ぐだ男と野獣のクッキーkiss 作:野鳥先輩
七章ほんへがガチインフレ&ビーストに中々とんでも設定が追加された
辻褄合わせどうすっかなー俺もなー
「■■■■■■■―――!」
黒き巨人は魔獣が如き咆哮をあげ、手に持った石斧剣を振り下ろす。対する紅白の衣装をまとった女性は、躱す事すらせずそれをもろに受け、血飛沫と土煙に埋もれた。
「アハハハハ!!」
すかさず飛び出したのは、腕からギロチンを生やしたALC。自身が高速詠唱で投影し、投擲した石とほぼ同速度で、隙を生んだ巌の如き男へと迫る。しかし男――大英雄ヘラクレスは狂化してなおそれを見切ったのか、瞬時に武器を振るって応じた。
『これ明らかに無茶だって! 無理無理!産めない!』
ロマンの弱音も、今回だけは全面的に同意しよう。現在俺達は、単騎対複数の形をとっているとは言えヘラクレスと真正面から交戦している。アークに頼るという手段もあったが、カルデア側の手札を勘定に加えるとこちらの方が"勝算が高い"と踏んだ。
「あ~生き返るわ~!」
「■■■■■■■―――!」
あの大英雄相手に"前線"(一人で前線というのも奇妙な話だが)を構築しているのは、カルデアにて召喚に成功したKNN姉貴。先ほどヘラクレスの一撃を受け血しぶきを上げ昇天した彼女は、自身を『蘇生して』再びヘラクレスに立ち向かう。結果としてヘラクレス側も突破が出来ないまま、度重なるALCの襲撃を受けている。
――ALCの宝具、『罪姫・正義の柱(偽)』には不死殺し、必殺の力が宿っている。あれを以て12の試練を一撃の元に刈り取る事。ただし触れれば即死、ではなく、あくまで致命傷を与える一撃にアレを用いれば効能が発動する。それが、こちらの勝ち筋。
「ッ仕方ないわね……!」
KNNはヘラクレスが放つ、力任せの必殺の一撃を素手でいなし、隙を見て蹴りを放つ。破綻したスカートが腰巻の類のように舞い、ドロワが露わになるという独特の容姿だが、全く違和感なく戦闘を行えていた。聖杯により霊基を補強されており、単純な物理攻撃では死に至らないとはいえ、あの大英雄相手に戦う時点で相当なものである。
後方へ跳躍し、ヘラクレスから一定の距離を取ったKNN姉貴。全身から紅蓮の炎――高純度の魔力を滾らせる。ヘラクレスはというとKNN姉貴を無視し、真っ先にALCへと駆け出した。
「こちらの狙いは当たりってことか……!」
例え狂化しようが、サーヴァント。それが放つ魔力を視て、自身に危害を及ぼすことを本能的に理解したのだろう。アークを用いてヘラクレスを嵌める案の時にも考慮されたが、相手にそれを判断する理性が残っていると断定するならば、こちらの勝ち筋はほぼ確定した。
「KNN姉貴!」
「プライベート――スクウェア!」
次の瞬間、KNNの渾身の蹴撃がヘラクレスの横顔を薙ぎ、その巨体を揺らめかせる。達人めいた縮地の効果もあるが、それ以上に彼女が発動した宝具『プライベートスクウェア』に秘密がある。有体に表現するならばそれは、時間停止。彼女だけの時間を、世界に捻じ込む術。明らかに物理法則を超越しておりサーヴァントとはいえ個人が用いる能力からは逸脱している為、当然抑止力案件である。そのリスクは――
『ぐだ男君! KNN姉貴! もう、カルデアの傷を抉るような事はしないでください!』
カルデアから蕎麦をすする様な音と共に悲痛な叫びがあがる。『蘇生』といい『時間停止』といい、強力無比な分莫大な魔力を消費している。一度や二度発動した所でどうという事もないが、今後の特異点のことも考慮に入れ、一戦で何十発も乱発されると不安になる程度の出費らしい。くれぐれもKNN姉貴は温存しろと釘を刺されてはいるが、正念場で手を緩めるのは弱者か、パワーインフレの末落としどころが無くなった悪役がやる事だ。
「KNN! 気にするな、全力で戦え!」
「何言ってんのよー! 最初から全力でやってるわよ!」
「ならよし!」
KNN姉貴は果敢にヘラクレスに向かい、その隙にALCが距離を取る。ALCの狂化スキルが低くて助かった。こういった細やかな戦術、サーヴァント間の連携は、知性なしでは成り立たない。
「マシュとエウリュアレはここで待機」
「は、はい」
「……結構サバサバしてるのね貴方」
庇護対象であるエウリュアレから冷たい視線を背中で受ける。言いたい事は分かるが、船での戦いは仕方なかった。あの場には他に、敵方のサーヴァントもいたから。今こうして戦えているのも、敵がヘラクレスを単騎で走らせる愚を犯していたからである。
「■■■■■■■■■■■――!!」
大英雄の力づくで振るわれる武器。けた外れの一撃を刹那で見切り、瞬時に地面を蹴って躱すKNN。傍から見れば確かに拮抗しているのだが……少し不味いことになっている。
