この分だと今年いっぱいまでかかるかも分からんね
70話
「それじゃあ始める前に……一応自己紹介をもう一度しておくわ。 私はギンガ・ナカジマ、貴方達の更生プログラムを担当させてもらうわ。 よろしくね」
ここは管理局の犯罪者を更生させるためのプログラムを実施する施設。 そこの教室のような部屋の教壇にてギンガが挨拶から始めている。
「知ってるっつーの」
「はいはーい! よろしくっす!」
「……よろしく」
「イェーイ! ギンガイェーイ!」
「よろしくお願いしますわ、ギンガお姉様」
「お願いします、ギンガお姉様」
「……自由な奴らで済まんなギンガよ」
ノーヴェ達7人のナンバーズがこのプログラムに参加している。 それぞれ個性丸出しの受け答えに若干の波乱を感じ取るギンガ。 しっかり者のチンクや物静かなディエチがいることはせめてもの幸いだろうか。
「いいのよ……元々こんな感じだろうって思ってはいたし……んんっ! 」
しかし気を引き締め咳払い。 まだ挨拶は終わってはいない。
もう一人の紹介のために顔を引き締め……
「それでは……シンゴさぁん♡ お願いしまぁすぅ」
ダルッダルに緩める。
「ふむ。 というわけで木村 心悟だ。 一応管理局の精神科医としてここにいる。 ギンガだけでは流石に7人は大変だろうということでここにきている」
「ありがとうごじゃいましゅ♡!」
「……もう早速帰りたくなったが、これも仕事なので頑張らせてもらう。 よろしく頼む」
『お、おふ……』
「ほら貴方達! ちゃんとシンゴさんに挨拶しなさい!」
『生返事なのはあんたのせいだよ……』
こんな感じで本当に自分達は更生できるのか、一抹どころではない不安を持ったままプログラムは始まった。
「まずはミッド……というよりも次元世界の常識やマナーから始めて──」
「はーい! おトイレに行きたいっす!」
「……始まる前に先に行っておきましょうね。 まぁいいけど」
「いってきまー!」
「……じゃあ先にちょっと始めておきますか。 それじゃあ資料を配布するわね」
とにかく始まったものの、初っ端から前途多難。
「……この資料見にくい」
「はい?」
「あら行けませんわディエチお姉様、用意してくださったものに対してそういう事をいうのは……でも本当に見にくい資料ですわ」
「確かに……もう少しレイアウトだったり一回に提示する情報を分けた方が分かりやすい」
「んな!?」
「お前達、真面目にやらんか。 あと一々文句を垂れるな、始まったばかりだというのに」
「チンク……悪いわね……」
「まードクターやウーノが作った資料とかの方が見やすいのは……まぁその通りよねぇ」
「うぐっ……」
「こらセイン!」
「あっ、ご、ごめんギンガ」
「いいのよ……いいのよ……私もこういうのは初めて作ったわけだし……」
「ただいまっすー! アハハー! なにこの資料見づら!」
「ウェンディ!」
圧倒的に前途多難。 好き勝手にモノをいい、好き勝手に批評し、あまつさえ犯罪者の作る資料よりも見にくいと言われればギンガも傷付かずにはいられない。 まだチンクが注意してくれるだけ救いがあるというもの。
「ギンガ、この程度でへこたれる必要はない。 次から改善していけばいいさ」
「はい! 頑張ります♡!」
……まぁ心悟の一声でメンタルがハガネに戻るので問題もなかったりするが。
また、心悟が担当する時間は……
「さて……それではまず君達にあらかじめ渡してあるプログラムの内容が記された表だが……僕のは全部総取っ替えさせてもらう」
「はぁ!? 何言ってんだ……」
「ええええええええ!? 急にどうしたんですかシンゴさん!?」
「いやお前も知らされてねぇのかよ!」
「誰が精神科医の行う心理学だとか心の勉強をするものか。 そんなものは管理局の連中に適当にでっち上げた内容にすぎない」
「えぇっ、ちょっ、うぇっぺぇ!?」
「ギンガ、少し静かにしていろ」
「はぁい♡」
「いやお前ももう少し頑張って抗議しろよ……」
いきなりツッコミどころ満載の展開であった。 ちなみにノーヴェはこの時点で少しずつツッコミ役としての立場を手にしつつあった。
