オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

48 / 76
すっごい飛び飛びの話になってすまぬすまぬ……



47話 Preparation

 47話

 

 

 

 

 ゆりかご内を突き進むなのは。

 途中で別れたヴィータや仲間たちの事を想いつつも、助けなければならないヴィヴィオのために前に進む。

 

 そんな中、あまりにもスムーズに進みすぎている現状に少々困惑していた。

 

「(ガジェットの気配が全くない……)」

 

 なのはの進む道にはガジェットが一機も配置されていない。 間違いなくこの先にはヴィヴィオがいるはずなのに、だ。

 まるでなのはを歓迎しているかのように……

 

「(……でも油断しちゃいけないよね、戦闘機人が襲ってくるかもしれないし)」

 

 いつでも反応できるように心掛けながら飛行を続ける。

 一本道をひた進むなのは、だがそのなのはを制するレイジングハートの警告。

 

『前方より高密度の魔力感知』

「っ!!」

『引き返してください、魔力砲です』

 

 レイジングハートの言葉を聞いた直後、なのはの目の前には通路を埋め尽くすほどの高密度な砲撃が迫っていた。

 ここは現在一本道。 横道にそれることも、引き返して避ける事も叶わない。

 

 そんな中なのはの下した決断は……

 

「『ブラスター』を解放するよ!」

『了解しました』

 

 ブラスターモード、それは現在のなのはの最後の切り札。なのは本人とデバイスであるレイジングハートに強烈な負荷がかかるものの、一度解放すれば発動したなのはの能力の全てが底上げされる。

 

「『ブラスター1』リリース!!」

 

 迫り来る橙色の魔力砲を前に堂々と立ち、桃色の魔力をレイジングハートから放つ。

 

「エクセリオン……バスター!!」

 

 解放された魔力による巨大な魔力砲。 迫り来る魔力砲に負けないサイズと密度の砲撃、二つの砲撃が激しくぶつかる。

 

「やあああああ!!」

 

 次々とリソースを砲撃に送るなのは。

 だがしかし……

 

『ダメです、押されてます!』

「うっそ……!!」

 

 自身とデバイスを保護する魔力も砲撃に費やしている。 のにも関わらずこの橙色の砲撃は、止まらない。

 

「くぅ……!!」

 

 なのはやレイジングハートの想像を超える砲撃手。 この砲撃は一体誰が?

 ナンバーズで砲撃手となれば……決まっている。

 

 なのはから一直線上にいる、ブラスターという奥の手すら切ったのにも関わらず優位のまま砲撃を継続しているナンバーズ。

 そう、ディエチだ。

 

「……粘られてる」

 

 ゆりかご内全てを見通しているクアットロからなのはの接近を聞いたディエチは、溜め溜めた魔力を濃縮して砲撃を放っている。 つまるところ万全の状態でのフルパワーと言っても過言ではない。

 

 しかしなのははどうだろうか?

 急接近してきた砲撃に対して急遽ブラスターという切り札の使用、咄嗟の方に十分な力を発揮することは難しいのではなかろうか?

 もし仮にお互いに十分な備えがある状態での撃ち合いならば互角の良い勝負になったであろうが……現実は非情なり。

 

「……ローリの言う通りドクターに再アップグレードを頼んでおいてよかった。 まさかここまで粘られるとは思ってなかった」

 

 淡々と言葉を並べているが、内心はこの砲撃に耐えているなのはに驚きと敬意を表している。

 

「流石はエースオブエース……だが」

 

 引き金に添えている指に力を入れる。 ダメ押しと言わんばかりにさらに魔力を込めるようだ。

 

「ここまでだ」

 

 引き金を引く、すると銃口から追加の砲撃が発射され、さらに威力を上げていく。

 

 そのままなのはを呑み込み勝利…………するはずであった。

 

「……?」

 

 勢いが止まる。

 

「なんだ……何が……まだ粘られてるのか……?」

 

 否、その考えは甘い。

 

「……! 違うこれは……!」

 

 高町なのはを相手にその考えは甘すぎた。

 

「押されている!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあああああああああ!!」

 

 なのはの魔力がどんどん引き上げられていく。 レイジングハートから放たれる桃色の光は徐々に激しさを増して放出されていく。

 

「ブ……ブラスター…………!!」

 

 ブラスターモードとは、攻撃に回す魔力を優先し負荷をかける状態である。 自身の放つ膨大な魔力、そしてなのはの収束砲による余波からなのはを守るためになのは自身にも防御の魔力を回している。

 普段でさえ空港の屋根を突き破る程の砲撃が簡単にこなせてしまう彼女が、だ。

 

 まだリミッターをかけているとしたら?

