一万字超えちゃった☆
読みにくいかもしれません。ご了承を。
「うぅ……痛い」
「大丈夫ですか、イッセーさん」
「自業自得です」
「まったく。あなたはどうしてそう___」
スライム事件は結局、アーシアちゃんの使い魔ゲットで幕を下ろした。スプライト・ドラゴンって種類のドラゴンで、その自慢の雷撃をイッセーに浴びせてはふんぞり返っていた。
「イッセー。覗きはイケナイなぁ。そんなに見たいなら頼めばイイじゃん」
「そうよイッセー。私に言えばいつでも見せてあげるわ」
「ぶ、部長!」
「既に何度も見せてるし。……でしょ?」
「ま、まぁそうですが___イデェエエ!」
「もう! イッセーさん!」
そして今、使い魔を手に入れたアーシアちゃんは、嫉妬心なのか羞恥心なのか。イッセーの頬をつねっている。……それにしても、好いてくれてる女性のつねりは痛そうだなイッセー。
「何度も見たことあるなんて、羨ましいぞイッセー」
「いやぁあ。あはははっイデデデ!」
「裸かぁ。……じっくり見た事あるのって、ゼックンあたりかなぁ」
「……。……エ、エイジ。……私の聞き間違いかしら。お兄様の、はだか?」
「うん。いやー素晴らしかったよ。引き締まった体に見事なシックスパック。もう芸術だよねぇ」
「……」
「特に腰回りがいいんだよ。無駄が無いんだよね」
「……」
「そりゃあグレイフィアとくっつくよね。___ん? どしたみんな」
なぜかみんな固まってる。顔もどことなく固い。いや引きつってる。
「エイジ」
「うん?」
リアスンが憂い、そして困った表情をオレに向けてきた。
「私はね。そういった事には偏見が無いの」
「? うん」
「だけど。っごめんなさいエイジ。妻がいるのにっお兄様はっ!」
「……ん?」
「わっ私。聞かなかった事にするわ! 私は聞いてない、知らない」
悲しそうな顔をしてオレから目を離すリアスン。後ろを向く姿は、どこか震えていた。
……オレなんかした? なんでリアスちゃんあんなに悲しそうなんだよ。……オレなんか言った___!
「いやいやいやいやいや! 違う! 違うの! オレはそういう意味で言ったんじゃ___」
「エイジ。頼むから俺から100メートルくらい近づかないでくれ。つか近寄るな!」
「マジで否定すんなイッセええ!」
「エイジさんは同性愛者なんですね」
「違うよアーシン! オレはノーマル! ノーマルなの!」
「……ホモ」
「違うからねコネコン! オレは病気かってくらい女の子好きなの! それにホモじゃねえ!」
「エイジさん。……残念ですわ」
「何が残念なのか知らないけど朱乃ちゃん! 違うから!」
「あははは!」
「笑うだけかよユートン! なんか言ってこい!」
オレはなんて事を言ってしまったんだ! 確かにゼックンの裸は素晴らしいし、芸術だ。けど今みたいな事言ってみろ。百人中千人はコネコンと同意見だろ! ……何を言ってるんだオレは。ここ混乱してる! とにかく否定しないと、誤解を! 誤解を!