「報告書には僕が適当にやっておくからいい。 ……それよりも君達とせっかくこうやって色々できる時間があるんだ。 もっと有意義な事に使いたい」
「へー何やるんすか?」
「そうだな……とりあえず候補はいくつかある。 差し当たって君達には……『山』に行きたいか『海』に行きたいかを選んでもらいたい」
『は?』
心悟のプログラムの内容は実に奇妙であり、そして不思議と引き込まれる謎の魅力があったそうだ。 この内容に関して彼女達が振り返ると口を揃えて「一番記憶に残る内容だった」と言うことになるのであった。
ちなみにギンガが担当している時間は心悟は部屋の後ろの方で待機している。 逆に心悟が担当する時間ではギンガが部屋の後方に。
ギンガはどの時間でも真正面に必ず心悟の顔を見れるので終始ヨダレが出かかっていたと更生後のノーヴェ達が口を揃えて言っていたとかなんとか。
数ヶ月後。
「……どう思います、シンゴさん」
「……」
更生プログラムも順調に進む中、二人はスカリエッティとローリとの会話を振り返り、当時のスカリエッティ達の様子について話し合っていた。
管理局にはある程度協力する、しかしその代わりに何かしらの見返りは求める。 しかし恩赦を期待するわけではない。
実に不気味な提案であった。
「……恐らくはローリの肉体……ボディといったか。 それをもう一度作るのが目的なんだろうねぇ。 少なくともスカリエッティの中では」
「ということはやはり……」
「あぁ。 僕の能力でも入り込めない領域がローリにはあった」
その不気味な提案ができるのも、ローリが自身の心をデータとして管理しているからだろう。 自身の心に強力なロックをかけ心悟の能力をシャットアウトする方法は実に効果的であったようだ。
「だけど、それは今は後回しにしていい」
しかし心悟はそんなことは気にしていない。
「もっと大切なのは……ギンガの問いに二人が答えた内容だ」
ギンガがあの時それぞれに問いかけた内容。 管理局にとって、自分達にとって、次元世界にとって重要な情報を唯一手に入れられる可能性があった、あの問い。
「はい。 ……『この世界にはまだ転生者が潜んでいるのか、あるいは転生者によって突然変化した世界があるのか?』」
スカリエッティに問うていたのは、この世界にはキリンや心悟達が知らない転生者がいるのか? そして翔次やローリのように転生者によってその世界が変化した事例はあるのか? ということであった。
ギンガが絞り出したその問いに、心悟は珍しくギンガを改めて褒める。
「よくぞその問いに気付けた。 あの時もそうだがファインプレーだと褒めせてもらうよ」
「うぇへへ……♡」
「拳から聞いていたが、彼はこの世界から認識されなくなった後、半ば『管理会』の仕事を放棄してなのはを見守っていた。 だから新たにこの世界に転生者が送り込まれても彼はそれを知らないし気付くこともできかったと言っていたからねぇ。 その部分をスカリエッティに聞けたのは非常に大きい」
帰ってきた拳から聞いた事である。 拳はなのはを見守り続ける為に『管理会』から半脱退状態でなのはの側に居続けた。 故に他の転生者の事情や管理局の事情を知ることができていなかった。 何より新たな転生者が転生してきても知るすべがない、というのが大きな問題であったと本人が語っていた。
しかし無限の欲望たるジェイル・スカリエッティならどうだろうか? 世界へ情報網を張り巡らせ、挙げ句の果てには管理外世界である地球にいるキリンの事を捕捉した。 その情報網は馬鹿にできない。
拳からの話を心悟から聞いていたギンガはあの場面でこの事を思い出し、スカリエッティに問うたのだ。
そしてその返答は……
「でもあの時は予想外の回答でしたね」
「あぁ、まさかスカリエッティが『過去の転生者達』について知っているとは僕も思わなかったよ」
スカリエッティはこう答えた。『もちろん、君達以前にこの世界にいた『転生者』または『転生者相当の存在』について私はデータをまとめてある。 もっとも、そのデータはローリの中にしまわせてもらっているけどねぇ……ふふふ』、と。
つまりローリのデータの中で厳重に保管されているというわけである。
おまけに心悟対策もバッチリなようで……
