何が何だか分からんがこいつを喰らえッ!
66話
晴天の元、空に佇むのは等々ローリだけとなった。 あれほどいた六課の魔導師達も、戦闘機人達も、騎士も誰も彼も空には残っていない。
黒金の無機質な悪魔……いや破壊の化身だけがいる。
そしてその視線の先には……もう戦うことが難しいなのは達と唯一戦えるクロノとユーノ。
そしてそのまた奥に、現在魔力を限界以上にまで高めているキリンとそれを補佐するフェイト。
もう、最後の砦はなのは達だけとなってしまった。
「……こちらを見ているな」
「あぁ……そして間違いなく僕達から狙ってくるはずだ。 動ける僕達を……!」
未だに空中の魔法陣の上にへたり込んでいるなのはとはやて。 アイカに関してはもう立ち上がることすら難しい。 それほどまでに消耗しきっている。
「フェイトはキリンのために側から離れられない以上……奴からの攻撃には俺とお前で対処しないといけない」
「分かってるさ。 ……まぁ近接戦になったら戦えるかどうかすら怪しいけどね」
「ふっ、司書長にとって肉体労働は久しぶりだったか?」
「冗談はよしてくれ。 ……肉体労働どころか殺し合いのレベルすら超えてるぞこれ……あとで何か奢ってくれよ?」
お互いに冷や汗を流しながらローリを警戒する。 緊張感でいえば闇の書事件よりも遥かに上。 おまけに戦闘能力は二人を遥かに凌駕している。 緊張しないわけがない。
だが、どこか。
二人には少しだけ余裕があるように見える。 少なくとも二人と付き合いの長いなのはにはそう見える。
「ユーノ君……?」
「どうしたんなのはちゃん?」
「なんか……二人共ちょっと自信がある……のかな?」
「……流石に冷静な二人ならここで虚勢ははらんと思うけどなぁ」
「そうだよね……でも……」
何かを背中から感じるなのは……と同時にローリからも凄まじい魔力波が飛んでくる。
「くっ!」
「何かしてくるぞ!」
「な、何してるんやローリは……!?」
はやての目に映るローリは、魔力を込めた人差し指と中指を立て、空を水平方向に切っている。 切られた空は紫色の線が入り、ガバッと口のように開くとそこから無数の斬撃のような魔法が発射される。
「なんやあの魔法!?」
「何に分類されるか分からない……ユーノ君!!」
向かってくる無数の刃。 しかしユーノとクロノは至って冷静で……
「俺はいくつ必要だ?」
「いらない、僕だけでいい」
ユーノだけがいくつものプロテクションを張る。 丸みを帯びた盾を前方へ、後ろごと守れるほどの量で迎え撃つ。
ローリの刃は真っ直ぐプロテクションに衝突し……
「これは……弾かれてるんじゃない……!!」
「プロテクションの表面を滑るように飛んでいく……!?」
丸い。 それは接地する面積が減るということ。 すなわち摩擦の軽減。
物質の面積が小さければ小さいほど先端は鋭くなる。 摩擦はその分減り、代わりに鋭利さを持つ。 その鋭利な先端に、一瞬耐えられる強度があれば勢いそのままに表面を滑る。 そしてその軌道をプロテクションの形で誘導する。 上か下か右か左か、無作為に軌道を変えられるも確実なのは一つ。
この攻撃では誰も傷つけられない。
気付けばあの口のように開いていた空間から発射されていた斬撃達はもうない。 確かに有効的かつ凶悪な攻撃だったが……シールドのエキスパーションであるユーノにとってなんて事のない攻撃である。
「ローリ、例え強力な攻撃であっても簡単に僕のプロテクションを破れると思うなよ」
「ーーーー」
無機質な黒金は何も答えない。 静かに次の攻撃の準備にかかる。
その無機質なローリに向かってユーノは言う。
「僕はキリンさんに助けてもらったんだ。 命を……じゃない。 『心』を救ってもらったんだ」
「ユーノ君……」
「あの日、僕を助けてくれたキリンさん。 あの日、僕に頼れと力強く言ってくれたキリンさん……でも僕はキリンさんに助けられてばかりで、なのはのこともキリンさんや拳さん達に助けてもらってばかりで……僕は何もできなかった」
