はてさてどうなることやら!
ご覧ください!
キーンコーンカーンコーン…
昼休み始めのチャイムが鳴り、教室は笑い声が溢れていた。
「ったくよー友子。お前そんな話信じてんのかよー?」
五木が呆れた顔で四俵に話しかける。
「幽霊は実在してて、その中の悪い霊は私達に牙を向くんだよっ!」
「あ、それ昨日テレビで言ってたよな?
<恐怖の異次元空間>だっけ!?」
二岡が口を挟む。
「そう!幽霊の力によって時空や空間を捻じ曲げるの!!」
三人の話が盛り上がっていると、後ろにいる一丸がよろめきながら歩いてきた。
五木が一丸に気づき、声をかける。
「お?どうしたよ一丸!飯食わねぇのか?」
「おい…今日は何月何日だ…?」
「あ?」
周りは気づいていない。
「今日は何月何日だ…?」
「何言ってんだお前?」
「今日は何月何日だ!答えろ!!」
教室内は一瞬静まり返ったが、すぐに賑やかさを取り戻す。ようやく会話に気づいた二岡と四俵は一丸を見つめる。
「変な奴だな…十一月十一日だ。それがどうした?」
少し怒り気味の五木が一丸を睨むが、一丸はそれ以上の鋭い眼光を放っていた。間もなく、一丸の目は大きく見開かれた。
「ありえない…十一月十一日なわけない…!」
いつもとは違う一丸の雰囲気に三人は戸惑うばかりだ。二岡が立ち上がって、一丸の肩を叩く。
「まぁまぁ飯一緒に…」
「三井達は何処だ!?」
「え?あいつら?知らねぇよ…?」
「あ!一丸くん!」
三人が困惑しているところに、六条が飲み物を持って戻ってきた。
「あ、ああ六条か…」
「三井さんと七尾さんが相談があるって!場所は…」
「三井達は何処だ!?」
「な、中庭だよっ?」
「わかった、ありがとう!」
そう叫んで一丸は教室を飛び出していく…
「どうしたんだろ…?」
六条が困惑しているところに五木が後ろから声をかける。
「んな事より六条!一緒に飯食おうぜ!!」
「う、うん!」
教室には真昼の日が差し、皆の顔を照らし出していた。が、六条の微笑みは少し陰ったようにも見えた。
一丸は走っていた。中庭をめがけて廊下を全速力で走っていた。途中、先生の怒号がとんでも一丸は走り続けていた。初めて繰り返す十一月十一日。これは夢だ、そう言い聞かせたがダメだった。三井と七尾の言っていた通りになっている。もう何がなんなのかわからなくなっていた。
「三井!七尾!!」
上履きのまま、一丸は中庭へ飛び出して、見えてきた二つの人影に叫んだ。
「修司!!」
三井が震える声で叫ぶ。息急き切って、一丸は言った。
「どういう事だ!説明してくれ!!」
「私達にもわからないの!」
七尾も我を失いかけている。
「気が…狂いそうだ…!」
「あなたは一回繰り返しただけだけど、私達は二回よ!?あなたの倍おかしくなるわ…」
「修司、信じてもらえたよね…?」
「…ああ。」
場に重い空気が張り詰める。顔は三人とも無だった。生きる気力を失いかけている。
「やっぱり…修司の言う学校の七不思議なのかな…?」
三井が聞いた。
「そんな馬鹿な…!」
一丸と三井が話し始めたその時、
「…昨日も誰か死んだのかしら……」
二人は身震いした。そのとんでもない台詞は七尾の口からだった。石像のように固まっている七尾を、二人は真顔で眺めた。こんな固まった七尾を見た事がなかった二人は、本当に怖かった。
「ご、ごめんなさい。そんな事考えちゃダメよね…」
すっと我に返り、謝る七尾。今までの表情がまるで別人のようだったかのように無理矢理笑顔を作る。とりあえずゆっくり話そうとした時、
「みっちゃーん!まきちゃーん!!」
四俵の声とともに、他の皆も集まってきた。
緊迫した雰囲気に突然の光。緊張が抜けて呆れと不安が三人に押し寄せた。
「大集合だな…雰囲気ぶち壊しだ…」
「お?どうしたよ?ぱ・ぱ・んくーん!」
二岡が駄目押しとばかりに三人にさらに不安を与える結果となった。勿論、他の皆は腹を抱えて笑い転げているのだが。
「一丸くん。皆に伝えた方がいいのかしら…?」
七尾が頭を抱えた一丸にそっと話しかける。
「あ、ああ。僕から話そう…」
「修司、ごめんね…」
「気にするな。」
三井の肩を一回なだめるように叩いた一丸は、二岡を睨みつけた。
「あ、悪かった!その…つい出来心で…」