「ああぁ。お兄様。……私はお兄様の花が散っている事を知ってしまいました。イケナイ妹でごめんなさい……この事は誰にも___」
「誤解だあああああ!」
「でも不思議ねぇ」
「ズズッ」
「え?」
「イッセーくんが行った召喚先のアンケート。みんな評判がいいのよ。楽しかったとか、良い時間が過ごせたとか。あなたが付き添った以外は全部失敗してるのに。っうふふ。こんな事初めて」
必死こいて弁明をしたら、何とか誤解は解いた。この時ほど焦ったのはディゾルブの時くらいだ。そして遅い時間までいるオカ研メンバーが今日は珍しく早々に解散。今ここに居るのはリアスちゃんと朱乃ちゃん。そしてオレだ。
「悪魔としては失格でしょうけど、依頼者はみな喜んでくれた。どう解釈すればいいのかしら」
「……どうなのリアスちゃん」
「問題ね」
資料を確認しながら問うアケノン。どうやらイッセーの資料、悪魔のお仕事の資料だ。失敗してるけど、満足評価。この矛盾を、朱乃ちゃんが考査。そしてバッサリ答えるリアスちゃん。……オレはさっぱどわからん。
「でもイッセーくんはイッセーくんなりに頑張ってると思うわ」
「そうだよ」
「そう言う事じゃないの」
便乗気味に言ったけど、否定された。どうやらリアスちゃんは納得いかないらしい。
「この間の使い魔の件もそうだけど、これではイッセーが自信を無くすんじゃなかと思って。……だから私は。もう少し世話を焼いてないと___」
眷属を、イッセーを思う気持ちが、真剣な表情から伝わってくる。……まったく。仲間思いで優しく、それを鼻にかけないしオマケに美人ときた。しまいにはオレみたいな奴も腹に抱えて凛としてる。
……どう育ったらこんないい娘に育つんだ? 教えてよゼックン。
「あらあら。いつになく積極的ね」
「何が言いたいの……」
「あなたは今まで放任主義だと思っていたから」
「っぐむ!」
「あらあらエイジさん」
放任主義ぃい!? マジかよ。思わず咽たぞ。汚したテーブルを拭いてくれる朱乃ちゃんには悪いけど、オレにはそうは見えなかった。むしろ逆なんだよ。溺愛だよ溺愛!
「あまり彼に肩入れするのはどうかと……。はい。慌てずゆっくり飲んでくださいね」
「ありがと」
「……リアス。あなたは__」
「親友に心配してもらうのも悪くないけど、これは私の問題だから……。それから部室では部長。エイジもいる事だし。でしょ?」
「ふふ。はい部長。__では、お先に失礼します」
「ええ」
「……じゃあオレも出てこうかな。なんだか親友とのお話を邪魔しちゃったみたいだしっと」
「そんなことないわよエイジ。またね」
「うん。また」
朱乃ちゃんに先導されるように部室を出る。やはり古い建物。歩くと所々できしむ音が響く。出口に向かう廊下でオレの思ってる事を口にする。
「朱乃ちゃんさぁ」
「はい」
「最近リアスちゃんの元気が無いと思わない? どこか影があると思わない?」
「……そうですね。時々、考え事がある様に顔を暗くさせています」
やっぱりそうか。親友の朱乃ちゃんが気付く程だもん。間違いないね。
「友達としては悩みを聞きたいけど、どうにもそういった雰囲気ではないんだよなぁ」
「……そうですね」
そう。友達としてはここまでなんだよ。悩みはありそうだけど、どうしても踏み込めないラインがある。そのプライベートなラインは朱乃ちゃん。親友が踏み込んだら受け入れてくれるかもしれない。でもそのラインで朱乃ちゃんが悩んでいる。
……ダメだな。こういった話はリアスちゃんが口火を切って初めて、悩みを共有するんだよ。……違う話題でも話すか。
「ん"ん。朱乃ちゃんさぁ」
「はい」
「スカートぉ、もうちょっと下げない?」
「……あらあら」
「__いや。なんでもない。忘れて」
なんでこういった話題がでるんだよオレ。確かにさ、失礼しますって頭下げてる朱乃ちゃんの下着を見たのは不可抗力。ソファに座ってたら見える。……黒だよ黒。目に焼き付いたね。
「ふうっ」
やっぱ風呂上がりの牛乳は最高だな。火照った体を内側からッスと冷やしてくれるし、普段とは一味違う味わいを感じる。
「__よし」
首にかけたタオルで拭ききれていない髪を拭く。……気持ちいい。風が吹くと少し寒い程度の夜が気持ちいい。もう風呂上りは上半身裸でうろつくのが習慣になってる。最初の頃はタオルを掛けているとはいえ、上半身裸で夜を過ごしているオレに戸惑っていたアケノン。それも今ではいつもの事とアケノンが吹っ切れている。
……なんかごめんね朱乃ちゃん。自由に過ごしちゃって。
「ふぁぁあ眠みぃ。……ん?」
誰かが転移してくる。まったく誰なんだよ。オレは欠伸するくらいは眠たいんだよね。っと。この気配は__
「こんばんはリアスン。なにか用事?」
「……」
「朱乃ちゃんならお風呂だよ。もうちょっとしたら上がってくるはず」
魔法陣から現れたのは部長ことリアスちゃん。先ほど別れを言った笑顔じゃなく、どことなく頬を赤く染めて、真剣味のある顔でオレを見ている。
「エイジ」
「なに?」
「何も言わずに私を抱いて」
……。……ん?
