ぐだ男と野獣のクッキーkiss   作:野鳥先輩

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クリスマスレ〇プ!ょぅじょと化した先輩!

 以前、夢を見た。このカルデアでは有り得ない夢。雪のように白い肌の、黒い衣を纏った女サンタ。そのトナカイとして様々な、正常な英霊の元へ赴き、プレゼントを配った。

 

 昨日も夢を見た。外も肌寒くなってきた晩秋に、ジャンヌ・ダルク・オルタを名乗る幼女のサンタクロースのトナカイとして働いた。

 

 ――ぬっ!

 

 そういった夢を見て、起きた時にふと虚しさを感じる。自分が人理焼却という前代未聞の危機に瀕してなお、ここまで女っ気を求めていたのだと、自分の能天気さに打ちひしがれた。だが、だがそれでも。

 

「――おぉん!」

 

 この仕打ちはあんまりではないだろうか。現実逃避の為にベッドで寝転がっていた俺を揺すっているのは、『女物のサンタのコスプレを纏い、肉体まで幼児化した野獣先輩』。ステロイドで造られた偽りの肉体は見る影もなくなり、代わりに胸には黒のブラジャーが巻かれている。ぶっちゃけ筆舌に尽くしがたい程、視界に入れるだけで腹の底から沸々と怒りが沸き上がってくる外見に仕上がっていた。それが舌足らずで、ステロイド服用者特有の高い声で『んあー≧Д≦!』などとぬかすのだ。ひでまひろたるとじゅんぺいに勝るとも劣らぬ汚物の誕生である。

 

「殺意感じるんでしたよね」

「先輩! まずいですよ!!」

 

 拳を握る右腕を、マシュに抑えられる。自室、それも寝起きにこんな不快な生命体を目の当たりにして、憤怒の一つでも沸き上がらないのはそれこそ聖人くらいであろう。

 

「……マシュはこれに不快感を抱いたりしないのか」

「いえその、確かに吐き気を催すレベルで気色悪いですけど……でもビーストさんはこれまでカルデアの為に頑張ってくれた方ですし」

「……それもそうだ」

 

 そうだ。こんな姿になってしまってもビーストは、一応このカルデアの古参サーヴァントであり、最速種火周回パの核を担っている。これまでの功績に免じて、暴力は止めよう。令呪はガンガン使うが。

 

「あ、ここにいたのか皆」

 

 他人の部屋にずけずけと侵入してくるロマン。そういえばふと思ったが、マシュは何時の間に部屋に入って来たのだろうか。

 

「で、そこの『野獣・先輩・サンタ・リリィ』についてなんだけど」

「やめろ。その呼び方はやめろ、代替案を出してくれ」

「じゃあ縮めて幼女サンタ先輩で。今回の主犯であるギルガメッシュ(淫夢)曰く、『良いだろ貴様聖人の日だぞ(意味不明)』との事。つまり彼なりの悪ふざけだと断定していいだろう」

 

 ちゃんと意味が通ってるじゃないか(憤怒)。今日は別段聖人の日(クリスマス)でも何でもなく、一月ほど気が早いが。やはりホモはせっかちだった。

 

「今ギルガメッシュ(淫夢)が、王の財宝の中から対処可能な薬を探している所だ。カルデアのスタッフやダヴィンチちゃんでも、普段の業務の片手間にでも解析を試みるし、最悪GO頼みだ」

「つまり全く当てにならないと」

「そうだよ(肯定)。気長に待ってて、どうぞ」

 

 それだけ言い残し、部屋を去っていくロマン。その背中がドアの向こうに消えるのを確認してから、マシュと顔を見合わせる。

 

「どうしよう」

「……してみます?」

「なにを?」

「その、サンタクロース……」

 

 

「ぬっ! ぬっ!!」

 

 マシュの提案とほぼ同時に突然自己主張を始めたビースト……ビーストサンタ。その肩には、身の丈に及ぶほどの、何かが詰まった白い袋がかかっている。いつの間に用意したのかは不明だが、推測するに彼は、サンタの真似事がやりたいのだろう。

 

 よくよく考えれば、このカルデアには娯楽が少ないような気がする。世界の危機に遊び呆けるのは論外だが、一日くらい羽を伸ばすのも悪くないかもしれない。

 

「ぬっ!」

「おうおうご丁寧に手紙まであるぞー」

「先輩投げやりすぎます」

 

 ビーストサンタは袋の中から取り出した、数通の手紙を俺に見せびらかす。確認すると不思議な事に、サーヴァント達の名前が記されてあった。皆揃いも揃ってどうしたんだろうか、クリスマスは一か月は先な上に、本来プレゼントを貰える歳でも無かろうに。

 

「……夜に行くか。マシュ、ついてくる?」

「はい!」

「んあー≧Д≦!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「一件目は……MURさんのところですね」

 

