結果、アニメ通りにならない事が改めて確認されました(必然)
42話
最後のブリーフィングも終わり、作戦が始まる少し前。
「なぁ翔次君、キミ結局卍解って奴を習得したのかい?」
「…………」
キリンが翔次に聞いていた。 あの一人での特訓の成果はどうだったのか? っと。
しかし翔次はそれを答えず沈黙のままでいる。
「……」
「え、何その無言タイムは……」
「……察しろ。 この会話ですらスカリエッティに盗聴されている可能性もある」
「それは……まぁそうかもしれないけど……幾ら何でも警戒しすぎじゃね?」
頑なに答えようとはしない翔次。 しつこく質問していたキリンだが、ようやく諦めることにしたようだ。
「わーったよ。 でも、少なくとも前よりも弱くなったとかはないよね?」
「……それこそ愚問だ」
「そりゃ上々……フォワードのみんなを頼んだよ?」
「当然だ」
卍解を習得できたのか、それとも……
時は戻る。
翔次の助言によりヘリでの接近はそこそこに地上に降り立つ。
戦場になると予想されている廃墟郡を進んでいくフォワード陣。
スバルを戦闘に翔次、エリオ、ティアナ、キャロの順で進んでいく。
「……ねぇ翔次」
「……なんだ?」
走りながらティアナは翔次にキリンと同じ疑問をぶつける。
「結局、成果はどうだったのよ? あんたが無駄に終わるって考えられないんだけど」
「……ボクはあいつほどパカポコ新しい力を手に入れられる程非凡な才があるわけじゃない」
「……」
「だがまぁ……この前と違って、この斬魄刀の事は理解できた。 前のようにはいかない」
翔次のその言葉からどちらを察するのは難しい。 しかし翔次の言葉には恐れや躊躇もない。 真っ直ぐな意思で、強い眼差しで答えた。
その翔次の思いをティアナ達はしっかり感じ取る。 何度かチームで行動してきたが、今日ほど頼もしい事はない。
「……期待してるわよ?」
「ハードルを上げるな」
まだ接近していない戦闘機人、しかし怯える事なく進み続けるフォワード陣。
そこに、襲撃者が。
「うわっ!?」
「くっ……!」
先頭を走るスバル目掛けて急襲を仕掛ける黒い襲撃者。 咄嗟にガード出来たとはいえ受け止めた足にそのまま蹴り飛ばされ翔次に激突してしまう。
その襲撃者の正体は……
「ガリュー!!」
エリオが呼ぶその名はガリュー。 ルーテシアの召還獣にして六課本部襲撃時にエリオを戦闘で制した強敵。
まさかのエントリーであった。
「うおおお!!」
「エリオ!?」
しかし怯む事なくガリューに接近し槍を振り下ろす。 当然塞がれてしまう、しかしエリオの勢いに押されガリューは不意に距離を取る。
「ーーーー!」
「みんな気を付けて下さい! 近くに潜んでいます!」
全員その場で周囲を警戒する。 周囲にはガリューのみが存在しているが……一足先にキャロが気付く。
「……っ! フリード! 上!」
「ーー!」
キャロの指示に瞬時に従い、真上の上空に火を放つフリード。 飛竜の口から吐かれた炎は上空から迫っていた魔法弾を吹き飛ばす。
「ありがと二人とも」
「いえ、僕達が一番戦っているので気付くのが早かっただけです」
状況判断の早いティアナよりも早く反応できた二人を褒めながら改めて状況の分析を始める。
ガリューがいるのであれば今の攻撃は当然……
「……いるんだよね……」
「……」
静かに上空から降りてくる術者のルーテシア。 その目は静かにエリオとキャロの二人を捉えている。 何を思い二人を見据えているのかは分からない、だが視線を返す理由が二人にはある。 ここで立ち向かわなければならない理由がある。
「スバルさん、ティアナさん、翔次さん」
「ここは私達に任せてください」
エリオとキャロは奇妙な縁をルーテシアとガリューに感じていた。 年が近いからなのか、詳しい事は分からないが無性に放っておけない何かが二人の心にあった。
だからここで立ち向かわなければならない、ここで受け止めなければならない。
いつかのフェイトのように。
「うん、頑張ってね!」
「……まぁ元々そういう予定だったし、気を付けるのよ」
そういうとティアナをスバルが抱え、一気にルーテシアの隣を走り抜ける。 念の為高速で通り抜けたが、ルーテシアは一瞥すらせずにそのまま進んでいくのを許した。
その様子を見て少し思案した後、翔次も続く。
「エリオ……」
「はい」
「男なら……意地でも負けるな……ボクの言えた義理じゃあないがな」
「はいっ!!」
それだけ言うと瞬歩でスバル達の後を追う。
残されたのは騎士と召喚師、そして使役している召還獣。
静かに、ただ警戒を続ける中でエリオとキャロはルーテシア達に話しかける。
「どうしてスバルさん達を素通りさせたの……?」
「私が用があるのはあなた達……それに……」
「……?」
「もうみんな来てるから……」
「ッ!?」
ルーテシアの言う通り、彼女とのエンカウントを離れた瞬間にナンバーズ達は翔次達を襲った。
だが、これは想定内。
「うおおおお!!」
「行けスバル!」
襲撃されたのにも関わらず、スバルは動揺する事なく先頭にいたナンバーズ……洗脳されたギンガに拳を叩き込む。