ユーノの言葉を無視してローリは自らが空に開いた空間を手で持ち、その形をヤリの姿に変化させ投擲の構えを取る。 どうやら次は強力な魔力の塊をヤリにしてぶつけようというのだ。
確かにユーノのプロテクションは非常に強力ではあるが、それはあくまで魔力の密度がまだ対応できる程度の話だからである。 先程は広範囲に殲滅効果のある攻撃であったが、今度はまさに一撃必殺。 その先端はユーノのプロテクションに耐えるということすらさせない。
だがそれでもユーノは言葉を口にする。
「だから今度は僕がキリンさんを守るんだ!ローリ、お前なんかに僕は負けない!」
己が正義の覚悟を見せる。
そのユーノめがけて紫色のヤリが投げられる。
そしてその隣でぶっきらぼうにデバイスを回しながら、クロノが口を挟む。
「おいおい、お前一人でやるのは無理だ」
クロノがデュランダルを構える。
その隣でユーノは当然だというようにプロテクションを張る準備をする。
「当たり前だ。 友達を守るんだ、一人でやろうだなんて思ってはいないさ」
「分かってるじゃあないか……! デュランダル!」
飛来してくるヤリ。 その一撃で人はおろか山すら貫く程の威力を持つといっても比喩するには足りないであろう。 だがそれをクロノは止めようとする。
クロノとデュランダルによる凍結魔法。 しかしいくら凍結魔法とはいえど氷の塊を盾にしたところで防ぐことは叶わない。
だからクロノはヤリそのものを凍結する。
ヤリ全てを? それは無理だ。 ヤリの推進力を止めることはできない。
ならばどうする?
こうするのだ。
ヤリの一部分を連続的に凍らせるのだ。 一度に全部を凍らせるのではなく、凍らせ砕かれた瞬間にまた凍らせる。
車のブレーキを少しずつ断続的にかけるように、ヤリの勢いを少しずつ高速で落としていく。
一瞬の間に砕かれる氷、だがローリから放たれたヤリの速度を考えるに果たしてどれくらいの凍結が行われているのだろうか?
ユーノのプロテクションに届くまでおよそ……1秒?
だがクロノにとって1秒の間に魔法を一瞬の間に継続的に行うのは……朝飯前である。
何にしても、ローリの放ったヤリはクロノの支援もありユーノのプロテクションで防ぐことに成功する。 ヤリはプロテクションに防がれた後、静かにチリになっていった。
「……ふん」
「すごい……止めた……!」
「感謝しろよ、俺が手を貸さなかったらお前のプロテクションなんて簡単に砕かれるからな」
「分かってるよ、クロノ執務官」
「それは上々、ユーノ司書長」
悪態をつきながら会話する二人の姿に、はやてはふとなのはに問う。
「……なぁ、二人ってこない仲悪かったっけ?」
「うーん……多分キリン君のためだからじゃないかなぁ。 ユーノ君はキリン君に恩返ししたいっていってたし。 クロノ君はなんやかんやキリン君にすっごい感謝しているっていってたし」
「……つまり?」
「お互いに気合いが入りすぎているだけ……かな?」
「……男の子ってすーぐそうやって見栄張るんやからもー」
だがそんな二人の姿を見てますます頼もしく思えるなのはとはやて。 これならばキリンの時間が稼げるとチラリとそちらを向く。
だが、未だキリンとフェイトは金色の魔力の塊の中にいる。 どうやらまだ『神の領域』には到達していないようだ。
「ユーノ君とクロノ君が頑張ってるよ……だから頑張って、フェイトちゃん、キリン君……!」
「流石はユーノとクロノ……」
「様子はどうなっている……シンゴ」
「今まともに動けるのは二人だけだが、心配することはないヴィータ。 君らだって二人の強さは知っているだろう?」
「知ってるがよぉ……相手はあのローリだ。 そう簡単に行くことはぜってぇにねぇ」
