ええ、何が言いたいかというとキャラ崩壊が!キャラ崩壊が!
赤い弓兵は驚愕した。
あの青い槍兵が姿形もなく消え去った事─恐らく、令呪による転移─もだが、それ以上に槍兵をまるで玩具の如く遊んでいたその男の方に驚いた。
自分の薄れた過去において、命を奪った相手をいとも容易く嬲られる光景を見せつけられる、こんな屈辱的な場面は早々ない。
そもそも、彼女が召喚されるはずではないのか?
薄れた記憶の中に明確に残っている彼女の事。
しかし、青い槍兵と戦ったのは民族衣装に身を包み、とても美しいとしか言いようがない青年だった。
そして、彼と目が合う。
殺気、それも数多くの憎悪を向けられた事のある自分ですら意識を手放したくなる程の濃いものを青年は発してきた。
「凛、ここから先は危険だ」
彼は本能からそう呟く。
自身の中の経験から分かる事は、あれ程の化け物には未だ嘗て出会った事がないという事だった。
◇
「カカカ、これははずれを引いたかいのう」
アヴェンジャーはとてもつまらなさそうに独り言を洩らす。
今まで数多くの死闘をを繰り返し、英霊の座へと到達しても尚身体は死闘を欲している。
死闘をするためだけに騎士王の横入りをして、この聖杯戦争に参加したアヴェンジャーであるが、今まで出会った敵を思い浮かべ、自身より強い者どころか、特A級の達人すらいないのではと思うほどだ。
「おい!大丈夫か!」
「なに、我はあの程度の武器使いにやられる程弱くはないわい。
小僧、次の死合いは純粋な虐殺を見せてやるわいのう!カカカカ!」
アヴェンジャーは跳躍をし、塀を乗り越えて行く。
「くっ!」
「アーチャー!?」
聞き覚えのある声が聞こえた気がした。
「遠坂…?」
◇
アヴェンジャーは一手交えただけで数多くの事に気付いた。
目の前にいる弓兵が、自身を召喚した小僧の成れの果てである事が一つ。
それ以上に驚く事は、この弓兵は達人へ至るには必ずしも必要な才能を持たず、二刀流の達人へと至っている事だ。
「カカカカカ!よもや風林寺のじっさまの弟子と同じような武人がこんなところに参加しているとは!だが、達人に一歩だけ手が届いてるような実力では、我の相手ではないのう」
瞬間、全ての技撃軌道がアヴェンジャーによって制圧される。
弓兵は自身の敗北と同時に死を悟る。
プンチャック・シラットの奥義、
「やめろアヴェンジャー!」
瞬間、アヴェンジャーの身体は自分のものではないかのように動きを止める。
如何に邪神といえど、生前一度も触れた事のない魔術には対抗できない。
「小僧、我の死合いに横槍を入れるとは余程死にたいらしいのう」
「ちょっと!あんたサーヴァントならマスターの言うこと聞きなさいよ!」
「聞く耳持たんのう」
生前、自身の死合いに横槍を入れるなどと無粋な事を行なった者は一人もおらず、逆らう者は容赦無く命の果実を摘み取ってきたアヴェンジャーだ、マスターを殺す事くらい造作もないだろう。
しかし、マスターがいない状態で現界できるような魔力は持ち合わせいない。
その事が彼がマスターを殺すのを躊躇させた。
特上の死合いを求めて聖杯戦争に参加した彼は、自分より格下の敵としか死合っていない。
それどころかその死合いはどれも満足の行くものではなかった。
「小僧、我の気が変わらないうちに話をつけるが良い」
その言葉に少年は言葉で解決できたと喜んだ。
自分のマスターの壊れ具合は、邪神であるアヴェンジャーをしても興味深く、彼は一つの考えに辿り着く。
小僧をより壊したい。
◇
冬木にある教会。
神父の名は、言峰綺礼という。
彼から聖杯戦争について詳しく聞いた少年は、何を思ったかこの聖杯戦争を終わらせると宣言をした。
「カッカッカッカッカ!それでこそ我がマスターじゃ!面白い!面白いわいのう!」
その壊れ具合は、外道へと堕ちた自分を遥かに上回るかもしれない。
だが、アヴェンジャーは邪神へと至った事を考えれば堕ちたのではなく昇ったのかもしれないが。
「アヴェンジャー、お前も俺に協力してくれると嬉しい」
「我の死合いに横槍を入れた事を帳消しにする程度じゃわい。
我はあくまで血肉踊る死合いがしたいだけじゃわいのう」
しかし、アヴェンジャーは思うのだ。
これだけ面白いものを見せてくれるこの少年、死合いに横槍を入れるなどの失態は犯すが、それを釣り合いにしてもそこそこ面白い存在ではないか。
アヴェンジャーは確かに邪神へと至った男だ。
しかし、彼は救国の英雄でもあり、その側面を秘めている彼から英雄の側面が見え隠れしても何もおかしくはないのだ。
そして、神へと至った二人の男が戦うこととなる。
自害せよランサー(挨拶)
感想欄で指摘がありまして、お詫びに更新しました。
ですので続きません。