「……」
「ギン姉!」
そのままスバルは勢いのままにギンガと共に集団から離脱。 一騎打ちに持ち込む。
「チッ! 舐めた真似を……!」
強めに舌打ちをするノーヴェ。 彼女らは元々ルーテシアを先に行かせてエリオとキャロを離れさせた所で奇襲をかける寸法であった。 しかしそれは見抜かれてしまった。 翔次とティアナによって。
「余所見はやめておけ……!」
「っ!」
「『滑砕流』!」
「うわっ!?」
先制代わりに滑砕流を放つ翔次。 もちろん以前の時とは威力もスピードも違う。 直撃する事はなかったが、それでも警戒せざるを得ない。
「……読まれてたみたいっすね」
「チッ……」
「だが問題はない……」
戦闘機人3人に対しティアナと翔次の二人で迎撃しなければならない……いや、迎撃というよりは……
「気合い入れなさい翔次……!」
「分かっている……ここからが本番だ……!」
打ち倒す気だ。
一方では……
「チラッと見えたからリインを連れて来たが……やはりな」
「貴様は機動六課の……」
空で相見えるシグナムとゼスト。
「あの時のチンチクリン!」
「チンチクリンじゃありません! リインフォースです!」
アギトもリインフォースⅡ。
奇しくも融合機を持つ騎士同士が出会った。
「お前も捕縛の対象となっているぞ……ゼスト・グランガイツ」
「ほぅ……流石にもう分かってしまうか」
「謙遜するな……貴殿の活躍を知れば気付かぬ道理もない」
「当然だ! ゼストの旦那はすげぇんだ!」
「アギト、余計な事を言うな」
アギトの言う通り、ゼスト・グランガイツという魔導師はS級の実力を持ち、魔導師としての活躍は実に素晴らしい物ばかりである。 おまけにキリンと真っ向からぶつかり合える実力の持ち主。
どれをとっても素晴らしい。 どれをとってもシグナム好みの良い騎士である。
「キリンから聞いていたが……やはり良い腕を持っているようだ」
「そういうお前も……一筋縄ではいかない腕を持っているな」
呼吸、佇まい、視線の動かし方、筋肉の流動、お互いに高い実力と『武』を兼ね備えているのは明白。 そんな歓喜の事実にシグナムの口元は、不謹慎ながら緩んでしまう。
「嬉しいぞ……本当に……今から貴殿のような強者と切り結ぶ事が出来るのだから……!!」
「……!」
「な、何だこいつの圧力……!?」
まだ何もしていない。 していないのにも関わらず、シグナムの闘志は熱を帯び、空間が歪んでいると錯覚するくらいに凝縮され放たれている。 その闘志の姿はまさに炎。 燃え盛り抑えきれない熱がシグナムを包んでいる。
「ダメですよシグナム!」
だがその火もリインが抑える。
「最終手段って言ったじゃないですかー!」
「むっ、いやすまん。 つい、な」
「ついってなんですかー! そんなのだから男性職員から『お尻を叩いて欲しい女性職員ランキング』で毎回上位に入るんですよー!」
「何だそのランキングは!? いつ集計した!?」
機動六課男性職員限定の秘密ランキング。 なおシグナムは2位、1位はヴィータの模様。
「とにかく! まずはお話なんです!」
「……話だぁ?」
リインフォースが前に出るのに応じてか、アギトも前に出てくる。
「何を話す……ってんだぁ? こちとら最初っから話す事なんかねぇよ!」
「あなたにはなくても私達にはあるんです!」
「知るか!」
話がしたいリインフォース、それを突っぱねるアギト。 しかしそれでもリインフォースは話がしたい。 しなければならないのではなく、したいのだ。
「邪魔するからぶっ飛ばす! お互いにそうだろ!」
「どうしてそうやって突き放す事しか出来ないんですか!」
アギトはリインフォースを無視してゼストとユニゾンしようとする。 だが、リインフォースがそれを見てもやめない。
「『お願いだから教えてください!』」
『言葉』を届けようとするのをやめない。
「『どうして何も教えてくれないんですか!!』」
「ッ!」
『声』を届けるのをやめない。
「どうしてだと……!」
だから届けられた『声』は、必ず答えてくれる。
「あたしらの痛みも苦しみも知らねえ奴に話したって意味ねえからだ! 何も奪われた事のないてめえらなんかに理解されたかねぇんだよ!」
「アギトお前……」
その『声』が心に届いたからか、何故か涙を流していた。 きっと心からの『声』だから。
「それがあなたの『声』だったら……!」
「我々も引くわけにはいくまい」
リインフォース、静かにシグナムとのユニゾンを行う。 騎士甲冑は赤から紫へと美しく変色し、髪の色も濃い緋色から艶やかなピンクに。 瞳はブルー、リインの意思が色濃く出ている。
それに呼応するようにアギトとゼストもユニゾンを行う。 アギトの荒々しい炎がゼストに付与され、髪の色も荒々しい金に変わる。
戦う体制は十分、しかし行うのは戦いではない。
『うるさいって言われても諦めません!』
あちらこちらで戦闘開始が始まってます
次回はキリン達のパートかな?
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。