イッセーの特訓から数日。平和な日々を過ごしてる。相変わらずオカ研に入り浸って過ごし、あっちへふらふらこっちへふらふらと、碌に働かず学校にも通っていない。ニートだぜおい。自称英雄ジョブでも世界救うとか大それた事もない。……当たり前なんだよなぁ。平和だもん。
「っま。平和が一番。そうおもうだろ?」
「……」
河川敷で寝転がって、気持ちのいい風を感じていたら、いつの間にか隣に居るゴスロリに問う。……まあ来る気配は感じてたけど。
この子。前に意味不明な事言って消えちゃった娘だろ。なんだよ。どーせオレにしか見えないんだろ?
「___なぜ覚醒しない」
「……ベルクロスの事か」
なにこの子。ベルクロスの事、認識してるんだけど。なにもんだよこのゴスロリ。……敵意は感じない。むしろ必要としている。オレとベルクロスを。
「なんか悩み事でもあるそうだけど? オレじゃダメ?」
「一人では駄目。一緒じゃないと駄目」
不思議ちゃん。一人でダメか。うーん。……ベルクロスが必要ってなると、ヤバい事情が絡んでると思う。
「教えてくれるかなお嬢ちゃん。なんでオレたちが必要なのかな?」
「一緒じゃないと駄目」
「ぇぇ。……ふ、不思議なお嬢ちゃんみたいに、それはもう不思議な事かな?」
「一緒じゃないと駄目」
……人形みたいに真顔で繰り返し返答されたら怖いんだけど。……必要としてくれるし、手伝いたいんだけど、肝心のベルクロスがなぁ。
「……覚醒させる」
「え?」
そういって彼女の手から触手のような物が伸びて、オレの体に触れる。どことなくあたたかい。
「へ~。そんなのできるん___」
この触手で起こせるのかぁ。とそう関心していたら突然触手がはじけ飛び、オレの体が動く。
ベルクロスが覚醒して体の主導権を表に出す。
一瞬で彼女の眼前に顔を近づかせるベルクロス。眼を灯しながら品定めをするかの様に、彼女の目を瞬きもせずに睨む。
「____」
「……覚醒した」
いったいオレの喉をどうひねり出したら、獣の様なうなり声を出せるのか。そしてどうやっておぞましい顔を作り出せるのか。オレには分からなかった。そんなベルクロスにも一切動じない彼女。マジで肝が据わってる。
「おい貴様」
「……」
「尽きぬ者だからと言って、調子に乗るな」
「……」
犬歯に唾液の糸を引きながら怒り口調で言うベルクロス。口を開け長い舌を器用に使い、彼女の顔を味わう様に舐めまわし、唾液が顔をの形に添って滴る。それでも動じない彼女。ホントに何もんだよ。オレだったらちびってる。
「ハアァァ……貴様も分かっただろ。オレは寝る事を楽しんでいる。……邪魔をするな」
「……」
「来る時が来れば自ずと目覚める。因果がそうする」
「……」
「待っていろ。それが訪れれば、このバカと共に付き合ってやる」
「…………わかった」
ふう。わかってくれた。一時はどうなるかと思ったゾ。理解ある嬢ちゃんでよっかった。……ベルクロスぅ。一向に起きない理由は分かったけど、怒りすぎじゃね? 寝起きの機嫌悪すぎ。それとオレの体とはいえ舌長い。そっちにもビックリだけど、顔を舐めまわすとか……オレのつばだけど、ばっちいし、正直引くわ。
「気色の悪い起こされ方をされたら、何物でもこうなる」
いやならんだろ。……まあオレはあたたかく感じたけど、当事者は気色悪いねぇ? もうわかんねぇな。……ってあの子は? いつの間にか居ないんだけど。
「うせた」
うせた。って、もっと言い方ってのはないの? ガラ悪い___寝起きは機嫌悪いんだったな。ごめん。
「……別次元のノドスとまみえた様だな。おもしろい」
なんでソレ知ってんの!? 寝てたよなあ! それに面白くも何にもねぇよ! オレのせいだとはいえ、クレイジーな戦闘狂集団が襲ってくるんだよ! ディゾルブの時は何とか倒したけど、他の奴が手に負えなかったら出てきてもらうからな!