「まさかスカリエッティが自分の記憶からデータの内容を消すとは思っていなかったよ。 心の領域とて記憶から痕跡すらも残ってないと探すのは一苦労だしねぇ」
「絶対アレシンゴさん警戒ですよね……というかどの段階でやったんでしょうね……用意周到にも程があるわ……」
記憶から消されたとしても心のどこかには必ず痕跡がある、しかしその痕跡すらも消されてしまうと流石の心悟でも探し当てるのは困難である。 時間がかかる上に心悟の精神的疲労も増えてしまうためあの場で心の奥深くまで入るのは少しリスクがあった。
「……だが、裏を返せば数ある転生者のうちからキリン……というよりはキリトの事だけを追っていたということはそれまでの転生者はそれ程までの存在ではないということだろう」
「そうですね、そういう見方で私はいいと思います」
「……もしくは……」
「……? シンゴさん?」
「いや、何でもない」
────もしくは、すでに研究し尽くした後かもしれない。 と流石にそこまでは言えなかった。 憶測に過ぎず、憶測で無闇にギンガを不安にさせるのはらしくないと判断したためである。
心悟は話題を変えるように、次はローリへ話を移す。
「しかしギンガよ。 何故ローリにあんな質問をした? もちろん知りたい事の一つではあったが……」
「あぁいや……そうですね。 気になったんです、ローリにだって大切な家族がいたんだから聞かなくちゃいけないって」
「……『今もまだ、ヴィヴィオを利用するくらい心は歪んだままなのか?』……か。 それに対するアンサーも僕の予想外だったけどねぇ」
ローリはギンガに問われ、答えた。 『分からん。 しかし私が深い絶望と狂気に飲み込まれたのは、死んだ妻と娘の姿をどう思い出しても『
産まれたばかりで、それも事故の影響で歪んだ姿しか娘を見ていない。 しかし何故か笑っている顔を思い浮かべてしまうローリ。 何故かは本人にも分からない、しかし心悟にはそうなった理由が分かる。
「……ああいってたから、多分本当に以前のような小さい女児に対する執着心はなくなった、もしくは狂気に作用され暴走することはなくなったんだろうねぇ」
「どうしてそう言えるんですか?」
「『心がそう在る』からさ」
「?」
「ローリの心がそういう風に娘を思えるということは、
「心が……そう、
「心がそう在るというのならば、娘の笑顔を思えるようになれたのだろう。 それは本人の言う通り、スカリエッティやナンバーズである彼女達のおかげということだ」
妻と娘の笑顔を思える、ということはローリの心には二人に対して深い悲しみや絶望を持ってはおらず、温かい記憶とそうありたかったという切ないながらも正しい愛を心が取り戻したからである。 つまりローリの心はそう在り続けるようになったのだ。
「じゃあ」
「うん?」
「
「……そうだねぇ」
そう言ったギンガの表情は、さっきまでの話で浮かべていたシリアスな表情ではなく。
恋に落ちた乙女のような表情で心悟を見ていた。
心悟はそれから目をそらすためなのか、中身が空っぽのカップに手をかけて飲もうとしていた。
ギンガは思い出す。
ある日の更生プログラムの最中であった。
「はいはーい! 質問っす!」
「ふむ、いいだろうウェンディ」
それはちょうどプログラムの内容が少し早く終わり、質問を取っていた時のことであった。 ウェンディが元気よく手を挙げ心悟に質問をする。
「セッテとかギンガがしている、『人を好きになる』ってやつを教えて欲しいっす!」
「…………」
「うおっ、やめておけよウェンディ。 先生が未だかつてないくらいすごい目つきしてんぞ」
「えー、でも気になるっすよ。 ね、みんな」
「巻き込むなよ……」
少し呆れるノーヴェであったが、確かに気にはなる話題ではあった。 それはチンク達も同じことであり、彼女達もプログラムを通して普通の女性の感性というものを手にしてきたようだ。
嬉しいことではあるものの、心悟にとっては面倒くさい質問。 面倒になった彼は後ろの方にいるギンガに丸投げしようとする。
「あー……申し訳ないがそういうのはギンガに聞いてくれ。僕はそういうのでいい経験をしてないものでね」
「……あ、私ですか?」
「教えて欲しいっす!」