遠くヘリから様子を伺うシンゴ達。 圧倒的な力を見せつけるローリに対し、揺るがぬ意思で攻撃を裁く二人を見て少しだけ安堵するも、未だに底が見えぬローリに恐れを抱く。
「へへっ……いざとなったら逃げろって言われたけど、あんな化け物相手に逃げられる自信がドンドン無くなってくるぜ……」
「安心しろヴァイス。 誰も今のローリから逃げ切れる事はできん」
「嫌な安心だぜしょーさん……」
「い、いざとなれば私とクラールヴィントが……!」
『それは無理』
「みんな口を揃えて!?」
「シャマル先生……私もやめた方がいいと思うよ……」
「ヴィヴィオちゃんまでぇ……」
シャマルの言葉非常にありがたいが、この状況ではいてもいなくても変わらないどころか逆にローリの動きを活発にさせる可能性もある。
流石に今回ばかりは戦力外である。
「…………」
皆がクロノとユーノの活躍を見ている中、スカリエッティだけは違う視点で見ていた。
「…………マズいかもしれない」
「何?」
「……!」
スカリエッティの言葉に眉をひそめる翔次。 そして心を覗いた心悟が驚愕する。
「そんなことが……!?」
先に真実を知った心悟の表情が、本日何度目かの驚愕と焦りを見せる。 それを追うようにスカリエッティが自分の推測を告げる。
「恐らく次のローリの攻撃で……」
ーーーーーーーー
ローリの次の動作はこうだった。
「何だ……?」
人差し指。
人差し指一つを天に向ける。
「来るぞ……奴の修正され洗練された攻撃が!」
「来い! 何がきても守りきる!」
そう意気込む二人と後ろのなのは達が目にしたのは……最初は赤い光。
その光は掲げられた人差し指から。
その光は徐々に蠢き始め、赤と白の光沢を放ち、丸みを帯び……『
「な……っ!?」
「何あれ……太陽……ッ……!?」
人差し指から形成された巨大な魔力の塊。 太陽にも似た光球、巨大な熱の塊。 圧縮された魔力はいくらか? 100万? それともキリンのように1000万越え? 何にしてもそれを見て一瞬で理解してしまう。
『
「だ、大丈夫だ! あの質量をさっきみたいに高速で打ち出すことは流石のローリでもできないはず!」
「馬鹿野郎! 俺たちが避けられてもなのは達は無理だ! とりあえずお前がなのはを持て! 俺がはやてとその子どもをーー」
咄嗟の判断。 すぐにクロノはなのはとはやてを連れて離れることを決断する。 しかしそうなると現在魔力を高めているキリンは? その補助をしているフェイトは?
二人は金色の魔力の中で今もなお『神の領域』にたどり着くために命がけで魔力を解放している。
二人はどうするべきか。 そう考えた瞬間。
「……ぅそだろ」
ローリは作り上げた光球を人差し指から放る。 軌道はそのままクロノ達に向かっていく。
だがここで想定とは違いことが起きていた。
『
ローリの指から離れた光球は曲線を描き、弧をなぞる。 そして落ちるようにクロノ達に向かう。 地に向かって落とすように放たれていた。
「こいつ……やりやがった……! やりやがった!!」
ローリは導き出したのだ。 次の一手で確実にかつ最速で目の前の敵を消し去るにはどうすればよいのか。
簡単である。 敵は人間、自分は機械。 有機物か無機物。 呼吸をするか否か。
つまり、
この世界では、それぞれの宇宙や星を『次元世界』と呼称している。 しかしそう呼称したところで『宇宙』の中にある『惑星』であることには変わりない。 つまり星の中に酸素や水が存在するから生物が生まれ成長している。
ならばそれを破壊すればよい。 その後には正義も悪も倫理観もクソもへったくれもない。
『無』だ。
ローリは今から『無』を作るのだ、このミッドチルダという星を破壊して。
「うおおおおおおおお!!」
「くそおおおおおおおお!!」
避けることもできない。 圧倒的な魔力密度の前に跳ね返すことも逸らすこともできない。 受け止めるための、何の変哲のない防壁を張るしかない。
ユーノとクロノの全力のプロテクション。 そこに触れるローリの光球。
