クールな武人キャラはどこに消えたの!?」
「お前こそ最近エリオやキャロ相手によく分からない大人キャラで接しているではないか。 ほら、『歴史は一旦置いといて』(伝わりにくいモノマネ)」
「そんな事あなた知らないはずでしょ!?」
「エリオ達から聞いた、イントネーションも確認してもらったぞ」(ダブルピース)
「最近凄いアグレッシブですね!?」
物凄い勢いでシグナムのボケをツッコミ続けるフェイト。 ここまでツッコミをしたのは昔のキリン以来である。 実に不名誉なことだ。
「はぁ……シグナムのキャラがぁ〜……」
「ふふふ、そんな事よりだ」
「私や読者にとっては『そんな事』じゃあないんだけどなぁ……」
「早くキリンとくっ付け。 最近主がお前らを見かけるたびに悪態をついて敵わん」
「えぇ……それははやての問題じゃ……」
「その度に胸を揉まれる私の身にもなれ……!」
「ア、ハイ。 実際凄い切実……」
割りかしシグナムは困っていた。 別に変な意味がある訳ではないが、単純に困るのだ。 そして周りに男性職員がいるとさらに困る。 流石に羞恥心くらいはヴォルケン達に搭載されている。
「うーん……でもぉ〜……」
「なんだ、何を迷う必要がある?」
フェイトもフェイトでそこそこ切実な悩みがあった。 それはキリンの『性別』に関してだ。
「キリンってほら……元女性でしょ?」
「らしいな」
「そうすると私、昔から中身女の子に恋している訳でして……ちょっとアブノーマルじゃないかな?」
「……」
そんな悩めるフェイトにシグナムはバッサリと切り捨てる。
「何を今更」
「『何を今更』!?」
「元々お前は常人の感覚とはズレているし、今更感が拭えんな」
「シグナムにだけは言われたくない!!」
「む、私はこう見えてヴィータの次には常識があるぞ」
「何でヴィータの方が常識人なの!?」
「因みに一番常識を持っているのがザフィーラで常識をかなぐり捨てているのがシャマルだ」
「シャマル先生に怒られるよ!?」
シグナムによるヴォルケン常識ランキング。 自分の事を下から2番目に持ってくるあたりちゃんとしたランキングなのだろうが……シャマルが聞いたら怒られそうなのは確か。 だがフェイトも心当たりがあるからか強く否定は出来なかった。 仕方ないね。
「全く、テスタロッサよ。 今更お前がそのような事でグダグダしたところでな、事態は進展しないのだぞ?」
「うっ……」(図星)
かなり痛いところを突かれ少しショボけてしまうフェイト。 シグナムは仕方なさそうに、真面目にフェイトを諭す。
「大切なのは事実だけではない、真に大切なのはお前の『言葉』だ」
「言葉……」
「お前の芯の芯に根付いている
「……それが一番難しいのですが……」
少し頬を膨らませてシグナムを睨むも、シグナムは依然と月を眺めている。
「別に伝えることは今せずともいい。 ただ、今の内に『言葉』にしておけ。 そうすればお前はブレない。 あの日、戦った時のお前のようにな」
「シグナム……」
「いつでも『言葉』を胸に秘めとけ。 そうするだけで大分変わるはずだ」
そう締めくくりシグナムは自室へと目指し歩き始める。 その背はいつもよりたくましく、そして温かで優しく見えた。 そんなシグナムの背にフェイトは迷いなく礼の言葉を送る。
「ありがとうございます、シグナム」
シグナムは右手を軽く上げ、言葉を口にせずに返す。 もうすでに言葉は伝えたかのように、だからフェイトも必要以上の言葉を口にしなかった。
(……私とした事が、少しお節介が過ぎたな)
シグナムは一人静かな廊下を歩く。
(だが、テスタロッサの為になるというのなら、お前に感謝せねばなーーーー『
その日シグナムは珍しく夢を見た。
まだ地球にいた頃、夜天の書のことを闇の書だと勘違いをしていた頃。 一人の男が海鳴にやって来て、八神家と数日の間交流をした。 シグナムが見たのはその時の1シーン。
闇の書の前で唸っている青年、そしてその周りを囲むように座っている八神家の面々。 シグナムはずっと青年の背中を見ていた。 そしてシグナムが夢である事に気付くと、その背中を見て呟く。
ーーーー人の夢にまで現れて、あいも変わらずデリカシーのない奴だ
シグナムは悲しむことはしない、ただただいつものようにその背中に向けてシグナムの言葉を放つ。 不思議とその日の夢に出てきた青年の背中は、記憶以上に嬉しそうだとシグナムは感じていた。
そんな深夜の時間、フェイトは未だ寝ずにとある方へ電話をかけていた。
「……それでね、キリンの〜……」
フェイトはシグナムに言われた通りにキリンに対する自分の想いを頑張って言葉にしようとしていた。 そう、頑張っていたのだが……やはり一朝一夕では叶うはずもなく。 テンパったフェイトは電話を、それも真夜中にかけていた。 その相手とは……
「それで! 私どうしたらいいと思う!? 『アルフ』!!」
『……あーフェイト?』
自分の使い魔であるアルフにコールをしていた。 今のアルフはフェイトの負担にならぬ様に姿を小さくしており、現在少女の姿をしている。 まさに見た目は昔と逆転しているが、精神的な差もこの時だけは逆転していた。
そんなフェイトにアルフが一言。
『明日じゃダメ……?』
「ダメ! もう今の内にしとかないと夢に出てきちゃうよ〜!」
『えぇ……』(困惑)
もはや、明日が公開意見陳述会であることを忘れたフェイト。 ……これもう駄目かも分からんね。
次回から話進めっぞオラァ!!
あの……ほら……スカリエッティが色々やって六課を半壊させたりスバルの作画がマッハになったりする所やるぞオラァン!!
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。