オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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なんか二話構成になっちゃった。 てへぺろって感じです。


28話 Rage of Thunder メタルカラーの恐怖

 28話

 

 

 

 

「てめぇが霧刀君を殺したんだ……楼人・ビレッジストレート!!」

 

 キリンの殺意ある視線を受け、ローリは小さく口を開け何か関心を持つ。 そしてそのまま小さく笑いながら……肯定する。

 

「そうだ……私が『旧姓小五』改めて楼人・ビレッジストレートだ……!」

「…………当たり……か……チッ!」

「転生者と言えど、この私の事を知っている者がいるとは少し驚いた」

 

 キリンはローリに聞こえるように舌打ちをする。 実はキリンは自分の予想が外れていて欲しかった。 実は似た名前で、全く関係ない人物であって欲しかった。

 何故? 当然だろう、本物なら……殺意を抱かずにはいられない。

 

「だがその程度はバージョンアップされた今の私には関係ない。 貴様を完膚無きまでに叩きのめし……殺す!」

『!? デバイスである私にも伝わるこの迫力……これはッ!?』

 

 ローリは右拳を前に出し、力強く握る。 それと同時に放出されるローリの紫のエネルギーは、デバイスであるミョルニルでさえ脅威を感じるほど強大であった。

 だがキリンには関係ない話である。

 

「テメーが何度出てこようとなぁ……何度でも潰してやるよ……!!」

 

 両拳を腰に構え、一気に輝く黄金の魔力を解放する。 その衝撃に大気は揺れ、周囲の雲は霧散し、遥か真下にたゆたう海は波紋を広げる。

 お互いに準備は完了。

 

「……ッ」

「……ッ」

 

 睨み合う二人の化け物は同時に動き始める。

 

「ハァッ!」

「ッアァ!」

 

 真正面から激突する二人の拳。 激しい轟音が鳴り響く中、ミョルニルだけが不安に駆られていた。

 

『(違う……)』

 

 暫しの均衡ののち、二人は仲良く回転しながら後ろに飛ぶ。 キリンの次の一手は強烈なローリングソバット。 大木すら簡単にへし折る事が出来るその蹴りはローリにいとも容易く受け止められる。

 

「ふん、大ぶりな攻撃は見えているぞ!」

「そいつはどうかな!!」

「ーーなっ!?」

 

 受け止められた右足に力を込める。 次の蹴り技に移行する訳ではない。 受け止めたローリの右腕を巻き込んでそのまま『蹴り押す』。

 空中で停止していたローリは、まるで地面に溝を作るかのように空中で踏ん張る。

 

「ずぁああああ!!」

 

 キリンは左手に持つミョルニルに魔力を込め、ローリに叩き込む。 素早く接近し、頭目掛けて振り下ろす。 だがローリはそれを許さない。

 

「それも見えているぞ!」

「ッ!! ギッ……!」

 

 ローリは直撃する瞬間、高速で後ろに退いていた。 ミョルニルが打ち抜くのはローリの残像。 雷の魔槌は闇夜に空振る。

 そしてカウンターとしてキリンの顔面を足の裏で蹴り飛ばす。

 

「そらそらそらそらそら!!」

 

 後方へ飛んでいくキリンの顔面を何度も踏み付ける。 真横なのに踏むとは妙な表現だが、確かにローリは真横にキリンを踏み付けいるのだ。 高笑いをしながら5.6発打ち込んだ所でローリの動きが止まる。

 いや、正確には止められる。

 

「くぅ……バインドか……!」

「調子に乗るんじゃ…………!」

 

 ローリは四肢にバインドをかけられ、空中で貼り付けにされる。 キリンのバインドはなのはほど応用が利く訳ではない。 だがその膨大な魔力によって頑丈なモノとなっている。 ローリの動きが数秒止まる、そこにミョルニルを構え……振り下ろす。

 

「ねぇぞ!!」

「ゴォアァ!?」

 

 断頭台の如く振り下ろされるミョルニルはローリの腹部にクリーンヒットし、海面目掛けて叩き落とす。 金属と金属がぶつかり合い巨大な不協和音が鳴り響く。

 

