オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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えー皆さん忘れてはいけない。
これはノリと勢いの小説であることを。


64話 禁忌進化的ハイブリッド

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「えっ、あれ!? クロノ君はともかく……どうしてここにユーノ君が!?」

 

 至極真っ当な疑問をなのはが代表して口にする。 ユーノは本来この戦いには関係がない。 何故なら彼は本来戦場に立つ事はまずありえない役職。 どうしてここに? そう疑問に思って当然であろう。

 

「っていうか何で無事なんだ義兄様?」

「誰が義兄様(おにいさま)だ、まだ早い。 ……このフェレットもどきがどうしても一緒に行きたいと言ってな、しぶしぶ連れてきたんだ」

「誰がフェレットもどきだ、僕が予め乗組員の避難の準備を済ませておいたから艦隊がやられても全員無事だったんだからな」

 

 ユーノの言葉に全員驚く。 あれほど見事なまでに爆発四散した艦隊、その中にいた乗組員全員無事と言われれば驚かざるを得ない。

 

「な、なら乗組員みんな無事ってことなんか!?」

「当然」

「よ、よかった……クロノも無事で……」

 

 思わず脱力してしまいそうになる。 だがここで安堵してはいけない。

 表情を引き締めてクロノが『全員』に話し始める。

 

「状況は遠巻きから確認させてもらった! 残りわずかな時間稼ぎ、このクロノ・ハラオウンが指揮をとる!」

『ッ!!』

 

 クロノの号令がナンバーズ達含め全員に届く。

 

「陽動を行う場合は付かず離れずを意識しろ! 敵の攻撃に対して一方向だけでなくマルチに回避をしろ! 被弾してしまう攻撃で危険なのはこのユーノが遠隔からプロテクションを張る!」

 

 短い時間で簡潔に、伝わりやすい言葉で。

 

「僕の遠隔補助で一度に全員は流石にできない! だから攻撃が大きいものを優先して僕が防ぐ! それ以外でみんなが被弾しそうになったら無理に避けないで攻撃をそらすように防いで! 受け止めるよりは受け流すことを意識するんだ!」

 

 ユーノの言葉もまた届けられる。

 

「残りわずか30秒、全員で生き残るぞ!」

『応!!』

 

 クロノ達の力強い言葉に全員が心を一つにする。 人間の、それも管理局の執務官であるクロノからの直々の指示。 魔導師達にとってこれほど頼もしいものはない。

 同時に、ナンバーズ達にとっても心強い状況になった。 ナンバーズ達も知っているクロノという存在。 データを見たとき、スカリエッティやローリからは、決して1対1で戦ってはいけない。 多対1でも油断してはいけない存在だと知らされていた。

 あまり好ましくない管理局の執務官、しかしこの状況では憎たらしいほど頼もしい。

 

「……やっぱりクロノ君はすごいなぁ」

 

 その後ろ姿を見ていたキリンから溢れた言葉。 その言葉を背中で受け止め、クロノは言う。

 

「何をしているキリン」

 

 ゆりかごからの砲撃をデュランダルと共にいなしながらクロノがキリンに喝を入れる。

 

「いつまでそんな体たらくでいるつもりだ。 そんな事では……!」

 

 再びの強烈な砲撃。 それを幾重にも重ねた氷の壁で防ぐ。 なのは達はクロノの手腕に驚くばかりであるが、その中でクロノはキリンにだけ言葉を飛ばす。

 

「……()()()()はやれんぞ……!」

「ッ」

「ククックックロノ!?」

 

 突然の大事な話。 未来ある大切な話を、キリンにする。 これを乗り越えなければ、キリンにもフェイトにも未来はない。 そんな男に自慢の妹を任せる事は、兄としてできない。 そう、伝えた。

 なおフェイトは顔を赤くしてわちゃわちゃしている。 藍色のオーラを纏っているからなおのこと赤色が目立つくらいに。

 

「……義兄様……」

「『()()』違うだろ、このバカめ」

「……あぁ!」

 