「ごめん。風呂上りでさ、……なに言ってるかわかんないや」
「私を抱きなさいエイジ!」
そう言って速足で近づいてくるリアスちゃん。オレはすかさず手を前に出して静止させる。こうするしか混乱してるオレにはできない。
「……ダメ」
「……っ」
どうやらただ事じゃないな。自分が何を言って何をしようとしているのかが分からない程、こんなに切羽詰まってるリアスちゃんは見た事がない。__どうやらオレは、大人な対応というモノをしなきゃイケないらしい。
「オレ言ったよね。身持ちは固いって。添い遂げる相手は選べって」
「っ!」
正確にはベルクロスがオレの体で遊んだ時に言った言葉。今はその言葉を借りる。四の五の言ってられない。
「……英雄に。エイジに処女を貰えた。拍が。その事実が__」
「失望したよ」
「っ……」
「確かにオレは頼れって言った。でも__」
「……」
「リアスはオレが思っているよりずっと気高いと思ってた。ずっと誠実だと思ってた。それなのに……。これってないよ」
纏まった考えで言う事は混乱しているオレにはできない。只々心から溢れ出る言葉を口にするしか出来ない。
「何でこうしたのか、どういった事情があるのか、知らない! 例え事情を知っていたとしても、オレはリアスを抱かない! そんな選択肢は無い! リアスを……リアスを。……傷つけたくない……」
「エイジ……」
「ダメだよリアス。……君の大切なモノは、君が愛してるモノに捧げないと……」
「エイジ__」
「__っあ、甘い事言ってるかもしれない。呆れるかもしれない……。でも……オレは。これしか言えない__」
本当に情けない。友達が、リアスが頼ってくれてるのに、こんな薄い事しか言えない。こんなエゴしか言えない。……もっと上手に説得できるだろ。もっと上手く対応できただろ。……っく。
「エイジ。__そんな悲しい顔しないで」
「っ」
……悲しそうな顔をしているのか、オレは。……ハハ。もう何が何だか。
「__ごめんなさい」
「……っ」
リアスがオレの頬に両手をあてる。微かに震えてる親指で目じりをなぞってくる。そっと、優しく。
「……エイジがこんなに私を思ってくれてるなんて、知らなかった」
「……ぅ」
「エイジの言う通り。……ダメね。反省しないと……」
リアスの目を通して感じる優しさが、どうにもこそばゆい。語りかけてくるそばでも、その瞳は揺らぐことなくオレを見つめている。
はは。やっぱり……いい娘じゃん。
「__リアス」
「……」
「オレはさ。別に処女を捧げちゃダメとは思ってないんだよ」
「ぇ……」
そう。思っていない。一向に構わない。思う存分抱かれてこい。一心不乱に愛し合え。無我夢中に貪りあえ。そう思ってる。でもそれは__
「リアスを心から愛してくれなきゃ、リアスが心から愛さなきゃ」
ただのエゴだ。押しつけだ。……悪いねリアスちゃん。オレ、我がままだから。平気でこんな事言っちゃう。……大人な対応と言っても、オレが言えるのはこんなもん。
「__ふふ。さっきは沈んだ顔してたのに、もう笑顔?」
「そりゃリアスンが笑ってるもん。オレも笑わないとさ」
少し照れ臭い。きっとリアスちゃんもそう思ってる。
「行ってきな。リアス」
「エイジ……」
「処女。貰てもらわないと。……そこにあるよね。愛し合ってくれる場所。意中が」
