5話
「ふっ、ふっ!」
午前中の訓練、オレと翔次君はフォアードの子達と同じように身体を鍛えていた。 スバルちゃんはヴィータちゃんが、エリオきゅんとキャロちゃんはフェイトちゃんが、ティアナちゃんにはなのはちゃんが付いている。 翔次君に関してはみんなと同じ方法では出来ないのでザフィーラが実戦形式で鍛えてくれている。 そしてオレはひたすらに訓練所のシミュレータで街中を走り回っていた。
「ほっ、よっ!」
パルクールと呼ばれる移動術に魔力補佐を加えて街中を身体一つで走り回る。 魔力を使うのは地面や建物に接触した所だけ、足なら足だけ、手なら手だけを強化する。 この訓練の目的はオレの魔力の無駄使いを減らすことだ。 湯水のように湧いて出てくる魔力故に無駄が生じるのは仕方のないこと、でもそれを最小限少なくすることが出来れば魔力を上手く使えていることになる。
「よっし、ゴール!」
実際パルクールは頭を使うし咄嗟の判断力も必要とされる。 時には腕に、時には足の指先だけ魔力を使うことで繊細な魔力運用も目指していく。 当面はこれ一本。
「ステージ全部終わったな……なぁおっぱいさん、どうする?」
「……まだそれで呼ぶのか……。 あぁ身体を休めてていいぞ」
「ほいほーい」
この訓練は結構肉体的にも精神的にも疲れる。 何せ無駄に多くの魔力を行使すると触れている建物とかが勝手に崩れるからな。 魔力量を常に調整しながら次にどこに向かうのかを考えるのは頭がヤバイ。
「なぁなぁ、みんなの調子はどうなん? 順調?」
「そうだな……皆とても教えを理解するのは早い。 着々と力を付けている」
「ほーん、やっぱこの世界の子どもは優秀なんすね」
「何だ大将、そんなに気になるのなら直接見に行けばいいじゃないか?」
「そうは言ってもヴァイス君よぉ、見守るってのも大事なんだよなぁ……」
オレに向かって「大将」と呼ぶのは『ヴァイス・グランセニック』。 ロングアーチでヘリのパイロット。 操縦テクニックは一級品、あとイケメン。
「ヴァイス君こそ、結構みんなのこと気にしてるでしょ?」
「へへ、まぁ生意気な後輩達ですからね」
「ふっ、私から見てみればお前も立派に生意気な部下だ」
「こりゃ手厳しい」
ヴァイス君は結構フランクな性格だ。 ノリが軽い訳ではないが不思議と接しやすいタイプ。 その上イケメンだから何かと許さられる。 羨ましい。
「さて、そろそろ午前の訓練も終わる。 ムラサキも皆のいる場所に向かえ」
「うっす」
「あぁ、あとついでにダウンしているアケザワも拾っていけ」
「えぇ……」
「はは、大将お疲れっす!」
「お、ヴァイス君も来るか? お?」
「俺ぁヘリのメンテがあるのでごめんです。 それじゃあシグナム姐さん、失礼します」
ヴァイス君は足早に去っていった。 彼のああいったのは嫌いにはならない。 むしろ好感と親近感が湧く。
「……ヴァイス君っておもしれーんすね」
「それがあいつの取り柄だ」
ヴァイス君は前におっぱいさんの部下だった時期があって、その関係で八神家やなのはちゃんとも仲が良い。 後輩達の面倒見もいいため中々に優秀な人だ。
「それに比べてキミは……」
「……何だ?」
オレはノビている翔次君を捕まえてみんなと合流する。 スバルちゃんやティアナちゃんは結構汚れている。 かなり濃い訓練をしていたのだろう。 エリオきゅんとキャロちゃんも所々汚れている。 そして顔に疲労も出ているのでハードな内容だったに違いない。
「なのにキミはザフィーラと立ち会ってボコボコにされてきたなんて……お姉さん悲しいゾイ」
「黙れ、断じてボクは負けたのではない。 まだ勝ちにいく途中なだけだ」
「勝ちにいく途中で負けてるんだよなぁ……」
「最後にボクが勝てばいいのだ。 だから今は断じて負けている訳ではない!」
「急に早口になるなんてキミはなんJ民か」
何て翔次君とやり取りをしていたらなのはちゃんとフェイトちゃんから不思議な目で見られていた。 なんのこっちゃと思っていたらフェイトちゃんがオレに質問をしてきた。
「……翔次ってそんな性格だったっけ?」
「元々こんなもんだよ。 ねー翔次君?」
「フェイト・テスタロッサ、一体いつの話をしている。 あれから10年は経っている。 それだけあればボクの性格なんてコロコロ変わる」
「にしてはなんだか……」
「ねぇ……」
「ポンコツ可愛いでしょ?」
「誰がポンコツだ!」
『そうそう、それそれ!』
「のるな二人共!」
10年前の翔次君は絵に描いたような踏み台だったが、今の翔次君は本来の自分を取り戻している。 そう、ポンコツ可愛いというジャンルを勝ち取っているのだ!
