オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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すまぬ……すまぬ……遅くなってすまぬ……


36話 新たなる道のり

 36話

 

 

 

 

 フェイトキリンキス事件から1日が経過。 六課どころか管理局もひっくり返る衝撃に一同大慌てで大混乱していた。 フェイトのファンクラブのスレも大荒れし、小規模ではあるが女装キリンのファンのスレも大荒れした。 六課職員に変態が多いことが改めて周知の事実になりつつ、尚且つ執務官の生キス映像が一部とはいえ垂れ流しなのは色々と問題があったので外部に漏れない様にするのも大変だった。 なおしっかりと114514重にロックされた上で保存された模様。

 不思議とスカリエッティ達のアクションが一切なかったので、そこだけは犯罪者に感謝した。

 

 

 

 

「……それで、お前は何をしているんだ?」

「それは……その……」

 

 訓練室前で何やら話をしているキリンと翔次。 現在訓練室にはシグナムとエリオが入っているため順番待ちを翔次がしているのだが、そこに何故かキリンがやってきたのだ。

 

「クソみたいなリア充展開して、何だ? ボクに自慢しにやってきたのか? あぁん?」

「ち、違うわい! な、何がリア充展開じゃ! き、君ねぇ……君ねぇ!!」

「しどろもどろすぎる。 少しは落ち着け……ったく。 そんなにフェイト・テスタロッサの奴とキスしたのがアレなのか?」

「言うなバカァ!」

「馬鹿はお前だけだ……あ、フェイト・テスタロッサもか」

 

 誰もが目撃している事だが、今日朝からキリンとフェイトは顔を合わすたびに誰かの後ろに隠れてしまう。 どうにもキスした事が無駄にねっとりとフラッシュバックしてしまい、平常心など全裸で逃げ出してしまうのだ。

 

「お、オレだって……キ、キスくらい憧れた事はあるさ……これでも元女だぞ」

「無駄にモジモジするな。 思春期か」

「なっ!? 思春期真っ盛りの君には言われたくない!」

「騒ぐな……はぁ……何なんだお前は」

 

 いつもとは勝手が違うキリンの様子に少々頭が痛くなる。 だがわざわざ自分の所に来たという事は何かしらの用が自分にあるのだと思い、仕方なく相手をする。 流石の翔次もこんなキリンは見た事がない。

 

「あ、あのさ……」

「あぁ」

「あ、あの時のキキキ……キスがこう……その……無駄にフラッシュバックしてね?」

「ハキハキ喋れ」

「お、オレは一体フェイトと何を話せば……いいんでございますでしょうか……?」

「…………」(イラ)

 

 ものすごい乙女のような、コウノトリやキャベツ畑で保健体育を終えた処女みたいな態度のキリンに、隠キャである翔次のイライラは加速する。 そんなの知った事じゃねぇよ、と。

 

「……そんなのいつも通り話しかければいいだろ」

「そ、それが出来たら苦労はしないの! そもそもそんな程度ならキミに聞かんわ!」

「貴様……人に頼んでおいてその態度か……?」

「わぁーごめんなさい! でもでも……」

 

 流石にキレそうな翔次を前に謝りながら申し訳なさそうに言う。

 

「……心悟君はまだ寝たまんまだし」

「……」

「怪我してるヴァイス君や他の職員に聞く訳にもいかないし……だからこんなのキミにしか聞いてもらえないし……」

「……はぁ」

 

 今話しかけている翔次もその怪我人の一人なのだが……まぁ当の本人は今から修行する気満々なのでカウントはされない様子。

 しかし、それでも申し訳なさそうにしているキリンが気に食わないのか、翔次はぶっきらぼうにそれとなくアドバイスをする。

 

「隠キャのボクからしてみれば……何をうじうじしている? 会って、話したい事を話せばいい」

「それが出来れば苦労しないんだって……」

「苦労しろ! ったく……変な所で典型的な女みたいな性格だなおい」

「だから元女……」

「それだよ」

「?」

 

 翔次にとって、キリンの悩みなど解決するに至る意見など出せはしない。 だが10年にもなる付き合いからヒントを出す事はできる。

 

「お前は、今『()』か? それとも『()』なのか?」

「!」

「せめてそこだけでもはっきりさせろドアホ」

「今のオレ……」

 

 キリンが無駄に頭を悩ませているのは、依然キリン本人が自分の性別をはっきりとさせていないからだ。 元々女であり、20年近く女として生きてきた。 だがこの世界に来て男の身体を借り10年近く生きてきた。

 ならばこのジェンダーの複雑化がキリンに何を及ぼしているのか? それこそ今の不安定でイラッとさせてしまうキリンの姿だ。

 

 誰かが口にしていいたい、『ノンケならさっさとしろよ! レズなら早くレズれよ!!』っと。

 

「……今のオレ……は……」

 

 翔次の問いに何かに気付けそうになるキリン、そこに訓練室からシグナムとエリオが出てくる

 

「すまんアケザワ、少し時間をオーバーしてしまって」

「ごめんなさい翔次さん…………ってキリンさん?」

「……あぁお疲れ二人とも」

 

 エリオはかなり汗をかいており、訓練の量と質がかなりの物であったと伺える。 反面シグナムは涼しい顔をしているが、非常に充実した表情だ。 どうやらエリオを鍛える事がかなり楽しかったらしい。 このような表情はフェイトをイジっている時と同じくらいイキイキしている。

 