「ッ!!」
ぶつかり合う二つの光。 しかしその差は歴然。
「もっと魔力は上げろぉぉぉぉぉ!!」
「踏ん張れぇぇぇ! 引いたら死ぬぞぉぉおおおお!!」
力が圧倒的に足りない。 浅瀬を跳ねるカエルが大海で溺れ沈むように、吹きかけられた水をも蒸発させるような焼け石のように。 圧倒的なまでの魔力の差を突きつけられる。
二人のプロテクションは卵の殻にヒビが入るように、小気味のいい音を立てながらヒビ割れていく。
「くそっ……たれめぇ……ッ……!」
ヒビ割れたプロテクションの隙間から感じる光球の熱。 その熱がクロノ達の目や喉を枯らしていく。 熱さ、痛み、様々な苦痛を感じ始める。 これではもうやられてしまうのに1秒もいらない。
「こ、こっちは……ググッ……妻に子どもが……いるんだぞ……! それも二人だ……!」
だがクロノは引かない。 歯を食いしばり、吠える。
「俺は命を守る人間だ! 俺の家族の命を……未来を奪われてたまるかぁああああああ!!」
ほんの少し、ヒビが塞がる。
「クロノ君……」
はやて達の見たことのない、クロノの激昂。 こんなにも必死に、命がけになっている彼を見たのは初めてのことであった。
そしてユーノのまた……
「僕が守る……んだ……!」
クロノの隣で全身に力を入れる。 焼け焦げていく自らの服の袖やヒビの入るメガネなんてものは気にも留めない。
ただただ守るために。
「守る……ッ……ん……っ……っっ……だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
もはや言葉はいらない。 意思のみで行動するだけ。
ほんの少しだけ、ヒビが塞がる。
「ユーノ君……」
これほどまでに自分の親友が吠える瞬間があっただろうか。 これほどまでに覚悟を決めた友を見たことがあるだろうか。
なのはの目に映るのは、今この瞬間に全てを投げ打つ男達だけ。 叶わなくとも挑む男の背中があった。
「アァアアああああああああ!!」
「オォオオおおおおおおおお!!」
二人の咆哮に呼応するかのようにプロテクションが持ち直す。
しかし、それでも僅かに命拾いするだけ。 すぐにプロテクションにヒビが入り始め、崩壊が始まる。たった二人だけではほんの僅か、アリの一歩程度の差しか埋められない。
「スゥー……」
「……っ!」
ならばその差を埋めるのみ。
「ヤぁああああああああ!」
「ハぁぁああああああああ!!」
「なのは!?」
「はやて!? 何をしている!」
意を決して立ち上がった二人はクロノとユーノの隣に立ち、プロテクションの援護を行う。 具体的に言うと、魔力を供給して強化するのだ。 その残り僅かな魔力で。
「私だって……守りたい仲間が、友達が……家族ができたんだ! ここで守らなきゃ……ママ失格だもん!」
「みんな私に命を預けてるんや……その私がここで命かけんでいつかけるっていうんや!」
二人にも意思がある。 それは誰も死なせないこと。 何もかも守るという意思。 そう決めたから、それ以上の崇高なものはない。 ただ、なのはもはやても、そう決めたから。
立ち上がった。
だが結局のところ、二人の魔力はほんの僅か。 ユーノ達の一助にすらならない。 今のままでは。
「馬鹿野郎! お前達にはもう魔力は残ってないんだぞ!」
「「
「なっ……!!」
今で足りないのであれば明日から持ってくるしかない。
「明日明後日……未来で使う分の魔力は今ここで捻り出すしかないんだぁぁぁぁぁ!!」
「今日を守るために……みんなのかけてくれた命で大ゴケするわけにはいかないんや! うああああああああ!!」
すでに二人の魔力はほとんど残っていなかったはず。 だのに、プロテクションの崩壊が停止する。 ヒビはこれ以上広がらず、光球も停止している。
「……うぅ」
