地球をアイスピックでつついたとしたら、中から熱々のパスタが出てくるんじゃないか なんて妄想をしてしまうくらいに空腹感に襲われているお昼前。
あと数分でチャイムが鳴り昼休みに入るというのに、その数分間があまりに長く感じてしまう。
いつもならばここまで切羽詰まった状況にはならないのだが、不覚にも今朝は寝坊してしまい朝食を食べていないのだった。
流石に高校生にもなって授業中に腹の音を響かせるわけにもいかず、ひたすら無心に時が過ぎるのを待った。
そして待ちに待った鐘の音が聴こえ授業が終わった瞬間に 私、佐久間理子(さくま りこ)は学食へと走り出した。
物語はそんな、わりと平和な日常から始まる。
『安斎千代美の消失』
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「うぉ~い、リコー!」
空っぽだったお腹を学食で満たし教室に帰っている途中、渡り廊下で後ろから声を掛けられた。振り返るとそこには、小学生と見間違う程の小さな背丈の少女が立っていた。
「クスクスじゃん。相変わらず小さいねー、どうしたのー?」
彼女の名はクスクス。私と同じく、このアンツィオ高校の戦車道チームに所属するチームメイトだ。そして高校1年生の同級生でもある。
「うっせーよ、そんな1日2日で背は伸びたりしないっつーの!それよかドゥーチェからの伝言だ。今日の訓練のあと、作戦会議を行うから小隊長達は残っておくように、だそうだ。確かに伝えたからな、じゃあなー!」
「はーい、了解。ってもう走り去って行っちゃった..。」
そう。私は現在、アンツィオ高校戦車道チームで小隊長を務めている。
我が校の主力戦車であるCV33、カルロベローチェは快速戦車として有名であり、その機動力は他の戦車と比べても群を抜いている。
主だった作戦指示は隊長であるアンチョビ姐さん、通称ドゥーチェが行う。しかし偶に少数での撹乱作戦を行う時がある。その時にその場のメンバーに細かい支持を出すのが小隊長の役目だ。
小隊長は私を含めて4人、先ほどのクスクスもその内の1人だ。全員が1年生だ。と、いうより現在アンツィオの戦車道チームは3年生のアンチョビ姐さん、2年生で副隊長のペパロニさんとカルパッチョさんを除いて全員が1年生なのだ。
小隊長に任命されて初めは随分と苦労したものだ。アンツィオの生徒は一癖も二癖もある生徒ばかりなのだから。
それでも私は嬉しかった。アンツィオ高校に入学する前から、アンチョビ姐さんと共に戦車道をするのが私の夢だったからだ。
あの時からの、ずっと変わらない私の夢だった。
「よし、まだ昼休み中だけど先に行って準備しておこう!」
思い立ったが吉日というやつだ。私は早速、戦車倉庫へと向かう事にした。
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「あれ、ペパロニさんとラザーニャじゃない。どうしたの2人とも?」
戦車倉庫へ着くと、副隊長のペパロニさんと小隊長のラザーニャが先に来ていてCV33を弄っていた。
「おーリコ、なんか前回のマジノ戦からこのCV33の調子が悪くってラザーニャに見てもらってるんだよ。」
「ペパロニ姐さーん、もうかなり限界な部品がいくつかあるっすよ。これ変えた方がいいかもなー」
先日、私達アンツィオ高校は戦車道全国大会の1回戦でマジノ女学院と対戦し、なんとか辛勝。2回戦へと駒を進めたのだった。
「あっちゃー、結構騙し騙し使ってきたんだけどなぁ。じゃあアタシからアンチョビ姐さんに話しとくわ。」
それから訓練開始の時間まで私は2人の手伝いをし、全員が揃う頃にはCV33も何とかまた動く様になっていた。
どうしても書きたいやつに出逢っちまった。
他の作品を連載中でありながら、数日前に内容を思いついてから ずっと彼女たちの物語を考えていました。
そして9月23日、アンチョビこと安斎千代美の誕生日にこの話を掲載できたことを幸せに思います。