 

「『2(セカンド)』リリース!!」

 

 解放される限界。 自身に対する負荷が更にかかるが、この状況でそんなデメリットに後ろ足を引かれる程耄碌はしていない。

 ヴィヴィオを助ける、そのためになのはは今ここで倒れるわけにはいかないのだ。

 

「いっけー!!」

 

 決壊したダムのような勢いでディエチの砲撃を丸ごと呑み込み突き進む。 二人が相撃つ通路に先程まで橙色の光が満ちていたが、今通路を照らし煌めいているのは桃色の光。もちろんディエチもその光を捕捉するが、その勢いに反応できずにディエチはそのまま光の奔流に呑み込まれ……

 

「うぐっ……これがエースオブエース……!! うわあああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠くの方で爆発音が鳴り響き、ようやく通路は元の明るさに戻る。

 

 砲撃手対決、お互いに一度のチャンスだったが、奥の手を切る判断が出来たなのはに軍配が上がった。

 しかしその代書は大きい。

 

「はぁはぁ……うっ……!」

『なのは、大丈夫ですか?』

「うん……2ならまだ……大丈夫……」

 

 ブラスターモードは諸刃の剣。 キリンの限界突破(リミット・オーバーモード)に似ている。

 あちらは自身の耐えられる魔力値の限界を超える状態、なのはは身体を防御することを放棄して負荷を高め、その代わりに一時的なパワーアップを得る状態。

 どちらも強力であり、手痛いしっぺ返しが待っている。

 

 なのはの場合、身体に対する負荷だけでなくリンカーコアにも影響がでる程の負荷。 そしてそれを受け止めるデバイスであるレイジングハートの負荷。

 それが同時に起こるのだからキリンと違ってそう何回も行える物ではないのだ。

 

「ハァ……フェイトちゃんからは……ブラスター1だけにしてって言われてるのに……約束破っちゃった……」

 

 少しだけ苦悶を顔に見せるものの、気をしっかりと持ち倒したであろうディエチの元へ。

 

 スカリエッティによって強化されたディエチ。 しかしそれでも本気の砲撃を放つなのはの一撃を喰らってはまともに立ってもいられない。

 

「……あなたが……」

「流石はエースオブエース……あそこから持ち直すどころか一気に吹き飛ばすとは……」

 

 ディエチは無造作な格好で横たわっている。 意識はしっかりとしているようだが、やられたダメージで手足はまともに動かない。

 そこになのはがバインドをかける。

 

「ごめんね、一応ね、させてもらうね」

「構わん……だが仮に私が動けるようになっても大した意味はない」

「……?」

 

 ディエチの言葉に何かが引っかかるなのは。 その困惑を察してディエチは顔で通路の奥の方を指す。

 

「この先にお前が求めているあの娘がいる。 ……嘘ではない、こればっかりは本当の事だ」

「ヴィヴィオ……」

「玉座の間……そこがお前の目的地なのだろう……そして」

 

 ディエチはほんのちょっぴりの意地悪と、同情を込めて言葉を続ける。

 

「いるぞ……『ローリ』がな」

「ッ……!」

「玉座の間で、核となる聖王のクローンを守護する最終兵器……と自ら言っていた。 私を一撃で仕留めたのは素晴らしいの一言だが……奴に敵うかな……?」

 

 彼女が示す通路の先を見据える。 確かに、感じる事ができる不穏な空気。

 だが、そんなもので高町なのはは止まっていられない。

 

「……私はもう行くね」

「なっ……!? 分かっているのか貴様……? ローリがいると言っているんだ。 当然あの時とは違うボディとなったが……()()はもはや魔導師が破壊できる兵器ですらない! それをS級魔導師程度が……!!」