しかし、それでもほんの一瞬の影響にすぎない。 魔力は必ず尽きる。 何よりこれはユーノとクロノが保っているからできているだけであり、この二人のどちらかが欠けた瞬間、プロテクションは一瞬にして破壊され、この星も破壊されてしまう。
「ううぅぅ……うににににに……!」
だから、あと一押し。 この太陽のような光球を受け止め切るためにあと一押し。
「みんなの……魔力を……」
「アイカ!?」
「アイカが……一つにするですよー!」
オーバーフローしていたアイカが立ち上がり、皆と同じように両手を前に突き出す。 そしてゆりかごの砲撃に打ち勝ったあの時の異なる魔法、魔力を一つに束ねる魔法を発動する。
「うぅ……っ……ぅううううう!」
「アイカ……血が……!」
アイカの鼻から血が流れ始める。 すでにアイカのキャパシティを超えた魔法の行使。 だがそれでもアイカには皆を守らないといけない訳があった。
「パパもママも……
アイカにはまだ謎多い部分がある。 だが、それでもアイカから伝わる真剣さと優しさ。 今この場で必要なのはそれだけで十分。
アイカの魔法によって4人の魔力は一つの巨大で綿密な魔力となり、完璧にローリの光球を受け止めることにようやく成功する。
「これならいけるぞ……!」
クロノに確信めいたものが走る。 そしてすぐに全員に伝える。
「全員……命を振り絞れぇえええええええ!」
『オオオオオオオオオォォォ!!』
この一撃を止める。 そしてキリンを待つ。 ただそのためだけにこれまでの比ではない全力を出す。
だが、
「嘘だろ……おい……!」
なのは達は目の前の巨大な太陽のような光があるためまだ確認はできないが、その後方に控えているヘリの中から心悟や翔次、ヴィヴィオ達には見えてしまった。
「み、みんながやっとの思いで受け止めたっていうのに……!!」
ローリの人差し指にーーーー
「……言ったはずだ。 我々はもう終わりなんだ。 あのローリにとって、星を破壊する程の魔法を放つのは造作もない……私達は最初からローリのウォーミングアップに付き合わされていただけなんだ……ッ!!」
スカリエッティの言葉通り。
それは終わりの象徴であった。
「クソッ! 大将に逃げろって言われたってのに……これじゃあ俺たちはどこに逃げればいいんだ!」
「……っ!」
強く右手で操縦席のドアを叩くヴァイス。 みなの怒りと絶望を代わりに表してくれた彼の表情は悔しさで満ち溢れていた。
「……大丈夫……だよね……?」
「ヴィヴィオちゃん……」
その中で、ヴィヴィオ一人だけが違う表情を浮かべていた。 困惑ではなく心配。 ヴィヴィオは何かをしきりに気にしている。
「……大丈夫よヴィヴィオちゃん。 私やヴィータちゃん、みんながあなただけは必ず……」
「
「ヴィヴィオちゃん……!」
ヴィヴィオはなのは達の心配をしていた。 自分の身など考えず、あの場で戦い続けている自分の母親だけを心配していた。
「ヴィヴィオちゃん……ッ……」
「私はママを信じてる……でも……ママはとっても疲れてたから……もしかしたらすごい大変で……それで……」
「大丈夫……ッ……! 大丈夫だから……!」
「シャマル先生……」
シャマルはヴィヴィオを守るようにヴィヴィオを抱きしめる。 ここにある無垢で無限の可能性を秘めた幼子を必死に抱きとめる。
「……」
「ふん……」
その前に立つように静かにヴィータと翔次が立ち上がる。 例え無駄と分かっていても守らねばならぬと二人が覚悟を決めて立ち上がりそれぞれの武器を手に取る。
そして心悟は……スカリエッティの心を覗くのをやめていた。 どれだけ探ってもスカリエッティにはもうどうすることもできないと理解したのだ。
心悟が見るのはローリ……ではなく空に浮かぶ金色の魔力の繭、その中にいるキリンとフェイトである。
「……ここから、あそこからの大逆転があると信じているのかい?」
「あぁ。 もう僕達は……キリンを信じるしかない」
「そうか……」
