52話
スバルのディバインバスターによってギンガの中にあった黒い蒸気を発生させる装置及び洗脳していた部品は破壊できた。
しかし、未だギンガの心は蝕まれた影響でひび割れたままである。
「シンゴさん大丈夫ですか!?」
無論、心悟の肉体もボロボロである。
黒い蒸気による攻撃により皮膚は裂け、右腕には穴が空き、左の眉頭から出血。
のにも関わらず心悟はいつもの通り平然としている。 いつも通りとは少し違うが。
「大丈夫といえば大丈夫だが……メガネが壊れてしまったのが痛いな」
「いやいや! 今のシンゴさんの方が痛々しいですよ!?」
「心配するな。 あと少ししたらシャマル達がこちらに来るから問題はない」
「えぇ……」
その怪我は何も大丈夫ではないだろう……と強く思っていたがこの人相手に何を言っても意味がないと思ったスバルは大人しくする。
「おっとナカジマ妹、盛大に吹き飛ばした彼女をここに持ってきてくれないかい? 大丈夫とは言ったものの、歩ける程の余力はないんだ」
「本当に大丈夫なんですか……まぁいいですよ。 ちょっと待っててください」
そうスバルに頼むことたった1分で戻ってくる。
流石に心悟を一人にしておくのは心配だから全速力でギンガを回収してきたのだ。
「おっと早いねぇ」
「流石にシンゴさんを一人にしておくのは心配でしたから……はい、ギン姉です。 まだ気を失ってるみたいですけど……」
床に腰を落としている心悟の隣にギンガを横たわらせる。 先程までの暴れっぷりからは一転、静かな呼吸をしながら目を閉じている。
「さて……それじゃあ最後の仕事だ」
「シンゴさん?」
「よっこいしょ……あいたたた……流石にこの体勢は辛いねぇ」
心悟は横たわるギンガの顔に自分の顔を近づける。 顔の傷から流れる血がギンガにつかないよに片手で抑えながら。
「ナカジマ妹、これから僕は彼女の心の中に入って心の修復作業にはいる。 大した時間はかからないだろうけど、少しの間頼んだよ」
「は、はい!」
「さてそれじゃあ……」
心悟の額を、ギンガの額にくっつける。 今にも唇同士が触れてしまいそうな距離で、心悟は目を閉じ、心の領域を重ねる。
「『
患者であるギンガの、最後の治療が始まった。
「うひゃー……! ギン姉寝てるの勿体ないなぁ……」
それをすぐそばで見ているスバル。 とってもロマンチックなその見た目は、「いばら姫」と言う物語に似ているとはミッド育ちの彼女には分からない話だろう。
だが、こうして見ているわけにもいかない。
ここは戦場、戦闘機人達が襲ってくる可能性がある以上気を抜く訳にもいかない。
何より、まだ仲間達は戦っている。
「……! 今の音は……」
遠くで大きな爆発音。 スバルの耳に届いた音は……エリオとキャロがいるはずの方角。
未だ、エリオ達の戦いは続いている。
「負けないで……エリオ、キャロ!」
仲間にエールを送る。
未だ崩れたハイウェイに君臨するルーテシアの召喚獣「白天王」と「地雷王」、そしてガリュー。
「うぅ……はぁ……はぁ……」
クアットロによって無理やり感情を爆発させられたルーテシアの表情には苦悶と嫌な汗が浮かんでいる。
そしてその目の先にいるのは……フリードの背中に乗るキャロとエリオ。
「さっきは危なかったね……」
「ありがとうフリード、庇ってくれたのに無理させちゃって」
崩れるビルから二人を守りその上でまだ飛べるフリードは中々のドラゴンである。 しかし無理はできない。
二体の巨大な召喚獣に殺意剥き出しのガリュー、そして暴走しているルーテシアを前に、もう説得は難しい。
「……どうすればいいのかな……」
キャロは考えていた。 このまま話し続けるのは不可能に近い。 されど暴走しているルーテシアを自分がどうやって助ければいいのかが分からない。
このまま仮に二体の召喚獣を撃破したとしても、そのショックがルーテシアを襲い、さらに酷くなる可能性もある。
そして何より、今のルーテシアに対抗できる唯一の召喚獣であるヴォルテールを持ってしても叶うかどうか……不安だった。
「大丈夫だよ、キャロ」
「エリオ君……?」
だが、召喚士一人が戦うのではない。
「僕がいる。 だから、大丈夫」
「……!」
騎士がいる。 竜召喚士を守る、『竜騎士』が。