 

 何故か、怒っていた。 何故かはディエチにも分からない、だが、毅然とした態度でいるなのはを見て声を荒げずにはいられなかった。

 

「……そうだね、私じゃ勝てないかもね」

「そ、そうだ……! だったらーー」

()()()()()

「ーーッ!?」

 

 なのはは静かに床から足を離し飛行を始める。

 ディエチに背を向けながら、前へ。

 

「あの子を……(ヴィヴィオ)を迎えに行くのは(母親)の役目だからね」

 

 当たり前のように、不変であるように、なのはは前に進む。

 

「ッ……っ……ッ〜……!!」

 

 その背中に、ディエチは何も言えなかった。

 ディエチはなのはにぶつけたかった。 自分の見たものを、不安を、恐怖を、力を……仲間を。

 冷徹な自分が、あんなにも恐れたローリの存在をなのはに言いたかった。 「自分があんなにも恐れた存在が待ち受けているんだぞ」と、「だからお前も恐怖しろ」と。

 

 でもなのはは先へ進んだ。

 ディエチの話を無視していたわけではない。 人間を、魔導師を遥かに上回る彼女がわざわざ何のためか口にしてくれたのだ。

 メタルボディを捨て、ゆりかごと同期した今のローリはよほど恐ろしい物なのだろう。

 

 なのはが気付かない訳がない。

 それでもなのはが止まることはなかった。

 

「ッ……クソ……!」

 

 背中が小さくなるくらい前に進んでいくなのはを見てディエチは気付いた。

 戦闘機人である自分が恐怖したモノがいるというのに、何故自分達よりも劣る彼女が前に進む事ができるのか。

 

 それは、高町なのはには『覚悟』があるからだ。

 ローリという存在を理解している、メタルローリが仲間を瀕死まで追い込んだ、故にローリという存在が自分一人では手が余る存在であると十分に認識している。

 それでも前に進めるのは大切な『ヴィヴィオ()』を助けると覚悟したからだ。

 

 人間には覚悟がある、しかし戦闘機人であるディエチ達に……ナンバーズには覚悟が足りない。

 彼女達は、()()()()()()()()()()()()()と理解している。 故に()()()()()()()ができない。

 

 その差が、ディエチの目の前にあった。

 

 自分の目ではもう見えない位置にまで進むなのはとの埋まらない『差』が、自分がなのはに叶わないモノだと示されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玉座の間。 そこにいたのはヴィヴィオ。

 だがなのはの記憶にあるヴィヴィオとは違う。 髪の色も瞳の色も、同じではあるが……サイズが違う。

 目の前のヴィヴィオはなのはと同じくらいかそれより少し上の年齢時の背丈となり、その身を紫色の戦闘スーツで包んでいた。

 

 そしてもう一人……いやもう()()いた。

 なのはは見た事があるローリの顔……をしている巨大な機械。 腕も脚もない、便宜上会話をするためにだけ存在するような彼の顔。 その周りからはおびただしい程のパイプやら何やら機械の部品らしきモノが、その玉座の間全体を覆っている。

 

「ローリ……本当に倒せば本当のママに会わせてくれるんだよね?」

「あぁもちろんだとも……お前のその金の髪、美しい骨格そっくりのモノを持つアレックスが待ってるぞ……!」

 

 ヴィヴィオの手には何も持っていない、つまりデバイスはない。 だが確実に自分に向けられている敵意は感じ取る事ができる。 何も恐ろしい事はない。

 だが『ローリだけはヤバい』。 なのはの直感がそう告げている。

 

「ハァー…………」

 

 深く息を吐き、なのはは覚悟する。

 

「……とりあえず、私の話を聞いてくれる? ヴィヴィオ」

「やだ!! 本当のママに会うために早く倒れて!!」

「そうだ……あの高町なのはがお前を本当のママから奪うためにああやって立っているのだ! 高町なのはを倒せ、ヴィヴィオ!!」

 

 ーー自分はここで死ぬかもしれない、と。

 




これで全員描写したか?
……多分大丈夫だな!
これで次回から行けるぜ!

今回も誤字脱字などのミスがありましたら、コメントにてお教えください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。