時々暗い顔をしていたリアスちゃん。その原因に基づく行動だっただろう。……それが何であれ、オレは、覚悟を決めた彼女を導かないと。
「ありがとうエイジ。……行ってくるわ」
「うん。いってらっしゃい。頑張れよ」
「任せて」
そう言って転移の魔法陣を展開するリアスン。吹っ切れたようだけど、顔はほんのり赤い。もちろん、今から会いに行く__そうだな。イッセーを思っての事だろう。ハハ。流石にわかるよリアスン。
「じゃあね」
別れの言葉をオレに渡して、ここを後にしたリアスちゃん。本人がいなくなってだろうか、どうにも__
「っふうぅ」
なんかどっと疲れた。普段やらない事や、言わない事言うのはなかなか疲れるなぁ。……あ"あ"。今になって色々言いたくなってきた。……でもさ、いろいろ言った所で説得力ないよね。オレまだCボーイだし。そりゃ薄いよ。
「もっと助かる事言えれば良かったのになあ。そう思うよね__朱乃ちゃん」
そう。途中から気配はしていた。そっと耳を傾けていた。オレとリアスちゃんのやり取りを。
「気づいていらしたのですね」
スッと障子を挟んで黒い影が出てくる。
責める気はない。朱乃ちゃんも思う所があるだろうと、オレは気付かない振りをしていた。朱乃ちゃんも親友を心配していたし。
「どうもさ。かっこ悪い所聞かれちゃったね。いやぁ恥ずかしい」
「うふふ。かっこ悪いだなんて思ってませんよ。友達思いなんですね」
「そう? ……そう言ってもらえると、気持ちが軽くなるよ。ありがと」
実際に軽くなった。責められるどころか、励ましてくれるなんてな。朱乃ちゃんもリアスちゃんに色々言いたいはず。でもそんな事は言わず、ただ事の末をうかがっていた。……我慢強いね、朱乃ちゃん。オレだったら飛び出してる。
「エイジさん」
「ん?」
「私、エイジさんはリアスの要求を呑むと思ってました」
「うん……」
「常日頃、顔を合わせれば笑顔で応え合える。そこには友達以上の絆を感じるほど__」
「……」
障子の向こうで語る朱乃ちゃん。顔色はうかがえないけど、どことなく暗い印象を感じる。
「惚れてたかもしれない。その言葉は、実際に好き。惚れている。そう言っている様にも聞こえました」
「……うん」
「でも違った。……あなたは抱かなかった。__隠れていた私にもわかる程に、あなたは悲しんだ。辛そうに__」
口調が感情的になっていく。気持ちが高ぶっているんだろう。……なんだ。ここにも友達思いがいるじゃん。
「でも道を示した。リアスを真っ向から否定するのじゃなくて、むしろ正した。彼女の為に!」
「……」
「__私があなたの立場なら__どう言えたか……。どう助けたか……。私は__」
朱乃ちゃんも悩んでいたのか。リアスちゃんの様子に影があるとわかってから、心の底に燻ぶっていたのかもしれない。それが今、さっきのやり取りで表に出てきてしまった。……そうかもしれない。
「朱乃ちゃん」
「__はい」
できるだけ優しい口調で呼ぶ。歯切れの悪い返事を聞きながら、障子まで足を運び、開けた。
「っエ、エイジさん」
「朱乃ちゃん……」
見上げてくる顔。その瞳は今にも雫が流れそうだ。……こんなに悩んでいたなんてな。オレが思っていた以上に深刻に受け取っていたのか。