「興味がありますわ、ギンガお姉様」
「僕も」
「……私も」
「えぇっと、そうねぇ……」
意外とノリノリなのが多かった。 ギンガが少し考え……心悟を見る。
「……──」
そして、あの時の事を思い出す。
「────」
そこはギンガの心の中にある深層部分。 スカリエッティによって洗脳され、心と身体をいじくり回された事によりギンガの心は深い闇に覆われていた。
上は星々が瞬く銀河のようで、下は全てを飲み込む沼の水面。 ギンガは水面の上に立ち、独りで上を見上げていた。
「────ありがとう、スバル」
見上げた先にある光が消え始める。 それはスバルがちょうど黒い蒸気に支配されていたギンガをノックダウンした瞬間であった。
「でも私は……もうこの闇から逃れられない」
そう呟くギンガの身体には水面から飛び出している黒い蒸気に全身を縛られ、黒に侵食され始めている。
「……最後に、私を倒してくれてありがとう。 強くなって、私本当に嬉しい」
流れ星のように光が流れ落ちる。 その光のようにギンガの頬に涙が伝う。 ギンガは静かに瞳を閉じた。
「さようなら……スバル、お父さん」
ギンガはゆっくりと身体を後ろに倒し、水面に身体を浸からせる。 波打つ波紋から黒いモヤのようなものがギンガの全身にまとわり、沈めようとし始める。
「私は……もうこの『黒い力』に抗える程……何も残ってない……」
ギンガの心はすでに限界を迎えていた。 ギンガの心身を蝕むスカリエッティの改造をスバルが破壊したとしても、すでにギンガの心が諦めていた。
「スバル……最後の最後に強くなったあなたを見れてよかった。 ……良い、お母さんの土産話に……──」
ギンガの身体が沈み始める。 ゆっくりとゆっくりと、黒いモヤに包まれ縛られ、まるで水葬のように静かに落ちていく。
だが。
「────ようやく見つけたぞ、ギンガ」
「……ぇ」
水面に波紋を起こすもう一つの存在がやってきた。 その男にしてみれば、ここに来ることに対した苦労もいらない。 大切なのは強き精神と正しいと信じることの出来る心を持つこと。
「心の深層領域……にしても前に来た時よりもずいぶんと様変わりしたねぇ」
「ししししシンゴさん!?」
「おっと、もう少しでキミの心が沈むところだったのか。 それなら早いところそこから出さないとねぇ」
木村 心悟にはそれが出来る。 何故なら彼はその力を貰い、そして友との再会により心が強くなった。
すました心ではなく、優しさと正しさと強さを持とうとする心に。
だから今から深い深い黒に飲み込まれようとするギンガを救う事に何の躊躇もない。
「ほら、手を貸そう。 キミならそこからくらい簡単に起き上がれるだろう?」
「だっダメ! 私……貴方を傷つけてしまった!」
差し伸べられた手をギンガは拒んでしまう。 意識はなかったとはいえ心の奥底では外で何があったのかを把握している。
つまり自分の意思とは関係なかったとはいえ、植えつけられた力とはいえ、自分が一番好きな人を傷つけてしまったことには変わりはない。
そして自分が大好きな人をこれからも傷付けてしまうことから逃れられない。
「貴方を傷付けてまで私……そんなのはイヤ!」
「…………」
「私は彼女達と同じ戦闘機人で、人間じゃなくて、バッ……バケモノみたいな存在……! だから貴方を傷付けてしまう! そんなのは私の心が死にたくなる!」
沈みながらギンガが叫ぶ。 大切な人を守る、そのために母から技術を学び父から正義を教わった。 だがそれらは人間の、『普通』の人のものである。 その『普通』ではない自分、最初から分かってはいたことではあるが、ギンガは自分のそうではないと言い聞かせて誤魔化してきた。
だがここに来てその誤魔化しは通用しなくなった。
心悟を傷付けてしまった。
そしてそれはこれから先にも起こり得ることである。 それを許容して生きていくことはギンガには出来ない。
大切な家族を失っているからこそ、出来ない。
「だから私はここに置いていって────」
だが。
「────やかましい」
「ぇ──」
そんな心の叫びは、心悟にとって重要ではない。
「ふっ!」
「──っ!」