「逃すか!!」

 

 キリンの攻撃は止まらない。 高速で落下するローリに瞬時に追いつき、斜め上の上空に叩き飛ばす。 その小気味良い音は野球でホームランを打った時と同じ良い音だった。

 

「……ッ!!」

 

 ミョルニルを顔面に受け表情が少し歪むローリ。 顔をしかめながら憎っくきキリンを目で追うと、そこには右手の人差し指と中指に魔力を貯めているキリンが次の攻撃に移ろうとしていた。

 

「くらえ……」

 

 キリンは魔力を込めた二本の指で空にXを描く。 指先の魔力が空に残り続け、雷を帯びたXが光を放っている。

 

「『エクストリック・ライン』!!」

 

 そのXから雷のレーザーが放出される。 その形もXである。 ローリ目掛けて飛んでいくそれは、闇夜に二人を繋ぐ雷のライン。 確かな殺意がローリ目掛けて飛び出す。

 

「ッ!?」

 

 レーザーはローリに衝突する。 再び金属音が鳴り響く。 だがそれと同時にローリの高笑いがキリンの耳に届く。

 

「…………ふふふ、ははははは!」

『無傷……!?』

「きかん、効かんなぁ……貴様の攻撃など!!」

 

 ローリはそのメタルボディを、傷一つ付いていない身体をキリンに見せつける。 キリンはそんな気がしていたのか、小さく舌打ちをする。

 

『あ、あの時とは違い最初から攻撃に魔力を割り振っているのに……!』

「これが私の進化したボディ! スカリエッティが私のために作り上げた最強の肉体だぁ!!」

 

 腹部と顔面にミョルニルを一発ずつ、新たな魔法攻撃を一発。 もちろんかなりの魔力を込めた攻撃だった。 それでもローリのボディには傷一つ付いていない。 付けていない。 その事実にローリはえらく満足し、調子に乗ったのかキリンを挑発する。

 

「ほら、打ってこい。 貴様如きの攻撃では傷一つどころか貴様の身体が壊れるがな!!」

「…………あぁ?」

 

 ローリは自分の右の胸辺りを指差し、ここに攻撃してこいと挑発する。 それはもちろんキリンのカンに触る発言だ。

 

『マスター、アレは誘ってます。 乗ってはいけません』

「そりゃ無理だ」

『マスター!!』

「あんなにナメられたら……一回黙らせるに限る!!」

 

 キリンは金色の魔力を纏いながらローリに向けて突撃する。 その姿はさながら真夜中に光る流れ星の如く一筋の光の矢を連想させる。 下からの流れ星などありはしないが。

 

「だぁぁぁぁぁぁ!!」

「ふは……!」

 

 魔力を右手に集中させ、何百万もの魔力が凝縮される。 これぞ修行の成果である。 魔力の一点集中、無駄な破壊を起こさない圧縮された破壊力が今、ローリに突き刺さる。

 

「オラァッ!!」

「…………!!」

 

 キリンの拳はローリのボディに激突し、見事その堅牢な守りを突破、ローリの右胸から右手にかけてを分断しながら殴り抜ける。 分断面から見えるのは肉や骨、血ではなくいくつもの機械の部品。 大きいものから小さいものまで多種多様、それがローリから飛び出している。 キリンはここでローリが完璧に人間の姿を捨てた事を確信し……その顔を見て眉間のシワがさらに増える。

 

「………………………………ふふふ」

 

 壊されたローリ、だがその表情は嗤っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空の上で戦っているのはキリンだけにあらず。 フェイトとまた二人の戦闘機人を見事相手取っていた。 フェイトは最初から本気で行くためにバルディッシュをザンバーフォームへと移行していた。 ザンバーフォームはバルディッシュの形状を巨大な大剣に変化させる。 かつてはそのサイズに使い辛さがあったが、成長したフェイトはこれを巧みに操る事が出来る。

 

 戦闘機人達もまた高速戦闘が得意だった。 トーレとセッテは同じ戦闘スタイルを持ち、近接戦闘を駆使してフェイトに詰めいる。 そして見事なコンビネーションはフェイトに苦戦を強いる。