「……ふむ。……この程度なら大丈夫だろう」
は? どこ見て言ってんだよ! オレに向けて言えよそう言う事は! 少しは気を使って___
「エイジ」
な、なんだよ。急にしおらしく___
「オレの一部を引き出しておいて、まさか怖気づいていまい」
……っ。……怖くはない。他の誰よりもベルクロスをわかってる。……たださ。もし周りの誰かがって思うと、どうしても____
「もし、たらればこそ。そんなものは彼方にでも投げつけろ。オレ達が後れを取るわけがない。そうだろ」
___ハハ。ハハハっ。まったくだ。ああ~。……なんだかバカらしくなってきたな。……うん? おいベルクロス。さっきオレの事バカって言わなかった?
「さあもう寝るじゃあな」
おい! ごまかしてんじゃねえ! って寝るの早っ! の〇太かよ! おいまだ話は終わってないゾ!___
「これが私の使い魔。イッセーは会った事あるわね」
「え?」
そう言ってリアスンが魔法陣を展開し、使い魔をだす。出てきたのはコミカルな小さなコウモリ。どうやらイッセーは会った事がある。そう断言したとたんコウモリが人型に変身した。
「ああ! じゃああの時の娘が!」
河川敷を後にしていつもの部室に来ている。ソファに座り、朱乃ちゃんが淹れてくれた紅茶を飲んでいると、リアスンによる使い魔紹介が開かれた。
「私のはコレですわ」
魔法陣が展開すると、そこから小さな生き物が出てきた。なんだこいつ? そう思っていたら、イッセーが小鬼と口ずさんだ。続けてコネコンが鈴を付けた小さな子猫を両手にだす。……なんだよ。みんなかわいいじゃん。
「僕のは___」
「ああー。お前のはいいや」
「ふ。つれないな」
どれだけオレが欲しても、どーせオレは可愛い使い魔をめでる事しかできないさ。オレ魔力なんて無いし。
「悪魔にとって基本的なものよ。主の手伝いから情報伝達、追跡にも使えるわ」
「あのぉ。その使い魔さん達はどうやって手に入れれば……」
ガチャだな。間違いないね。欲しいキャラ、お迎えするまで回し続けるんだよ。厳選だよ厳選。こうグルグルとさ、何もかも溶かして回す。しまいには溜め込んでるのまで手を出すハメになるんだ……気分悪くなってきた。
苦虫を噛んだ様な顔をしていると、ノックの音が部屋に響いた。はぁいと朱乃ちゃんが返事をすると、扉を開けられぞろぞろと入ってきた。……同じ制服だからこの学園の生徒か。横目を細くし、そう認識しながらティーカップを傾ける。
「失礼します」
眼鏡をかけたリーダーらしい人……いや。悪魔か。物腰柔らかに挨拶してきた。よくよく見てみると、従えている人もみんな悪魔だ。……この学園悪魔が多すぎない? それともこれが普通なのか。
「あの、どちら様ですか」
「この学校の生徒会長。支取 蒼那先輩だよ。隣は副会長の真羅 椿姫先輩。ってか、生徒会メンバー勢ぞろいじゃんっ」
小声でやり取りするアーシアちゃんとイッセー。なるほどね。生徒会かぁ。いったい何の用事かな? ……! まさか厳重注意を言いに来たのか!? 当たり前だよオレみたいなどこの馬の骨かわからん奴が、大量にシュークリーム配ったんだぞ。よろしくないよなぁ。……指摘されたらちゃんと謝ろ。
「お揃いで。どうしたの」
「お互い下僕が増えた事だし、改めてご挨拶をと」
「下僕って……まさか!」
「この方の真実のお名前は、ソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期当主様ですわ」
「この学園に他にも悪魔が」
見ての通りなんだイッセー。悪魔が選り取り見取り。この学園だけじゃない。もしかしたら世の中に少なからずいるのかもな。悪魔、天使堕天使、不思議ちゃんとかさ。
「リアス先輩。僕たちの事、彼に話してなかったんですか? 同じ悪魔なのに、気付かないコイツもどうよって感じですが」
「匙。私たちはお互い、干渉しない事になってるの。兵藤君が知らなくても当然です。……それと___」
ソーナ・シトリー嬢がオレの許に歩いてくる。……ん? な、なにかな? まさか生徒会長直々に注意かな?
