オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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えっ!?
もうすぐ年末!?


73話 Epilogue5 真条 拳

 73話

 

 

 

 

「到着〜」

「おおお〜!」

 

 今感嘆の声を上げたのはヴィヴィオ。 ヴィヴィオ達の目の前にあるのは一つの家。

 

「ここがママの実家で〜す!」

「すごーい!」

 

 地球の海鳴にある高町家。 なのはの実家に帰ってきてたのだ。 テンションの高いなのはとヴィヴィオ。

 しかしその二人に反して落ち着いた雰囲気の男が一人。

 

「……」

 

 拳であった。 それもそのはず、何故なら今回は……なのはやヴィヴィオ、拳。 いや、高町家全体でとても大切な話をしにきたからである。

 真面目な拳は二人のように楽観的にはなれず、昔に見せることもなかった緊張の表情を見せていた。

 

「……いかん、緊張してきたのかもしれん」

「大丈夫だよ拳君、みんな拳君の事知ってるし問題ないって」

()()大丈夫? いつもより、ムーっとしてるよ?」

「大丈夫だ……問題ない……そう、何も問題はない……」

「大丈夫大丈夫、みんな驚くかもしれないけど……きっと大丈夫」

 

 率先してなのははインターホンを押す。

 もう後戻りはできない。

 

「ただいまー!」

 

 今日は拳にとって一世一代の大勝負。

 

 なのはとの結婚を許してもらう日になるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだねぇ拳君。 10年ぶりくらいかな?」

「本当にねぇ〜元気そうでよかったわぁ」

「お久しぶりです、夫妻もお変わりなく元気そうで何よりです」

「相変わらず真面目だなお前は」

「ふふっ、小ちゃい頃から何も変わってないのね」

 

 高町家の方々に歓迎される拳。 10年ぶりの再会とはいえ、10年程度で態度が変わるような家庭ではなく。 昔と同じように拳を歓迎する。

 

 そして次に目が行くのは小さなヴィヴィオ。

 最初に声をかけたのは桃子、目線を合わせ優しく話しかける。

 

「初めましてヴィヴィオちゃん、なのはから話は聞いてるわ」

「えっと……ママのママ?」

「ふふっ、その通りです」

「それなら僕はなのはママのパパになるね」

「……それってつまりおじいちゃんじゃない?」

「そうなると俺や美由希は叔父と叔母になるぞ……」

「うわっ! ヴィヴィオちゃん、恭ちゃんはともかく私のことは美由希お姉さんって呼んでね!」

「お前なぁ……」

「美由希お姉さん!」

「イエス! ヴィヴィオちゃんイェース!」

 

 あっという間に仲良くなる。 これが高町家の持つ魅力なのか、普段のなのはも似たような雰囲気を持っているが、納得な話である。

 開幕10分で打ち解けたヴィヴィオ達。 それはそれとして落ち着くために席に着く。

 

 そして本日の大切な話を始める。

 

「さて……それじゃあなのは、今日は何か大切な用事があるって聞いたけど、どうしたんだい?」

「うん、あのね、お話があるの。 大事な大事な……」

 

 一呼吸置き、短く、しかし大切なことを伝える。

 

「私達……結婚します!」

『な、なんだってー!?』

 

 やや階段を2段飛ばしくらいで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とまぁ、正確には結婚を前提にお付き合いしてますって話なんだけどね」

「いやいくらなんても色々吹っ飛ばしすぎだろ……」

「にゃはは、ごめんごめんお兄ちゃん。 でも多分もう少しくらいしたら結婚して式するつもりだよ?」

「オイィ!?」

 

 アグレッシブなのは。 久しぶりの実家だというのに台風のように暴れ回る。

 

「……まぁなのはってば拳君にご執心だったし。 ……にしても行動力の化身すぎる」

「えへへ……」

「というか私達小さかった拳君の事しか知らないからあれだけど、随分と男前になったねぇ」

「でしょー!? 拳君めちゃくちゃカッコいいよねー!!」

「……え、やだ。 久しぶりにあった妹のテンションについていけないわお姉ちゃん」

 

 誰の目にも明らかな好意。 所謂付き合いたてのカップルとでも言えば分かりやすいか。 本人達にとっては大真面目なのだろうが、側から見ればそのテンションがウザい、そんな状態なのだ。

