オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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おひさ


44話 隠されてた牙

 44話

 

 

 

 

 空に眩しく散る火花。

 それは剣と槍が、得物と得物がぶつかり合う戦い。

 

「はァっ!」

「くっ!」

 

 魔導師Sランク相当のゼスト、古代ベルカからの武人シグナム。 共にユニゾン状態での戦いは激しいものとなっていた。

 

「(なんだあの槍さばきは……長物の得意とする部分を惜しみなく繰り出してくる……!)」

 

 槍の攻撃する部位は先端……だけではない。

 刀身である穂、頑強な太刀打ち、死角から放たれる石突、槍の持つポテンシャルを全て使いシグナムに変幻自在にして豪快な一撃を放ってくる。

 

 槍という武器ならばエリオも使っている、だがその槍さばきは圧倒的にゼストの方が上……いや異次元だ。

 

 しかし、シグナムも歴戦の戦士。

 このくらいならもうすでに経験済み。

 

「(この騎士……本当に六課の騎士か……!? ただの剣使いではない、剣術……それも何年も剣に身を置いた『猛者』だ……!)」

 

 シグナムの太刀。 それはただ刃物を振るうにあらず。 片刃の長剣を時に優美に、時に剛健に、しっかりと腰の入った一撃は女と侮っていたら一瞬で斬り伏せられていたであろう。

 

 ゼストとシグナムの技量はほぼ互角。

 しかし、唯一、現状優っている部分が存在するとしたら……ユニゾン機との適合率だろうか。

 

『(……やっぱり向こうの魔力同調は少しズレていますね)』

「(そのようだな……まぁ我が家の誰とでも100%を叩き込めるお前が特別なだけだがな)」

『(ふふん、とうぜんなのですよー!)』

「(まったく、調子に乗るなよ……)」

 

 ユニゾンとは単純な強化ではない。

 魔力の質や相性、どれだけお互いの魔力を融和できるかどうかである。 リインははやてが作り出した、八神家の為のユニゾンデバイス。 故にはやてだけでなくシグナムやヴィータ、シャマルやザフィーラとのユニゾン適合率は常時100%を叩き出せる。

 

 しかしゼストとアギトはそうはいかない。

 確かに二人ともシグナム達に負けず劣らずの結束はある。 しかしどうしても各々の魔力の質は違っている。 ゼストは静かにゆらめく水のように『静』の性質がある。 しかしアギトはギラギラと激しい『動』の性質。 水と油のように相反しない魔力特性により、若干のズレが生じている。

 

「(……向こうは我々と同じように性質が違う者同士のようだが……それでも向こうの方が適合率は上のようだな)」

『(何言ってんだ旦那! あたしらだってまだ負けちゃいねぇ!)』

「(それにあの騎士……お前と同じ魔力性質……炎だ。 次の相棒はああいう者がいいだろう……)」

『(バカ言うなよ! あたしは最後まで旦那のユニゾン機だ!)』

「(……そうだな……)」

 

 アギトに不安も持たせないためにもこれ以上の言葉は紡ぐ。

 しかしゼストは悟っていた。

 

 ーーこの戦いの中で自分は死ぬ、と。

 

 だから最後にシグナムのような者に出会えてよかった。 アギトと相性が良さそうな騎士に出会えてよかった、と。

 

「(それでは……勝負を急ぐとするか)」

『(待ってたぜ旦那!)』

 

 だから今は、勝ちに行く。

 

 その、『奥義』をもって。

 

「っ!」

 

 その間合い、構え……シグナムは一瞬で察する。

 これがキリンを追い込んだ……キリンに『限界突破(リミテッド・オーバー)』を出させた技。

 そこまでの理解が追いつく前に……

 

「ツァ!!」

 

 放たれる。

 

 空を貫き、爆発のように全てを吹き飛ばす『突き』。

 真っ直ぐにシグナム目掛けて飛んでいくそれは、彼女の心臓を貫かん勢いでーー

 

 ーー『一閃』。

 

「っ!?」

『なんだあの女……何をした!?』

 

 ーー飛んでいくはずであった。 しかし、シグナムは『貫かれない』。 そう目が捉えた瞬間、シグナムの後方で爆発の衝撃が発生した。

 

「ふぅー……」

『こここここ怖かったのですぅ〜……』

「言ったはずだ、問題はないと」

『シグナムの大丈夫はヴィータちゃんの大丈夫よりも信用できないんですぅ!!』

「シャマルの大丈夫よりは信用できるだろ?」

『……そりゃまぁお料理している時のシャマルは信用できませんけど……』

「なら問題はない。 奴の一閃は『()()』で斬れる」

 