「えぇい、さっさと飯に行くぞ!」
翔次君は顔真っ赤にして一人勝手に歩き出す。 恥ずかしがっちゃってまー
「さ、オレ達も飯行こうぜ!」
「そうだね、お昼にしようか」
「お昼!」
「その前にスバル、シャワー浴びなさい」
「二人も着替えよっか」
『はい!』
「お、ならエリオきゅんの着替えを手伝っちゃうぞ〜」(キモオタ)
「キリンは食堂」
「ぶーぶー、フェイトちゃんってば二人を独占してズルイぞ」
「私は二人の保護者だも〜ん。 さ、行こ?」
「ぐぬぬ……」
フォアードとフェイトちゃんは先に身体を綺麗にしに行った。 残ったのはなのはちゃんとヴィータちゃん。 仕方なしに三人と食堂に行くとしよう。
「はぁ……My心のオアシスが……」
「お前あんましキモいとぶっ叩くぞ? つーかよくこいつと仲良くなれたななのは」
「あはは、慣れれば大丈夫だから……」
「慣れを要求するんじゃねえよ。 どんだけ心臓に悪いんだよ」
「ヴィータちゃん辛辣スギィ!!」
食堂ではみんなが席を囲んでご飯を食べる。 ついでに心悟君も。 はやてちゃんは仕事が終わってからと言っていた。 なのはちゃんも書類をまとめてから食べるそうだ。
「……へぇそうだったんだ」
「はい、ボクは本当にフェイトさんに感謝してます」
「そんなに大したことじゃないんだけどな……心悟の助言もあったし」
ご飯を食べながらエリオきゅんの身の上話を聞くことに。 聞いたのはスバルちゃんだけど。 何でもエリオきゅんはフェイトちゃんと同じクローン体らしい。 研究所で色々実験とかさせられていた所にフェイトちゃんが来てなのはちゃん直伝の身体を張った説得のおかげでこうして六課にいるらしい。 何やかんや付き合いは新人達の中で一番長いらしい。
「……そういえばさ、心悟君ってここで何してるの? ドS変態医者要員?」
オレはずっと気になっていた疑問を心悟にぶつける。 そもそも本人はあんまし関わるのはイヤとか言ってたくせに何で? ツンデレだったの? 実は関わりたくてしょうがなかったの?
「僕はここで精神科医として皆の手伝いをしている。 シャマルが身体的治療及びケアなら僕は精神的治療及びケアというわけさ」
「おぉ! エロくてカッコいい!」
「え、今のどこがそんな要素があったんですか……」
「だって医者だよ? どれだけお触りしても適当に言い訳すれば大抵は許されるんだよ? そりゃエロいわ」
「はは、だが六課にいる人間は全員美人でね。 僕好みの醜女はいないんだ、とても残念だよ」
そういえば心悟君はブス専だった。 なら永遠に不祥事が発生しない良い現場じゃないか。
「僕も醜女だっていると聞いてやってきたのに……騙されたよ」
「いやそれでホイホイ乗るのはどうなんですかねぇ……」
何年経っても心悟君はブレないなぁ……
午後も同じ様な訓練をする。 でも午後はシミュレータでガジェットを登場させて撃破しながら行う、くっそハードな内容になる。 ガジェットを撃破しながら街を駆けるのは中々疲れる。 ガキ共と駆け回った時より疲れるのかもしれないくらい疲労感を感じる。
「どあああ!! 終了!」
40分くらいかかってようやく一つのコースが終わる。 休憩を少し挟んであと4回、単純に合計5時間はかかるぞ!?
「遅いぞ、お前のポテンシャルならもっと素早くいけるはずだ」
「お、おっぱいさん……中々ハードな事言いますなぁ……」
だってキッツイって! 魔力込めすぎると足場とか崩れるし、だからって少な目にすると倒しきれないし……
「さぁ、一息ついたら次のコースに行ってこい」
「あああああもうやだぁぁあぁぁ!!」(ひでタヒね)
うおおおおやってやんよぉぉぉぉぉ!! こんちきしょぉぉぉぉ!!
「はぁ……はぁ……どうだ……!」
「ま……参りました……」
「お疲れ様、エリオ、翔次」
午後、ボクはフェイト・テスタロッサに言われてエリオと模擬戦をしていた。 結果はボクの勝ち、だが正直な話こちらが負けてもおかしくなかった。 それくらいエリオの実力は高い。 ……お前本当に10歳か?
