朝、私はいつものように母に起こされ未だ覚めない眠気と共に朝食を済ませ、洗顔と着替えの後に玄関を出た。
朝に弱い私は半覚醒状態の頭のまま、通学路をフラフラと歩いていた。そんな私の前に見なれた後ろ姿が現れる。テリーヌだ。
彼女とは戦車道を始めてから知り合った仲だが、小隊長同士ということで話す機会も多く直ぐに仲良くなった。
「おはよーテリーヌ、今日の日替わりランチの内容覚えてるー?」
私の記憶では、確か今日は豚カツか鶏グリルのどちらかだった筈だ。
しかしそんな予想とは裏腹にテリーヌからの返事は、
「えっと...誰かと間違えていませんか?私、テリーヌなんて名前ではないのですが。」
ん...あれ?この声にこの顔、コイツは間違いなくテリーヌの筈だ。それともこの一晩のうちに他の誰かがテリーヌの顔と声を真似て整形でもしたのか。いやそんなまさかだ。
「いやいや、朝からそんな分かりにくいボケいらないって。それともこの前、アンタのピザの最後の一口食べたの未だ根に持ってるの?」
「あの、ホントに貴女とは今日が初めてなんですが...!!」
あっ...走り去っていってしまった。うーん、食べ物の恨みは恐ろしいなぁ。午後の訓練の時にでも謝っておくか。
少しの違和感を感じつつも、これからは最後の一口を貰う時は、事前に一言いってからにしよう。そう反省し、私は学校へと向かった。
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現在、4限目の授業中。昨日とまではいかないものの、やはりこの時間はお腹が空く。朝学校に着いて確認したところ、今日のランチは海鮮パスタだった。豚でも鶏でもなかったじゃないか。
そんなことを考えていると授業終了の鐘が鳴る。さぁ、しっかり昼食を食べて午後の戦車道に臨むとしよう。今日からは新しい作戦の練習だ。
廊下に出て食堂に向かう途中、一際目立つ小さな後ろ姿を見つけた。
「やっほークスクス、相変わらず小さいねー!今から食堂?」
「だーかーらー、そんな直ぐには背は伸びないって言ってるだろー!高校卒業するときには、理子の背丈なんか追い抜いてやるからな!」
「あはは、それは楽しみにしてるよ。ところで今日の戦車道の練習なんだけどさ、作戦で使うデコイが完成するまで似たような板使って実践した方がいいと思うんだよね。1両に何枚まで載せるかも決めないといけないし。」
昨日の帰り道にアンチョビ姐さんに聞いたことだが、マカロニ作戦に使用するデコイはまだ昨日私たち見せた1枚しか完成していないようだ。ならば完成までの間、似たような板で感じだけでも慣れればいいのでは、と考えていた。
「ん?ごめん、理子。ちょっと何言ってるのか分からないんだけど。戦車道ってあの戦車道だよね?確かにアンツィオにも戦車道チームはあったらしいけど、誰もやらないからって3年前に廃止になったんじゃん」
私は耳を疑った。戦車道がない?ならば昨日まで私たちが一緒にやっていた事はなんだったのか。
「は...ちょっと何わけ分からないこと言ってるのよ?アンタだからって流石にそれは怒るよ」
そこで私は朝のテリーヌとの会話を思い出す。
ーーー『貴女とは今日が始めてなんですが』ーーー
なんだろう、この嫌な感覚は。
そして追い討ちのように、クスクスは私がいま1番耳にしたくない言葉を口にした。
「そもそもアンチョビ姐さんっていったい誰よ?」
続きは明日にでも更新予定です。