『居合』。 それは地球では日本固有の武術と言っても過言ではない、刀剣を納刀した状態のスタイルの事だ。

 剣にしろ刀にしろ何にしろ、武器は最初から構えていなければならない、という前提そのものを覆す戦法。 納刀の時は脱力、振り抜く時は全身を回し刀を振り抜く。

 刀を納めている方が速いという矛盾故に高等技術であり、例え刀を使った戦いが得意であっても『居合』は全く別物の戦い方とされていた。

 

 その『居合』が、ゼストの突きを切り裂いたのだ。

 

「……珍しいな、その技……確か『居合』だったか」

「知っているなら話は早い」

「だが……そんなに早く納刀状態に入れるとは……私が聞き及んだ居合とは違うな」

「ふっ……」

 

 思わぬ妙手。 よもや自らの技が技を持って破られた瞬間であった。

 だが、そんなものはゼストにとって喜ばしい事でしかない。

 

「弱ったな……まだ続けてもいいとは!」

「不味いな……まだ斬ってもよいとは!」

 

 己が得物を構え、再び視線を交差させる。

 この二人、やはり武人。 己の肉体を、技を、気合を、何度でもぶつけてもよいと分かってしまっては嬉しくてうれしくて仕方ない。

 

『この二人……』

『やっぱり戦闘狂だー!?』

 

 リインとアギト、敵ながら珍しく意見が一致した稀有な瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジェイル・スカリエッティのアジト前、キリン達の前に現れたメタリックなボディを持つ一人の男。

 キリンを瀕死の重傷にまで追い込むほど冷酷で狂気を孕んだ男、ローリ・ビレッジストレート。 その男が何故か……そこにいた。

 

「フェイトさん、あの男は……!」

「はい、例の機械人間です……だけど」

 

 そのボディはキリンが半分以上消し炭にした。 そしてジェイル・スカリエッティの口から『ゆりかごに組み込んだ』と聞かされた。

 もちろん彼の嘘の可能性は大いにある、それにしてもだ。

 

 それにしても、何故そのローリがここにいる? ただそれだけがフェイトにとって疑問だった。

 

「(ローリは戦闘機人達の数倍上の戦力……ならどうしてゆりかごではなくここに? ジェイル・スカリエッティほど狡猾な人だったら自分の周りには……)」

「…………」

 

 目の前にいるローリの存在の辻褄あわせが終わらないフェイト、しかし目の前のローリはそんなこと興味ないかのように人差し指を突き出し、魔力弾を大量に発射する。

 

「っ!」

「やらせるかよ!」

 

 フェイトとキリン、二人の魔力を合わせて強力は魔力壁を展開する。 二人の魔力なら即座に融合し、強固な壁を形成できる。

 攻撃は無事に凌げたが、無機質にユーリは佇んでいる。 何に特別反応する事はない。

 その様子に誰もが警戒する。

 

「すまない二人共……」

「んにゃ、気にするこたぁねぇ……」

「なんと早い魔力発射……!」

 

 メタルローリが相手ならばヴェロッサは足手まとい、シャッハでさえまともにやり会えない。 フェイトも全力を出してどうなるか……それほどの実力の差がある。

 

 だがキリン一人で何とかなると言えば……難しい話だ。

 以前圧倒する事ができたのも、ローリの修復と強化が間に合わないように消していったからだ。

 あれから時間が経ち、その時の戦闘情報も組み込み済みと考えると……ガムシャラに限界を超えても良くはならない。

 

「みんな……一つ分かった事がある」

「キリン……?」

 

 だがそれも……

 

「あいつは……()()()()()()()

「!?」

 

 本物なら、という話だ。

 

「ローリならもっと『殺気』を放っているはずだ……恐ろしいくらい冷たい殺気を……」

「た、確かに……あの時と違う……!」

 

 フェイトは見ている、ローリが放つ殺気を。 機械のボディから、人の心が宿っていない筈のメタルボディから、チップという小さなボディから放たれる常人以上の殺気を放つローリを知っている。

 

 ならば、フェイトが抱いていた疑問も解消される。

 

「じゃああれはローリのコピー……!?」

「コピー……本物でない、と?」

「ふむ、ジェイル・スカリエッティならおかしくはないけど……」

 

 メタルローリのコピー、それはローリがゆりかごに搭載されている状況で唯一目の前のローリの存在を証明できる真実。

 ならばキリンの打つ手は一つ。

 

