結構長ったらしいですが、ゆっくりしていってください。
それではどうぞ!
学園浮遊都市≪ミストガン≫の飛行高度はおよそ3000メートル。その高度よりも高く飛こうすることは、動力炉に甚大な影響を及ぼすため禁止されている。
そんな≪ミストガン≫のさらに上空――――高度4000メートルの第三訓練空域にミソラたちの姿があった。地に足がついた状態でもなければ、何かしらの道具の力を借りているわけでもない。四人それぞれが防護服(プロテクター)を纏い、滞空しているのだ。空戦魔導士科(ガーディアン)の必須スキルである飛行魔術を駆使することで。一人は違うようだが……。
そんな彼らの周囲に広がる光景は、どこまでも続くかのように見える蒼穹(あおぞら)と端々に見える雲海に加えて、隣接する空域でこれでこれまた連携飛行の訓練に励む学生たちも姿と、眼下に広がるのは、先ほどまで自分たちがいた≪ミストガン≫。豆粒ほどではないがすごく小さく見える。
「なんであんたらは<ホウキ>を使ってるの?」
防護服を纏ったミソラが首をかしげながら尋ねた。宙空を浮遊する五人の中で、アキラとカナタは、サーフボードのようなものを使用していた。
<ホウキ>と呼ばれる飛行補助道具は、新入生の飛行魔術の訓練に使われたりする。実際は長距離移動する際に使用する際に使用するのだが、
「ん? ああ、俺はこれに慣れてんだよ」
「僕はまだうまく飛べなくて。今回だけ使わせてもらうよ」
「アキラは仕方ないか。今日入学したばっかりだもんね」
「一応昨日なんだけど。少しだけ練習したけど、どうしても理想の形まで行かなくてね」
「それはいいけど、何であんたが<ホウキ>使うのよ? まさか飛行魔術なんか使う必要ないって意味?」
「深い意味はねーけど。まあ、このくらいのことでなら使わずに勝てるけども」
「ぐぬぬ」
どうにか怒りをこらえて、本題を聞き出す。
「で、どんな訓練するのよっ!」
「言ってなかったな。今日の訓練は鬼ごっこだ」
それから初の実習がはじまった。
「……この魔装錬金(ミスリル)武装で、殴っていいって条件で四対一って……なんでかわからないけど……なんか腑に落ちないな」
アキラのモヤモヤ。武器を使って四対一で相手を攻め落とすこの条件が、アキラの胸にモヤモヤを落としていた。
その間に、カナタとミソラ、レクティ、リコが訓練している。
ミソラはまるで丸太でも振り回すように白い魔砲剣を振り回している。豪快な風圧で大剣が、カナタの頬を撫でる。
しかし、その剣劇は見切っているかのように首を軽くひねり、カナタは避ける。
『ぶんぶん振り回すんじゃなくて、もっと鋭く振ったりでねーのか?』
『うっさいわねっ! とっとと落ちなさよっ! この裏切り者がっ!』
正直、剣技はお粗末すぎて目も当てられない。しかし、剣技よりも光るものがある。アキラとカナタはそう判断した。
カナタが<ホウキ>のギアをトップギアにあげ一気に間合いを取る。カナタは近接封じ(クロスペイント)で、相手と同じ方向に加速し相対速度をゼロにすることで相対距離縮めさせない戦術――つまりミソラはカナタに近づけないはずだった。いくら腕のいい剣士でも距離を詰めれなければ近接武器を使う者、手も足も出ないはずだった。
しかし、ミソラは一気に距離を詰めた。
「なにっ! 一気に詰めるなんて、そんなことを間隔でやってのけたのかっ! ……反応速度、風の操り方が感覚的に判断して加速、一気に距離を詰めたのか……」
実際にやってみると難しい物なのだ。風向き、抵抗、風速がわからないとうまく加速できない。
カナタの口の端が不敵に吊り上る。
「とっとと落ちろって言ってんでしょっ!」
連続する剣戟をかわしながらながら相手の力量を図ってるらしい。次の行動はアキラも度肝を抜かれた。