「……何だムラサキ、言ってくれれば『この間』のようにエリオの特訓に付き合ってもらったものを」

「ん? ……まぁ本部の特訓でエリオには『()()()』を伝授したし、大丈夫だ」

「……お前、そんな事をしていたのか」

 

 密かにチビっ子の特訓に付き合っていたのはキリンらしい。 必殺技まで伝授するのは子供心を非常にくすぐるのも忘れていない。

 

「あの時はキリンさんから教わった技を出せませんでしたけど……今度は必ず活躍させてみせます!」

「おう、まぁ怪我しない程度に頑張ってね」

「はい!!」

 

 エリオの元気な笑顔に少し心が癒される。 やはりと言うか、キリンの行動原理は子どものためにある。 こうして話すだけでキリンは困難に立ち向かう力を蓄えるのだ。

 ……このシグナムの不要な言葉がなければ。

 

「ところでテスタロッサの奴と会ったのか?」

「ブッ!?」

「あんな曲がり角で出会い頭のキスをするのと同じくらい唐突なキスだったんだ、もう一回きちんとしたのか?」

「あ、おま……おまっ……!!」

 

 再びキリンの頭を埋め尽くすフラッシュバック、顔を真っ赤にするくらい再燃する。

 

「こんな非常時ではあるが、男女が結ばれるのは非常に良い事だ。 さっさとその先にも行って欲しいがな」

「う……うぅ……お……!」

 

 グルグルと目を回し始めるキリン。 ちなみに翔次は律儀に健全少年エリオの耳を塞いであげていた。 優しい。

 

「大体今更何を迷う。 向こうからしてきたのだから今度はお前の方からーー」

「おっぱいさんのバカー! 淫乱! 陥没乳首ー!」

「む、どこに行くムラサキ?」

「健全なエリオきゅんの性欲を刺激する女騎士ぃぃぃぃぃ…………」

 

 キリンは唐突にシグナムを言葉責めしながら走り出す。 あとクッソ風評被害を振り回す。 まぁ六課職員にとっては周知の事実だが。(違う)

 

「……キリンさん、どうして顔を真っ赤にして走っていっちゃったんですか?」

「…………知らん。 それよりもシャワーを浴びてこい」

「あ、はい! 翔次さん、特訓頑張ってくださいね」

 

 純真無垢なエリオは元気に無邪気な汗を滴らせてシャワーを浴びに行く。 シグナムもイジる標的がいなくなったのではやての元に向かう。

 

「それではアケザワ、私は主の所へ……」

「あぁ待ったシグナム」

「……何だ?」

 

 はやての元に向かうシグナムを少し引き止め……お願いする。

 

「ここから先、ここはボクが貸し切る。 そう他の連中に伝えてくれ」

「……おい、それは構わんが……それではお前はいつ休むというのだ?」

 

 訓練室の貸し切り、それそのものは別段問題はない。 現にシグナムとエリオは特訓していたが、他のスバルやティアナは休養に専念している。 だから貸し切り状態でも誰かが特別困る事はない。

 だが、いつ何時にスカリエッティが侵攻してくるか分からない現状でむやみに体力を消費されては非常事態に困るのは本人だ。

 だが翔次には一つだけ算段がある。

 

「……確かにボクは休む事なく特訓を続けるつもりだ。 だが、すでに『具象化』は済んでいる」

「……?」

「あとは……ひたすらに突っ走るだけだ。 気にするな、無茶をする訳ではない。 100年1000年に一度の現象を起こすだけだ、無理じゃない」

 

 シグナムの目には映らないが、翔次の隣には七色の虹のように艶やかな色彩で彩られた鳥が立っていた。 その姿はシグナムには認知できない、しかし翔次から感じる覚悟は伝わる。

 そしてシグナムは翔次の言葉を信じる。

 

「いいだろう、好きに使え。 主や他の者には私が言っておく」

「っ! そうか、すまないな」

「ふん、また勝手にやってティアナの奴に怒られんといいがな」

 

 翔次は訓練室に入る。 そしてシグナムの心配にこう答える。

 

「……ドヤされるのはもう、慣れたよ」

「……ふん」

 

 その言葉にティアナに対する信頼を感じ取ったシグナムは満足そうに歩き出す。

 そして……訓練室に一人と一羽、見えないタイムリミットととの戦いが始まる。

 

「ここまで来た……あとは……お前を屈服させる……んだったよな」

『えぇ……まぁこの間に優しくはしないのでそういうのには期待しないで欲しいのですますよ』

「いらないさ……!」

 

 今、10年先に足を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スカリエッティ、進歩の方はどうだ?」

 

 ジェイル・スカリエッティのアジト。 現在「ゆりかご」と呼ばれるロストロギアにローリを組み込む作業をしているスカリエッティ。 そしてその進捗を聞くゼスト。

 

「そうだねぇ……まぁあと2日かな? それくらいで組み込むのは終わるよ」

「そうか……」

 

 その言葉を聞き、ゼストはもうスカリエッティに背を向ける。

 

「おや、それで今のを聞いて何をどうするんだい?」

「……今貴様に動かれると、もう叶わなそうだったからな」

 

 ゼストはアギトも連れず、一人で向かう。

 

「…………『ムラサキ キリン()』との決着がな」

 

 ゼストは闇から身を表し、キリンにメッセージを送る。

 

 内容はこう書いてあった。

 

『果し状』、と。




次回も遅れてしまう……すまぬ……すまぬ……

次回は2回目のゼスト戦だから余計に時間がかかる……すまぬ

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください
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