 主になのはが。

 

「ふふっ、百年の恋も成就すればこうなっちゃうのも分かるなぁお母さんは」

「そうだね、お父さんも少しだけ記憶にあるよ」

「あの頃も今のなのは達くらい若かったかわねぇ……」

「誰でも通る道なのさ」

 

 ご両親はそれなりの理解を示しながら昔を思い返す。 もしかしたらこの一直線な感情は両親譲りなのかもしれない。

 

「……」

「パパ? どうしたの?」

「……いや、その、なんだ」

 

 ヴィヴィオを膝の上に置きながら拳は非常に緊張している。 特にさっきから表情が固まったままである。

 

「本来こういうのは男の方から言いだすのが通例だと本で読んだ。 ……今のこの状況は非常にマズイのではないか?」

「ええー? そうなのー?」

「うむ……恐らくは」

「そうかなぁ? ヴィヴィオはそんな感じしないけどなぁ」

 

 ヴィヴィオの目には、なのはの報告に驚きながらも笑顔を見せている高町家の姿があった。 本当に心からの喜んでいるのだと確信めいて察している。

 

「私もあんまりよく分からないけど。 キリンちゃんが言ってたよ、本当に嬉しいとみーんな優しい目になるんだって」

「優しい目……か」

 

 なのはの目を見る高町家の家族はとても優しい目でなのはを見ている。 その様子を見ていた拳に気付いたのか、その目をそのまま拳にも、ヴィヴィオにも向ける。

 

「拳君、君の話も聞きたいな」

「10年は会ってなかったものねぇ、これまでの貴方をよければ教えてくれるかしら?」

「私も聞きたーい! 主になのはのどこを好きになったのかを!」

「うひぇあ!? お姉ちゃん!?」

「お? もしかして恥ずい? 恥ずかろ〜?」

「私聞きたいそれ! 聞きたーい!」

「えぇ……一番ノリノリなのね。 ……ほら、ヴィヴィオちゃんともお話したいな」

「うん! する!」

 

 優しい目を、優しい熱を帯びた視線を向ける高町家に拳はある種の安心感を得ていた。

 

「(……当然、か)」

 

 高町家にとって、それは当たり前のことである。 これが自分じゃなくても同じ目で見てくれるだろうし。 そして同じ優しさを見せてくれる。 これが家族という温かさであり、これから拳が持たねばならない大切なものの一つでもある。

 それを今教わる。

 

「……」

 

 だが、流石にそう簡単にいかない事もある。

 

「ちょっと待った」

「……お兄ちゃん?」

 

 この空間に異なる意見を放つのはなのはの兄であり高町家の長男である恭也だ。

 彼だけは違う熱を目に宿している。

 

「俺はそう簡単に、「それは嬉しい事ですね」と言えるほど物分かりが良い方じゃあない」

「もう、どうしたの恭ちゃん? 今更シスコン発症は痛すぎるわよ?」

「誰がシスコンだ。 ……そりゃ、俺だって拳にまたこうして会えるのは嬉しいさ。 だが、なのはと結婚するだと? それは見逃せない」

「……」

 

 拳は恭也の言葉を受けると、静かにヴィヴィオをなのはに渡す。

 それを見てから恭也は言葉を続ける。

 

「拳。 お前は俺より強いのかもしれない。 だからといってお前には『前科』がある」

「……前科?」

「そうだ。 お前は一度なのはの前から完全に消えた。 確か他の星に行っていると記憶しているが、それはつまりその間になのはが頑張っている時に側にいれなかったってことだ」

「お兄ちゃんそれは違うよ! 拳君は拳君なりに……」

 

 恭也の言葉になのはが弁明に入る。 しかし恭也にとってこれの成否が大切ではない。

 

「違うならそれはそれでいい。 だが肝心なのは、俺の妹の前で姿を消したことがあるという事実だ」

「それは……」

「いいか拳、なのは。 俺は兄として妹を絶対に守ってくれる奴じゃあないと結婚なんて認められない。 ここは譲れない部分だ」

「…………俺は」

 

 言葉を紡ごうとする。 しかしどのような言葉を選ぶのが最適なのか分からず詰まってしまう。

 一瞬流れる重たい空気。

 

「よし」

 