「いや、そこじゃない。お前、何故僕をぱぱんと呼んだ?」
「え?なんでって…?」
「皆もだ。何故ぱぱんで笑った?」
一丸の質問に皆は驚きを隠せない。
「え…あ!昨日第二家族の話したじゃん!」
四俵が言い返す。
「それは何月何日の話だ?」
皆また困惑の表情。今度は五木が言い返す。
「またそれかよ?だから!昨日は十一月十一日だって!」
「え?今日が十一月十一日じゃねぇのか?」
二岡の言葉に皆が固まる。
「あれ?変な事言ったか?」
本人は気づいていないようだが…
「おかしいよ…十一月十一日が続いたよ…」
六条が恐る恐る二岡に言う。四俵が三井に声をかける。
「だって昨日、武志くんの退院祝いやろうって話したよね…?」
「うん、その話は確かにした。十一月十一日の放課後にね…」
「繰り返されてるって事!?」
「そうなの。けど原因はわからないわ…」
七尾が口を挟む。
「とにかく…おかしくなっているのは確かなの…」
三井の言葉に固まる一同。それぞれが顔を見合わせ、自分たちが置かれている状況をなんとか理解しようとしているのだが…
「あり得ないあり得ないあり得ないあり得ない!!」
「ちょっと修司落ち着いて!冷静になって!」
「そ、そうだよ一丸くん、らしくないよ!」
「これが落ち着いていられるか!?いや…無理だな…!」
怒鳴る一丸に、三井と六条がそばに駆け寄る。ここまで一丸が追い詰められている様子を見るのが初めての皆は、さらに不安になった。
「友子…何が起きてんだよ…?」
「私にもわからないよヒロ!」
「でも私達皆覚えてるから、夢じゃないわ…」
「七尾の言う通りだな…これはヤバイぞ…」
「二岡くん…心当たりはある…?」
「わ、わかんねぇよ!」
「あ…!まさか…!!」
全員が声の方を見る。
「友ちゃんどうしたの…?」
「みっちゃん…私分かったの…繰り返している原因が…!」
「本当か友子!?」
「武志くん…?」
「え!?僕じゃないよ!」
「確かポッキー持ってきてたよね?」
「う、うんそうだよ?皆で食べようと思って…」
「それだよそれ!ポッキー!!これはポッキーの呪いだよ!!」
場が別の意味で凍りついた。
「四俵さん、小学生じゃないんだから…」
「真紀ちゃんの言う通りだよ…いくらなんでもそれはね…」
三井と七尾は呆れ果てていた。六条も一丸の肩を支えながら、溜息をついた。
当然、二岡と五木も…
「ポッキーの!?」
「呪いだと!?」
「やっぱり!健ちゃんとヒロはそう思うよねー!!」
三人の目線がさらに下がる。こんな状況で盛り上がることが逆にすごいと思う三井、六条、七尾であった。しかし、原因はわからないままだ。だとしたら本当にポッキーの呪いなのか。そんな事をふと思ってしまい、顔を見合わせた三人だが、すぐ首を横に振った。そしてずっとうずくまっている一丸を見つめ、不安を募らせる。
「呪い…?呪い…呪いだと!?」
突然一丸が立ち上がる。
「えぇ!?」
「修司が!?」
「食いついた!?」
介抱をしていた三人は唖然とした。一丸は盛り上がっている三人の輪の中へ入っていった。
「修ちゃん!?」
「お前ら、さっき昨日見たテレビの話をしていたよな?詳しく話せ!」
「え?あ、ああ。悪霊ってのはな、時空や空間を捻じ曲げるらしいんだ。」
「そ、そう!例えば、普通だったら一時間の道を一分で移動したりとか!」
「成程…時空や空間か…」
「おい、一丸。何かわかったか?」
五木が一丸を興味深そうに覗き込むが…
「いや…わからない…」
また一丸は考え込んでしまった。結局原因はわからないまま、七人はさらに迷走状態に入ってしまった。このまま戻らないまま永遠に繰り返すのか…誰もが絶望を覚悟したとき、一丸が何かを思ったように口を開いた。
「気にしなければいいのさ…」
「修司…?」
二岡が心配そうに声をかけるが、一丸の顔は落ち着いた顔に戻っていた。
「どうせすぐ、変わらない日常に戻るんだ。それまで待てばいい。」
冷静に戻った一丸の口調は相変わらずキツかったが、皆の心を落ち着かせた。
「そ、そうよね。気にしなければいいのよね。」
七尾も冷静に戻って皆に言った。
「冷静に考えればすげぇよな!?俺達同じ日を繰り返してるんだぜ!?」
励ますようにも見えた二岡を見て、皆は笑顔を取り戻していった。四俵もこれに続く。
