「貴方...悪魔になる気はない?」
「え...」
事の始まりは昨晩の公園にまで遡る。
「とう!!」
満月の光に照らされながら一人の男がポーズをとっていた。今や知る人は100人に一人いるかいないかのヒーロー、ゼブラーマン!! ...のコスプレをしている市川新二であった。先程彼は化け物相手に戦って勝ったのだ。ヒーローたる者敵に勝ったらポーズをとるのはお約束である。
「正義のヒーロー...ゼブラーマ...あ。」
ふと視線に映ったのは一人の男の死体。恐らく先程の化け物に襲われて、殺されてしまったのだろう。幾ら夢の中(本人はそう思い込んでいる)といえどやはり人の死体を見るのはあまり気持ちのいいものではない。
「...すまなかった。」
そう言いつつ彼はその死体を埋めようとする。ここに墓を建てるつもりのようだ。もし一般人がみたらこのコスプレ男が殺人を犯して証拠隠滅の為に埋めようとしてると思ってしまうだろうこの光景。
「ねぇ...」
彼に声を掛けたのは一般人ではなかった。とっさに振り返る市川。暗がりでよく見えないが声からして女性。そして赤い髪。
「!?」
そこまで考えて気付いてしまった。今の自分の格好はコスプレ。そして殺人現場の近くにいる訳で...
「ぼ、僕じゃないですぅぅぅぅぅぅぅ!?」
夢の中(本人ry)だということも忘れて、一目散に自宅まで逃げ帰ってしまった。後に残ったのは一人の女性。
「...とりあえずこの子を助けるのが先決ね。」
そういって死体に近づくのであった。
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翌日。市川新二はいつも通り駒王学園の教室で一人寂しく座っていた。一つだけ違う点を挙げるとすれば学生かばんの中にはゼブラーマンのコスプレ衣装を入れていたことであろうか。
「♪」
あれから、彼は少しだけ自信がついた。夢とは言えど化け物相手に自分が憧れているヒーローになって勝ったのである。いい気分にならない方がおかしい。
「おいテメェ、何ニヤついてんだよ。キモいんだよ!!」ドカッ!
それが気に入らなかったのだろう。いつも通りいじめっ子たちが市川に暴力を振るう。蹴り、殴り、踏みつける。
「...っ」
「あぁ? なんか文句あんのか?」
睨みつけたところで何か変わるわけでもない。寧ろより過激に、より残忍になるばかりである。
「..っ...っ....」
嗚呼、結局変わらないんだな。ヒーローになれるのは夢の中だけ。現実は実に残酷である。『もう諦めよう』そう思った時だった。
「やめなさい、貴方達。」
救世主が現れたのは。
Side リアス
本当に彼が堕天使を倒したのか?兵藤一誠を悪魔に転生させた後、市川新二の様子を見た時第一に思ったことだ。気弱で、魔力といったものも感じられない。妙なコスプレが趣味という変わった人であるがそれ以外は普通...嫌、普通以下であった。そんな時だ。彼が虐められているのを見かけたのは。
「っ...やめなさい、貴方達。」
気が付くと私はそう声を掛けたのだった。
「あ? 誰に向かって...」
「兄貴!? こいつ...」
駒王学園の二大お姉さま。いじめっ子達の目の前にいるのはその内の一人、リアス・グレモリーであった。誰もが彼女に惚れてしまうほどの美貌を持つ彼女の前に彼らは
「「「「はい! やめます!!」」」」
市川に対する暴行を止めるのであった。そしてそそくさとその場を離れていくいじめっ子達。リアスは俯いている男に手を差し伸べる。
「ありがとう...ございます。でもなんで僕なんk「訳は後で話すから、今は私についてきて頂戴」うわわ!?」
市川はおずおずとその手を握るのだが、生憎急いでいる彼女はすぐさまその手を鷲掴みして力強く引っ張って行くのであった。
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「ここは一体...」
彼は一年生ということもあって旧校舎に部室があることを知らなかった。それ以前に助けて貰ったかと思えばいきなりこんな所へ連れてこられて訳が分からない様子だったのだ。
「あと一人ここに来るはずだから少し待ってもらえるかしら?」
「は、はぁ...」
そういってなすがままソファに腰かけられる。自分を連れた女性はそのまま別の部屋へと向かった(多分音からしてシャワーなのか?)。
「...」
とりあえず状況を整理しよう。彼はそう考えた。今いる此処は学園の旧校舎。先程自分をここまで案内した女性は確かリアス・グレモリー、集会などでちらと見た記憶がある。そして目の前にいる女の子。
「...」ジー
何故か物凄く見られている。ひょっとして前に何処かで会った事があるのだろうか? それとも自分の勘違いだろうか? どんなに考えたところで解る筈もない。故に彼がとった行動は
「えと...今日もいい天気ですね。」
とりあえず何か話題を振ることであった。
「...そうですね。」
とはいえ、コミュ障でもある彼はそれ以上何も言うことが出来なかった。というかあと一人来るってことはそいつが来るまで自分はこんな生き地獄を味わなきゃならないとうことか。というか何故自分はこんな所に連れてこられたのか全く身に覚えがない。早くその用とやらを終わらせて家に帰りたい。そう言った思考が彼の中に渦巻いていた。
「部長、彼を連れてきました。」
そんな時だ、もう一人が入ってきたのは。
「...」
市川はその男をどこかで見たような気がすると思い...気が付いた。
「!? お、おばばばばばばば...」
「ん? どうし「お化けェぇぇぇぇ!?」うぉっ!?」
彼は混乱していた。いきなり現れたのが夢の中で出てきた死人そっくりの出で立ちをしていたのだ。彼は死んだ幽霊が自分に呪いをかけようとしているのではと思い込んでしまい暴れ出す。
「悪霊退散悪霊退散悪霊退散!!」
兎に角その場に会った備品などを投げつける始末。
「うわ!? ちょ、おま!?」
リアスがシャワーを終えて出て来るまでこの騒ぎは収まることは無かった。
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「...すいません。つい取り乱してしまって」
騒ぎが収まって開口一番、彼はそう謝る。
「気にすることはないわ。私がちゃんと説明していればこんなことにはならなかっただろうし...」
「それで話って一体なんですか?」
先程物をぶつけられた男、兵藤一誠がそう質問する。どうやら彼も同じく訳が分からないままここに連れてこられた様だ。
「そうね...まずは一誠君。貴方は一度死んで蘇ったわ...悪魔として。」
「へ?」
いきなり告げられたのは衝撃の事実であった。
「昨日何があったかは覚えてるでしょ?」
「ええ...夢だと思っていましたが...」
夢...その単語に市川は引っ掛かった。昨日、ひょっとしてあれは夢などではなく
「そして新二君。」
「...」
「聞いてる?」
「!? は、はい!」
そこまで考えて声を掛けられた。冗談だと思いたかったが、それにしては目の前の女性の目は真剣そのもの。
ずっといじめられてきた彼は相手の目を見てどんなことを考えているのか大まかな事が解るようになっていた。だからこそ解ってしまった。どうやらアレは夢なんかじゃないことが。
「貴方...悪魔になる気はない?」
「え...」
そして、自分は大変なことに巻き込まれたことを理解してしまったのである。
To be continued...