オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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また短編を書くかもなので遅れるかもしれませぬ。


53話 天と地を繋ぐ閃光

 53話

 

 

 

 

 スカリエッティに拘束されているフェイト。 しかし彼女を拘束している状況下でも、ジェイル・スカリエッティの不遜な態度は変わらない。

 邪悪であることは変わらない。

 

「さぁて……もう一人、Fの残滓の彼が今、何をしていると思う?」

「……」

「んふふ、流石に懸命か」

 

 この男の前で口を動かすのは愚の骨頂。 嘘であれ真であれ、それすらこの男の情報になってしまう。

 ならば沈黙がベスト。

 

「それじゃあ見てみようか」

「……何?」

 

 スカリエッティが指を鳴らす。 するとモニターが現れ、エリオとキャロの戦いが中継となって映し出される。

 

「エリオ……キャロ……!」

「ほぉら、君の愛する子ども達は今、ルーテシア嬢とまさに死闘を繰り広げている」

 

 モニターの中では今現在白天王とガリューを相手にしているエリオとキャロの姿が。

 

『うっ……クッ……!』

『Grrrrrrraa!!』

 

 ガリューの手足から放たれる鋭い一撃は文字通りエリオのバリアジャケットや皮膚を切り裂く。 すんでの所で致命傷は防げてはいるものの、このままではジリ貧であることは間違いない。

 

『白天王ァ!!』

『うぅ……!』

 

 白天王から放たれる砲撃魔法をヴォルテールが防いでくれるものの、その余波は術者であるキャロには衝撃となって襲いかかってくる。

 

「エリオ! キャロ!」

 

 つい、声を荒げてしまう。 心配の声が、つい。

 

『ッ!? フェイトさん!?』

『今フェイトさんの声が……!?』

 

 しかし、それは迂闊。

 忘れてはいけない、『()()()()()()』であることに。

 

『ーーうわっ!』

『しまっーー』

 

 これは中継モニターである。 現場と繋がっているのだ。

 こちらで声を荒げてしまえば……向こうにも届いてしまう。

 それが、二人を窮地に追い込む。

 

『Grrrrrrraaaaaaaaa!!』

 

 素早い拳、エリオの関節部に的確にヒットする。 そしてその剥き出しとなった刃がエリオの肉を裂く。

 極めつけは、エリオの頭を掴み投げる。

 

『Gorra!!』

『グゥァ!?』

 

 そしてビルの壁に叩きつけ、その無防備の腹……水月を思いっきり踏みつける。

 その衝撃はエリオの肉体どころか壁となっている廃ビルを崩壊させる程の威力。

 

 そして、キャロもまた目前に攻撃が控えていた。

 

『消えぇ……ロォ!!』

『ヴォルテール!!』

 

 白天王の砲撃が、バリアをまとるヴォルテールを飲み込む。 その背後にフリードに乗っていたキャロはギリギリの所で回避する。

 だが、敵は白天王だけにあらず。

 

『逃がさない……!!』

『ルーちゃん!?』

 

 ルーテシアは普段あまり動き回ることはない。 だがスペックそのものは並みの魔導師を凌駕する。

 その並みではないルーテシアの速度が、とうとつキャロを射程距離内にまで詰める。

 

『今度こそ落ちろォ!!』

『キャアアアアア!!』

 

 フリードごと、魔力波でエリオいる地点まで叩きつける。 そしていくつもの黒いダガーをキャロ達が落ちた場所へ射出する。

 数秒後、そのダガーは爆発。 キャロとフリード、そしてエリオはそのまままともに巻き込まれてしまう。

 

「エリオ! キャロ!」

「おやおや……君が余計な言葉を言わなければあんな事にはならなかったのに……くく」

 

 縛り上げられてるフェイトの耳元で、鼓膜に張り付くような気色の悪い声でスカリエッティは言う。

 お前のせいだと。

 

「あぁ……なんて可哀想に……君があの場にいれば何とか助かったかもしれないのに」

 

 嫌味ったらしく。

 