「フェイトちゃん……これ……」

 

 ローリの前に立ちながら、後ろにいるフェイトにある物を渡す。

 フェイトが受け取ったのは3つ程のカートリッジであった。

 それを受け取ったフェイトはキリンの行動を察し、一言「分かった」と答えるとヴェロッサとシャッハに目配せをする。

 

「……」(こく)

「……はい」

 

 どうやら指針は決まった様子。

 

「……」

 

 その様子を黙って見ているメタルローリ。 いや、黙っているのは表現が違う。

 計算しているのだ、次の有効な一打を。

 

 そして選ばれたのは、広範囲の爆撃。

 手のひらを空に向け、巨大な紫の魔力球を即座に形成する。

 だがそれがキリン達にとってもっとも都合が良い。

 

「っ! 今だ!」

『了解!』

 

 巨大な魔力球をキリン達に放る。 だがキリンを相手に魔力の差で勝負などナメた話である。

 

「『不動雷柱』!」

 

 地面にミョルニルを叩きつけ、そこから黄色の円が描かれる。 そしてその円から雷が柱のように伸びる。

 いや、上に伸びるだけで止まらない。 その柱は範囲を広げ、ゼストの時とは比べものにならない巨大な柱と化す。

 

 メタルローリの魔法球も、その柱に呑み込まれ影も形もなくなる。 いや、周囲の景色すら発光した輝きで呑み込む。

 

「ふぅ……」

 

 光が収まった頃には、その場に残っているのはキリンとしっかり防御していたメタルローリのみ。

 フェイト達の姿はない。

 

『作戦通りですね、マスター』

「あぁ、どうやらメタルローリのコピーつっても……大したことはないな」

「……」

「それとも……オレを最優先にしているのか……だな」

 

 キリンとメタルローリ、奇しくもあの時の再戦となった。

 しかし、しかしだ。

 

「まぁ……ただのコピー機に負けるつもりはねぇがな!」

 

 信念も誇りも矜持も狂気も畏怖も無い模造品では、キリンを震え上がらせるには足り得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァ!!」

 

 ゆりかご内。 なのはと別れたヴィータは鉄槌を振るい、ガジェット達をなぎ倒しながら奥へ進んでいく。

 

「数だけはうじゃうじゃいやがって……アリかてめぇらは!」

 

 数でこそは恐ろしい程立ち塞がるが……かつての古代ベルカでの戦争を戦い抜いたヴィータにとって行動パターンがインプットされただけのガジェットは雑兵もいいところ。

 

 目に見えるガジェットをあっと言う間に破壊しきる。

 

「ダオラ!! ……ふぅ」

 

 前方後方を確認し、一息つくヴィータ。

 流石に疲れを感じているのか、ジワリと汗が滲み出る。

 

「ふぅー…………」

 

 それを手の甲で拭いながら、出撃前に行った検査でのシャマルとの会話を思い返す。

 

『いいヴィータちゃん、私達は少しずつ普通の人間に近づいているのかもしれないのよ? 今はまだ大丈夫かもしれないけど、そのうち私達は普通の人間のように致命傷を受けたら死んじゃうかもしれないからね!』

 

 シャマルが先の六課襲撃の際に重傷を負ったザフィーラの回復が遅い事に気付いた。 それはヴォルケンリッター達が「魔法プログラム」から「人間」に変化していっているのでは、と仮定付けた。

 

『いつもみたいに突撃しちゃダメだからね! これからは自分の身体にも注意してね! 分かった!?』

 

 やけに口うるさく言われたからよく覚えている。 確かに今までのヴィータの戦い方ではこれから先戦い抜く事が出来なくなる。

 

「……ってもよぉ、今日日ばかりは多少無茶してもいいよな」

 

 そう言いながらニヤリと口角を上げーー

 

「ーーーー」

 

 表情が消えた。

 

「ーーぁ?」

 

 ヴィータの視線が、前から下に向く。

 すぐに見えた。

 自身の胸元から突き出てる何かが。

 

 ソレは形は見えないものの、その輪郭をなぞるように鮮血が滴っていた。

 そして少しずつ種明かしのように姿を現わす。

 

「ーーーー!」

 

 それは透明化の機能を搭載したガジェットであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『適合率……50%……53%……』

 

 ジェイル・スカリエッティ、そしてローリの恐るべき算段は少しずつだが姿を現し始めた。

 

 




失踪はしませんよ
でも3月にもう一度投稿しようとしてできなかったのは申し訳ない……申し訳なさすぎて死にたくなる。

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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