 クロノの言葉に、身体の奥底から更なる力が漲る。 この状況、かつて共に戦った仲間ともう一度同じ場所で戦える高揚感が、キリンを更なるステージへ導く。

 

「オレが全部解決したら、フェイトちゃんの全部を貰うからな!!」

「やってみろ大バカ野郎!」

「応ともさ! ダラアアアアアアア!!!」

 

 さらに魔力を高めていくキリン。 一気に魔力を1000万まで上げ、さらに上昇させていく。

 

「ふん、それでいい。 初めて会った時もそうやって俺を驚かせた。 お前はそれぐらい破天荒でいい」

 

 仲間と共に戦える高揚感、仲間と再び共闘できる喜び。 それはなのは達も同じ。

 

「何だか思い出しちゃうね……みんなで時の庭園に乗り込んだ時のことを」

「懐かしいね……あの時はまだ翔次が敵だったからなぁ」

「なんやなんや、それは私とアイカの知らん話やん」

「あい?」

 

 ふと、懐かしい昔の話がしたくなった。 そう思ったのは何故だろうか? なのは達には分からない。 これから先いくらでもできるのに、何故か今したくなった。

 

「よく考えると、こうやってみんなで揃うのはあの時以来……?」

「あれ? 闇の書事件の時やないか? あの時もユーノ君が遅れてやってきたし」

「でもあの時はキリンいなかったし……ってことは実は今日が初めて?」

「そっかぁ、まぁアイカも今回が初めましてやもんなぁ」

「あい! でもパパとママとキリトお兄ちゃんからよく聞いていたでごぜーますよ!」

「えっ、キリトって誰や?」

「……もしかしてあのキリト君?」

「マ!?」

『マスターは貯めるのに集中してくださいよ』

「うぐぐ……そのショタには後でたっぷりとお話を聞かないとなぁグヘヘ」

「あっ! キリン君にはアイカは渡さんで!」

 

 目の前で仲間達が命がけで時間を稼いでくれている中、何故か自然と談笑をしてしまう。 次元世界の運命を決める瀬戸際だと言うのに、実に力が抜ける。

 

 だがこれでいいのかもしれない。 この先、またこうして話せるために、そう覚悟するために。

 

 そして等々、作戦通り。

 

 1分が経過した。

 

「いくよ! みんな!」

 

 準備は出来た。

 

「全員射線から離れろ! 巻き込まれるぞ!」

 

 クロノの言葉に従うよりも早く、全員がなのは達とゆりかごの対角線上から大きく離れる。 間違いなく星一つ丸々破壊できる程の威力、巻き込まれたりしたら命に関わるからだ。

 

「よし、行けみんな」

 

 それよりも遥かに後方に待機している心悟からも、届きはしないが見守っている。 信じて。

 

「スターライトブレイカー!」

「プラズマザンバーブレイカー!」

「ラグナロク!」

 

 三人のトリプルブレイカー。 そして……

 

「『鳴雷神槌(なるかみつち)』!!」

 

 限界を超えた出力で放つキリン最高の砲撃が合わさる。

 桃色、藍色、白、金色の四つの光がゆりかごに向かって飛んでいく。

 

 だがゆりかごも黙っているわけではない。 それらを打ち消すための砲撃を主砲部分から発射する。

 

 白と黒が混ざった混沌の戦艦砲。 空を塗り潰す程の光を放ちながら4人のブレイカーに向かっていき……衝突する。

 

「ぐっ!」

「なんて衝撃だ……!」

 

 なのは達に近い位置にいるユーノとクロノは衝突のショックをその身で感じる。 衝撃はまさに星と星がぶつかったのかと錯覚するほど強力であり、このような強大な力が衝突し発生するエネルギーだけでミッドチルダが壊れてしまうと思うであろう。

 

「くっ……!」

「んぎぎっ……!」

 

