ハイスクール白x黒   作:執筆使い

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第8話

 

 寂れた教会にて進められる儀式。鎖のようなもので少女が繋がれている。堕天使が不気味に妖しく微笑みを浮かべ、神父が醜悪な表情を晒しながら銃と剣の手入れをする。

 

 

「いよいよだわ...もう直ぐ...」

 

 

 堕天使...レイナーレは憧れていた。自分達を統べる総督と副総督に。彼らに追いつく為に様々な非道行為を行なった。神器を持つ人間...兵藤一誠を殺したのもその内の一つである。

 また一歩、あの方達に近づける。これから起こる出来事を想像しながら、天使の面影すらない笑みを浮かび上がらせる。そんな折に一人の人間が大急ぎで扉を開けてやって来た。

 

 

「はぁっ! はあっっ...申し上げます!! 教会に侵入者が現れました!!」

 

 

「何? それで...状況は?」

 

 

 まさかこんなところまで態々やって来る愚か者がいるとは。彼女は小さく舌打ちをしながら部下に状況の質問をする。

 

 

「侵入者は6名。内2名は別働隊らしく、教会裏にてミッテルト様、カラワーナ様、ドーナシーク様と交戦中! 残り4名は神父達を蹴散らして此方へと向かっています!!」

 

 

 ジャコン

 

 

 銃の手入れを終えた神父がそんな音を出す。

 そして瞬時に間合いを詰め、左手に持ったそれを首元に強く当てる。空いた手で首筋の後ろを抑えているので逃げる事も出来ず、苦しんでいた。

 

 

「...なーにやってんのお前ら? た、か、が、クソッタレ悪魔4人に手こずっちゃって恥ずかしくないのかなー?」

 

 

「ぐが...ふ、フリード様。ですが思ったよりも「黙れ」がっ!?」

 

 

 さらに当てる力を強める。

 

 

「例え神であろうと、足手まといは殺す。次は無いと思いな」

 

 

「かはっ...が...」

 

 

 パッと両手を離し首を切るジェスチャーをする神父。それを見た下っ端はすぐさま現場へと向かう。

 

 

「...さて、わたーしもそろそろ行きまーすか。悪魔君達が調子に乗ってるみたいだし。よろしいでーすか?」

 

 

「ええ...折角ここまで来たのよ。邪魔させるわけにはいかないわ」

 

 

 ..............................

 

 ....................

 

 ..........

 

 

 少し時間が進みつつ、場面は変わり教会外。たった4人の悪魔が数十人にも並ぶエクソシスト達を

 

 

「ゼブラスクリュー...パンチ!!」

 

 

 圧倒的なスピードで翻弄しつつ、相手をぶっ飛ばし

 

 

「セイクリッドギア、起動!!」

 

 

【boost】

 

 

 力を込めた一撃でぶん殴り

 

 

「魔剣創造」

 

 

 剣を出現させ目にも留まらぬ速さで周囲の木々ごと斬り伏せ

 

 

「...邪魔」

 

 

 華奢な体からは想像できない程の怪力を持って視界に映る全員を投げ飛ばす。その圧倒的な戦力の前では後から来た増援も意味をなさず、とうとう残ったのは最後にやって来た下っ端だけであった。

 

 

「く、くそっ!!」

 

 

 先程の脅しもあってか、彼は普段以上の力を発揮していた。

 

 死にたくない、せめて1人だけでも、もっと早く、もっと強く。

 

 彼の心をこの4つが数珠繋ぎの様に支配していたのだった。

 

 

「危ない?! くそっ!?」

 

 

「「市川(市川君)!?」」

 

 

 彼は一心不乱に市川目掛けて手に持つ光剣を振り回している。下手に洗練された剣術よりも、我武者羅に振り回した剣の方が苦戦する場合があるのだ。更に付け加えるならば、特訓していたとはいえ市川は戦いに関しては素人。故に間一髪で避け続けている。

 

 

「くそっ、下手に振り回してるからこっちも援護出来ねぇ!!」

 

 

「どうすれば...」

 

 

「先輩方、先に行って下さい!!」

 

 

 市川はそう提案する。自分達はアーシアを助ける為にここまで来たのだ。下手にこんなところで時間を浪費している場合ではない。だからここは自分に任せてくれと言ったのだ。

 

 

「なっ、だけd「良いから速く!! 先輩はアーシアさんを救いたいんでしょう!!」

 

 

 一誠は仲間を見捨てる事が出来ず、一瞬狼狽える。だが、市川の言葉を聞き、木場と小猫に急ぐ様言われて彼は...

 

 

「...わかった。死ぬなよ」

 

 

「ええ。正義は不滅ですから」

 

 

 3人はその場を後にして、市川が1人目の前の下っ端と対峙する。ああは言ったが、市川には目の前の男を1人で相手にするもう一つの理由が存在していた。

 

 

「くそおおお!? さっさと、くた、ばれぇ!!!」

 

 

 彼は嘗ての自分と同じだ。どうしようもないくらい弱くて、強い奴に逆らえず言いなりにされるがまま。やがて何が何だか分からなくなってただ我武者羅に暴れ回る。

 市川もそうだった。ストレスを拭う為、兎に角家の備品に当たった時期があった。だけど、ある特撮番組を見て変わったのだ。

 

 

「貴方の事情は良く解らない。だけど」

 

 

 彼は瞬時に光剣の間をかいくぐり至近距離まで詰めた。そして拳を突き出す訳でもなく、抱きしめた。

 

 

「貴方の気持ちは良くわかります...僕も貴方と同じ、いじめられっ子ですから」

 

 

「ぐっ...離し...」

 