「ご挨拶が遅れました。私、シトリー家次期当主、ソーナ・シトリーと申します。以後お見知り置きを。エイジ様」
「……顔を上げてよ。ソーナ・シトリーさん。そんなに畏まらなくてもいいのに」
「お心遣い感謝します」
「だからいいって。ほら」
「?」
「こうやって手を出してるんだ。わかるよね」
「っはい。よろしくお願いいたします」
そう言って笑顔で握手してくれる。うんうん。いやー何か言われるかとビクビクしてたけど、なかなか素直でいい娘じゃん。オレ嬉しいわ!
「うんうん。いい友情が築けそうだ」
「はい。私もそう願っております」
「ソーナだから、ソナちゃんでいいよね!」
「はい! ……はい?」
なにキョトンとしてるの。当たり前だよなぁ? リアスちゃんにも付けたんだし。
「様とか付けて呼ばなくいいよ。もうオレとソナちゃんは友達じゃん」
「え? ……え?」
「わかる。オレも嬉しいもん友達ができてさ。ああもちろん。眷属のみんなも友達でいたいと思ってるよ」
「あ、あの……___」
戸惑って困り、どうすればいいかと悩んでる顔がおもしろい。眉がハの字だもんな。そう思っていると、笑い声が聞こえてきた。
「ッフフ! ダメ! オカシッ!」
「リ、リアス」
「___ハハ。っどうかしらソーナ」
「な、なにが」
「憧れの英雄に出会えて感激したかしら」
「っ!」
「そうそうたしか! あぁ……エイジ様はきっと、とてもとても素敵な方なのよ! 私! 憧れてしまうわぁ!」
「っリアス!」
「それと___」
やれいつの話だとか、なんだとか。顔を赤くしてオレとリアスンを交互に見ては慌てている。思わずオレも照れ隠しで笑ってしまう。……そっか。憧れてくれるのは嬉しいけど、素敵でもないんだよ。オレこんな奴なんだよね。
なんとも微笑ましい二人の騒ぎも収まって仕切り直し。お互いに新人悪魔の紹介をした。イッセーと匙くんの二人にひと悶着あったけど、仲は良さそうだな。そして使い魔の話に移り、どっちがゲットしに行くかを高校生らしくスポーツで勝負して決めるとさ。
話の途中でソナちゃんがリアスンに言った___今のあなたは大事な体って言葉。その言葉が気になったのはオレだけじゃなく、朱乃ちゃんも気にしていた。……実際、そのセリフでリアスちゃんの雰囲気が変わったし。
いったい何の事だろうね。雰囲気的に、聞けそうにもないしな。
「いやなんで。なんでこうなるの」
結局テニスでは勝負がつかなかったらしい。お互いのラケットの網の部分、ガットが潰れるまで試合をしたってさ。まあその時オレは部室にいたから聞いただけね。
「普通に投げてるだけじゃん。よっと!」
で結局、団体戦のドッジボールで勝負する事になった。数は向こうの方が多いから、オレも混ぜてと言ったら許可がでた。ソナちゃんも親睦を深めるいい期会だからと快くOKを出してくれた。やったぜ。
と思っていた時期が、私にもありました。
「おっかし~なぁ。よっと!」
投げたら破裂するんだよ。軽快な音を立ててさぁ。……爆弾でも入ってんのかよ。
「っほ!」
「ちょっとエイジ」
「ん?」
「もう投げないでちょうだい。ボールもタダじゃないの。これ以上消費しないで。……残念だけど、その様子じゃ試合には出せないわね」
「……ぇぇ」
しまいには出場禁止とか……笑えねぇ。……どうやらオレは、ドッジボールができない体になってしまったらしい。
「はぁ。仕方ねえよな」
「破裂するのがおかしいです」
「小猫ちゃんもそう思う? ごめんね。協力したかったんだけど」
「……そもそもエイジさんの腕力がおかしいですが。……お気持ちだけ受け取ります。後は任せてください」
「お。言うねぇ心強いねぇ」
そして各々が慣らしや準備運動を終え、ソナちゃん達を待つ頃。イッセーが恥ずかしながらも、配ってきた。
「ハチマキ?」
「へえ」
「あらあら素敵ですわ」
イッセーがハチマキをみんなに配る。傍から見ても、気合の入った出来栄えだ。
「はい。どうぞ」
「え? オレにも?」
出る予定だったとはいえ、ゲストのオレにも用意してくれたのか。……なんだかこみ上げてくるモノを感じる。
「徹夜して作ったんです」