「お前だって、信じているんじゃないのか?」
スカリエッティに問う。 しかしその問いは無限の欲望からしてみれば可笑しな話である。
「私が? それはそれはーー」
だが違う。
「お前も、ローリを信じているんだろう? ここ、この状況で」
「ーーーー!」
ここでようやく、スカリエッティの表情が少し崩れる。 そして視線の先を心悟からローリに戻す。 今まさに第二の太陽を落とそうとしているローリに。
「……どうやら、それも無駄に終わりそうだ」
そして、少しだけ。 彼は悲しげな表情で呟いた。
その彼の目には、巨大な光球を重ねるように放つローリの姿が映った。 無機質で黒く輝くローリの姿に、かつての彼の姿を重ねながら……
次の瞬間、空が更に赤く染まる。
「うおわああああああ!!」
「ぐぅぅうううううう!!」
追い討ち気味に放たれた、全く質量も魔力量も同じ光球。 プロテクションで防いでいた所に重なり落ち……膨張する。 一瞬空が、その重さに揺れ、空を中心に衝撃波が周囲の木々、雲……いや、この星そのものを揺らす。
その衝撃だけで、すでにプロテクションは半壊している。
「もっと魔力を上げろォ!!」
「もうやってる!」
「もっとだァ!!」
「くっ……ッ……ソォォォォォ!!」
その衝撃に耐えている……とは言い難い。 すでに崩壊している最中だ。
何もかもが足りなくなった。 魔力も術も何もかも。
圧倒的な力にねじ伏せられてしまった。
「うああああああああああああ!!」
必死に声と魔力を絞り出す。
だがそれも水泡のように淡い希望。
為すすべもなく、プロテクションは破壊されてしまう。
そして目の前の赤い光が全てをーーーー
「ぇ」
空があった。
青い空があった。 あれほどまでにこの星全体を赤く染めていた光球は消え失せ、ただただ青空が世界を覆っていた。
いや、それだけではない。
ユーノとクロノの顔の間に誰かの右腕が伸びていた。 その右手は親指、人差し指、中指を立て、そこから何かを発したのだと推測できる。
「あ……ぁ……なたは……」
「ーーみんな、よく頑張った」
その『
「なのはちゃん、はやてちゃん、よくあそこから立ち上がった。 流石は我らが海鳴女子! ナイスガッツだったぜ」
背が高く、すらっとした細い体型。 しかしその手はよく見ると無骨でケンカ慣れした見た目をしている。
「アイカっていったな? お前もよく頑張った。 あとでヨシヨシしてハグハグしてやろう!」
長い青のジーンズを履き、薄い黒のシャツの上に薄い栗色のジャンパーを羽織っている。
「クロノ君、君は相変わらずいい男だな。 こりゃエイミィさんも幸せもんだぜ」
黒い髪を後ろで束ねているその『女』はゆっくりと空を歩くように皆の前に出る。
「そんで……ユーノ君」
『女』は背を向けたままユーノに語りかける。 ユーノは大きく目を見開き驚いていたが……すぐに表情を戻し、それに答える。
「……はい」
『女』はそのまま話し出す。
「君のことも昔っから知ってるけど……君はあれだな。 会う度に、漢を上げてんな! ユーノ君!」
「っ!」
『女』は顔だけ振り向き、ニカッと笑う。
その笑顔に思わず涙を流しそうになり……だが『女』の言葉に応えるように、ユーノもまた言葉を送る。
「あなたこそ……あの日から僕がずっと憧れ続けてきたあなたのままだーー」
ユーノが出会ったあの日。 あの夜の出来事から沢山の出会いと経験を繰り返し、全てはあの日のように……
ユーノを、なのはを助けるために走り出したあの日と同じ。
今日という日は、過去のあの日になった。
そして過去のあの日は、今この瞬間のためにあったのだ。
オレはオレの幸せに会いに行く 〜66話〜
「ーーーー『
『
ついに真の役者が全て揃ったこの物語は、終結を迎える。
凛として輝く
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントでお教えください。