まだ乾ききっていない髪が目に映る。まったく。風呂上りもいいとこだ。夜風がまだ冷えるのに。……寒かっただろう。
そう思ったオレは、首に掛けておいたタオルを、朱乃ちゃんに掛ける。
「っぁ」
「ごめん。ちょっと冷たかった? 髪。乾いてないじゃん。風邪ひいちゃうよ」
「ありがとう……ございます」
顔が少し赤い。こりゃ風邪ひいたか? 任せなって。看病しするよ。暖かいはちみつレモン取らせちゃうもん。
っま。それは明日わかる事。今は__
「実はさオレ。混乱してたんだ。そりゃいきなり抱いてだぜ? ビックリするよ」
「__。」
「とてもじゃないけど、考えてモノを言うってほども、余裕なかった」
「__っ」
「言ったよ。心に従ってさ。ッハハ。今となっては、もっといい事言えって感じだけど、後悔はしてないよ。だからさ__」
「……」
「考えてもスッキリしないなら、心に従って言ってみたらいい」
「っ」
「少なくともうじうじ考えてるより、マシでしょ。だぁいじょうぶ。朱乃ちゃんの言葉なら、素直に聞いてくれるよ」
朱乃ちゃんの目が見開いた。どうやらオレの薄い助言でも、少しはつっかえが取れたと思う。どんだけ素直なんだよ朱乃ちゃん。
ほんの一息の間。お互いに何も言わずにいると、朱乃ちゃんがオレに背を向けた。
「……ありがとうエイジさん」
「__うん」
「なんだか、気分が晴れました」
「それはよかった」
「はい。……それと改めましわ」
「うん?」
「ふふ。おやすみなさい。……いい夢を」
そう言って寝室へ向かう朱乃ちゃん。……いったい何を改めたんだ。うーん。っま。もういい時間だ。オレも寝よ。
「ふぁああっ」
欠伸も再びでてきたし、布団にダイブだな。おやすみ~。
「ふうぅ……人間界は久しぶりだぁ」
余裕の表れ。彼、ライザー・フェニックスは派手な転移で現れた。……緊張感のある気配。グレイフィア様の気配を感じた時、心の底に胸騒ぎを感じたのは正解だった。近しい人物なら誰っだって気付く部長の影。その悩みの種は他でもない。グレイフィア様が説明してくれた。
朱乃さんが淹れた紅茶を嗜むこの男。ライザー・フェニックス。リアス部長の婚約者だ。
「んん~」
「……」
部長の長い髪を執拗に弄るライザーを見て、婚約に批判的な思考をしている僕。部長のナイトとしてはいかがなモノかと自分でも思う。隣でライザーを睨んでいるイッセーくんも、似たような思いだろう。
「いかがですか?」
「ん~っ。実に飲みやすい」
「もう一杯どうです?」
「頂こう」
部長の懐刀である朱乃さんは、婚約の事をどう思っているのだろうか。直ぐ隣で部長が不快な顔をしている事にどう思っているのか。
「リアスのクイーンが淹れる紅茶は最こ__!」
「あらあら! 申し訳ございません。直ぐに拭きますので」
「__ああもういい! 靴にこぼれただけ__裾に……。チッ! もう下がってくれ」
「……では」
……わざとだ。朱乃さんはわざと紅茶をこぼした。最初は朱乃さんにしては珍しいミス。そう思った。でもそれが間違いだと顔を見ればわかる。こちらに歩いてくる朱乃さん。笑顔だ。普段の笑顔とは違い、満面の笑み。
してやったり。その意味が分かると、思わずらしくもないガッツポーズを内心決めてしまう。
「いい加減にしてちょうだい。ライザー、以前にも言ったはずよ。私は貴方と結婚なんてしないわ」
