並行世界から来た空戦魔導士   作:白銀マーク

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15話 勝利をつかむために

 訓練グラウンドの一角に距離100m先のレールの上を走る疑似標的。それを狙うものが一人、魔宝剣を腰だめに構え、その標的に向かって撃ち出された魔砲は、それよりもはるか手前の岩塊に直撃する。

「だから無理だって言ったでしょ?」

 そう言って別の人物が一人、魔砲を放った人物よりもさらに後ろの射撃ラインで腕を伸ばした状態で魔砲剣を片手で構え、先の人が外した目標に狙いを絞り、発砲。放った魔砲は目標に吸い込まれた。

「当たりそうな気がしたんだもん」

 少しすねた声で答えたのはミソラ。射撃を外したのも当然ミソラだ。

「初心者が偏差射撃なんてのは無理。まぁ、センスの問題もあるけども」

 そう言い放ち、着弾点となる岩塊に視線を飛ばすのはアキラだ。

 なにがあったかというと、訓練を始めたまではよかったのだが、ミソラが偏差射撃をする言いだし、アキラの制止を振り切り、現在、20発目外したとこなのである。大きく空回りをして、結果として空想と現実の差にうなだれているのだ。

 ミソラへの個人レッスン一日目は座学。まったくのお門違いのところへコンバートさせたのだから、それなりの知識を叩き込まなければならない。アキラとのマンツーマンレッスンで、かなり嚙み砕いて、それこそ子供でも分かるくらいにはして教えたのだが、ミソラにはチンプンカンプン、挙句の果てに疲れか居眠りを始める始末。居眠りするたびにムッとしたミソラが見栄を張ったが、アキラの鋭い質問に答えることができず、結果、沈黙してしまう。

「ね、ねぇ‥‥‥、あたしがこのまま魔法権を使い続けて強くなれるって、本気で思ってるの?」

「そんなに心配しなくても大丈夫」

 標的の設定を変え、固定目標にする。

「僕やカナタが付いてるし、練習は裏切らない」

「あんたは当ててるじゃない」

 ミソラは素質があるのではないか、そう伝えたいのだ。

「努力もなしに当たるのは才能か計算。で、僕の場合は後者だよ」

 そういいながらミソラに標的を狙うよう指示する。

「僕も、何の計算もなしにこの武器を使ってはいないよ。最初は重さ、長さ、弾速、その他もろもろ。調べたし、実践して、計算して。そうやって魔砲剣を使ってるんだ」

 ミソラが発砲している間、独り言のように話しかける。

「けど、僕みたいな人は少ないよ。ある意味変態染みた性質だからね」

 標的を直したりしながら、話を続ける。

「普通は練習。おんなじことの繰り返し。当たること、外すことに一喜一憂しながら、射撃系の人たちは頑張るんだよ」

 初めて、アキラが自分のことを話してくれた。

 普段、アキラは己を語らない。それは自分の記憶がないから。けど、体に染み付いている癖は記憶がなくても忘れたりはしない。それはつまり、体は覚えているということ。だから、これだけは明確にアキラの持っている記憶となる。

「さて、ミソラ。これ、付けてみて」

 アキラはミソラに、照準器(サイト)を手渡した。

「なんでこんなオモチャ?「一発も当たってないのに文句言うんじゃありません」うぅっ‥‥‥」

「さ、狙いをつけて」

 そう言われ、固定目標に照準を合わせる。

「ちゃんとできるわよ?」

「そりゃできなきゃ困るよ。照準器(サイト)覗いてるんだから」

アキラはミソラのすぐ後ろに回りながら答える。

「まぁ、動く的になれば変わるんだけど。んで、そこからさらに手振れとかの補正を加えることになるから」

 あたりに、ミソラとアキラ以外に学生はいない。

「そのまま前に」

 二人は射撃ブースを乗り越え、射撃練習場の中に。

「はいストップ。もう一回照準器(サイト)、覗いてごらん」

「うーん、大きくて、全体入らなくなったわよ?」

「それでいいの。その距離が基本的な距離ね。その距離で引き金を引くようにするんだよ」

 あと、と付け加える。

「相手の背中、まぁ、後ろだね。相手の後ろをとるっていうことは覚えてほしいかな」

「こんなこと、射撃系の人たちはみんなできるんじゃないの?」

「みんなかどうかは分からないけど、できるんじゃないかな?」

「なら「でも、ミソラはできてないから。だからスタートはここから。偏差射撃とか、最初からしようとするのが間違いなんだよ」・・・偏差射撃って?」

「・・・昨日説明したでしょ?」

「だから、それに付いては誤ったでしょっ! 居眠りしててごめんなさいってっ!」

「あれは逆切れだった気がするけど、まぁいいや」

 もう一回説明するよ、と前置きを置いたうえで

「偏差射撃っていうのはね、発射から着弾までのタイムラグの間に目標がどう動くかを予測して、その予想位置を狙って射撃する事。まぁ、動いてる相手に球を当てる技法のことだよ」

 今のミソラじゃ無理だけどね。追い打ちはしっかりと。

「で、でも、あたしがそれできないと次のランキング戦、怪しいんでしょ?」

「そうなんだよねぇ」

「ひ、他人事みたいに言わないでよっ!」

「そんな不安そうな顔しない。僕とカナタで勝てる手段はしっかり用意してるからさ」

 (まぁ、ミソラの戦闘面での成長が必須なんだよねぇ。身体能力は高いのになぁ)

「でも、やっぱりミソラが偏差射撃できるってのが条件として挙がってくるから、今日から四日間、みっちり砲撃練習に当ててもらうからね」

「い、一応頑張ってるじゃないのっ!」

「知ってる。でも、魔剣術の練習、あれは当分しなくていいから、しっかり砲撃練習に当ててね。なるべくそばにいるようにはするけど、臨時的に教官の補佐だから。レクティのとこにも顔を出さないとね」

「リコはどうするんのよ?」

「彼女は・・・試合に出るよう、説得するところから、かな」

 ちょっと思案するような仕草をとった後。

「小隊の長として、仲間を気にかけるのはいいことだけど。今は君が勝利のカギを握ることになるんだ。秘策の一つぐらい覚えてもらわないとね」

 ポッと出の全然知らない、裏切者を信じる人間。信用はできない。しかし、秘策という言葉に目を輝かせて、何度も、何度もどんな内容なのか尋ねてくる。

 そんな時だった。全校放送のスピーカーから響き渡る。

『S128特務小隊(ロイヤルガード)空戦魔導士科(ガーディアン)本科二年クロエ・セヴェニー。放送が聞こえていたら直ちに空戦魔導士科長(ガーディアンリーダー)の執務室に来なさい。繰り返します・・・・・・』

 この放送が、のちに不幸を呼び込むことになることを、今の《ミストガン》にいる人は誰も知らない。




 いやぁ、APEXって楽しいですねぇ。おかげでサボっ・・・・・・ゲフンゲフン、筆が載らなくて。
 なかなかに期間を開けましたが15話目です。早く続きが見たいと思った方は催促コメント、よろしくお願いします。
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