 その衝撃を受け止めている4人には分かる。 これでようやく「()()()()」なのだと。 これでようやく張り合えるようになっただけなのだと。

 

 今は拮抗状態ではあるものの、その均衡は容易く壊れる。

 

 ゆりかごの更なる砲撃によって。

 

「不味い! ゆりかごは更なる追加砲撃をするつもりだ!」

 

 言うや否や、ゆりかごの主砲から出ている光が、チューブに大量の液体が注入されるように大きく膨らみながらドンドン発射されていく。

 

「うぅっ……!」

「ヤバい……押され始めとる……!」

 

 はやての言う通り、ゆりかごの砲撃が推し始めた。 混沌を纏った光がどんどんなのは達の光を飲み始めている。

 

「んがが……これ以上はもう時間がかけられねぇ……クソッタレがぁ!」

「キリンさん! みんな!」

 

 キリンの『限界突破』はすでにキリンの許容時間をはるかに超えている。 これ以上の出力はただの自滅。 そうなってしまっては敗北一直線であり……世界の終わりである。

 

 だが、祝福の風はまだ吹いている。

 

「あ、アイカだって……まだみんなを助けられるでごぜーますよー!」

「アイカ!?」

 

 アイカが巨大な魔法陣を足元に形成する。 4人がすっぽりと収まるくらいのサイズ。

 

「はやておねーさんやみんなの魔法を……アイカが一つに繋ぎ合わせてみせるです!!」

 

 それはリインフォース・アインスから授かった魔法。 かつて闇の書の最終防壁を破った際のトリプルブレイカーを見た彼女は思った。

 これから先、同じように力を合わせる時、その魔力を一つに束ねる事ができればより強力なブレイカーになる……と。

 

 だからその術を息子(アイカ)に託した。 自身の主とその友のために。

 

「ウヤアアアアアアア!!」

 

 全くタイプの異なる4つの魔力。 それを糸を紡ぐように、編みこませるように……『束ねる』。

 

「すごい……これなら……!」

 

 四つの砲撃は一つになり、より巨大な力となる。

 

 そして。

 

「ーー卍解!」

 

 もう一人、この窮地に全力をかける者が。

 

「『魔嵐射獄砕鳥(まらんしゃごくさいちょう)』ーー!!」

「翔次!?」

 

 ティアナ達と共にいた翔次が卍解をしゆりかごに向かっていく。

 

 そして、卍解状態で放つ、彼唯一の技。

 

「『滑砕流(かっさいりゅう)』!!」

 

 滑砕流は翔次の唯一の技。 卍解状態では初めて放つ。 だがその威力と効果を彼は知っている。

 卍解状態での滑砕流、それは波のように流れる霊圧が津波のごとく全てを攫う。 その異能を、全て。

 

 ゆりかごは機械、アーティファクトの部類であるため効果はあまりないが、放っている砲撃は違う。

 

 魔力炉によって形成された魔力の塊。 それは異能である。

 故に、一瞬ではあるものの……ゆりかごからの砲撃を攫える。

 

 つまり……

 

()()()()()()()()()()()……!」

「行けェ! お前らァァァァァァ!!」

 

 生まれる。 一瞬の好機。

 

「行け、みんな!」

『行けえええええええええ!!!』

 

 ここに、全てを込める。

 

『うおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 1つとなった光は、ゆりかごの砲撃の残滓を貫き……ゆりかごに届く。

 

『マスター!』

「うおっしゃああああああああああ!」

 

 キリンは砲撃を中断し、自分達の砲撃の中に飛び込む。

 

『ローリの本体の位置はあの上部にある棺の中です!』

「分かった! 最短ルートでぶち抜くぞ!」

 

 キリンはブレイカーと共にゆりかごに突撃し……『ぶち抜く』。

 光はゆりかごの内部から漏れ初め……そして『撃ち貫く』。

 

「うだらああああああああ!!」

 

 キリンは主砲部分から突撃し、内部の中央部で上昇。

 ゆりかご内部をぶち抜きながら棺の前で飛び出してくる。

 