「だがリアスゥ。君のお家事情はそんな我がままが通用しないほど、切羽詰まってると思うんだがぁ?」
手を払いのけて立つ部長。そんな態度も気にしていないと振る舞うライザー。やはり何度か会っては話し合ってる。きっとその度に今みたいなやり取りをしているんだろう。
「家を潰すつもりはないわ。婿養子だって迎え入れるつもり。でも私は、私がいいと思った者と結婚するわ」
「先の戦争で激減した純潔悪魔の血を絶やさないというのは、悪魔全体の問題でもある。君のお父様もサーゼクス様も、未来を考えてこの縁談を決めたんだ」
「父も兄も一族の者も、みんな急ぎすぎるのよ。二度と言わないわ。ライザー。貴方とは__」
__扉が開く。このどうしようもなくぎこちない雰囲気に、風が入ってくる。そう。もうそろそろ来ると思っていた。僕たちの友人。
「おっすー! いつもの如く、遊びにきた__あれ! グレイフィアじゃん! 久しぶりぃ」
「お久しぶりですエイジ様。ご機嫌がよろしい様で」
「あーそんな感じ。仕事モードね。オーケーオーケ」
いつもの様に明るいエイジ。グレイフィア様を呼び捨てにできるのはエイジ位だ。
「ん? なにこの空気。どした__」
「これはこれは!」
「お」
さっきの雰囲気はどこに行ったのか、エイジを見るなり速足で近寄るライザー。部長もあっけにとられている。
「こうして直にお会いするのは初めて。初めましてエイジ様。自分は上級悪魔、フェニックス家の三男。ライザー・フェニックス。以後、お見知り置きを」
「初めましてライザーさん。よろしくね。でも直にって__ああ! もしかしてオウムの!」
オウムとは何の事か分からないけど、エイジは会った事あるのか。
「ちょっとちょっと。ライザーさんはああいうのが好きなの? イケナイ事してるのは感心しないけど、わかる。うん」
「……」
ライザーに顔を近づけて、小声で喋るエイジ。静まり返ったこの場では丸聞こえ。ひそひそ話になってないよ。どことなくライザーも困惑している。
「エイジ様」
「うん?」
「こちらのライザー様は__」
グレイフィア様が今の状況をエイジに説明する。口を半開きにして聞き入るエイジ。そして話終わると、エイジが言った。
「ダメだよ婚約なんて。第一、いつになるかわからないけど、デートの約束もしてあるんだ。オレが言える事はね。コレ。糞くらえだ」
なぜかモザイクが掛かってるけど、セリフと共に中指を立てるエイジ。その行為の意味は、僕たちの総意だろう。
「そう言う事よライザー。貴方とは結婚しない!」
「ッチ」
エイジの意見を聞いてか、苛立ちを隠せないライザー。部長の否定的な言動で、ライザーが部長に迫る。
「リアス。フェニックス家の看板背負ってるんだよ。名前に泥を塗られるわけにはいかないんだ」
ライザーの気迫に臨戦態勢をとる。僕と同じで皆も身構える。
「俺は、君の下僕を全部焼き尽くしても、君を冥界に__」
「おいおい。焼き尽くすだなんて、そんな物騒な事言わないでさぁ__」
「自分は本気ですよエイジ様。あなたに否定されようと、まかり通らなければなりません!」
そう言うと、ライザーの手から炎が迸る。とっさに部長が身を引いて避けようとするが、振り払う炎に、刹那に間に合わなかった。
「っく!」
部長の腕が微かに焦げる。ックソ! ナイトである僕が遅れをとるなんて!