「……寝てねぇのか」
「俺たちの為に、部長や朱乃さんがあんなに頑張ってくれて。今日は小猫ちゃんや木場、そしてエイジまで。……だからみんなの為に、何か一つでもできたらぁなんて」
……なんだよ。粋な事してくれるじゃん。皆もしみじみそう思ってるよ。
「あのぉ。ハチマキなんて、やっぱダサいスか?」
「ううん。よくできてるわ。本当に素敵よイッセー」
「いえ、そこまでのモンじゃ。やっぱり慣れなくて」
「うん。予想外の出来栄え」
「イッセーの人柄が良く出てると思うよ。……やるじゃん」
「これを巻いて、チーム一丸となって頑張りましょう」
はい! その返事は、まさにチームの結束力を固める確かな返事、鼓舞だった! って言うけどさ、オレ出れないからね。出禁だから。……でもまっ! ハチマキ巻いて、応援と洒落こもうかな。
「お待たせしました」
「……待ってたよ。ソナちゃん」
声のした方へ目を向けると、ソナちゃんとその眷属たちが、立ちはだかる様にやる気を出していた。
「……登場の立ち位置とか決めてただろ」
そんな呟きをしながら、傍観側に居座る。互いのチームが役割の陣へと赴くと、ソナちゃんが問いただしてきた。
「あの、エイジさん。プレイしないのですか? 勝負事とはいえ、親睦を深めると___」
「ソーナ。エイジは出さない事にしたの」
「リアス。……どういうこと」
「まあまあそう怖い顔しないでよソナちゃん。別にリアスンが意地悪で出さないって理由じゃないんだ」
「リ、リアスン?」
近くに転がるボールを手に取ってソナちゃんを見る。戸惑いながらも疑問を浮かべるソナちゃん。
「はぁ。どうもオレってばさ」
そう言いながら、勢いよく投げる。そして響く破裂音。空気の抜けたボールが、足元に落ちる。
「ドッジボールできないみたい。もったいないねぇ」
「……うそ」
「そういう訳だから。リアスチームもソーナチームも、言い出しっぺなのにごめんね」
申し訳ないけど、オレは応援に徹するゾ。よっしゃ!
「フー!」
そして試合が始まって攻防が始まる。お互い魔力を纏わしたボールをふんだんに使って決めに行っている。そして次々と退場していく両チーム。途中、ソナちゃんの放ったチート技がイッセーの急所に直撃するというハプニングがあった。股を開いてアーシアちゃんに治療されてるイッセーを見ていると、男のオレは内心涙した。
「情けねえよなぁ涙がでるゾ。……よおし!」
いっちょ本気の応援。してみるか! ぉおお! 熱すぎる太陽神が憑依してくるのを感じる、気がする! よおし!
「頑張れ! 頑張れ! できるできる! 絶対できる! 頑張れ! もっとやれるって! やれる気持ちの問題だ! 頑張れ! 頑張れ! そこだ! そこで諦めるな絶対に頑張れ! 積極的にポジティブに頑張る頑張る! ペキ___」
うるさい!! ヒートアップした両チームに怒鳴られて委縮してしまった。……やっぱり美人が怒るのは怖い。
「ガ、ガンンバレー。ガンンバレー」
「かんぱ~い!」
「見事生徒会を撃破し、めでたく我がオカルト研究部が勝利を飾ったわ。これもみんなのおかげよ」
負けたら乾杯なんてしないさ。勝ったよ。オーバータイムの勝利だけどな。お互い消化不良感は否めないけど、勝ちは勝ちだ。っま! この勝利もオレの応援あってこそかな! ん? うるさいだけだった? あそ。アレでも頑張ったんだよ。
「でもオレ、リタイヤしちゃって」
「ハチマキのおかげでみんなの士気も上がったし、イッセーくんも功労者だよ」
「はいもちろんです」
「そうですね。イッセーさん」
「うん」
間違いなくイッセーのハチマキは士気を上げた。ゲストのオレでも貰えたハチマキ。確かに引き締まったけど、オカ研のメンバーはより一層に奮い立ったんじゃね? それこそオレの応援なんかいらない位には。
「エイジもありがとう。貴方の声もしっかり届いたわ。途中はうるさかったけどね。ふふ」
「リアスちゃん……」
「うう! 木場ぁ! イケメンの癖にたまーに、ホントたまーにイイ事言うなぁお前ぇ!」
「あっははは……」