「いやそもそも……君があの子らに出会わなければ、こんな痛くて苦しい事には出会わなかったんじゃあないか?」

 

 ズケズケと心の隙間を責めてくる。

 

「いやいや……それだったらそう……出会ったのが()()()()()()()()()()()()()んじゃあないかぁ〜……?」

「ッ!!」

 

 それは、フェイトは今日この時までずっと抱いていた不安。

 自分がエリオとキャロに手を差し伸べた、放っておく事な出来ない気持ちがあり、キリンのように幼い子どもを助けたいと思っていたからだ。

 強く思っていた。 その反面、『クローンによって生まれた自分』にそんな資格があるのかいつも不安だった。

 

 だが、この男の前でその不安を見せてはいけない。 つけ込まれることは明白であった。

 

「……!」

「ほーぅ? 気丈なのはいい事だけど……お?」

 

 だが、この男の方が用意周到であった。

 

「おぉ、ようやくか。 予測より多少『()()()』ねぇ」

「……何の話だ?」

「ん〜ふふ、見せてあげよう」

 

 そういうとスカリエッティは。

 

「ーーーー!?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が映っているモニターを表示した。

 

「キリンッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 周りは瓦礫だらけ。

 

 なのに、声が聞こえた。

 

 大切な人の声が、大切な人の悲痛な叫びが。 涙を流していると、気づいた。

 

 だからなのかもしれない。 ()()()()()()()()()()()()()と、強く思ったのは。

 

『フハハハハハ!! 彼はどうやら、無事に我々のメタルローリコピー達にやられたようだ!!』

『嫌……違う……! 嘘だ……!』

 

 酷く……

 

『違わなくはない……クックック……! 我々の計画通り、彼はヤられたのさ!』

『キリン……ぃや……イヤァ……!!』

 

 頭に響く。

 

『私とローリの勝ちだ! フハハハハハ!!』

 

 この声が、『()()』だ。

 

「「うるさい」」

『……何?』

 

 まずは、自分の身体を起こすために瓦礫をどかした。

 

「何となく分かったぞ……」

「フェイトさんに……見てもらうんだ」

 

 足に力を入れた。 立ち上がる時、一瞬おぼつかない足元を互いに支える。

 

「僕たちの姿を見てもらうんだ……!」

「私たちの戦う姿を……!」

 

 だが、立った。 親の手を借りずに、それぞれが支え合うことで。

 

「僕達はフェイトさんの家族なんだ!」

「だから、フェイトさんを泣かせる貴方の……!」

「「お前の声が邪魔だ!」」

 

 強い眼差しを、モニター越しのフェイトとスカリエッティ達は見る。 ほんのちょっぴり悪くなった言葉、吊り上がった目、そして感じる……『闘志』。

 

『っ!』

『このガキども……!』

 

 その闘志が、モニター越しであるはずのトーレとセッテを後ずらせる。

 

『…………』

 

 エリオとキャロは黙らせようとしているのだ。 この男を、ジェイル・スカリエッティを、フェイトを不安にさせて困らせて泣かせるこの男を黙らせると決めたのだ。

 

『エリオ……キャロ……』

 

 涙を流しているフェイト。 もう一つのモニターでは、未だキリンは倒れたまま。 だのにフェイトの視線は二人の方に固定されている。

 

「見ていてくださいフェイトさん」

「フェイトさんが私達に出会った事が……」

「僕達を救ってくれた事が間違いじゃなかったって……」

「「絶対に証明してみせます!!」」

『ッ!!』

 

 エリオは走った。 もちろん目標はガリュー。 ガリューもまた、向かってくるエリオに再び自身の刃を向ける。

 

「うおおおおおお!!」

「ッ!!」

 

 エリオの突進(チャージ)。 しかし、ガリューは左手で容易に止め、カウンターと言わんばかりに右腕の刃をエリオの左肩に突き刺す。

 

「ぐっ……!」

『エリオ!』

 

 だが、苦痛に顔を歪ませるだけだ。 エリオは止まらない。

 

「だあああぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ッ!?」

 