 

 そんな三人が激しい戦闘繰り広げる所に、何度目かの轟音が響いてくる。 キリンとローリがぶつかり合う音だ。 だが今回のは一際大きい音と衝撃が伝わって来た為フェイトはその手を止める。

 

「キリン……?」

 

 何となく、キリンが強烈な一撃を放ったのだとフェイトは思った。 それはキリンが善戦している証拠にもなる。

 

(よかった、心配はいらないみたいだね)

 

 自然と表情が柔らかくなる。 それを見ていたトーレはフェイトの心中をそれとなく察する。

 

「……あの男が善戦していて安心しているのか」

「そうだね」

「ローリの方が押しているかもしれないぞ……奴はドクターが以前から構想していた最強のボディを持っている。 例え無限の魔力を持とうと、ローリの前には無意味」

「分からないよ。 だってキリンは強いから」

「…………」

「随分と信頼しているのだな」

「そっちこそ……」

 

 トーレとフェイトの舌戦。 お互い余裕を持っているので精神に動揺を誘う事は出来ない。 ……のだが、意外な事に寡黙なセッテが声を上げてフェイトに言う。

 

「……ローリの方が強い」

「……?」

「セッテ……?」

 

 表情は依然として無表情のままだが、トーレには分かる。 珍しくセッテはムキになっている事に。

 

「あんな……雑な男とは違う……ローリはしっかりしてるし……強い」

「……むっ」

 

 キリンの悪口を言われムッとくるフェイト。 確かにキリンは雑という言葉では足りないくらい大雑把ではある、だがそれを赤の他人に、それこそ敵に言われては流石のフェイトもムキにならざるを得ない。

 

「そんな事ないよ……キリンはしっかりしてるし、気配りも出来るし、あと強いよ」

「ローリもしっかりしてる……意外と周りが見えてる……それにローリの方が強い……!」

「むむ……」

「……」

「せ、セッテ……? 何故そんなにムキになる?」

 

 トーレには分からない世界なのだろう。 RIM風に言うのなら、「恋する乙女のパワーは凄いわね」という感じである。(違う)

 

「キリンはね、料理も出来るし子どもの相手も出来る家庭的な人なの」

「ローリも……家事が出来る……みんなの訓練もしてる……」

「それにあれでも頭いいんだよ、確か4ヶ国語くらい話せるもん!」

「ローリも確か……色んな国の言葉知ってた……!」

「キリンはかっこいいもん!!」

「ローリも……かっこいい……!!」

「待て!? 何の話だこれはぁ!?」

 

 生まれたての少女に対抗する大人気ないフェイト。 いや、大人気ないと言うよりは子どもと同レベルと言うべきか。 目の前で繰り広げられる意味不明の会話に流石のトーレをツッコミを入れざるを得ない。

 

「それに……ローリは『()()()()()()()』」

「……?」

 

 セッテは確固たる自信の元、フェイトにそういう。 キリンの持つ無限の魔力を相手に一度ローリは敗れている。 それにも関わらず絶対に負けないと言うのだ。 流石にこの言葉には眉をひそめる。 だがセッテの言葉は不思議な力があり、フェイトに一抹の不安を過ぎらせる。

 

「ローリは……絶対に負けない……『()()()』……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、どうした…………」

「…………ッ!?」

「何をそんなにたまげている……?」

『な、何ですかそれは……!?』

 

 キリンの目の前にいるのは間違いなく右肩から先を殴り壊されたローリがいるはず。 だが散らばるはずの破片は空に浮いている。 いや、浮いていると言うよりは繋がっている。

 

『バカな……修復されている……!?』

 

 ミョルニルの言う通りであった。 露出している右肩の内部からいくつかのワイヤーがまるで生き物のように飛び出し、散らばった金属片を全て回収し、ローリの失った右腕を再生させる。 それは機械と呼ぶには余りに生物的で、驚きで目を見開いてしまう。 信じられない。

 