心悟は両腕を足元の水面に突っ込む。 左手でギンガの左手を取る。 そして右腕をギンガの腰辺りに回し……一気に抱きかかえるように立ち起こす。
「っ……!?」
水面が弾ける。 ギンガを包んでいた黒いモヤが吹き飛ぶ。
ギンガの目には心悟の目が。
鼻と鼻が触れそうな、互いの呼吸を感じる距離に心悟がいる。
「あまり自分を過大解釈しすぎるなよ。 僕だって誰かを傷付ける時だってある、大切な人を傷付けてしまう時だってある。 そんなありふれた事をデカくして考えるな」
「…………」
「ギンガ、キミはキミだ。 この心のどこにいてもキミは一人しかいない。 心が折れ、闇に飲まれようとも、キミはここにいる。 キミがここにいる。 だから僕はキミを見つけられる」
掴み上げたギンガの手を、頭の上まで引っ張り上げた柔らかな手を握る。 離さないように、離れても感じられるように。
「…………」
──あぁ、そうか。
ギンガは理解した。
──この人は私を見つけてくれるんだ。
「いつまで経ってもキミが僕の患者なのは変わりない。 だから何度だってキミを見つけだし何度でも掬い上げる。 そう簡単に僕が諦めると思うなよ?」
──本当の私を見つけてくれる。 だからそうだ。
──好きになったんだ。
「さて、行こうか」
「……はい!」
掬い救われた。 ただそれだけの事ではある、しかしそこに幼き少女の時代に芽生えた恋心と憧れは今この時を経て再びギンガの胸に宿った。
人を好きになる事に限界がなくなった。 愛を伝える事に際限が無いことを理解したギンガはこの時より自らの恋を愛を容赦なく伝えていく事にしたのであった。
その事を思い返したギンガ。 しかし。
「……秘密でーす」
「えぇえ!? 何でぇ!」
「秘密なものは秘密でーす」
それを皆に伝える事はしなかった。 その心内を見ていた心悟には訳が分かる、しかしそれは単純にして複雑怪奇な乙女心。 心悟には完全に理解できない恋心があった。
故にそれを伝えるのは今のギンガではできない。
「でもそうねぇ……一つ言えることは」
『言えることは?』
しかし何も伝えないのはせっかく聞いてくれた彼女達に申し訳が無い。
だからギンガはそれを理解するためのヒントを伝える。
「絶対にこの世界には自分を見つけてくれる人が必ずいるの。 その人だけが自分を見つけてくれる、どんな闇の中にいても、絶対に見つけだしてくれる。 そういう人に全力で恋をする、それが大切な事だと私は思うの」
「おお……」
「つまりそれがシンゴ様というわけですねギンガお姉様」
「ふふっ、そういうことよ♡」
その自分を見つけてくれる人に視線を向ける。 すると意外にも心悟はギンガの事を見ていた。 恥ずかしそうにしてるわけでもなく、ギンガを見ていた。 それがどんな意味なのかはギンガには分からないが、ただ心悟が自分を見てくれるだけで嬉しい彼女にとって深い意味は必要ない。
「……ね?」
ただ笑って返す。
これから先、ギンガの恋が叶うのは誰にも分からない。
しかし心悟の心模様は誰にも分からない。
自分に真っ直ぐな好意を向けてくるギンガに対し心悟は前々からどう接すればいいか悩んでいた。
だが真っ直ぐに自分の気持ちを伝えてくれるギンガに対し、心悟もまた素直な気持ちで接するようになったのである。
それは純粋な気持ちであり、それがギンガにとって求められている言葉ではないのかもしれない。
「あ、シンゴさん私にもコーヒーください」
それでも彼女は心悟の事を好きと言う。
「いいよ、いつものかい?」
それでも心悟はギンガと接する事をやめない。
「はい!」
ギンガにとって、自分という心を見つけてくれる心悟はさながらこの広い銀河の中からたった一つの星の光を見つけてくれるくらいの奇跡と感謝がある。
ならばギンガはいつか心悟にとっての
その願いも心悟に見られている。
だが、それは決して二人にとって悪いことではなく……
「……」
「どうしましたシンゴさん?」
「……いや」
もしかしたら。
「──
「──っ、はい!!」
もしかするのかもしれない。
これはそんな不確定であやふやな、心の恋。
銀河のように果てのない恋心。
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。