こちらは決定的に決め手が欠けているのだ。KNN姉貴は隙を見ながら一撃をお見舞いしているが、全く効いている気配がない。Aランク未満の攻撃を無効にしているならば、そもそも止めの一撃まで持っていくのが難しいのだが……
「……さて。カルデアのマスターはどうするつもりかしら」
「宝具なら当てがある……」
丁度今頃、他のアーチャーに混ざって宝具をぶっ放している頃だろう。
「令呪を以て命ず。UDK。来い」
ALCの耳に入らぬよう、あくまで小声でUDKを召集する。
「はぁーいUDK来ましたよー」
「イワナ、書かなかった? 船への攻撃は程々で切り上げてこっち来いって」
「……知らないなぁ」
へったくそな演技ですっとぼけるUDK。大方、ヘラクレスと戦わされるのが嫌でズルズルと居残っていたのだろう。本当に使い勝手の悪い。ALCがいなければ憎まれ口の一つも叩く所だが、彼女に聞かれると真面目に殺されかねないからぐっと堪える。
こちらの目当ては言うまでもなく、彼女の手に収まっている八卦炉である。
「――魔理沙!!!」
召集して間もなく、気配を察知したのかALCが目をぎらつかせてこちらへ飛んできた。その形相があんまりにも迫真で、味方だと頭ではわかっていても恐怖を覚えてしまう。
「ごめん!」
「うわっ!?」
ALCはUDKの手元に刃を滑りこませ、八卦炉のみを掠め取った。そしてそのまま腕を振るい、八卦炉を弾き飛ばす。その先には――
「ALC、ありがと」
KNN姉貴が待ち構えていた。彼女はそれを受け取るや否や、即座に振り向き『マスタースパーク』を放つ。七色の閃光は一瞬にしてヘラクレスを包み込み――
「■■■■■■■■■■■――!!」
圧倒的魔力を半身に浴びてなお、それは止まらなかった。明らかにダメージを負っているようで、しかしヘラクレスは歩を止めない。怒涛の勢いでマスタースパークを放つKNN姉貴に迫る。一秒もあれば詰められそうな距離が、途方もなく遠い。
からくりはすぐに分かった。『プライベートスクウェア』、時間停止を断続的に行使した引き撃ち。KN姉貴自身は飛び道具を持ちえない為戦術として機能しないが、こういった局面なら別だ。
「■■■■――!!!」
目を血走らせ、咆哮をあげるヘラクレス。トリックに気づいたのかは定かではないが――もう、遅い。
「――アハハッ!!」
飛翔し、ヘラクレスの背後へと回ったALCが口端を吊り上げ、ギロチンの刃を頚椎へと降り落とす。鮮血が噴き出し、ALCの白い肌を真紅に染め上げた。巌の如き大英雄が揺らいだのを視界の端で確認したALCが、返す刀でヘラクレスの首を撥ね飛ばす。彼が消滅したのは、それからすぐの事だった。
「……ヘラクレス、撃破」
『あ、あぁうん。反応は消えたね……いやぁ。まさか勝てるとは』
「不死殺しが効いてよかった」
あれが効かなきゃ根底から覆るからな。しかし最後の引き撃ち。もしあれが、バーサーカー以外のヘラクレスであれば、ああ上手く行く事は無かっただろう。そもそもアーチャーで呼ばれ、ヒュドラの毒矢など携えていた日には当初のアークに頼る案すら使えなかったはずだ。そしてこちらのサーヴァントも聖杯によって強化されている。二つの有利が重なった、奇跡的な勝利といって良いだろう。
「いやーきつかったっすね今日」
「何かしたかUDK」
「――何よ?」
「いえ何でもないですUDKさんお疲れさまでした」
「デュフフ」
……背後にALCの気配を感じれば弱腰になるのも無理は無いだろう。UDKや、傍で観戦していたエウリュアレからも笑いが漏れているが無視だ無視。バーサーカーに正面から喧嘩を売るマスターは、そうそういない。
「ALC、ありがと」
「ふふ。お粗末様でした」
ALCも、あのようにUDKが絡まなければ基本聖人であるし、戦闘においても機転が利く優良サーヴァントなのだが。ふと、肩にどっと疲れが乗ってくる。
「マスター」
「……KNN姉貴」
「ナカナカヤルジャナイ。ここの解決ももう少しなんだから、あんたも頑張りなさい」
「……はーい」
この特異点もあと少しで終わりだ。さっさとイアソンを撃破して風呂にでも入りたい。疲労した体に鞭打ち、一歩を踏み出した
【真名】KNN
【クラス】キャスター
【性別】女
【属性】中立・善
【ステータス】
筋力 B 耐久 C
敏捷 A 魔力 A
幸運 E 宝具 A+
【スキル】
道具作成:E
陣地作成:E
縮地:C
カリスマ:D
魔力放出(炎):B
【宝具】
『時符・プライベートスクウェア』
彼女の演じた博麗霊夢が本来持ちえない術。莫大な魔力を以て時間を停止させる。サーヴァント化した現在、使うと僅かな時間停止だろうが膨大な魔力をマスターから吸い上げる。
『
莫大な魔力を払って蘇生・回復する。また自身への炎ダメージを軽減する。一度の蘇生で一人マスターを枯らす事が可能。