 

 ジタバタともがいている事で、光剣が彼の背中に少しずつ傷を付けているが彼はそれでも離れない。そこに居るのは倒すべき敵ではなく、助けるべき人だから。

 

 

「大丈夫です...僕は何もしません」

 

 

「あ...あぁ...俺は...」

 

 

 気がつくと彼は手に持っていた剣を手放し、両手を市川の背中に置いていた。その目には涙...彼は戦う意志を無くした様だ。市川はポンポンと背中を叩き、安心させる。

 

 

「...俺は...俺は...おれh!?」

 

 

「!?」

 

 

 鳴り響く一つの銃声。光を伴った弾は下っ端ごと市川を貫いた。

 

 

「先ずは一人目〜」

 

 

「が、ふ、フリード...様?」

 

 

「いやー本っっっ当に使えねぇな、お前。今もこうやってクソッタレ悪魔に情けかけられてるしよ〜」

 

 

 神父は酷く歪んだ笑みを浮かべながら下っ端に冷たい視線を向ける。まるで人でないものを見るかの様に。

 

 

「まぁ良いか。こうやって役立たずごと、クソッタレ悪魔を1人撃ち抜けたんだからなぁ」

 

 

「がふ...あ、貴方は...」

 

 

 市川は右胸を撃ち抜かれていた。急所ではないといえ彼は悪魔である。対悪魔専用の光の銃弾をまともにくらい身体が動けないでいた。

 

 

「あぁ...くそ...結局...俺...僕は...」

 

 

 下っ端は左胸を撃ち抜かれていた。彼が人間であっても、急所を貫かれたらひとたまりもない。やがて自分の死を悟ったのか、彼の脳裏にはこれまでの思い出が浮かんでいた。

 

 いじめられっ子として学校生活を送っていた自分

 

 そんな自分を変えようと、教会と呼ばれる場所に自ら志願した自分

 

 彼が思い描いていたものとは違い、戸惑いながらも結局抜け出す事が出来ずにいた自分

 

 いじめられた時と同じように、ただただ使い走りの汚れ役をしていた自分

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後にヒーローに出会えて、幼い頃の夢を思い出した自分

 

 

 

 

「あ...りがとう...ヒーロー...僕は...」

 

 

 涙を流しながら、笑顔を浮かべながら彼は冷たくなっていく。その手を握りしめ、彼はゆっくりと瞼を閉じていった。市川は彼を横たえさせる。

 

 

「やっぱ役立たずは役立たずだったな〜、悪魔に向かってありがとうなーんざ、馬鹿みてぇ!!」

 

 

 その言葉が彼の引き金となった。仮面の下に隠すは怒りと悲しみ、拳を握りしめ彼は立ち上がる。

 

 

「...」

 

 

「おやおやぁ? まーだ立ち上がるのですか? しぶといですねぇ悪魔ってのは」

 

 

「...っ!!」

 

 

 視界から消えたヒーロー、次に現れた場所は

 

 

「ぇ?」

 

 

 神父の目の前だった。離れていたとはいえ、完全に油断していた彼は市川の拳を無防備に顔面で喰らってしまう。

 

 

「!?!??????!」

 

 

「...こいつは先輩の分」

 

 

 一瞬の混乱と衝撃による思考停止。彼がその状態から立ち直り、吹き飛ばされた体を踏ん張って体制を立て直した時には既に目の前に市川が拳を構えていた。

 

 

「調子に...」

 

 

 光剣を横薙ぎに振るう神父、だが市川は両足を屈ませしゃがむ事でこれを回避。だがそれをも読んだフリードは銃の撃鉄を引いて市川に向ける。

 

 

「乗るなぁ!!」

 

 

 だが引き金を引くよりも速く、しゃがんでいた足を元に戻しその勢いで弧を描きながら神父の顎に拳をぶつける。所謂アッパーカットを喰らったフリード・セルゲンは縦方向に回転しながら上空へと飛ぶ。

 

 

「ごふぅ...が...くそ...」

 

 

「これはアーシアさんの分」

 

 

 神父は訳が解らなかった。本来ならばたった4人の悪魔を弱い奴から1人ずつ消すつもりだった。だから一番ひ弱そうで潰しやすい奴を狙ってみればどうだ?吹っ飛ばされているのは自分。

 

 

「何故だ...何故私がクソッタレ悪魔如きに!!」

 

 

 彼は叫んだ。格下相手にこうも圧倒されるというのが彼にとって我慢ならない事だったから。けれど叫んだところで運命が変わる訳がない。

 

 

「そしてこいつが...」

 

 

 彼の失敗はたった一つ。シンプルな答えである。

 

 

「お前が殺した奴らの分だ!!」

 

 

 それは、ヒーローを怒らせたという事。

 

 

「ゼブラボレーキック!!」

 

 

 落ちてくるのと同時に回し蹴り。途轍もない激痛が神父の体を駆け巡り、彼は気絶した。

 

 

「威力は抑えた。この痛みを一生忘れるんじゃねぇ、ゲス野郎」

 

 

 市川新二...ゼブラーマンは静かにそう呟く。

 

 

 ..............................

 

 ....................

 

 ..........

 

 

 教会へと続く道の端に建てられた一つの墓。遺体を埋め、小枝で作った十字架を刺しただけの粗末なものである。市川はその墓に手を合わせる。

 そして教会へと向かうのだった。

 

 

「あばよ...もう一人の俺」

 

 

 ヒーローは決して涙を流さない。悲しみを胸に仕舞い込み、ゼブラーマンは敵の本拠地へと向かう...

 

 

 To be continued...

 

 

 

 

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