「惜しかったねエリオ君」
「そうかな……でも翔次さんは強かった」
「10歳と……はぁはぁ……接戦を繰り広げる程度なら……はぁ……ボクもまだまだだな」
どうしてボクの方が疲れているんだって? そりゃボクの方が体力が無いからさ! 当たり前だろう!?
「むしろ……はぁ……エリオがまだ余裕そうなのが納得いかん」
「二人共結構序盤から飛ばしてたから大した差はないと思ったけど……やっぱり体力面だとエリオや他の子達の方が上なんだね」
「当然だ……はぁはぁ……暴れる役はいつもキリンだったからな」
「あ、やっぱりそうなんだね」
フェイト・テスタロッサの戦闘考察は続く。
「1対1の場合はまだまだ翔次の方に部がある、でもエリオがキャロとコンビでやったのなら間違いなく翔次が不利」
不利と言うかまぁ……確実に負ける自信があるな。
「でも翔次の高速移動は凄かった、私といい勝負だと思う。 陸上戦なら並みの魔導師を超えているよ」
そうか……でもここにいる魔導師は空を飛べるのが多いからそんな事で喜べないんだがなぁ……まぁ真面目に考察してくれたから素直に受け取っておこう。
「エリオは私達の教えをよく守ってくれてるし、さっきまでの戦いもとても良かったよ。 後は反復練習でドンドン力を伸ばしていこうね」
「はい!」
「さて、私からは以上。 何か気になる事とかあるかな?」
「あ、なら……」
おずおずと手を挙げるのはキャロ。 先ほどまでボクとエリオの戦いを見ていたから何か気付いたのか?
「あの……」
「……ボクか?」
「はい……どうしていつも武器の名前を言っているんですか?」
む、獄砕鳥のことか。 そういえば詳しく斬魄刀の説明をしてなかったな。
「翔次、教えてもらってもいいかな?」
「いいだろう」
ボクは刀身を鞘から抜き皆に見せる。
「この刀は斬魄刀と呼ばれる刀だ。 本来は死神と呼ばれる者のみが帯刀しているんだが……まぁそこはいい」
死神の話をすると、どうしてボクが斬魄刀を持っているのかまで説明しないといけないからな。 今はあくまで斬魄刀の話だ。
「斬魄刀には2種類の変化がある。 一つは『始解』、もう一つは『卍解』だ。 そして今のボクが出来るのは始解のみ」
「あの能力よりも上が……?」
「始解を行う際に必要なのボクが言っていた言葉、解号と言う。 まぁ君達で言うところのセットアップに近いな」
ボクは皆の前で改めて始解を行う。
「『天に飛び込め 獄砕鳥』」
「おぉ!!」
「わぁ!」
瞬時に姿が変わるその様を見て声を上げる子ども二人。 さっきも見てただろう? 何故驚く。
「こうして初めて始解の力を発揮できる訳さ。 納得してくれたか?」
「あ、はい! ありがとございます」
まぁ敵の前でいちいち解号を言わないといけない訳ではないが……まだボクはそこまでの境地に立ってはいないからな。
「……ずっと気になっていたんだけど、その能力って一喜の……」
「違うぞ、別に兄貴の能力をそっくりそのまま得た訳ではない」
ボクは獄砕鳥の刀身を触りながらフェイト・テスタロッサに言う。
「兄貴は戦う為の力を欲してはいなかった。 誰かを傷つけるからだ。 そして武器は武器であることをやめられない。 どう足掻いても何かを傷つけてしまう」
どれだけ得物を美しく磨いたとしても、人斬り包丁であることには変わりはない。 ならばその武器から刃をとったらどうなる?
「ならば武器であることをやめさせてやればいい。 そのために得た力がこの獄砕鳥だ」
「……そうなんだ」
フェイト・テスタロッサは優しい眼差しでこちらを見てくる。 どうやらこちらの思いが伝わってしまったようだ。 フェイト・テスタロッサは人の心をよく読み取ってくると何かで見たことはあったが……流石だな。
「……!」
「……!」
……何故エリオとキャロまでこちらを見てくる?
「すごいです翔次さん!」
「僕、とても感動しました!」
「んなっ!?」
ど、どうしてボクにそんな目を向けてくる!? 無駄にキラキラさせるな!
「あ、な、う……ボクは先に戻ってる!!」
「あら、照れちゃった。 もしかして褒め慣れてない?」
違うぞフェイト・テスタロッサ! 断じて動揺はしていない! 決して照れてなどいない! いないからなぁぁぁ!!
翔次君は新たな弄られ枠。(迫真)
今のところのキリンと翔次の実力はなのはやヴォルケンよりは下でフォアード陣よりは上くらいですね。 別に最強厨ってわけではないんでこれくらいが妥当かと。
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。