「確かに!私達は不思議な時空に迷い込んだの!そこにあるのはホラー?ロマンス?はなまたファンタジー!?」
「友子!それはねぇだろ〜!」
「友ちゃんったら!」
「サイエンスフィクション!SFのせかーい!」
「お、面白ぇ!おい、六条もそう思うよな!?」
「もう!僕にはわからないよ〜!」
そこには変わらない皆の笑顔があった。そう、すぐ戻る。それまで楽しんで待てばいい。皆には苦しみは消え失せていた。昼休み終了のチャイムが鳴ったのも忘れ、七人は中庭で盛り上がっていた。少し離れた一丸は、七尾と顔を見合わせ、はしゃいでいる方を見ながら呆れ調子でクスッと笑った。
少し西に傾いた太陽は彼らを見守るように輝いていた。その近くの黒雲が闇を持って近づいているとは知らずに…。
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キーンコーンカーンコーン…
昼休み始めのチャイムが鳴り、教室は笑い声が溢れていた。が、そこにあの七人の姿はなかった。そしていなくなったことに誰一人気づく者はいなかった…。
真昼の日差しが降り注ぐ中庭に、教室になかった七つの人影があった。
「三井…今日は何月何日だ…?」
「修司、めでたいよ…五十回連続の十一月十一日だ…。」
「はは、めでたいな…」
「めでたくねぇっつうの!まだ戻らねぇのかよ!!」
「五木…」
最後の力を振り絞って叫んだのか、中庭に静かに横たわってしまった。
「五木さん!?」
「心配しないで六条くん。彼女は唐突に寝ちゃうのよ。」
「そうなんだ…ありがとう七尾さん…」
「みっちゃん見て…タコさんウインナーだよ…」
「その顔、何回見ても可愛いよね〜食べたくないけど…」
「お?俺が食うよ!」
二岡が四俵の弁当を漁る。
「ん〜美味い!」
「ねぇ…なんで健介は元気なの…?」
三井が聞いた。
「フッフッフッ教えてやろう…授業サボったり寝たりしてるからだよ!!」
「二岡…」
やれやれと首を振る一丸。しかしこれ以上は限界だった。同じ授業、同じ弁当、同じ時間…皆精神的に不安定になっていた。二岡はタコさんウインナーをごくんと飲み込んで、はぁ…と深い溜息をついた。四俵は「お弁当食べよう…」と静かに呟いて座る。そのときポケットからチャリンと音がして、何かが落ちた。その音に全員が反応する。
「おい、四俵。それ家庭科室の鍵じゃないか。何故お前が持っているんだ?」
一丸が鋭い目で四俵を見る。
「い、いや…さすがに同じお弁当は飽きたかな〜って…」
四俵は鍵を慌てて拾い、両手で握りしめて、ささっと三井の背中に隠れる。
「友ちゃん…気持ちはわかるけど…」
「四俵!お前そんなことしちゃいけないだろ〜?」
「授業をサボったお前が言うな…」
一丸が二岡にツッコむ。周りは苦笑したが、雰囲気は暗いままだった。二岡はまた溜息をつき、その場に座り込んだ。
「全く…」
一丸が呆れたように頭を掻いた時、何かが倒れる音がした。
「七尾さん!?」
六条の悲鳴で、五木が目を覚ます。七尾はうつ伏せで地面に張り付いたかのように倒れていた。六条が体をさすってもピクリとも動かない。
「二岡!七尾を保健室に連れて行くぞ!」
「わかった!」
「僕も行く!」
「すまんが、皆は先に教室に戻ってくれ!僕達は後から行く!五木!担任に報告してくれ!」
一丸は七尾を背負いながら、二岡と六条と共に校舎に戻る。
「お、おう任せとけ!」
眠い目をこすりながら、五木も校舎に戻っていく。三井と四俵は、五木の後ろ姿は見ず、目の前で友人が倒れたことにショックを受け、立ちすくんでいた。真紀ちゃんは大丈夫だろうか。私達も行った方が良かったのか。複雑な思いだった。なんとか気を取り戻し、二人は校舎へ歩き出す。
「真紀ちゃん…」
少し震えている四俵に、三井が優しく声をかけた。
「大丈夫。真紀ちゃんならすぐ元気になるよ。」
「そうだね…そうだよ!こんな時に暗くなってどうする四俵友子!」
元気を取り戻した四俵が姿勢を正す。三井は四俵を見てにっこり笑った。
「あーあ、早く元に戻らないかな〜?私ね、来月家族で旅行行くんだぁ!」
そう言って、昇降口前にある長椅子に腰掛けた四俵は、目を輝かせながら空を見上げた。しかし、三井は「家族…」と呟いて視線を足元に落とした。表情が一瞬無になったが、すぐ四俵に笑顔を見せた。