「ここまで高い飛行技術を持っていてこんな簡単なフェイントに引っかかるのか! ……いや、無理もないか」
あそこまではやい速度での小回りはアキラもカナタもできない。いや、普通に考えてできる技じゃない。
フェイントに引っかかったミソラは放置して、カナタはレクティと向き合った。
「おぉ、二刀流……いや僕のスタイルとは違うな。武器が両刃だから手数が多い。女性向けの戦い方かな」
アキラの観察続く。
カナタがタガーを一本展開して応戦する。
「アイゼナッハ流か。資料見といてよかった。この流派の動き方を知ってる……のか?武器は違うはずなのに……。なんなんだ? この感覚……僕は、あの流派のなんなんだ?」
気にしたら頭が痛くなってきた。考えるのはよそう。
アキラはそう考え今のところ何もしていないリコに目をやった。
魔銃を構えて狙いを定めている。
と次の瞬間、カナタと刃を交わらせているレクティに、魔弾を放った。
「……!? 直撃コース!? くっ!」
アキラは腕の筋力に魔力付与(エンチャント)して、魔砲剣を一線。腕を高速でふりだし、制限(リミット)スキル、白閃(はくせん)を放った。
白い高速の刃は、リコの放った魔弾を容易く破る。
「何考えてる! レクティの動きが少しでも予測経路を外れたら直撃だぞ!」
『レクティの動きは洗礼された動きだ。それを読んで狙撃するのは容易い。ゆえに外すなんてありえない』
『今の動き、打合せしてたか?』
『……は、はいっ! す、すごくこわかったですっ!』
「もう少し隊の仲間を信じなよ。連携の欠片もないじゃないか」
『文句ばっか言ってないで、アキラも参加してよっ!』
「ごめん。今いけない。あと少しなんだ」
『なにがよっ!』
「理想の飛行ができそうなんだ。……よし、今いく」
言い訳に過ぎない。実際は三人の実力を遠くから図っていた。
<ホウキ>から降りて、三人のところに急行した。
「なに軽くあしらわれてるの……」
「うるさいわねっ! あんたもやってみなさいよっ!」
「分かった」
魔砲剣を何もない空間からさもあったかのように出す。
「……しっくりこない……。言い訳してもしょうがないから、行くよカナタっ!」
「おう」
できるだけ小さく、それであって最大限に相手を攻める剣技。戦技とは違う、その流派の特徴のような動き。
「アキラ、お前……っ!」
「おもい……。特にしっくりこないし重い武器だとなおさら」
砲撃しながら全力で追いかける。アキラの使い方に違和感がありさらに行動が一定していないということもあり、カナタ側もいろいろと考えあぐねているようだ。
そこで、アキラが重さに耐えられなくなった。
「あーもう重いっ!」
ダガーを二本展開する。長さは……短い。刃渡りが手一広分しかない。その間に、魔砲剣はかたずけた様だ。
「こっち使うよ。さすがに体重のない僕にはウェイト代わりになるものがないとうまく使えない」
「いいぜ。来いよ」
そこからはカナタは防戦一方だった。ゆっくり動いているように見えて実はとても速く動いている。そう見えるのは残像のせいだ。その残像も必ずに方向ある。
「なんでお前がFランク小隊にいるんだ?」
「資料見たと思うんだけど。それ見たらたぶんわかると思う」
その間も剣戟を紡ぐ。まるでダガーのみが舞っているようだ。
『みたよ、お前の資料。でもな、お前に関することは入学動機説明のしかないんだ』
「そういうこと。僕自身が僕を知らない。あと、個々のいる理由はその説明でわかると思う」
「で、そろそろやめね? 俺疲れたわ」
「いいよ。僕もこんなところで長期戦やる気はないよ」
ダガーが舞うのをやめた。
『今日の訓練はしゅーりょー。着替えて解散な』
『ちょっと、何でやめるのよっ! あたしはまだ元気なんだから、捕まえるまで訓練するのよっ!』
『もう俺疲れたんだけど……』
そこからミソラの満足いくまで訓練が続いた。