部長を守るために動こうとした。動きたかった。だけど、それはできない。僕の胸が__
心臓が潰れた
「っ!」
そう錯覚した。胸に手を当てずにはいられない。鼓動が酷く、うるさい。背中に流れる冷や汗が訴えてくる。
「っあ"あ"あ! ッグっ!__」
ライザーが手に炎を噴出させ、自らの顔を鷲づかみにしている腕に暴力をふるう。殴ろうが引きはがそうが、腕はビクともしない。__エイジはビクともしない。
「放せええ! __!」
食い込む鈍い音が部屋に響く度、ライザーの悲鳴が続く。普段らしからぬ雰囲気。右腕だけでライザーを持ち上げ、ただの一言も言わずに、静かにライザーを見ていた。左目に青い揺らめきを灯しながら。
この異様な光景に僕たちは動かなかった。動けなかった。みんな同じ意見だろう。
エイジは今、怒っている。
「エイジ様。今すぐ解放してください」
「っぐ! __!」
鈍い音が響く。グレイフィア様に警告されても放す気配がない。むしろより一層に力を入れた。……なんとなくだけど、わかる。エイジは部長が危害を負ったから怒っている。これもその一つだ。
だけど、何も言わないエイジの背中を見ていると伝わってくる。__友達を傷つけたな……と。
「解放してくださいエイジ様! これ以上は待てません!」
「__っ__っ!」
駄目だ。収まらない。エイジの怒りが__。これ以上は顔が、頭蓋が__潰れ__
「エイジ! やめなさい!」
グレイフィア様が魔力を発現させながら叫んぶ。全くの無反応っだったエイジは、圧のある言霊を聞いてライザーを放し、揺らぎを収めたという形で反応した。
「__っだは! はあっ、はあっ! はあっクソ!」
顔を手で覆い隠し、蹲るライザー。……息も絶え絶えなライザーを見てると、ほんの少し心が痛む。だけど当然の結果だ。
「はあぁ。わかったわかりました! 悪ぅございました!」
「……よろしいです」
詫びを言う態度とはかけ離れた顔で、グレイフィア様に謝るエイジ。そんな態度をとられてもグレイフィア様は無難に受け取った。
「……もういいや。オレ帰る。そゆ訳だから、悪いねライザーさん」
「……」
「あんたにした仕打ちは後悔なんて無いよ。……仮にも婚約者なんだ。その相手に手を出すのは許せないだけ」
「__くそっ」
「じゃあねみんな。グレイフィアも。__ああそれと! 念押しで言っておく、婚約話なんてコレね」
最後に中指を突き上げて帰っていった。新鮮な風だと思ったけど、暴風だった。……僕は思う。普段、友人としてのエイジは慣れ親しんだ。でもさっきのエイジは、もしかしたら英雄としての一面かもしれない。きっとそうだ。まだまだ氷山の一角だと。
「へいらっしゃい!」
「一人だけどいい?」
「もちろんだ! さあ、こっちのカウンターに来な」
店の主人に誘導されたカウンター席に座る。……なんでオレは焼き鳥と言う看板に釣られてきたんだ? まあむしゃくしゃしてたんだ。なんでも良いから腹に入れたかったんだろう。
「じゃあ焼き鳥をそれぞれ一品ずつ」
「おいおいあんちゃん。食べきれるのかい?」
「もちろん。やけ食いだよやけ食い。今のオレは食べるブラックホールさ」
「そうかい。なら待ってな」
そう言って店の主人は焼き始める。……ん~。食欲が刺激される美味しそうな匂いだ。
……なんともしょうもない事をしたもんだ。昨日のリアスちゃんの事があったとはいえ、半分八つ当たりだよ。でもライザーが悪い。自分を正当化するつもりはないけど、結婚してたらDVだよDV。許せんね。
「悩みは多そうだな兄ちゃん。大学生生活は厳しいねぇ」
「大学生ねぇ。……そう見えちゃうんだ」
「おや、こりゃいけねえや……」
「気にしてないよ。大学生と間違われても怒らないし。もう怒るのはコリゴリだっ」
店の主人に気を付かせてしまった。大学生じゃないんだよ。ごめんね。まあおやっさんは浪人と思ってるだろうけど……。実際はニートだよ。__いやニートとも思っているかも。
「おまち!」
最初の一品が出来上がった。んんいい匂いだ。……では早速。
「はむ。……っ」
やっぱり鳥だよ。美味い。もう大好き。そして次々に出される鳥たち。
「っほ。はむ」
__ライザーさん。今の君とは友達になれない。でも。あんたの何かがいい方向へ変わったら、オレは握手を求めるよ。今日の出来事も謝る。
そして、友達になろう。
お気に入り数が一人また一人と増えていく。励みになって当然です。
展開は牛歩ですが、エンジョイしてくれると嬉しいです。
では、アディオス!