「良かったじゃん、楽しんでおいでよ?」
「モチのロンですよ!みっちゃんも家族との時間作りなよ〜?折角ママが再婚して、新しいスタートしたんだから!ね?」
「…うん」
何だろうこの感じ…胸が痛む…繰り返しているせいかな…?三井の心に一本の矢が刺さった。
「え…?まさかうまくいってない感じ…?」
また三井の心に矢が刺さる。友ちゃんの言っていることが嫌なんだ…友達なのに…今すごく嫌いだよ…。そう思っている三井に四俵が追い討ちをかける。
「家族は大切にしなきゃダメだよ?ね?」
「いい加減にして…!」
「え…?」
ハッと抑える。ダメだダメだ笑わなきゃ…苦しい時こそ笑わなきゃいけないんだ…たとえ友ちゃんにキツイこと言われても…!三井の心は揺さぶられていた。
落ち着こう…そう決心した三井は深呼吸をして、無理矢理作った笑顔で言った。
「そうだね…けど私は仲間の方が大切なの。もうこの話おしまいにしてさ…」
「仲間も大切だけどさ、やっぱり新しい家族とも仲良くしなきゃダメだよみっちゃん?」
「しつこいのよ!いい加減にして!!私はあんな家族と暮らすのはもう嫌なの!!」
笑顔で話しかけてくる四俵に我慢の限界だった。とうとう彼女の抑えられていた感情が、斧のように振り回された。しかし四俵は、少し甘えた口調で言った。
「そんなに…怒鳴らなくたっていいじゃん!」
この一言で怒りの火に油を注いだ。三井は今まで見せたことのない睨みを、椅子から立った四俵に当て、後ろにじりじりと追いやっていく。
「あんたは無神経なのよ…!自分勝手で周りを振り回してばっかりで…!少しは相手の気持ち考えなさいよ!!」
「酷い…そんな言い方ないよ…!そんなんだから家族とも仲良くできないんだよ!!」
「うるさい!!」
ぱちぃん!三井が四俵の頬を引っ叩いた。
暫しの静寂…時が止まった感覚…二人の間に一瞬にして深い地割れがはしった。
三井の目には涙が溢れていた。心を乱された怒りと、大切な友を傷つけた罪悪感が入り混じった涙だった。
「おい何してんだよ!こっちは真紀が大変だったってのによ!」
二人を探していた五木が駆け寄って間に入る。そして左頬が赤くなっている四俵を「大丈夫か?」と慰める。止まっていた三井が五木に訊ねる。
「ヒロちゃん…真紀ちゃんは…?」
「あ、ああ…まだ寝たまんまだ…」
「聞いてよヒロ!みっちゃんがね!?」
五木の腕を掴み、三井を指差す四俵。
「あんたが悪いんでしょ!?デリカシーのない発言するから!!」
また二人は涙目で睨み合う。
「おいお前ら…!なんだかわかんねぇけどよ、くだらねぇことで揉めてんじゃねえよ…」
「くだらなくなんか…ない…!」
「あ…!おい友子!」
五木の腕から手を離し、三井を一瞬睨みつけて校舎へ入っていく四俵。その後ろ姿は悪魔が取り憑いたように黒かった。
「みっちゃんなんて…大嫌い!!」
心の中で叫んだ四俵に、涙はもう滲んでいなかった。
「何揉めてたんだ?」
ようやく落ち着いた三井の肩をポンポンと叩きながら、五木が言った。
「家族の話で…機嫌悪くなっただけだよ…」
「そうか…」
前に三井の話を聞いていた五木は、うんうんと頷きながらまた三井に語りかけた。
「まぁ…あいつにデリカシーってもんは備わってないが、それは俺達に対して素直になれてるって証拠だろ?」
五木の言葉に心をうたれた三井は、風の寒さも負けないくらい温かかった。
「う…そうだね…反省はするよ。」
「イラつく気持ちはわかるぜ?こんだけ同じ日が続けば不安定にもなるよな。」
「うん…なんかごめんね?心配かけちゃって…」
「気にすんなって!じゃあ俺はどっかでふてくされてる友子探してくるわ!」
また五木は肩を叩いた。校舎に入っていく五木に、三井は本当にかっこいいと思った。彼女の心にはいつもの優しさが戻っていた。そして太陽を見上げて呟いた。
「家族と仲間…か。」
友ちゃんに謝ろう。そう思って昇降口に向かおうと振り向いたとき、四俵が走ってくるのが見えた。
「ともちゃん!ごめんね!私…!」
「みっちゃんの馬鹿ぁぁぁぁ!!!」
鬼の形相で走ってくる四俵の手には、反射している銀が太陽に照らされていた。そして…
グシャッ……!!!
