そこには地獄の光景が広がっていた。ぶつかり合う二匹の強大な竜。逃げ惑う人ならざるもの達。大地は割れ、天は黒く染まっていた。永遠に続くかと思われた二匹の竜の戦いはしかし、ある者の来訪によって終わりを告げる
「天が呼ぶ...地が呼ぶ...人が呼ぶ...」
其奴は真っ暗な空から光を纏って現れて...
「貴様らを止めろと俺を呼ぶ!」
マントをたなびかせ、白と黒を纏いしその姿は絵に描いたような英雄そのものであった。
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「...うぁ、ここは...今のは...夢?」
「気が付きましたか?! 兵藤先輩!?」
先程の激闘によって気を失った一誠は、転送先であるオカルト研究部で目を覚ました。未だダメージから完全に回復していない体に鞭を打って、上半身だけ起き上がらせる。包帯が巻かれた痛々しい体は、彼が今どういった状態なのかを物語っていた。
「...俺は...くそっ!!」
そして痛みを無理矢理抑えながらすぐさま部室の外へと向かうのだが、部長が立ち塞がる。
「...通して下さい」
「駄目よ...私の眷属を死なせたくは...」
「眷属...眷属...って、確かに俺は部長の眷属として蘇った。けれどそれ以前に俺は兵藤一誠なんです! 女を見捨てる様な真似...例え神が許しても俺が許せない!!」
一誠は自分の思いを声に出して叫んだ。彼の言葉に思うところがあったのだろう。リアスの表情は少しだけ揺らぎを見せる。だが、それでも彼女は大切なものを守る為に立ちはだかる。
お互いに譲れないものがあるのだから、両者一歩も引こうとはしない。暫しの静寂に包まれた部室内、それを破ったのは...
「...部長。僕からもお願いします」
市川だった。彼も一誠の言葉に思うところがあった...否、それよりずっと前から、彼は何も出来ず仲間に迷惑を掛けていた自分が許せないでいた。
ならば迷惑にならない様に出しゃばらなければ良いだろう。という人もいるかもしれない。だがそういった結論を出せる程彼は大人ではなかった。純粋であったのだ。
「この前のはぐれ悪魔や、木場先輩の特訓で僕は如何に無力で出しゃばっていたのかを思い知らされました」
「だったら「でも」
彼の脳裏に浮かぶは一人の英雄。超人的な力は持ち合わせず、ただ普通のおっさんではあるが正義を思う心はヒーローのそれと同じ以上にあって。テロリストの一味と戦った彼にとっての憧れの存在。
「それでも僕は助けたい。困っている人を...助けを求めている人を救いたいんです。例え死ぬ様な事になってしまうとわかっていても」
彼は言った。ヒーローが背中を見せて良いのは守るべき人々だけだと。その人達を安心させる為にヒーローは戦っている...だから決して悪を背中に立たせる様な真似はしてはいけないと。
「どうか...お願いします!!」
市川は頭を下げた。虐められて、この部に迷惑を掛けて、親切にしてくれて、何度も下げた頭ではあるが今回はそのどれとも違う。彼は自らの意思を通す為に頭を下げたのだった。
部長の言う事はわかる。独りよがりな意見かもしれない。だけどこれだけは言わせて欲しいという彼の思いが今、ここで発せられたのだ。
「...解ったわ。そこまで言うのなら、私は止めやしない。だけどこれだけは言わせて」
彼女は二人の部員にたった一言、自分の意思を言うのだった。
「決して、死なないで」
「「はい!!」」
教会に連れ去られた少女を助ける為に、二人の小さな英雄が動き出すのであった。
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「...さーて、何処にいるかだな」
「何処にいるかって、どう言う事ですか?先輩」
部室を出た一誠と市川。飛び出して数分たった頃、ふと一誠がそんな事を呟く。因みに市川は既にゼブラーマンのコスプレをしている為か、シリアスな雰囲気の筈なのに色々台無しとなっているが突っ込んでは負けだ。
「あの時啖呵をきったは良いんだけど、実のところアーシアが何処にいるのか知らないんだよな...」
「...え」
それは非常にまずい。市川はそう思った。あれだけのことを言っておきながら、一度部室に戻って体制を立て直すなんて無様な真似出来るわけがない。両者の間に沈黙が走り、冷や汗が流れる。
「「(や、ヤバい...詰んだかもしれない)」」
「全く、様子を見に来れば案の定行き詰っていますね。お二方」
「「!」」
振り返ると見慣れた顔がそこには居た。
「塔城さん! それに木場先輩!」
「二人が心配だから様子を見に来たけど...子猫の言う通り案の定だったか...」
「そりゃあ場所が解らなければ...」
そう言い淀む一誠に対して二人は更に溜息を重ねる。そう、二人は重要な...敵の本拠地がモロわかるような出来事につい最近...本当につい最近遭遇していたのだ。
「...あれ? そういえばアーシアさんを送り届けた時のあの教会...」
「...あ」
色々と葛藤をし続けていた為に頭の隅に追いやられていたのだろう。二人はようやく思い出した。彼女に初めて会った時に自分達はどこへ行って案内していたのかを。
「「アレか!!」」
ようやくひねり出した新人二人の答えを聞いて、ついてきた木場と小猫は頭を抱えるのだった。
「(部長と副部長が様子を見に来いって言ってた訳が解った気がする...)」
「(一誠はともかく市川君まで...)」
部長と副部長を除く、オカルト研究部が教会へと向かう。ただ一人の少女を助ける為に決意を抱いた二人は拳を固く握り締め、大急ぎで向かうのであった。
「「ウォォォォ!!」」
「暑苦しいです...二人共」
「はぁ...全く、大丈夫かな。あの二人」
物凄く不安は残るが...
–オマケ–
一方その頃部長&副部長はと言うと...
「全く...どうしてもう...」
「あらあら、素直じゃないですね。本当は助けに行くつもりだったのでしょう? 二人はお留守番にして。それなのにあそこまで言われてしまいましたからね〜」
「なっ!? ちっ、違うわ?! そもそも悪魔は教職者を助けては...えーと、その...」
「ふふっ、では私達もそろそろ行きましょうか」
「ちょ、ちょっと!? 待ちなさい朱乃!!」
「(ほんと...頑固で一途なのですから)」
To be continued...
...はい、ゼブラーマンの名言を自分なりに解釈して書きました。その背には守るべきものの希望を背負っているから、彼は決して悪を背中に立たせないんじゃないかと...カッコつけですね。自分で書いてて恥ずかしいです。
※今作品で市川の知っているゼブラーマンは所謂漫画版のもの(主人公が逸般人ではなく一般人の方)です。映画版は存在していませんが、その理由に関しては追々。