 皆が寝静まった頃を見計らい、マシュとビーストサンタを伴って部屋を出る。ビーストサンタは存外筋力が高いらしく、ぎっしり中身の詰まっているように見える身の丈ほどの袋を肩にかけても普通に動けていた。どうやらトナカイもソリも不要なようだ。

 

 間もなくMUR……というか三馬鹿空手部共用の部屋まで辿り着く。扉を開けると――

 

「あ。こんばんは」

「KMR。起きてたのか」

 

 例のあの部屋を完全再現した、風呂場付きの畳部屋。その隅でKMRは雑誌を広げていた。KMRはこちらに――正確にはビーストサンタに気が付くと、何とも言えない笑みを見せた。

 

「……あぁ。例の、鈴木先輩ですか。お疲れ様です」

「ホントにAUO(淫夢)には困ったもんだね。MURは?」

「そこです」

 

 KMRが指さす先、MURは畳に敷かれた布団にくるまり、いびきを立てていた。何故か縦割れアナルがもろ出しになっており、気が付いてしまったマシュがSANチェックに失敗して軽く悲鳴を上げたが、MURが起きる事は無かった。

 

「MURへのプレゼントは……まぁ大体わかるけど」

「いいすかぁ~? デ デ ド ン !」

 

 ビーストサンタがSEを声に出しながら袋から取り出したのは、大方予想通りではあるがポケモンの一種であるポッチャマのぬいぐるみだった。

 

「ありがとうございます……」

「じゃあ俺、プレゼント置いて帰るから」

「季節外れのサンタさん、頑張ってください」

 

 KMRから激励の言葉を受け、俺達は部屋を後にする。……以後もこんな真っ当なやり取りが、続けばいいなぁ。

 

 

 

「二人目はアマデウスさんですね」

 

 どうやら俺の願いは果たされなさそうだ。

 

「アマデウス……糞かな?」

「や、やめてください先輩。流石にそこまで性悪では……」

「だって……アマデウス(淫夢)だよ?」

「ま、待ってください先輩。音楽関連である可能性だって微粒子レベルで存在するはずです」

「えぇ~ほんとにござるか~?」

「ほ、ほんとでござるよぉ?」

 

 ノリのいいマシュというのも珍しい。いつまでもこうして漫才を続けていたい気すらしたが、生憎廊下を歩きながらである。歩みを進めていれば、自ずと目的地には着いてしまうのだった。

 

 

「うんうん。プレゼント、持ってきてくれたんだね?」

「……何故みんなこんな時間まで起きてるんだ」

「まぁ、天才には色々あるんだよ」

 

 ……帰りたい。あぁそうだプレゼントだプレゼント。あれを渡せば、すぐに次に移れるのだから。

 

「デ デ ド ン !」

 

 ビーストサンタが袋から取り出したのは予想外の代物だった。

 

「……パソコン、ですか」

「ロマンに聞いたんだけど、現代には音MADというのがあるそうじゃないか。折角こんな特異な環境に生まれたんだ。一回やってみようと思ってね。ついでに素材には野獣先輩の喘ぎ声なんかが良く使われるらしいね」

 

 モーツァルト直々に淫夢音MAD作成か。話題には事欠かなさそうだが、やはりオリジナル曲で作るのだろうか。まぁいい。最悪のネタは回避したからな。

 

「彼が治ったら教えてね」

「おう、考えておくよ。じゃあ」

「子守りも良いけど、あんまり真夜中まで連れ歩くんじゃないよー」

 

 立ち去り際に煽られたが、先にこちらが煽ってるのでノーカウント。俗に言うじゃれ合いみたいなものだ。しかしアマデウス(淫夢)すらこれとは、もしかしたら何一つ障害なく無難に終わってくれるんじゃないだろうか。

 

 

 

 

「三つ目。これが最後ですね、ピンキーさんです」

「あああああああああもうやだあああああああああ!!!」

 

 駄目でした。深夜帯である為、声を極力抑えての絶叫だが、声を大にして言いたい。帰っていいですか。こんな事なら夜中になんか来るべきではなかった。

 

「一度取りやめて、朝方に伺う事を提案する」

「え、えぇ……そんなに嫌ですか」

「男だったら誰しもそう言うと思う。マシュには分からないと思うけど」

 

 ぶっちゃけ朝になっても行きたくないと言う人の方が大半だと思うが。

 

「でもほら。野獣先輩・サンタ・リリィさんは……」

「あれは例外。幼女だから」

「……先輩。あれをとうとう幼女と認めてしまうのですね」

 

 実に悔しいが、男性の天敵としての側面を極限まで凝縮した対男性用最終兵器たるピンキーの部屋に、鼻歌混じりで向かう後ろ姿を見てしまった以上、あれが男でないことを認めざるを得ない。

 