「これがスカリエッティの作り上げた超魔法科学の結晶。 破損された部位を瞬時に修復、さらに受けたダメージは全てこの私が分析、補填し強化する」

「……お前が『分析』だぁ?」

 

 ローリの言葉に何か引っかかる。 確かにスカリエッティの持つトンデモ科学ならばローリのボディの問題は片付く。 だが機械が大半を占めると思っていたキリンにとって分析を行うのがローリ自身なのは疑問でしかない。

 

「なんだ……お前の脳みそがコンピュータか何かとくっ付いてんのか……?」

「違うな……そんな凡庸なものでは無い」

 

 ローリは全身を見せつけるように両腕を広げ、メタリックな肉体を誇示する。

 

「このボディは、どこを切り取っても『100%機械』!!」

「なんだと!?」

『そ、それなら転生した貴方の本体はどこに……!?』

 

 そう、転生したのなら必ず魂を収める器が存在するはず。 それが人間なのか他の生物なのかは本人の自由だが、魂だけが転生するなど見たことが無い。

 

「いいことを教えてやろう。 私の魂を入れている器は……小さな『()()()()()()()』だ……!」

「ッ!? 物に転生したのか……!!」

「そうだ、私の本体はどんな機械とでも接続を可能にし、その機械の持つスペックを120%引き出すことが出来る!!」

 

 衝撃の事実。 それはローリの転生先が人間ではなくマイクロチップという人間の魂が物体に宿るという恐ろしい真実であった。 もし突然人間が目を覚まして物になっていたら、発狂するどころか精神が簡単に壊れてしまう。 そんな恐ろしい狂気をこの男はやってのけているのだ。

 

「そしてこのボディに搭載されている演算能力はスーパーコンピュータ並の性能を持つ。 これに私の手が加われば再生と強化を滞りなく行うことが可能!」

「……化け物が」

「それは貴様もだろう?」

 

 離れた場所でセッテがローリに対して絶対の信頼を持っているのはこういう事である。 つまり並大抵の攻撃を受け付けないボディ、仮に欠損しても直ぐに再生し、さらなる強化を図るローリの演算処理。 これら二つが合わさりローリはこの全次元で最も最強に近い存在となっていた。

 狂気のマッドサイエンティストであるジェイル・スカリエッティと狂気の所業を平気で行える楼人・ビレッジストレートが手を組んで生まれた最強最悪の戦士であった。

 

「化け物らしく……死合おうじゃあないか!!」

「何度再生しようと、何度でもぶっ壊してやるよ!」

 

 再び激突する両雄。 キリンは先ほどローリを破損させた拳を放つ。

 

「おおおお!!」

 

 その輝きは先ほどよりも強く、タイミング、テンション共に最高の物だった。 恐らく戦闘機人でも食らえばその腹を簡単に突き破る事が出来るであろう拳。

 だがそれはローリのさらなる恐怖を引き出す物になってしまう。

 

「…………ッ!?」

「効かん……効かんなぁ……!」

『そん……な……!!』

 

 キリンの攻撃は大きな衝撃音を出すだけに留まってしまう。 『分析・再生・強化』、これらの持つ意味をキリンは思い知る。

 

「さて……今のがフルパワーか?」

「くっ……」

「だとしたら残念だ……!」

「だらぁ!!」

 

 キリンは左足を抜き、ローリの側頭部にハイキックをお見舞いする。 だがこれも虚しい金属音を鳴らすだけだった。

 ローリはまるで意を返さない。

 

『たった一度の再生で……マスターの攻撃が効かない……!?』

 

 ミョルニルには分かる。 この恐ろしいボディを持つローリのスペックが、キリンの魔力と同じく『無限』にあることを。

 

 キリンの持つ無限の魔力が矛なら無限の再生は盾。 まさに『矛盾』、どちらが勝つかなんて口には出来ない。

 だが、確実に言える事がある。

 

「ではジワジワと……なぶり殺しにしてやろう!!」

 

 このままではキリンは死ぬ。

 

 

 

 




次回は珍しくタイトルが続きます。

次回も戦闘パートばっかなのでよろしくお願いします。

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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