三井は倒れた。変な感覚、力が入らない…痛む腹を触ると、冷たい感触…手のひらを見た…赤い…!?こんなに出て…あ…!痛い…!
四俵が血走った目のまま、銀を向けている。開いた口から悪魔の声が聞こえてきた。
「私は気づいたの…どうせ繰り返されるから殺したって問題ないって…!!」
「友ちゃん…!?」
三井がか細い声で返すと、四俵は薄笑いを浮かべた。
「私にデリカシーがない…?ふざけないで!…確かにふざけたりもするけどさ!!でも…皆のことが大好きなんだよ!?家族だと思ってるんだよ!?…それなのに…それなのにみっちゃんは!!」
「うるさい!あんたに何がわかるのよ!?皆があんたみたいに幸せな家族じゃないのよ…!あんたなんかに…私の…私の苦しい気持ちがわかる!?ねぇ!!」
「そんなの知らない!!」
「だからあんたは…!」
言い返そうとした三井は咳き込んだ。変な味…地面には赤い水溜りが出来ている…。
「血…?やだ…血出てる…!?」
四俵は、自分が持っている物を確認した。太陽に照らされたそれは、赤色に染まっていた…。
「いやぁ!!みっちゃんごめん!ごめん…!」
ようやく正気に戻った四俵に、三井は言った。
「自分で刺して…謝ってんじゃないよ…」
優しい口調に、訳がわからなくなった四俵はパニックになった。
「いや、あのね…!刺す気なんて全然なかったんだよ!?…それが…気付いたら包丁持ってて、刺しててそれで…!」
三井は微笑みながら、ゆっくり言った。
「しょうがないよ…五十回も同じお弁当食べたら…包丁も持ちたくなるよ…は、はは…」
無理矢理笑う三井に、四俵は涙が止まらなかった。
「笑えないよ…みっちゃん…!」
「おい、保健室にまで響くような声で騒ぐんじゃ…な…三井!おい、その出血どうしたんだ!?」
一丸が駆けつけると、涙が溢れている四俵のとなりに、赤に染まった三井が倒れていた。「四俵…お前…?」
「ごめんなさい…ごめんなさい!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!!」
「まさか…刺したのか!?」
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
「大丈夫か三井!?」
一丸が三井の腹をハンカチで止血しようとするが、血は止まらない。
「くそっ…!」
「戻るよね!?時間絶対戻るよね!?」
「お前は落ち着け!!」
パニックになっている二人をなだめるように、三井が「もし…!」と弱々しく叫んだ。
「もし…時間が戻らなかったらって…考えるとさ…震えが止まらないの…怖い…怖いよ…死にたく…」
一丸が抑えている腹部は、もう真っ赤だった。そして三井はゆっくり目を閉じ、それから動くことはなかった。
一丸は四俵の方を見てゆっくり頷いた。
四俵の目には、怒りと後悔の涙。その涙が赤く染まった三井の体に落ちていく。四俵はもう泣くしかなかった。泣くしかできなかった。
「いや…みっちゃん…いやぁ…いやぁぁぁぁぁ!!!」
穏やかな日差しに見つめられた中庭に、虚しく悲しい悲鳴が響き渡った…。
ありがとうございました!
次回もお楽しみに!