 それを変えるのは一家の長である士郎。 手を叩いて注目を集める。

 

「それじゃあみんなで道場に行こうか」

 

 いつもの笑顔で、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、非常にシンプルにお互いの気持ちをぶつけ合うのが一番だと父さんは思う。 だから恭也と拳君には勝負をしてもらうよ」

 

 道場内の中心で向かい合う男二人。 それを端で見守る女達。

 恭也と拳の間に立って音頭をとる士郎の表情は実に落ち着いており、これから男の真剣勝負が始まるというのにいつもと変わらない様子で説明をしている。

 

「ルールは簡単。 先に一本、()()()()()()()()()()の勝ちだ」

「……」

「父さん、俺はコレを使わせてもらうぜ」

 

 そう言って手に持つ大小一振りずつの刀を見せる恭也。 もちろん真剣である。 触れれば当然斬れる。

 

「あぁ、もちろんいいとも。 拳君も何か使いたい得物があれば先に申告してほしい」

「いえ……俺は必要ありません」

「分かった、それなら早速始めようか」

 

 トントン拍子で話が進んでいく。 もう二人が勝負する間際まで話が進展している。

 それに対して見守る女性陣は……

 

「え、恭ちゃんったら真剣だけで勝負する気? 流石に私から見てもなのは達の世界で無双できる拳君にそれで勝てるとは思わないけどなぁ」

「そうねぇ……なのははどう思うかしら?」

「うん……と……その……どう見ても拳君が勝つと思う」

「あらあら、お兄ちゃんったら可愛そう、ふふっ」

 

 流石に恭也に軍配が上がるとは予想できない様子。 特に美由希は呆れ気味に恭也を見ている。

 

「ほん……っとに、男って単純なクセに面倒なんだから」

「意地っ張りだけど……お兄ちゃんだもの。 必要な意地っ張りだから仕方ないのよ」

「はぁ……ま、一応応援してあげますか」

 

 二人には恭也が何故あのような発言をしたのかを理解している。 だからこそ見守ることに徹する。 これは男の意地の張り合いになるのだから。

 

「がんばれーパパー! 恭也おにーさーん!」

 

 ヴィヴィオはよく分かってないが、取り敢えず頑張る二人を応援する。 そのヴィヴィオを見てなのはは優しくヴィヴィオの頭を撫でる。

 

「……」

 

 だが、なのははどちらの応援もしない。 応援できない。

 少しだけ不安な面持ちのまま、ついに始まる。

 

「始め!」

 

 少し離れた士郎が手を上げ、勝負開始の合図を高らかに宣言する。

 

「ハァッ!!」

「……!」

 

 開始直後、大刀を上段から一振り。 これを冷静に身体を逸らして躱す。

 だがこの程度で一々反応しない恭也はさらなる一太刀を繰り出し続ける。

 

「ふっ! はっ! セヤッ!」

 

 縦に横に斜めに前に。 斬るという行動に躊躇うことなく二刀を振るう。

 

「……!」

 

 だがそれらの連撃を拳は躱し、逸らし、流し、払い、受け止め、一つ一つの攻撃を丁寧に捌ききる。

 

 だが攻めに転じる事はない。

 

「どうした! 俺程度の動きなら簡単に止められるはずだ! 何故しない!?」

「…………」

 

 答えず、ただ躱すのみ。

 

「真面目なお前のことだ。 今この状況をどうやったら収められるのかを考えているんだろう。 だが、俺は決着が着くまでやめるつもりはない!」

 

 大振りの二連撃。 これを飛んで回避し距離を取る、これで再び間合いが生まれる。

 その間で恭也は未だ躱すだけの拳を見つめる。

 

「(どうした拳! お前の覚悟はそんなものか!)」

 

 見つめる瞳に力が篭る。

 

「(拳、お前がなのはを大切に思ってくれていることに嘘はないのだろう。 何故ならお前は嘘をつくタイプのやつじゃあないからだ。 だが、それでもお前には『覚悟』を見せてもらわないと俺は納得できない!)」

 

 恭也は拳を試しているのだ。 いざとなった状況で、なのはを守れるかどうかを。

 

「(俺たちかなのは、どちらかしか守れない状況になった時……お前にはなのはを守ってもらわないといけない。 何があってもなのはだけは守ってほしい、それが俺の唯一お前に求める願いだ)」