 文字通り止まらない。 ガリューに掴まれたまま、自らの足腰でガリューごと走り出す。

 明らかにある体格の差、力の差を、己の鼓舞によって補う。

 ただひたすらに、止まる事なく。

 

「ダァァァァリャアアアアアアアア!!」

「Graaaaa!?」

 

 そしてそのまま瓦礫にガリューを押し、付ける。 その衝撃がガリューの身体を襲うも、その左手は未だストライダーを掴んだまま。

 

 それが仇となった。

 

「これで、もう逃げ場はない!」

「Guuaaa!!」

 

 左手はストライダーを、右腕はエリオの左肩を。 肉を切らせて骨を断つ、左腕を犠牲にし、ようやくチャンスを掴んだ。

 その『()()』に。

 

「であああああ!!」

 

 ストライダーを手放すという奇手。 その右手で魔力を貯める発想力。 この予期せぬ状況に、ガリューも反応できない。 ただ、その拳が迫ってくるのを固まって見てしまった。

 

「『紫電一閃』!!」

「GoaaaaaaAAAAAAAA!!」

 

 獣の本能に、子どもの柔軟な発想が勝る。

 シグナムから教わった魔力を貯めて行う攻撃方法、紫電一閃。 まだ子どもであるエリオでは十分に固められるのは難しいと考えられていたが、シグナムがエリオの素質と覚悟を見抜いた。 そして教わった直伝の技。

 

 十分に貯められた魔力による拳は、ストライダーを握っていた右手が離れる程に、エリオの肩を指していた右腕の刃が勢いよく抜ける程に強力であった。

 おかけでエリオの右腕部分のバリアジャケットが焼き破れたが……こんなものは些細なことである。

 

 エリオはガリューに勝った、という真実は揺るがない。

 

「ガリュー!!」

「ルーちゃん、私はこっちだよ!」

 

 その様子を見ていたルーテシアの怒りはさらに増している。 大切な家族であるガリューがやられた。 あの憎き目の前のあいつがやった、そう頭がドス黒い思考に支配されるようにクアットロが操っている。

 ルーテシアはそのドス黒い思考が導き出した怒りを、ヴォルテールの肩に乗っていたキャロに向ける。

 

「うああああああああああ! 消えろォ!」

「今度は負けないんだから……ヴォルテール !」

 

 白天王から再び放たれる巨大な魔力砲撃。 だが今回は受け止めはしない。

 真正面から迎え撃つ。

 

「『大地の咆哮(ギオ・エルガ)』!!」

 

 ヴォルテール もまた殲滅砲撃を放つ。 巨大な召喚獣同士の衝突は周囲の廃ビルを一瞬で消しとばし、二体の間にあった地面には大きなクレーターができる。

 

 力はほぼ互角。

 いや、理性(リミッター)が外れているルーテシアの方が力の振り幅が大きい。 このままではヴォルテールごとキャロは押し負けてしまうだろう。

 

 そう、召喚士だけならば、だ。

 

「な……に……ッ!?」

 

 怒りで真っ赤になった視界。 捉えていたのはキャロ姿であった……のに、その隣に何故かエリオの姿が。

 冷静さを欠いている今のルーテシアには、眼の中に映って始めて気付いた。

 

 キャロは()()()()()() ()()()に乗っていた。

 だから()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そしてエリオは、もう構え終わっている。

 

「ハァァァァ……!」

 

 ストライダーを構え、キリンから教わった『とっておき』を放とうとする。

 エリオの脳裏にはキリンとの会話が思い起こされていた。

 

『いいかいエリオ君、槍の戦闘距離はどこだと思う?』

『えっと……やはり近接から中距離でしょうか……?』

 

 それはシグナムとの特訓での休憩時に、キリンから始まった。

 

『うーん、大体正解! でもちょっと足りないなぁ』

『えっ?』

『確かにゼストのオッサンとかも中距離からの突進が主流だったけど、オッサンの場合はその選択肢を選んでるだけ』

『……まだ、槍には選択肢があるんですか?』

 