「行けえええええキリンさーん!」

「卍解までしたんだ! 行け!!」

 

 仲間達の声が届くよりも早く、キリンは拳を固く握る。

 

 1分の時間稼ぎ、数秒の砲撃の鍔迫り合い、一瞬の突撃。

 

 そして、仲間達と敵が自分にくれたこの一瞬に応えるために、キリンは拳を抜く。

 

「そこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 キリンの拳が棺に打ち込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー『遥かなる異界より転生せし者』

 

「ーーな」

 

 ーー『その身を鋼で纏う時』

 

「ろ、ローリ……!?」

 

 ーー『全てを飲み込む闇と化し』

 

『マスター避難を!!』

 

 ーーーー『有象無象を破壊する』

 

「ーーーーうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 これは、騎士カリムが予言した言葉。 それは恐るべき厄災の予言。

 

「キリン!?」

「キリン君が攻撃された!?」

 

 その意味を本当に理解していた者がいなかった。

 それは心悟やクロノでさえ……

 

「なんだあれは……ジェイル・スカリエッティ!」

「こんな事が……ローリ、君はまさかこれほどとは……」

「ジェイル・スカリエッティ! あれはなんだ!!」

 

 その真の絶望の意味を、今知る。

 

「な、何……棺の中から黒いローリさんが出てきたと思ったら一瞬で……あそこまで吹き飛ばしていた……!?」

「何だあれは……ローリの背中から……ゆりかごと繋がっているのか……!?」

 

 棺の中から出てきたのは黒いローリ。

 その背は扉のように開かれゆりかごと繋がっている。

 

「キリン!」

 

 誰もが硬直する中、フェイトだけはキリン救出のために動く。 すでに藍色の魔力ではなくなっているが、撃墜されたキリンを助けにいくには十分。

 

 キリンは棺の中から出てきた黒いローリの放った謎の光によって爆撃され、眼下に広がる森林の中に落ちていた。

 

「キリン! 何があったの!?」

「フェイトちゃん……あれは……ヤバい……あの『黒い……ローリ』は……()()()()()()()()()()()()()()()()……!!」

「ぇ……!」

 

 キリンを抱き抱えるフェイトに襲う事実。 その事実を聞いてしまったフェイトの視線は上空にそびえ立つゆりかごの上部にいるローリに。

 

 そして、驚愕の出来事が全員の目の前で起こる。

 

「ゆ……ゆりかごが……!?」

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』」

 

 ゆりかごがドンドン折りたたまれて、ローリの中に収納されていく。

 禍々しい、およそ機械とは言えぬようなデザインをしていたゆりかごはおもちゃのブロックのように簡素に固まり、ローリの背中の中にドンドン収納され……そしてそれに呼応するように黒いローリのボディが大きくなっていく。

 

「あっ……あっあっ……」

 

 サイズはおおよそ全長3メートル。 メタルローリよりも大きくローリ・壊物よりも小さい。 だが詰められているのはゆりかごそのもの。

 

「こ、これは……そうかローリ、君はここに辿り着いていたのか……!」

 

 ジェイル・スカリエッティすらあり得ないと踏んでいた、ローリの姿。

 

 ゆりかごそのものをボディに内包することにより動きの鈍くなるゆりかごの姿で発揮できる破壊力を、人型の姿で発揮できるように。

 

 ゆりかごを()()()()()()()のだ。

 戦艦となっていた間すらも、()()()()であったのだ。

 

 黒いボディを持つ、最後のローリ。

 

 便宜上の名前をつけるのであれば、あれは『終焉(クレイドル)』。

 

『ローリ・終焉(クレイドル)』、この世の最後に存在し続ける。

 

 世界の墓標である。

 




とうとうカリムの予言が降臨。この世の全てを破壊する混沌の使者となったローリに果たして勝ち目などないのか?
しかしまだ予言はここでは終わっていない。
故にキリン達もまだ、終わらせることなんてできない。

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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