 

 かつて恭也はジュエルシードに襲われた際、なのはを守ろうと奮闘した結果手痛い返り討ちにあっている。 その後にキリンが救援に入りなのはが怪我をするという事態にはならなかったものの、それでも自分の力では妹を守れなかったことを恭也はずっと悔やんでいた。

 

「(拳、お前には俺を倒してもらわないといけない。 お前がこれからなのはを守っていくためにも!!)」

 

 全身に力が入る。 恭也は二振りの刀を拳に向け突撃する。

 

「……」

 

 一瞬、視線を恭也から外してなのはを見る。

 なのはは心配するわけでもなく、ただただ静かに見ていた。 焦る様子もなく、信頼し切った表情で。

 

「…………」

 

 それを見た拳は意を決したように今まで構えるどころか握ることのなかった両の手を握る。

 

「(そうだ! それでいい!)」

 

 拳の動きを確認した恭也は止まるどころかむしろさらに加速して拳に接近し……

 

「ハァッ!!」

 

 二振りの刃を拳に差し込もうとし……

 

「──?」

 

 違和感。 いや、すぐに感触で分かる。

 

 今さっき振り下ろしたであろう二本の刀を握っていたはずの()()()()()

 

「──ッ!?」

 

 そして気付く自身が持っていたはずの二本の刀を、()()()()()のだと。

 

「む、『無刀取り』!? そ、それも……!!」

「拳君が……二本も……!! それも指で……!?」

 

 それぞれの刃を人差し指と中指で挟み奪い取る。

 無刀取りとはすなわち真剣白刃取りなわけだが、それは本来息のあった二人組みが何十回何千回と練習を重ねてやっと達成できる演武である。

 それをこの試合という勝負の中で、それも本気で自分を斬ろうとしてくる相手に対し行ったのだ。

 純粋なレベルの違いがそこにはあった。

 

「……高町 恭也氏」

 

 拳は奪った両刀を恭也に返すように柄の部分を差し出す。

 そして、彼の本心が語られる。

 

「俺は確かになのはの側から離れた。 それは一度離れキリンや翔次をまたなのは達の側に居させられるようにするために……」

 

 海鳴での別れ。 それは本来は転生者であるキリンや翔次があまりにも本来の世界からかけ離れたことをし過ぎた結果の一時的な措置であった。 そしてそれに関わり過ぎた拳自身の戒めでもある。

 

 しかし、拳はなのはの事が好きになった。 一人の存在として、一人の異性を。

 だから拳は自らの使命よりも己の我を通す事を選んだ。

 そうして今ここに拳がいる。

 

「だが、俺は俺の意思でこの世界に戻ってきた。 もう『管理会』ではない、『領域外の力』もだいぶ型落ちしている……だがそれでも俺はここに戻りたいと強く思っていた」

「拳……」

 

 明かされる拳の秘めた思い。 いや、新たに生まれた心の光。

 拳はほんのり笑みを浮かべながら恭也に向き合う。

 

「俺はある意味で限界を超えて来た。 それは絶対に諦めない……なのはの姿や、俺を友と呼んでくれる者たちから教わった大切なことだ」

「……友、か」

 

 思い浮かぶの当然、あの男である。

 

「高町 恭也、これが俺の答えだ。 例え『不可避の選択』を迫られたとしても……()()()()()()()。 必ず新たな道が切り開けると信じてる」

「……はぁ」

 

 深い息が漏れる。 恭也は観念したのか、拳の差し出した刀を受け取ると鞘に納める。

この勝負、一本取られたのは恭也。

 

「負けたよ。 お前の方が強い信念を持っていた……つーかこれじゃあ俺がピエロじゃないか」

「……恭也氏」

 

 戦いは終わった。 男の意地の張り合いも終わった。 後に残るのは和解の握手のみ。

 

「なのはを、妹をよろしく頼むぜ。 拳」

「もちろんだ」

 

 男と男の契りが交わされることで終わりを告げた。 拳は無事高町家の一員となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、言い忘れてたけど拳君はうちに婿養子として嫁ぐ予定だから」

『何ィ!?』

 

 というわけで、高町 拳の誕生となるのであった。




これからどれだけ、愛の言葉をかけるだろうか。

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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