 ピンキーの部屋の扉前までやって来た。扉には紋様の描かれた札が何枚も貼られ、扉の向こうからは、言語にて形容できない直感的な悪寒が、全身の神経を穿つように迫る。全身を締め上げられるような錯覚すら覚え、自然と額を脂汗が伝った。かつて大英雄に遭遇した時の、生命体として死期を予感してしまった、あの時の感覚に似たものがあるかもしれない。

 

「先輩今すっごい失礼なこと考えてませんか? ピンキーさんも女性ですし、流石に傷つくと思いますよ?」

 

 ここまで来た以上、何もせずに帰るというのは損というものだ。どの道ビーストサンタがこの扉をくぐるには、背丈的に俺かマシュの助力が不可欠。決意を奮い立たせ息を吸い、扉を開いた。

 

 部屋の中央に浮遊する生首。それがこちらを振り返るまでのたった一瞬が、無限に等しく感じられた。振り返った名状しがたき怪物の眼と、不幸にも目が合ってしまう。異常に肥大化した両眼は、俺の意識を深淵へと落とし込み四肢の自由を奪う。

 

 ――殺られる。蛇に睨まれた蛙。蛇が跳躍するまでの、刹那の余生。その間に震える暇すら与えられなかった。両対称の歪んだ笑みを浮かべ、飛来するピンキー。

 

 テレレレレレレ↑コンヤハ、カエシタクナイ。

 

 はっと意識が現実に引き戻される。ビーストサンタの手には、柔らかスマホが握られていた。その画面にはお茶の間フリーズとして著名な、例の不倫シミュレーションゲームのCMがループで流れている。テレレレレ↑が鳴る度に意識が戻ってくるのは、ピンキーの意識がそちらへと逸れたからであろうか。

 

「先輩……凄い汗ですよ。大丈夫ですか?」

「大丈夫な訳ないんだよなぁ……」

 

 当の災厄の根源はというと、ビーストサンタからやわらかスマホを受け取るや否や今夜で検索しようとしていた。人理が焼却されている今、インターネットが機能するはずがないのだが、そんな些細な事はどうでもいい。使命は果たされた。後は速やかにこの地を離れるのみだ。

 

「せ、先輩!?」

「ぬっ!?」

 

 能天気なマシュとビーストサンタの手を握り、引っ張る様にしてその場を後にした。クリスマスは、終わったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マシュから聞いたよ。昨日は大変だったみたいだねぇ」

 

 朝。ロマンは他人事ながら、こちらの気苦労を察してはくれた様だ。俺は俺で、愛想笑いを浮かべるくらいであった。

 

「笑顔だけか貴様は」

 

 傍にいたギルガメッシュ(淫夢)がこちらを睨みつける。昨日のピンキーに比べれば実に気楽な相手だ。

 

「……元を辿ればギルガメッシュのせいなんだよなぁ。はぁ」

「……(オレ)に嘆息とは、死にたいのか?」

「あ。そろそろみたいだね」

 

 丁度良いタイミングでロマンがこちらのやり取りを遮った。医療室から出て来たのは、GOだ。結局の所ビーストの体を元に戻す解決策が見つからず、困ったときのGO頼みをするはめになったのだった。正直全く信用できないが……

 

「どうだった?」

「まー安心してよ。大丈夫、ヘーキヘーキ。ヘーキだから」

「やっぱり駄目じゃないか(憤怒)」

 

 GOのはぐらかすような答えから、結果など見るまでもない――はずだった。

 

 

 

「ぬわああああんきつかったっすね昨日は」

「んあー≧Д≦」

 

 一同唖然である。医療室から出て来たのは、元の姿に戻ったビーストと、サンタの格好をした幼女ビースト。精々数刻の間に、同一人物が分裂したのだった。カルデアに新たな(?)サーヴァントが加入した瞬間である。

 

「どうしてくれるんだよこれよぉなぁ! どうやったんだよこれよぉ!」

「パパパッとやって、終わりッ!」

 

 GOの浮かべる笑みは正に、邪神のそれであった。




ぐだ男君のSAN値こわれる

【真名】野獣先輩・サンタ・リリィ
【クラス】セイバー
【性別】幼女
【属性】中立・中庸
【スキル】
対魔力:C
騎乗:B
聖者の贈り物:B
心眼(偽)E
魔力放出(茶):C BB素材群に存在する幾重もの心臓を核とし、無限にも等しい魔力を放出する。茶色い。くさい。そしてビーストが幼い為、規格外の出力は出ない。
【宝具】
邪剣・夜域魔鐘音(じゃけん・よるいきましょうね)
 ビーストがセイバーとして呼ばれた場合『邪剣・夜』を携えて来るが、こちらはそれがサンタ・リリィの霊基にリンクして若干変質した姿となる。黒いオーラ、黒の魔力放出は共通するが、こちらは相手の視界を奪う力を持ち、魔力放出には教会の鐘の音が発生。
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