「僕が地雷王と……ガリューを引き受ける。 だからキャロはルーとあの白天王をお願い」
「エリオ君……」
「僕じゃああの大きさの敵には対抗できない、だからキャロ、お願いしてもいい?」
「うん!」
お互いに、背を守る。 守るために、戦うために。
不思議と恐怖はなく、不思議と勇気が湧いてきていた。
「うおおおおおおお!!」
フリードの背から飛び出すエリオ。 目標は大地を支配している地雷王。
「すぅー……」
そしてキャロは静かに目を閉じ、唱える。
「『天地貫く業火の咆哮、遥けき大地の永遠の護り手、我が元に来よ、黒き炎の大地の守護者……』」
それは、あの時は感情のままに呼び出した巨竜。 しかし今は、決意と勇気の元に降臨する。
「『竜騎招来、天地轟鳴、来よ、ヴォルテール!』」
出現する巨大な魔法陣、そして大地を割り、這い上がってくる黒と赤の巨体。 黒鉄の如く輝き、烈火の如く煌めいているそのボディは大地の奥底に眠るマグマを思わせる。
そしてその『巨体』は、目の前にいる『
「ストライダー、カートリッジ……リロード」
そのヴォルテールに背を預けたエリオは落下しながら普段とは違うカートリッジを装着する。
このカートリッジは、キリン特製のやつだ。
「雷神招来……!」
キリン特製のカートリッジ。 キリンの魔力変化気質は雷。 だが、強力すぎる故にキリン以外が扱えば必ず周囲に被害を及ぼしてしまう。
故に、フリードから飛んだ。 キャロを守るために。
負けないために。
「うおおおおおおお!!」
槍に纏うは赤き稲妻。 迸る赤いスパーク。
瞬間最大魔力はゆうに100万越え。
目指す先は大地に君臨している地雷王。
「『トール・サンダーレイジ!!』」
『ッ!!』
炸裂する神の雷。
その一撃を察知したガリューは避難するが……地雷王は違う。
その巨躯故に逃れられない。 圧倒的魔力の爆発により、地雷王の前身は焼け焦げ鳴き声を上げる間も無く戦闘不能になった。
「ふぅ……凄い魔力だ……こんなものを普段から扱ってるなんて……流石キリンさんだ」
停止している地雷王の上に着地し、ストライダーを握っていた両手の感触を確かめる。
同じ雷の変化気質というのに、両手には少し痺れが残っている。
自分のよりも質の違う魔力に驚きながら、カートリッジを渡された時の事を思い返す。
『いいかいエリオ君。 このカートリッジは一応君ように魔力量を抑えてあるけど、それでも君に何の負荷がないとは言い切れない。 だから一撃ようだ。 でも、このカートリッジを使えばあのクールロリの芋虫みてぇなデカい虫をダウンできる。 使い方は君に任せるけど、あれだよ? 人に使っちゃあダメよ? 約束だかんね』
一度きりのとっておき。 今切る価値はあった。
何せこのおかげで……
「……G……r……!」
「ガリュー……」
ガリューと一騎打ちの形にもっていけたからだ。
「ガリュー……! それは……」
「Guuuuu……rrrrrrr……!」
赤い眼差しを剥き出しにしているガリュー。 しかしその眼からは赤い液体がじわりじわり溢れ流れ出している。
「そうか……君も悲しいんだね……悔しいんだね。 ルールーが利用されて……あんな悲しい事をしているのが」
エリオはルーテシアのセリフを思い出す。
『幸せな貴方達が……ガ……ガ……私に手を差し伸べるなアアアアアァァァァ!!』
あのセリフは、恐らくは胸の内に秘めていた感情なのかもしれない。 しかし、それは本心の全てではない。
胸に秘めた思いは、クアットロによって歪められたものだけでは決してない。
あの時、クアットロの魔の手が入るその時までは、確かにお互いに歩み寄ろうとしていた。
心を通わす事は出来ていた。
「こういう時の、一番いい方法を僕たちは知っている」
エリオは痺れがなくなった両手でストライダーを構える。
「行くよ、ルーちゃん」
キャロもまた、決意を固める。
「全力全開で」
「思いをぶつけ合おう」
あの日、自分を受け止めてくれた大切な人のように。
あの日、自分に手を差し出してくれた大切な人のように。
フェイト・テスタロッサのように、戦う。
次回エリオキャロサイド、決着です。(早い)
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。