イッセーがユウトンの手を掴み、感謝の言葉を言っている。男同士の友情ってのは、最高だね。熱く燃える要素しかない。それとリアスンがオレに感謝した。ありがとうと。……たとえそれがリップサービスでも。オレには十分だ。
「さあて。グズグズしてられないわ。使い魔をゲットしに行くわよ」
弾む様にそう言うリアスン。それと同時に大き目な魔法陣を展開したアケノン。って言うか___
「今から行くの? 先の話じゃないのかよ」
「満月の夜じゃないと、彼に会えないの」
「彼?」
「使い魔マスターよ」
「きゃああぁぁ!」
「あら。あらぁ。はしたないですわぁ!」
「ちょっ! コラぁ!」
「ぬるぬる……きもっ……!」
「……」
魔法陣の転移で不気味な森についた。どうも使い魔を見つけ、従わせるのには恰好の場所らしい。ユートンもコネコンも、どうやらここで使い魔を手に入れたと。
最初はイッセーもアーシアちゃんも、不気味な雰囲気に表情を暗くしていたけど、次第に表情が和らぎ、慣れるのには時間はかからなかった。……オレ? オレは怖くなかったよ。怒ったリアスンやソナちゃんの方がまだ怖い。
「っく! スライムか! このっむぅお! 離れないっクソ!」
使い魔を見つけるため、あっちに行ったりこっちに行ったり。いろんな使い魔が出迎えてくれた。そのおかげで観光気分。楽しい気分になった。けど目的はあくまでイッセーとアーシアちゃんの使い魔探し。もちろん忘れなかった。
「っ! なんて素敵な展開! ブフォ!」
「見ないでください……!」
「……服が溶けるとか、どんなだよ」
「エイジさんも……!」
羞恥心が顔に出てるコネコンのパンチが迫りくる。その勢い付いたパンチを手で受け止めて、コネコンに歩み寄る。
「っ!」
「おいおいサ〇シぃ。なんなのコイツ。急に降ってきてさぁ」
「俺はサ〇シじゃなく! ザトゥージだ! ゴホン。こいつは布地を主食とするスライムだぜぃ。女性の衣類を溶かす以外、特に害はないんだが」
「なんだそれ。って! テメーもユートンみたいに目にスライムつけてんじゃねえよ! マスターだろ! しっかりしてくれよ!」
水先案内人の使い魔マスター、姿と決め台詞で既視感を拭えない男はザトゥージ。そのサ〇シに文句を言いながらコネコンに近づく。
「……っ」
「……そんな目で睨まないでよ」
「ッムハアー! 脳内保存! 脳内保存!」
「あの性欲の権化みたいなことは言わないし、しないよ」
正直メッチャ興奮する。リアスンやアケノン。コネコンにアーシン! 女子たちのあられもない姿をじっくりと鑑賞したい! イッセーみたく欲望のままに歓喜したい!
でも! 流石に困ってる女子たちを助けるのが優先。内なる欲望に、そっと蓋をする。
「ったく。困ったもんだよなぁコネコン」
「はい。……ありがとうございます」
コネコンにへばり付いているスライムを引っぺがすと、妙に粘り気のあるスライムは溶けるように消えた。
「ぁらあら……そこはいけませんわっあ!」
「……あのさぁ。みんなそうだけど、ピンクな声を出さないでよ。オレも男。……意識しちゃう面があるよね」
「そ、そんなあ! こといわれても!」
「……んー」
「エイジ頼む! 取り除かずにスライムをゲットしてくれ! オレはコイツに決めた! スライム! 君に決めた!」
「……ぇぇ。ホントにいいの? メタ〇ンもいいけど、モ〇ジャラとかのが需要あると思うけど」
「いや! そんな知らない使い魔より! スライムが___ぎゃあああ!」
イッセーに向けていた目を、悲鳴と共に被害者たちに移す。そこにはスライムから解放されたリアスンたちが、怨敵を消し炭にしている。
「イッセー。こんな生き物は焼いてしまうに限るわ」
「いいっ嫌ですぅっ! スラ太郎は俺の!!___」
……ちょっとだけ閉じた蓋を開けて、感想を言っていい? 桃源郷ってのは、意外と近くにあるもんだよなぁ。いやマジで。桃みたいにピンクなんだよ。
「エイジさん、感想はどうです?」
「ん? 桃源郷だよね。色も形もさいこ___」
コネコンのパンチが迫りくる。……口が滑っちゃった。
自分はドッジボールが上手くなかったです。おもいっきり滑ってケガしたのはいい思い出。
次話に不死鳥が登場する予定です。
感想待ってます。アディオス!