 それは簡単な講義から、キリンがエリオに『とっておき』を授けることになった。

 

『槍はね、全距離支配(オールラウンダー)なんだ。 遠距離だって……そう、それこそ射撃だっていけちゃうんだ』

『全距離……!』

『そう、槍だけなんだよ。 遥か古代、中世から始まった武器の戦法において……()()()()()()()()()()()()()()()得物なんだ』

『……槍投げ!!』

 

 やり投げというスポーツがある。 オリンピックの種目にもなっているやり投げ、もちろんオリンピックの元である古代ギリシャにおいても競技として存在していた。

 それほどまでに、槍投げは歴史が古く、そして今も昔も昔もスタイルは変わらない。

 

『剣を投げる戦い方はあれど、主流にはならない。 しかし槍はしっかりと投げる専用の槍が作られている。 これ程までに優遇されてる武器もなかなかない』

 

 しかし、投げるからには使い捨て。 エリオのスタイルにはあまり合わない。

 合わないだけである。

 

『だから、今から教えるのはとっておきのとっておき。 最後の切り札ってことで、いいね?』

『は、はい!』

 

 あの時言われたように、エリオは魔力を解放しながら、全魔力を右手に。

 

『君の魔力なら大抵の砲撃くらいはまぁ貫けるだろうけど、あの紫ちびっ子のデケー奴相手には少し不利だ。 だから一点集中する』

 

 ストライダーの長い柄、その末端である石突を掴みながら投擲のポーズを取る。

 そして……

 

『君の魔力、そいつを投げる瞬間のインパクトに全て乗せる! 君の人差し指と中指で、ストライダーを一気に押し飛ばす!』

 

 投げる瞬間に、全魔力を右手の人差し指と中指に込め、石突を思いっきり押し投げる。

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!」

『君の人差し指と中指をしばらく使い物にならなくする代わりに、なのはちゃんのスターライトブレイカーすら撃ち貫ける。 まさに北欧神話最強の槍を、君スタイルで撃ち出す! それが……』

 

 放たれたストライダーは、雷撃を纏いながら真っ直ぐに白天王に向かう。

 その輝き、まさに『神槍』。

 

「『天雷装神槍(ライ・ガングニール)』!!」

 

 放たれたストライダーはヴォルテールの大地の咆哮を合わさる。 天と地を繋ぐ閃光は白天王の高密度魔力砲を打ち破る。

 

「「届けぇぇぇえええええええええ!!」」

 

 その輝きは、金色のように眩しく。

 

「ーー!!」

 

 そして、優しく温かい光だと、ルーテシアは感じた。

 

「ーーーーーーーー」

 

 白天王の身体は貫かれ、その反動でルーテシアは意識を失う。 だが、確実にルーテシアの心を縛っていたクアットロの呪縛は消え去った。

 ルーテシアはそのまま地に落ち始める。

 

「ルーちゃん!」

「ルー! ……あっ!」

 

 助けにいかなくては、そう思った二人の目には空中でルーテシアをキャッチし、手近なビルの屋上に着地するガリューの姿が。

 どうやらルーテシアが解放された事でガリューも解放されたようだ。

 

「ガリュー! よかった、元に戻ったんだね!」

「……!」

 

 ガリューの手にはエリオが投げたストライダー、そして……

 

 穏やかな表情でガリューの腕の中で眠っているルーテシアの姿が、確かに二人の目に映っていた。

 

「……」

「……」

 

 それを見て、二人は顔を見合う。 互いにボロボロになった。

 しかし、確かに、笑っている。

 

「やったー!」

「やったよー!」

 

 その達成が、幸福感と満足感と……その他諸々の喜びの感情を生み出す。

 その姿を見ていたスカリエッティ達に、自分達の姿を隅から隅まで見せつける。

 

『フェイト・T・ハラオウンの子どもが勝ったぞ』っと。

 

 

 




次回は場面飛んで……あの二人です。
ようやく書きたかったことの2つ目ができるぞー!

今回も誤字脱字等がありましたら、コメントにてお教えください。
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